温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

廃墟になってしまった大穴ダム付近の名も無き秘湯

2011年10月31日 | 青森県
今回はこのブログでは珍しく、撮って出しの記事です。昨日(2011年10月30日)訪問した箇所のリポートです。

温泉巡りをしていると、しばしば浴場や旅館の閉鎖・廃止という憂き目に遭遇します。特に近年は温泉旅館が相次いで廃業しており、東日本大震災がその流れを加速させてしまいました。その一方、諸々の事情で自然と姿を消してしまう温泉もあり、事前に情報を得ないで現地に行って唖然とすることもよくあります。
昨日(2011年10月30日)所用で青森県を訪れていたのですが、午後から時間が空いたので、黒石市にある無名の某温泉に行ってみることにしました。場所は以前から知っていたのですが、なぜか訪れる機会を逸してしまい、いままでその温泉は未湯だったのです。


国道102号線を黒石市街から十和田湖方面へ向かって走り、「道の駅・虹の湖」手前に架かる二庄内橋の直前で左折し、二庄内ダムに向かって砂利道をしばらく進んでゆきます。しばらく走って旧大穴ダム跡に近づくと、右手に簡素な橋が分岐しており、その先には2軒の茅屋が建っています。


2軒のうち奥の建物を目指します。事前情報によれば、ここは人が手入れしている気配があったのですが、昨日訪問してみると、そんな雰囲気は全くなく、周囲はこの夏に茂った後に枯れたであろう草が一面を覆っていました。なんだか嫌な予感がします…


しばらく人が出入りしたような形跡はありません。かなりの期間、放置されたままのようです。扉が開いたので中へ入ってみることに。

 
「感謝の心有ればこそ三百円謝金一人御入り下さい」という張り紙はそのまま残っていましたが、料金を入れる筒は撤去されています。更に進んでゆくと…


あぁあ…。
こりゃひどい。
浴槽は空っぽで荒れ放題。屋根が抜けています。雪でつぶれちゃったのかな?
窓ガラスも割れちゃって、落ち葉も泥も入り放題。
浴室入口付近でお湯がチョロチョロ出ていましたが、浴槽を貯めるほどの量はなく、とても入浴できる状況ではありませんでした。以前ここでは無色透明な温泉を入浴することができ、温泉ファンの間では密かに知られた存在でした。当時は管理なさっている方もいらっしゃったようですが、この惨状を見る限り、現在は完全に維持管理が放棄されており、廃墟と化して朽ち果てるのを待っているかのようです。 もうここでの入浴は未来永劫できないのでしょうね。
もう少し早く来ておけばよかった…。
温泉めぐりは、行けるときに行っておかないと後悔します。「また次回でいいや」というような後回しは禁物です。
コメント (10)
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長寿の湯

2011年10月30日 | 秋田県

前回取り上げた「湯の岱温泉湯治場」から東へ500メートルほど離れたところにある、国道285号沿いの比較的規模の大きな温泉入浴施設です。周囲には何もない山林を切り拓いて開発されたような施設で、広い敷地内には比較的新しい平屋の本棟が建てられ、建物前の駐車場スペースも十分に確保されており、そして本棟に並んで老人ホームも併設されています。
屋根上には「北投石と天然温泉」と書かれていますが、どうやらこの温泉では同じ県内の玉川温泉でおなじみの北投石を使った施設が「売り」のようです。どんなものかは中に入ってのお楽しみ。

 
外観は白い壁と新建材の黒屋根が印象的ですが、内装はとてもウッディな造りとなっており、木材ならではのぬくもりが伝わってきます。ロビーではお土産物を売ったり、はたまた休憩用のお座敷が用意されていたりと、いかにも今時の温泉施設らしい雰囲気です。

