温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

川治温泉 リブマックスリゾート川治

2022年12月08日 | 栃木県

(2022年1月訪問)
前回記事の中塩原温泉から再び路線バス「ゆ~バス」に乗車し、塩原温泉郷を抜けて野岩鉄道の上三依塩原温泉口駅まで来ました。山を越えて西へ進むと積雪量が一気に増えて、まさに一面銀世界、雪国の景色そのものです。所在地としては栃木県ですが、ちょっと北へ行けばすぐ福島県会津地方ですから、土地の雰囲気としては下野というより会津に近いものがあるように思います。


ざて、上三依塩原温泉口駅から野岩鉄道の上り電車に乗車。やってきたこの電車は特急「リバティ」浅草行ですが、野岩鉄道線内は各駅に停車し、乗車券のみ(特急券不要)で利用可能でなんですね。


20分弱の乗車を経て川治湯元駅で下車し、川治温泉で日帰り入浴を試みます。
どこのお風呂に入ろうかしら、と足取り軽く温泉街へ向かったのですが、コロナ禍の影響により市営「薬師の湯」は残念ながら休業中。温泉街の旅館数軒を訪ねたのですが、やはり日帰り入浴を断られてしまい、万事休すかと諦めかけていたとき、受け入れてくれたのが・・・


「リブマックスリゾート川治」でした。
看板に躍る「源泉かけ流し」の文字が頼もしいですね。


駐車場の片隅には足湯が設けられていましたが、訪問時は閉鎖中でした。
おそらく閉鎖は冬期のみではないでしょうか。


フロントで日帰り入浴をお願いしますと、快く入れ入れてくださいました。
以前こちらの宿は「蘭綾(らんりょう)」という名称の旅館でしたが、2017年5月に閉館。それをリブマックスが買い取ってリノベーションし、同年6月に再オープンしました。現在の運営となってからはまだ5年程度ですが、建物自体は相当の年月が経過しており、再オープンに際しては館内の随所に対し濃い色を多用して改装したようです。なおフロントは2階にあり、浴場は1階とB1階に分かれていて、時間帯により男女の暖簾を掛け替えています。
上画像はフロント斜め前にあるラウンジです。


私が訪問した時、1階浴場は夜まで男湯で、翌朝は女湯という設定でした。無論もう一方のB1階浴場はその逆になります。当然ながら私は1階のお風呂を利用することになります。廊下を進んだ突き当たりに暖簾が掛かっていました。


暖簾の先にある脱衣室には俳優渡辺文雄氏直筆の額が掲示されていました。平成生まれの方にはピンとこないかと思いますが、渡辺文雄氏といえば若い頃は東映の映画でよくインテリヤクザを演じた名俳優であり、その後は『くいしん坊!万才』の初代MCとなり、日テレ系の『遠くへ行きたい』では日本全国を旅して廻った有名人ですね。私は個人的に「いつも津々浦々を旅しているメガネをかけたインテリおじさん」というイメージがあり、永六輔氏や美坂哲男氏とともに、子供の頃の私にとって憧れの人でした(なんて年寄り臭いガキなんでしょう…)。渡辺文雄氏は2004年に亡くなっており、一方でリブマックスが当地へ進出したのは2017年ですから、当然この額は「蘭陵」時代のものでしょうね。

なおこの額が掲示されている脱衣室は広くて明るく、パウダールームもしっかりあって使い勝手は良好です。なお温泉街を見下ろすガラス窓の向こうには後述する露天風呂が丸見えです。国内のエロいホテルや海外のホテルで、たまにベッドルームからシャワールームが丸見えになっている造りの部屋に遭遇しますが、着替えや入浴というちょっとした羞恥心を伴う行為が行われる場所を敢えて可視化する意図って一体何なのでしょうか。


内湯も広々としており、天井が高くて明るい構造です。全体的に白色基調であるため、余計に広さと明るさが際立って感じられます。なお床は全て白い大理石という豪華な造り。旧「蘭綾」はお金をかけて建設されたんですね。この明るい浴場の左右両再度(壁側)に洗い場が配置され、計11個のシャワー付きカランが並んでいます。また手前側にはサウナと水風呂も設けられています。
主浴槽はかなり大きく、目測でおおよそ3mx6mはあるでしょうか。浴槽にも大理石のような建材が用いられていますが、本物かイミテーションかは不明。これに関連するかと思いますが、浴槽の隅には白い粉がたくさん沈殿していました。おそらく湯の花ではなく浴槽に用いられている材質が剥がれ落ちたのではないかと想像されます。 


