前回記事のニセコ湯本から山を下ってニセコ昆布温泉へとやってまいりました。ニセコ昆布温泉といえば、私の好きな「鯉川温泉旅館」が2018年から休業してしまい、個人的にはコアが抜けてしまったような気がしてとても寂しいのですが、とはいえ当地には他にも温泉旅館がまだまだ多く営業しており、日帰り入浴を受け付けている施設もありますから、今回はその中から「ニセコグランドホテル」にお邪魔して、立ち寄り入浴を楽しませていただくことにしました。
道道66号線沿いに位置し、その道を挟んだ向かい側ではニセコ名水甘露水が滾々と湧いています。
外観はいかにも昭和の観光ホテルといった感があり、館内ももちろんのこと、フロントスタッフの接客からも昭和な雰囲気がたっぷり伝わってきます。このフロントで日帰り入浴したい旨を申し出て湯銭を支払い、奥へと進みます。
浴場入口の手前には、湯使いを大きく書き記した電光掲示により、お風呂のお湯が掛け流しであることをアピールしていました。でも、後述するように加水と消毒が実施されていますから、完全な掛け流しと表現することに対しては、異論がある方もいらっしゃるかもしれません。
脱衣室は奥に長いウナギの寝床みたいな造りです。男湯の場合は右側に籠が納められた棚がズラリと並ぶ一方で、左側には洗面台が4~5基ほど並び、団体客など大人数にも対応できるキャパを擁しているようでした。昭和の観光スタイルは一般的に団体が多かったわけですから、その当時の名残と言えるのかもしれませんね。でも綺麗に整備されており、気持ち良く使えました。
さて、こちらの浴場では写真厳禁とのローカルルールがございますので、それに従い、ここから先は公式サイトの画像をお借りしながら話を進めてまいります(外国語表記が多いので、おそらく外国人観光客対策なのでしょう。また露天風呂が混浴であるという事情も影響しているのかもしれません)。
公式サイトの画像が小さいので、ここでご紹介する写真も小さいままです。ご了承ください。
脱衣室のドアを開けて右に折れるL字型の通路を進んだ先に、大きくて広い内湯があります。
上から見ると大きな扇形を描いていると思しきこの浴場の建物は、窓に向かって徐々に下っている傾斜地に設けられており、低い位置かつ円弧の部分には窓が広く採られ、浴室内はとても明るくて快適です。
浴場内の洗い場は上下に分かれて配置されており、高いところ(上段)に5基、低いところ(下段)に2基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。
こちらのお風呂では2つの源泉を有しており、源泉別に浴槽が分かれています。大きな浴槽には「鉄鉱泉」と書かれた1号井のお湯が張られています。冒頭で触れた鯉川温泉旅館(休業中)のお湯を思い起こさせてくれる重炭酸土類泉系のお湯で、黄土色とモスグリーンを混ぜたような濁り方をしており、塩味に出汁味、金気味、そしてしっかりとした炭酸味が感じられます。またお湯の濁りが強く、湯中では同色の粒子も無数に浮遊しています。湯口には鱗状の模様が(析出)ビッシリ且つコンモリこびりついており、お湯の濃さ(カルシウムや重曹の多さ)をビジュアル的に体感できます。
一方、小さな浴槽に注がれているのは「ナトリウム泉」と書かれた3号井のお湯。湧出量が1号井の3分の1しかないため、それに応じて浴槽も小さいのですが、オーバーフローする量が多く、小浴槽から露天出入口まで段々状に下がっている箇所を流下しながら、タイルが飛び石状に置かれている出入口のまわりでちょっとした湯溜まりを形成していました。3号井のお湯は黄土色に笹濁り、ほんのり金気のある淡い塩味が感じられます。
なおこの3号井(小浴槽)の湯口にも鱗状の析出が形成されていますが、私が見た感じでは大きな浴槽である「鉄鉱泉」の湯口の方が厚さや模様の多さ、そして太さが勝っていました。また両源泉のお湯ともに、湯船へ入った時にはキシキシとした浴感が得られ、しっとりして肌にまとわりつく感覚に包まれるのですが、どちらかと言えば大きな浴槽の1号井の方がその傾向がより強かったように感じられました。