 
ロビーから左側の通路を進んで浴室へ。
脱衣所も木材メインの暖かな空間構成。広々していてストレスをおぼえることはなく、使い勝手良好です。

 
浴室も大きくて綺麗。洗い場にはシャワー付き混合栓が9基設けられています。
浴槽もガラス窓に面した主浴槽の他、ジェットバス・バイブラバス、そしてサウナ・水風呂が据えられており、万人受けしそうなラインナップです。主浴槽のお湯は湯口に置かれた「北投石」を通って浴槽へと投入されており、屋根上に自慢げに書かれていた「北投石」とはこのことなんでしょうが、果たして効果のほどはいかほどか…。源泉投入量は多く、浴槽から静かながらしっかりとオーバーフローしています。湯加減はちょうど良い具合。加温などは一切していないそうです。
お湯はごく薄い黄色透明ですが、澄み切ってはおらず、僅かに濁って見えます。柔らかなタマゴ臭+弱金気臭+石膏臭を嗅ぎ取ることができ、石膏味+弱金気味を帯びていました(匂いでは確認できたタマゴ感ですが、何故か味では確認できませんでした)。硫酸塩泉的な引っかかりのある浴感の中にスベスベが混ざっている複雑な感触です。湯口のまわりには硫酸塩の析出がビッシリ付着していました。
お湯の質としてはご近所の「湯の岱温泉湯治場」にちょっと似ていますが、似て非なる明らかな別物です。


バイブラバス・ジェットバスは主浴槽に並んで配置されています。こちらのお湯も源泉使用。


露天風呂は岩風呂で屋根が被せられており、浴槽の大きさは10人サイズ。源泉は浴槽の中心の底部から供給され、そのお湯の勢いで湯面はこんもり盛り上がっており、内湯同様こちらもふんだんにオーバーフローしています。オーバーフローの流路は析出で赤く染まっているので目立ちます。お湯の知覚は、匂い・味とも内湯より若干強いように思われました。湯量豊富の露天風呂は気持ちいいですね。でも縁の岩の隙間の数か所からボコボコと人工的な泡が出ているのがちょっと鬱陶しいかも(送気用パイプも見えてます)。

日曜午前11時頃で常時6~10人が入れ替わっているような、なかなかの客入りです。設備がしっかりしており、メンテナンスも良く、お湯も新鮮で豊富ですから、お客さんの人気を集めるのも納得できます。また大館能代空港からも近いロケーションですから、旅行途中のみならず、飛行機に搭乗する前や到着後に汗を流すため訪れるのもいいかもしれません。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉
43.9℃ pH7.0 63L/min

JR奥羽本線および秋田内陸縦貫鉄道・鷹ノ巣駅より秋北バスの「長寿の湯」行で終点下車(約30分・一日2往復のみ)
秋田県北秋田市小森字向長渡12-1  地図
0186-66-2526

8:00~21:00 毎週木曜定休 
500円
(2010年春頃より定休日などが変更されています)
ロッカー・シャンプー類あり、ドライヤー無し(盗難が相次いだため撤去したそうです)

私の好み:★★
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湯の岱温泉 湯の岱温泉湯治場

2011年10月29日 | 秋田県
 
秋田県の秋田市界隈と大館市を結ぶ国道285号線は国道7号線の南側をほぼ平行に走っており、八郎潟から鷹ノ巣までの区間は両地点を短絡しているために山間部の道路にしては交通量が多く、大館能代空港のアクセス道路としての役割も果たしていますが、鷹ノ巣以東は完全に国道7号の裏往還に成り下がり、県道に降格しても不思議ではないほど寂しい沿線風景が続きます。この寂しい区間のちょうど真ん中、北秋田市と大館市の境界付近にポツンと湧いているのが湯の岱温泉です。湯の岱温泉には公営の「湯の岱温泉湯治場」という共同浴場があるのですが、湯治場という風情溢れる名前に強い興味を抱いたので、小雨がそぼ降る某日、ちょっと行ってみることにしました。地味で分かりにくい施設を想像していたのですが、湯屋こそ地味なものの、国道沿いには大きな看板が立っており、沿道には他に目立つ建物もないため、迷うことなく辿りつけました。


村落の公民館や集会場のような、古くて小さな建物に入り、受付のおばあちゃんにお金を直接支払います。「湯治場」という名称ですが、実際には入浴と休憩のみの営業のようです。男湯は玄関の正面右手にあり、さらにその右奥には有料の休憩室が設けられています。
脱衣所は至ってシンプルな造り。扇風機や灯油ストーブが用意されているのはありがたいですね。