主浴槽の右側にも浴槽が広がっていますが、こちらはやや浅い造りです。その中央にはトラバーチンで出来たような湯口ような構造物が立っており、湯船よりやや熱いお湯が下から噴き上がっているが、でもこのお湯が浴槽に注がれているような感じはなく、これは一体何なのか、よくわかりません。温泉のモニュメントかしら。なお浴槽のお湯は浴槽内側面に複数ある金属製湯口より投入されていました。投入量はかなり多く、浴槽の縁からしっかり溢れ出ていました。


脱衣室からガラス窓越しに丸見えの露天風呂。
浴槽の形状はオーバルで、槽内はベージュの石板タイル張りです。湯口から落とされたお湯は、楕円の浴槽を満たした後、丸いタイルの縁の隙間からオーバーフローしています。


1階とはいえ、建物自体が小高い場所に建てられているため、露天風呂からは温泉街を見下ろすような感じで一望することができ、温泉街のみならず周囲の山々を含めて川治の景色を楽しみながら湯あみを堪能しました。

さて、肝心のお湯についてですが、無色透明無味無臭で癖など全くないサラサラ且つあっさりとした優しいお湯です。館内表示によれば湧出温度40.5℃なので入浴に適した温度へ加温されていますが、それ以外の加水や循環などは行われておらず、かけ流しの湯使いを実践しているとのこと。ただ、内湯はともかく、露天のお湯からは消毒臭のようなものを感じ取ったのですが、気のせいでしょうか。
なお客室の一部にもかけ流しの露天風呂が付帯しているそうですから、次回訪問時は宿泊で利用してみたいものです。


お風呂上りは、再び歩いて川治湯元駅まで戻り、普通列車で東京方面へ。上画像に写っている電車は野岩鉄道所有6050系の普通下今市行きです。この時の私は知らなかったのですが、この数か月後に東武や野岩鉄道などでダイヤ改正が行われ、私が乗車したこの野岩鉄道6050系はほぼ自社線内運用に限定され、東武線下今市へ乗り入れなくなっちゃったんですね。
コロナ禍を経て各地の鉄道は徐々に収縮・萎縮する傾向にあるため、鉄道旅行を趣味とする私は年々寂しい思いをしております。


川治1号・2号混合泉
40.5℃ pH7.8 560.0L/min 溶存物質0.399g/kg 成分総計0.413g/kg
単純温泉 Na+:94.8mg(81.10mval%), Ca++:16.5mg(16.14mval%),
Cl-:60.0mg(34.84mval%), SO4--:74.1mg(31.75mval%), HCO3-:89.8mg(30.31mval%),
H2SiO3:49.4mg, CO2:14.1mg,
(平成29年5月24日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
加水・循環・消毒なし

栃木県日光市川治温泉川治11
0288-78-0011
ホームページ

日帰り入浴:土曜日以外の毎日15:00~20:00(受付19:00まで)
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


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塩原・中塩原温泉 赤沢温泉旅館

2022年12月01日 | 栃木県

(2022年1月訪問)
前回記事で取り上げた塩原の古町温泉から上三依方面へ向かう路線バスに乗り、「木の葉化石館入口」バス停で下車。
県道266号線に入って橋を渡り、箒川の対岸へ歩きます。


橋を渡ってすぐのところに、目的地の大きな看板が立っていますので、それに従う形で川沿いの路地を川下へ向かって数百メートル歩いてゆくと・・・


路地のどん詰まりにある今回の目的地「赤沢温泉旅館」にたどり着きました。玄関の前では守衛のワンちゃんが侍っており、不審人物と思われたのか、私が玄関へ近づくと軽く威嚇されてしまったのですが、日頃培った社畜根性をここでもフルに駆使しながらワンちゃんたちに下卑た愛想を目いっぱい振りまくことで、どうにかこうにか館内へお邪魔することができました。
なお本館の左右には白い大きなドームが左右にひとつずつ設けられていたのですが、あれって何なのでしょう。


今回は日帰り入浴での利用でお邪魔しました。予め電話で利用したい旨を伝えていましたので、フロントではスムーズにご対応くださいました。なおフロントではアジア系の方が働いていらっしゃいました。昨今はコロナ禍で海外旅行に行けないため、アジア系の方とお話できるとちょっぴりですが嬉しくなります。
なお玄関前ではワンちゃんが元気に警備活動をしていましたが、ぬくもりある館内ではニャンコ2匹が自由に動き回っていました。こちらのお宿ではフリーダムな雰囲気が横溢しているようです。いい感じですね。


