濡れ縁は、ちいさな中庭に面しています。傍らに植えられているのは ブルーベリー。実のなる植栽は、生活のなかにちょっとした楽しみをもたらしてくれます。
中庭をはさんでダイニングがあります。椅子座と床座。それぞれの場所の使い勝手に応じて、中庭への関わりあいかたも変わります。ダイニングの前は、コンクリートで仕上げられたテラス、和室の前は濡れ縁に、といった具合です。おかげで、ちいさな中庭が、いろいろな表情を見せてくれるかのようです。
濡れ縁は、ひとりでぼぉっとするための場所。少し奥まっているので、考え事でもするのにちょうどよい場所になりました。古今東西、中庭というのは考え事をするための場所として人々に大切にされてきました。この桜坂の家の中庭は四坪に満たない 都会のなかの私的な空間。落ち着く場所というのは 意外にちいさくてよいものです。そこに面する濡れ縁は、ビールを片手に座ったり、寝転がったりするのにちょうどよい寸法に設計されています。
蝉にかわってすずむしの鳴き声が、中庭にしみいるようになりました。思いは深く、ふかく。