 
お風呂は男女別の内湯がひとつずつ。タイル貼りの浴室の真ん中には、まんまるい湯船が据えられており、そのサイズは3~4人サイズ。塩ビの湯口から加温された源泉が投入され、手前側の切欠から排湯してゆき、人が湯船に入ると、ザバーっとお湯が勢いよく溢れ出ます。加温されているのに、ちゃんと放流式の湯使いを維持しているのは立派ですね。
洗い場にはシャワー付き混合栓が6基設けられています。


お湯は薄い黄緑色(黄色が強い)を帯びて濁っていますが、それほど強い濁りではなく、底ははっきり見えます。口に含むと石膏味と弱芒硝味を確認できましたが、匂いは弱めの芒硝臭以外はあまり感じられず、塩素消毒されているそうですが、それらしき臭いも気になりませんでした。硫酸塩泉らしいキシキシと引っかかる浴感です。

日曜午前10時過ぎで、先客3人がいらっしゃいましたが、その後は独占状態となりました。見かけたお客さんは皆お年寄りばかりで、一日の合計客数もそんなに多くなさそうです。施設の古さや客層・客数は斜陽という言葉がピッタリ。近所には「長寿の湯」という使い勝手の良い入浴施設もあり、そちらを利用する人の方が多いのでしょうから、こちらは早々にも休業しちゃうのではないかと、勘繰りたくなってしまいたくなりました。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 31.6℃ pH7.9 溶存物質1219.4mg/kg 成分総計1220.5mg/kg
加温・塩素系消毒剤投入あり、循環・加水なし

秋田県北秋田市小森湯ノ岱63  地図
0186-66-2941

10:00~21:00 第2・4月曜定休
300円
ロッカー・ドライヤーあり、他備品類なし

私の好み:★★
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津賀野温泉 花咲温泉

2011年10月28日 | 青森県

弘前市内にある、いかにも青森県らしい温泉銭湯です。国道7号バイパスと県道41号の交差点角というわかりやすい場所に立地しており、敷地内には仕出し弁当屋さんも併設されています。最近改築したらしく、建物裏側の駐車場にも出入口が増設されていました。

 
綺麗な館内ですが、民間施設らしいどこかB級的な雰囲気も否めません。青森県の温泉銭湯って、どこも似たような空気が漂っているような気がします。広々しているので使い勝手は良好です。


脱衣所から浴室へ向かうガラスの引き戸の脇に掲示された誇らしげな案内書き。なお、夏季は暑いために加水することがあるとのこと。青森県の温泉銭湯は掛け流しが当たり前ですから、神奈川県民の私としては本当に羨ましい限りです。


 
浴室内も広々していますが、訪問時はちょっと熱がこもっており、ムワッとした空気に包まれました。浴室内にはJ字のカーブを緩やかにしたような大きな主浴槽が据えられ、その一部は泡風呂装置が設置されています。洗い場にはカランが26基(中央の島に8基、ガラス窓の下に12基、入口の並びに6基)。洗い場の奥にはサウナと水風呂があり、他のお風呂と同様、ここでもサウナが人気を集めていました。
また主浴槽の湯口傍から数段上がったところにはお湯の滑り台のようなものが設けられているのですが、これは一体どのように使うのでしょうか。普通に滑って楽しむものなのかしら。


お湯は岩のオブジェから出ています。薄い黄色を帯びた透明で、海水のようにしょっぱく、そして苦汁の味と出汁味も混ざっています。はっきりとしたモールの良い匂いが香っており、この匂いが示す通り泉質もモール泉に近いのでしょうか、ツルツルスベスベの非常に気持ちいい浴感が得られ、お湯に入っていると思わず肌をさすりたくなるほどでした。化石海水系でモール臭も有しているという特徴は、東京湾岸の温泉にも似ていますね。弘前の市街地周辺ではこの手のお湯によく遭遇します。
訪問時は加水されているようでしたが、それでも湯加減は若干熱めでした。でも浴槽からオーバーフローしているような場所は見当たらず、浴槽のお湯はどこから排湯されているのか、今回は確認できませんでした。