内湯のドアを開けると、更に低い位置にまるで池のように大きな露天風呂が濁り湯を湛えています。その露天風呂へ下りてゆく階段には、足元を温めるためなのか、温泉のお湯が流されており、階段の表面を流下してゆく温泉によって、階段が黄土色に染まり、部分的に黒く染まり、しかも鱗状の析出もびっしりとこびりついていました。
お宿に庭に設えられた大きな岩風呂の露天は男女混浴です。とはいえ、女湯側には囲いにより目幕視された女性専用ゾーンがありますから、女性客は男性を気にせず入浴することができますが、男湯側の露天は混浴のみですから、男性諸氏がこちらの露天風呂に入る際は、紳士としてのエチケットを守りましょうね。余計な心配を回避したい方は湯浴み着のレンタルがありますから(男女とも)、それを利用すれば良いでしょう。
大きな露天ですから、外気に熱を奪われることにより温度ムラが発生してしまうため、私が確認した限りでは少なくとも2つ(もしくはそれ以上)の湯口が設けられ、それぞれから2つの源泉を混合させたお湯が投入されていました。露天は2つの源泉を混ぜ且つ加水もしているのではないかと思われる。明るい黄土色とモスグリーンを混ぜたような色に濁る。適温。大量にお湯が注がれている。小さな露天は大きな露天の湯尻から流下するお湯を受けているためぬるい。お湯も鈍り気味。
大きな1つの池に見える露天風呂は、実際には大小1つずつの岩風呂から成り立っており、大きな方は上から見ると凹字のような形状をしています。私個人としては他人様の存在を気にせず入浴したかったので、「奥の方に行けば視線は気にならないかも」と考えて奥へ進んだのですが、奥へ向かうに従い湯加減がぬるくなり、しかも場所によっては高い位置にある内湯から俯瞰できてしまうので、結局は湯加減を優先して、適温が維持されている手前の方へ戻ってしまいました。
なお奥の方には小さい浴槽があるのですが、こちらは大きな露天の湯尻から流下するお湯を受けているためぬるく、しかもお湯自体も鈍り気味でしたので、私は入りませんでした。
いかにも北海道らしい大きな露天で、ニセコ昆布らしい濁り湯に入れ、しかも内湯では2つの源泉を楽しめるという、1回でいろんな楽しみ方ができる入り応えたっぷりなお風呂でした。
1号井
ナトリウム-塩化物温泉 48.9℃ pH6.0 330L/min(動力揚湯) 溶存物質2.694g/kg 成分総計3.062g/kg
Na+:563.2mg(69.53mval%), Mg++:51.4mg(12.00mval%), Ca++:80.7mg(11.43mval%), Fe++:3.3mg,
Cl-:1001mg(76.75mval%), SO4--:134.5mg(7.61mval%), HCO3-:348.8mg(15.54mval%),
H2SiO3:370.0mg, HBO2:49.1mg, CO2:367.9mg,
(平成21年1月15日)
加水・塩素消毒あり
3号井
ナトリウム-塩化物・炭酸水素温泉 67.2℃ pH6.4 190L/min(動力揚湯) 溶存物質3.755g/kg 成分総計4.065g/kg
Na+:684.3mg(61.08mval%), Mg++:105.0mg(17.73mval%), Ca++:133.0mg(13.62mval%), Fe++:1.8mg,
Cl-:1162mg(68.74mval%), HS-:0.1mg, SO4--:156.0mg(6.81mval%), HCO3-:708.4mg(24.35mval%),
H2SiO3:599.4mg, HBO2:61.3mg, CO2:309.9mg,
(平成21年1月15日)
加水・塩素消毒あり
北海道虻田郡ニセコ町ニセコ412
0136-58-2121
ホームページ
日帰り入浴11:30~21:00
900円
貴重品用ロッカー(フロント斜め前)・シャンプー類・ドライヤーあり
有料の湯浴み着あり
私の好み:★★+0.5