こちらのお宿には、山側と川側の両浴場、そして貸切風呂があり、今回は山側の浴場を利用させていただきました。脱衣室は綺麗に整備されており、室内には東南アジアっぽい小物が飾られていたのですが、これはスタッフさんのご趣味でしょうか。


大きな窓から外光が程よく差し込む内湯。その窓の下には浴槽が据えられ、湯の香を漂わせながら綺麗なお湯を湛えています。窓と反対側にある洗い場にはシャワーつきカランが5個並んでいます。


湯船は総木造。湯船に体を沈めたとき、肌から伝わる木の優しい感触が何とも言えません。湯口から注がれるお湯はかけ流しの自家源泉で、実に心地よい湯加減が保たれていました。なお浴槽内のステップも木造なのですが、木材ゆえに浮力が働いてしまうため、重石としてレールが置かれていました。鉄ちゃんの私としては、こんなところで鉄道関係グッズに出会えたことに嬉しくなり、その場で小躍りしてしまいました。


露天風呂は庭園風で、池と露天の浴槽が一体化しているかのような設えになっています。この露天風呂に入れば錦鯉の気持ちがちょっとわかるかもしれません。露天風呂の浴槽には途中に仕切りがあり、仕切りの奥はぬるく、手前は温かいという設定なのですが、冬は手前側もぬるめでした。源泉温度が44℃なので、冬季はどうしても温度が下がってしまうのですが、とはいえじっくり長湯できますので、周囲の景色を眺めながらのんびり長湯すれば、きっと体に芯まで温まるでしょう。


自家源泉のお湯は無色透明で清らかに澄み切っています。お湯を口にすると淡い塩味とほろ苦みが感じられたほか、分析表には硫黄が含まれていないのに、なぜか湯口から硫黄臭がほんのり香ってくるのが不思議です。湯船ではトロトロとしており、肌に乗るとツルスベ感のほかに少々引っ掛かりが混在しながら全身を包んでくれます。明らかに福渡や古町など塩原温泉郷に多い塩化土類泉とは毛色が違う、この源泉独特の特徴を有していますので、わざわざここへ来て湯あみする価値は大いにあるでしょう。しかも完全かけながしで長湯したくなる絶妙な湯加減ですから最高です。私はあまりの気持ち良さに湯船でつい微睡んでしまいました。おすすめ。


赤沢源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 43.9℃ pH6.6 85.6L/min(掘削自噴) 溶存物質1.841g/kg 成分総計1.884g/kg
Na+:402.1mg(63.40mval%), Ca++:180.8mg(32.70mval%),
Cl-:781.8mg(80.30mval%), SO4--:175.4mg(13.30mval%), HCO3-:104.1mg(6.21mval%),
H2SiO3:101.1mg, HBO2:62.1mg, CO2:43.9mg,
(2021年7月26日)

栃木県那須塩原市塩原1149
0287-46-5700
ホームページ

日帰り入浴可能(時間は直接施設へお問い合わせください)
700円
シャンプー類・ドライヤーあり。ロッカーなし。

私の好み:★★★
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塩原・古町温泉 ホテルおおるり

2022年11月23日 | 栃木県

(2022年1月訪問)
栃木県の塩原温泉郷は箒川に沿って複数の温泉地が点在していますが、その中でも最も旅館が多くてバスターミナルもある中心地のようなエリアが古町温泉です。以前にも拙ブログでは古町温泉のお風呂をいくつか紹介してまいりましたが、今回取り上げるのは当地の中でもリーズナブルに利用できることで有名な「ホテルおおるり」です。今回は日帰り入浴で利用させていただきました。一般的に旅館やホテルの日帰り入浴営業時間は、宿泊客利用の合間を活かすという事情があるため、日中の限られた時間になってしまうことが多いのですが、この「ホテルおおるり」はなんと早朝5時というかなり早い時間から深夜11時まで受付時間帯がかなり広いので、入浴だけでも利用しやすいかと思います。余談ですが、以前このホテルは「塩原リゾートホテル」だったらしく、建物の上部外壁にはかすかに旧名称が残っています。