洗い場のカランは青森県の銭湯ではお馴染の押しバネ式水栓、そして壁直付けの固定式シャワーです。合計で26基もあるので、多客時でも洗い場を待つようなことはないでしょう。青森県の温泉銭湯って、たとえ新しい施設であっても、あえてこの古いタイプの水栓を設置するケースが多いのですが、地元の方にとっては混合水栓よりもこちらの方が使い慣れているのでしょうか。

夕方に訪問したためか、お客さんの数は多く、常に10人前後が出入りしていました。立地条件が良く、お風呂としての使い勝手も良好で、サウナも併設され、お湯の質も上質ですから、お客さんが集まってくるのは至極当然でしょう。温泉風情を楽しむというよりは、日常生活における津軽人と温泉との親密度会いを認識できるお風呂というべき施設かもしれません。


ナトリウム-塩化物温泉 48.8℃ pH7.64 110L/min(動力揚湯) 溶存物質5.869g/kg 成分総計5.880g/kg
Na:2007mg(95.41mval%), Cl:3021mg(91.18mval%), HCO3:480.9mg(8.43mval%)

青森県弘前市津賀野字浅田987-1  地図
0172-35-5550

6:00~23:00
350円
ロッカーあり(100円リターン式)・ドライヤー有料(10円/1min)・シャンプー類などは販売

私の好み:★★
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嶽温泉 小島旅館

2011年10月27日 | 青森県

嶽温泉街に建ち並ぶ旅館のひとつです。マタギ飯で有名な「山のホテル」の隣に位置し、嶽の旅館の中でもかなり目立つ部類かと思います。立ち寄り入浴でお邪魔しました。


玄関から階段で2階へ上がり、廊下を進んだ奥にある浴室へ。

 
脱衣所も浴室も和風でウッディな雰囲気。特に浴室は壁面や浴槽が青森県特産のヒバ造りです。
木の浴槽は大小の二つに分割されており、大の方がやや熱めのようでしたが、両者にあまり大差はなかったかも。いずれにも湯口の樋が突き出ており、白濁したお委が注がれています。湯口は硫黄がたいりょうに付着して真っ白に染まり、お湯がオーバーフローしてゆく流路も白くなっていました。もちろん湯使いは掛け流しで、浴槽からふんだんに溢れ出ています。

お湯はかなり強く白濁しており、透明度は15cm程度。浴室に入るだけで硫黄の香りが鼻孔を突き、湯面で嗅いでみると噴気孔的な硫化水素臭の他にタマゴのような臭いも混ざって感じられました。口に含むとかなり強い酸味+塩味+苦味が口腔に残ります。洗い場のカラン(シャワー付き混合栓が4基)は金属部分が硫化して真っ黒です。
でも他地域の白濁した酸性泉と比べると、刺激は弱く、肌への辺りも優しいような感じを受けました。ツルツルスベスベの非常に気持ち良い浴感です。

いまいちよくわからないのが成分の内容でして、分析表を見るとHSイオン・S2O3イオン・遊離H2S、いずれも0.0mgであり、ほとんど硫黄が検出されていないのです。泉質名に「含硫黄」という文字が無いのはこれが原因かと思われますが、匂い・味・白濁、いずれも硫黄らしい特徴を有しているので、どうして分析時には硫黄が析出されなかったのかが不思議でなりません。

ま、お湯を楽しむだけなら分析表の内容なんてどうでもいいのですから、この私の疑問は半可通の戯言として聞き流してください。こちらのお宿を含め、私は嶽温泉では今まで何度か立ち寄り入浴しているのですが、宿泊したことがなく、この小島旅館さんはコストパフォーマンスが良さそうなので、いずれは宿泊してみたいなぁと思っています。


嶽温泉旅館組合4・5号集湯槽、6~8号集湯槽
酸性-カルシウム-塩化物泉 46.9℃ pJ2.05 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質2.283g/kg 成分総計2.959g/kg
H:9.0mg(23.39mval%), Na:137.6mg(15.67mval%), Ca:258.7mg(33.77mval%), Cl:1061mg(77.34mval&), SO4:361.4mg(19.43mval%), 遊離CO2:676.2mg

青森県弘前市大字常盤野字湯の沢20  地図
0172-83-2130
ホームページ

立ち寄り入浴10:00~16:00
350円
シャンプー類あり、他備品類なし

私の好み:★★★
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