メドヴィの居酒屋/世界むかし話 ドイツ/訳・矢川澄子/ほるぷ出版/1979年
金持ちで有名な粉ひき屋の一家が、よその結婚式にでかけたとき、留守番をしていたのは、この家で働く若い女中でした。
たった一人で留守番をしているのを聞きつけた12人ものどろぼうが、粉ひき屋の小屋におしいろうとやってきました。
どろぼうたちは、小屋の壁に人がひとりはいれるぐらいの穴をあけ、そこからしのびこもうとします。むすめは物音とを聞きつけ、台所用のおのをたずさえて、こっそり穴の前でまちうけました。
最初のやつが、ひょっこり首をだしたとたん、むすめは、おので首をきりおとしてしまいます。二番目から十番目目のどろぼうも同じ運命に。
十一人目は、ようすがおかしいと出した頭をすばやくひっこめたので、おのは頭のてっぺんをかしめただけでした。
十二人目は、とびあがって あとをかすみとにげていきました。
しばらくたったころ、身なりの堂々とした紳士が、むすめに結婚を申し込みました。
はじめはまるで気を動かさなかったむすめでしたが、まわりから、こんなにいい縁談はないといわれ、何度目にかは結婚を承知します。
結婚式にでかけた馬車が、暗い森にさしかかると、花婿は帽子をぬいで、かゆいから、かいてくれるよういいます。
花婿の頭のてっぺんには はげがありました。じつは、逃げ帰ったどろぼうで、正体をあらわし、油で焼き殺されるか針でつつき殺されるか、どちらにするか花嫁にせまります。
いったんは、馬車からにげだしたむすめですが、すぐにどろぼうのすみかに、つれられてしまいます。どろぼうの家には、ひとりのおばあさんがいて、粉ひき小屋で、いさましかったむすめを家に帰れるようにしてあげるといいます。
お酒にねむり薬をしこんで、どろぼうたちが床にたおれてねむってしまったら、にげだしなさいというのです。
この後、三度の危機がおとずれるのですが、むすめは命びろいします。
むすめは、そのあとずっとしあわせに過ごしますが、結婚だけはついに一生しなかったというオチ。
若いむすめがでてくると、最後はめでたく結婚するという結末が圧倒的に多い昔話ですが、こんな終わり方もあります。