前庭には、梅の老木があります。いつからあったのか定かではないのですが、幹はすっかりやせ細ってしまい、皮一枚でつなっがている、そんな姿です。それでも、毎年花をたくさんつけ、その生命力には驚かされます。
おそらくこの敷地の一番の「長老」に敬意を表し、この梅を保存することにしました。新しくできた主屋の白い壁を背景に、老木の樹形がくっきりと浮かびあがり、その存在を宣言しているかのようです。
その脇を通るアプローチの舗装には、モルタルサイコロとよばれるものを用いました。通常 下地用に使われる安価なもので、大きさもまちまちです。それらを一つ一つ丹念に敷き並べていきました。すると、堅すぎず、いい案配になります。できてから5年が経った今では、その隙間から苔も生え、長い時間を帯びたような味わいがでてきています。
あたらしいもの、ふるいもの。それらが同時に混在することで、前庭は「奥行き」のある雰囲気に包まれます。そしてそれは、この住宅にとって通底する考え方でもあり、前庭はそんな世界へのプロローグのような存在となっているのです。この前庭を通って、中庭へ向かいます。