世界のむかし話 ロシア/田中泰子・訳/ほるぷ出版/1988年
ロシアの昔話にはかかせないバーバー・ヤガー。
この話でも、バーバ・ヤガーの小屋はニワトリノ足とヒツジの角の上にたっています。
ここにでかけていったのは、まま母から針と糸をもらってくるようにいわれた娘。バーバー・ヤガーはまま母の妹です。
あわや食べられそうになった娘が、バーバー・ヤガーのところで、働いている下働きの女、ネコ、イヌなどから助けられます。
ネコはテーブルの上にあるタオルと櫛をもって逃げるようにいいます。櫛を投げると深い森が現れ、タオルをなげると深い川があらわれるとおしえてくれます。
「三枚のお札」と同様、娘がバーバー・ヤガーのところから逃げ出し、追いつ追われつします。バーバー・ヤガーは、臼を杵でたたきながら、もう一方の手に持った箒で後を消しながらとんでいきます。
娘は、布を織っていたのですが、織るのをネコに任せて逃げ出します。バーバ・ヤガーに「なぜ娘をにがした!」とどなられたネコは、「あんたはかじりかけの骨だってくれたことがないじゃないか! あのむすめは肉をくれたんだよ」とこたえます。
バーバ・ヤガーに「なぜ娘にかみつかなかったんだ!」とどなられたイヌは、「あんたは こげたパンの皮もくれなかったじゃないか! あのむすめはパンをくれたんだよ」とこたえます。
さらに、バーバ・ヤガーに「なぜ門をとじなかったんだ!」とどなられた門は、「もうなんねんも あんたの家ではたらいているのに、あんたは水いっぱいだってかけてくれとことがないじゃないか。あの娘は油をかけてくれたんだぜ」とこたえます。
シラカバも下働きの女も、バーバー・ヤガーのしうちをうらんで、娘をたすけてくれていたのです。
娘は、櫛で森を、タオルで川を出現させ、なんとか家に戻ります。
これを聞いた父親は、はらぐろいおかみさんを家から追い出してしまいます。
バーバー・ヤガーは、森や川だけでなく、いわば自分の身内?からも 見放されていました。