玄関前には大きな貯湯タンクがあり、上からお湯をドボドボと落としていました。豊富な湯量をアピールしているのでしょうね。


ロビーはとても広く、フロントには日帰り入浴専用カウンターが設けられており、ここで料金500円を支払うと、小さなタオルが手渡されます。おおるりグループは確か各施設共通だったかと思いますが、500円の日帰り入浴料金でタオルが付いているとは驚きですね。なおフロントと同じフロアにはダンスホールや卓球場があり、昭和の温泉旅行の香りが強く漂っていました。


お風呂はロビーからひとつ下のフロアです。館内には複数のお風呂があり、館内だけで湯めぐりができちゃいます。今回の記事はその中でも私が利用したお風呂を紹介します。
館内のお風呂は全てかけ流しなんだそうです。期待しちゃいますよね。


・紅葉の湯

通路を進んだ先にある「紅葉の湯」。ウッディな脱衣室に入ると、屋内は結露や雪解けの水が天井からポタポタ垂れており、床がビショビショになっていました。建物がちょっとお疲れ気味なのかしら。


建物の躯体のみならず電気設備も心細く、ドライヤーを使うときは脱衣室内にあるヒーターを消さないと、ブレーカーが落ちてしまうそうです。冬季の利用時には注意を要しますね。


この「紅葉の湯」は内湯のみで、洗い場の床や浴槽内には鉄平石が採用されています。洗い場には混合水栓が8ヶ所並び、うちシャワー付きは6ヶ所です。窓の下にはホームベースのような形状をした浴槽が据え付けられ、10人以上は入れそうな容量を有しています。


上述のようにこのお風呂はかけ流しでお湯を供給していますが、訪問時は投入量が少なめでした。湯船のお湯は赤みを帯びた黄土色に笹濁っており、赤茶色の湯の花がたくさん浮遊していました。湯口から出てくるお湯を口に含んでみますと、淡い塩味と金気味、そして石灰のような味が感じられました。泉質名こそナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(含重曹-食塩泉)ですが、どちらかと言えば塩化土類泉のような特徴を有しているように思われます。


・露天風呂(大岩風呂)

「紅葉の湯」から上がって服に着替えて通路を戻り、今度は「露天風呂(大岩風呂)」へ向かいます。
この露天風呂(大岩風呂)は他の内湯のように体の汗や垢を洗い流すというより、景色を眺めながら湯あみを楽しむといった目的に特化しているように思われ、そのためか設備面はあまり充実していません。このため先に別の浴室で体を洗ってからこの露天風呂を利用するのが良いでしょう。


広い割には質素な更衣室を抜けると、目の前に大きな岩風呂がお出迎え。
手前側こそ建物の下に入り込んでいますが、多くの部分には屋根が掛かっておらず、これぞ"The 露天風呂"という感じで広々しており開放的です。


川の対岸に連なる山並みも綺麗ですね。


こちらお湯の投入量が多く、湯の花の量もそれほど多くないので、お湯が良好な状態を保っているように感じられました。しかも程よい湯加減なので長湯もでき、山の景色も相俟って、存分に湯あみを堪能できました。


ちなみにこの露天風呂の奥へ行ってしまうと、客室から丸見えになってしまうようです。
気になる方はご留意を。


・檜の湯

最後に「檜の湯」にも入ってみましょう。階段を下った先に暖簾がさがっており、脱衣室にはロッカーとドライヤーが用意されています。


上述の「露天風呂(大岩風呂)」が"The 露天風呂"ならば、この「檜の湯」は"The ホテルの大浴場"と表現して差し支えないような印象を受けました。館内に複数あるお風呂の中でも、この「檜の湯」はおそらくメイン浴場として位置づけられているでしょう。室内は明るくて広く、奥の方はサンルームのような造りになっています。男湯の場合、入って左手に大きな浴槽が、右手に洗い場が配置され、洗い場には9台もしくは10台シャワー付きカランが一列に並んでいます。


浴場名の檜とは浴槽縁に用いられている檜材のことを指しているのでしょう。なお浴槽内にはグリーンタフ(緑色凝灰岩)が貼られていました。「紅葉の湯」と同じく湯船の中には赤茶色の湯の花がたくさん浮遊していました。ただ、清掃直後だったためか塩素臭が室内に漂っており、湯口のお湯からもカルキ臭が感じられたのですが、これって気のせいだったのでしょうか。とはいえ不特定多数のお客さんが利用する空間ですので、消毒による衛生管理は致し方ないところです。


