ウエズレーの国/ポール・フライシュマン・作 ケビン・ホークス・絵 千葉茂樹・訳/あすなろ書房/1999年
お母さんは「あの子ったら、かわいそう。いつもひとりだけ、はみ出してるわ」、お父さんは「たしかに、あの子はういているな」とウエズレーを心配しています。
この町では 家の形も男の子の髪型も格好もみんな同じ。ピザもコーラもサッカーも、みんなは大好きなのに、ウエズレーは大嫌い。でもウエズレーは人と違うこと、いじめにもくよくよせず、逃げるのが得意。
両親はウエズレーに今日は何を習ったのと聞いて、お父さんは「今にきっと役に立つさ」とつぶやいて、息子を見守ります。
夏休みの自由研究に、ウエズレーにひらめいたのは 「自分だけの、作物をそだてる。自分だけの文明を作る!」こと。お父さんの言うとおり! 学校の勉強が役立つときがきました。
次の日、ウエズレーは庭を耕し、夜になると、強い西風が吹いてきました。「ほら、ぼくのはたけに、たねがとんできた!」と、ウエズレーは耳をすまし、風の音をきいていました。
五日後最初の芽がでると、となりのおじさんは「その雑草を、さっさとひっこぬいちまいな」といいますが、自分の庭で、だれもみたことのない、あたらしい作物をそだてているんだからとウエズレーは成長を見守ります
ウエズレーの作物は、いつのまにか、ひざよりも、こしよりも大きくなり、黄色の実がなりました。実は、ももとイチゴとリンゴがまざったようなあまいあじ。
ウエズレーは毎朝、果物を食べ、自分で発明した「きかい」で、実を絞って一日中ジュースの飲み放題。
太く育った根っこの先は、大きなイモのようで、はっぱは素敵なかおり。
茎からとった繊維で帽子をあみ、自分で作った「きかい」で、機を織り、服もつくりました。
服はかるくてやわらかく、ポケットもたくさんつけて、とても便利。
よ種からとった油は、さわやかないいにおいがして、はだにぬると日焼けを防いで、いやな虫もよせつけません。
日時計もつくり、一日を八つに分けて自分だけの時間をきめます。
ウエズレーは、自分の庭に「ウエンズランデイア」と名づけます。ウエズレーの国「ウエンズランデイア」は自給自足の生活。無駄なものは何一つありません。何から何まで自分でつくるまさに理想の国。
新しい遊びを考え、高いところに屋根も壁もないへやをつくって、夜空をみあげ、あたらしい星座も作りながら、毎晩、毎晩涼しく過ごします。
さらに「ウエズレー語」までつくり、じぶんでつくった80個の文字で歴史も書きました。
9月になって登校するウエズレーのうしろにつづくみんなの恰好がウエンズランデイア風になっているのが気になるおわりです。
満天の星空のもと、ハンモックで笛を吹いているウエズレーのそばには、たぬき、とかげ、ふくろうなどがさりげなく描かれ、ウエズレーをみているお父さん。お母さんも「あんなしあわそうな顔、はじめてみたわ」と安心したようです。
最初の出発点になった作物は、ウエズレーにサルーシュとよばれていますが、これがなければ、「ウエンズランデイア」はできませんでした。
子どもの創造力と想像力を刺激してくれる絵本でしょうか。