今回紹介した浴場の他、館内には貸切風呂もありますので、宿泊してゆっくり過ごせば、全てのお風呂を制覇できるかもしれません。これだけ複数のお風呂を楽しめるのに、ワンコイン(500円)で日帰り入浴できるのですから信じられません。しかも早朝から深夜まで利用可能ですから嬉しいですね。宿泊も日帰り入浴も、リーズナブルに利用できる有り難い施設かと思います。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 湧出温度及びpH不明
Na+:302.7mg(68.3mval%), Ca++72.8mg(18.86mval%),
Cl-:374.5mg(53.42mval%), HCO3-:470.2mg(38.97mval%),
H2SiO3:174.3mg, HBO2:36.9mg, CO2:39.5mg,
(平成10年9月1日)

栃木県那須塩原市塩原815-3
0287-32-5500
ホームページ

日帰り入浴5:00~23:00
500円(小タオル付)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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塩原・塩の湯温泉 明賀屋本館 その3(露天風呂)

2022年11月04日 | 栃木県
前回記事の続編です。


内湯で汗と垢を洗い流した後は、露天風呂へと向かいましょう。露天風呂は渓流の岸にあるため、一気に谷底へ下ってゆきます。
まずは一旦内湯から出て、B1階の廊下を奥へ進み、専用のドアを開けて表に出ます。


屋外へ出てスノコの上を歩いていると、地面に埋め込まれている蓋の下からお湯が溢れ出ていました。
これって源泉からの湧出なのか、あるいは中継枡からお湯がこぼれているだけなのか・・・。


スノコ敷きが終わると、谷底へ向かって一気に下ります。膝や腰が悪い方だと行き来がちょっと厳しそうなほどの急傾斜です。急なだけではなく、階段そのものも危なっかしい。古くて床板を踏み抜きそうなほど古い木造の階段は気を付けないと転落してしまいそうなほど急で、しかも薄暗く、初めて目にした時にはちょっとした恐怖感をおぼえました。なおこの階段の途中左手に有料の貸切風呂があります。


谷側の視界が開けたところで左手に古い木造建築を見下ろしますが、これは昔の農民用湯治棟なんだとか。この旧湯治棟の上を下る階段は88段あるそうですが、これはお百姓さんが湯治するのでお米の八十八にかけたのではないかとのこと。真偽のほどはさておき、引き続き歩みを進めることに不安をになるほど古くて暗い階段を下ってゆきます。


せせらぎが聞こえてくるとやがて簡素な脱衣所(男女別)に入り・・・


そこからさらに下りきると、半洞窟みたいな感じで黒ずんだ浴槽に行き着きます。これは単純泉である明賀屋源泉のお風呂です。


湯口には白い析出が付着していました。単純泉とはいえ、しっかり成分がお湯に溶けている証と言えましょう。


こちらは、温泉ガイドの書籍やネット上などでよく見られる川岸の露天風呂です。四角い浴槽が二つ並んでいますが、いずれも塩の湯温泉のお湯が注がれており、川の下流側は適温であるのに対し、上流側はややぬるいもののじっくり長湯できる湯加減でした。なおこの両浴槽は温泉成分によりコーティングされているのですが、剥げているところでは内部の材木が姿を見せていました。湯船の中では赤茶色い湯の花がたくさん浮遊しており、お湯自体も赤みと少々の緑色を帯びた黄土色に濁っています。
そういえば「とちぎ濁り湯の会」に所属する35宿のうち、34は硫黄の濁り湯ですが、ここ明賀屋だけは塩化土類泉の黄土色濁りなんですね。


更に上流側には岩盤を刳り抜いてつくったような洞窟的な岩風呂があり、こちらにも塩の湯源泉が注がれているのですが、河原の四角い湯船と違ってここはちょっと熱く、あまり長湯できないものの、しっかり温まりたい場合にはもってこいです。ただ、訪問時は塩化土類泉の成分付着によりモルタルの床がヌルヌルしており、滑って川にすぐ落ちてしまいそうな場所なので、少々怖かったです。なおこの岩風呂のお湯はエメラルドグリーンを帯びていました。


この塩の湯源泉(刈子の湯)は、泉質名こそ食塩泉ですが、事実上は典型的な塩化土類泉に含めて良いかと思われます。塩味がかなりはっきり感じられる他、金気味、出汁味、ほろ苦み、炭酸味など、箒川沿いに点在する塩原温泉郷のお湯らしい特徴が見られる塩化土類泉の濁り湯なのですが、塩原の他の温泉よりも濃く、塩味もはっきり表れています。もちろん浴槽廻りのあちこちに鱗状の析出が付着しています。湯中ではキシキシと引っかかる浴感ですが、肌をさすっていると食塩泉っぽいツルスベがひょっこり現れたりするので面白い湯あみが味わえます。この手の温泉は、ちょっと放置するだけですぐに温泉藻やヘドロが発生してドロドロになってしまいますので、お宿の方の管理はさぞご苦労なさっているのではないかとお察しします。しかもただ清掃するだけではなく、あの急な傾斜を登り下りしなければならないのですから、相当のご苦労ではないでしょうか。お宿の方に心から御礼申し上げます。

渓流のせせらぎを目の前にして、白い雪を目にしながら、あるいは頭に雪を積もらせながら、濁り湯に浸かって過ごすひと時。こんな幸せなことはありません。最高の湯あみを堪能させていただきました。


刈子の湯
ナトリウム-塩化物温泉 55.8℃ pH6.0 290L/min(掘削自噴) 溶存物質4.423g/kg 成分総計5.049g/kg
Na+:1179.3mg(73.97mval%), Ca++:254.7mg(18.33mval%), Fe++:3.1mg,
Cl-:2184.4mg(89.17mval%), SO4--:61.2mg, HCO3-:373.1mg(8.85mval%),
H2SiO3:128.4mg, HBO3:99.0mg, CO2:625.9mg,
(平成23年12月1日)

明賀屋源泉(1)
単純温泉 52℃ pH6.8 135L/min(自然湧出) 溶存物質0.6305g/kg 成分総計1.1045g/kg
Na+:64.0mg(53.38mval%), Ca++:15.8mg(15.12mval%),
HCO3-:286.8mg(91.24mval%),
H2SiO3:191mg, CO2:474.0mg,
(平成25年1月15日)

栃木県那須塩原市塩原353
0287-32-2831
ホームページ

日帰り入浴不可

私の好み:★★★



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塩原・塩の湯温泉 明賀屋本館 その2(内湯)

2022年10月31日 | 栃木県
前回記事の続編です。

さて続いては拙ブログのメインコンテンツであるお風呂について取り上げます。
内湯と露天風呂がありますが、まずは内湯から利用することにします。


傾斜地に沿って建てられているこちらのお宿は、館内設備の利用に際して上下方向の移動が多くなります。内湯は地下1階にありますので、客室があるフロアからエレベータで移動します。なお手前が男湯で奥が女湯。宿泊中に男女の暖簾替えはありませんでした。
脱衣所は飾り気が少なく、一部の照明カバーや壁紙に損傷が見られるものの、まずまずの広さがあって清掃も行き届いており、ロッカーやドライヤーの備え付けもあるので問題なく使用できます。


真冬の寒い日に利用しましたので、浴場内には湯気が立ち込めており、しかも昼間でも薄暗くて独特な雰囲気でした。浴室の右側に浴槽が2つ並び、左側には洗い場が配置され、シャワー付きカランが7つ並んでいます。


2つある浴槽のうち、手前側の小さな方にはご当地の塩の湯源泉が注がれています。いかにも塩原温泉らしい塩化土類泉の濁り湯ですが、塩原の他の温泉より濁り方が濃く、また塩味もはっきり表れているように感じられました。「うん、俺、いま塩原で湯あみしてるぞ」と当地を実感できるお湯です。


奥の大きな浴槽には単純泉の明賀屋源泉で満たされています。異なる2種類の温泉に入れるのは嬉しいですね。塩の湯源泉のような赤っぽい濁りは無く、無色透明のお湯でありながら、浴槽内はマンガンの影響で黒く染まっており、浴槽のお湯も幾分薄墨色を帯びているように見えます。またオーバーフローが流れる洗い場の床は温泉成分の付着により凸凹しています。この明賀屋源泉はその名の通り自家源泉であり、毎分135リットルが自然湧出しているんだそうです。湯口のお湯からは薄いアブラ臭が嗅ぎ取れるほか、口に含むとほろ苦みがあり、また炭酸味もはっきりしていて(遊離CO2が比較的多い)、単純泉という泉質名でありながら重曹泉的な性質を有しています。単純泉という名称に異議を唱えたくなるほど個性的なお湯です。

さて、次回記事ではお宿ご自慢の露天風呂へと参りましょう。

次回記事につづく。
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