温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台湾車でドライブしてみよう LUXGEN U5を借りてみました

2020年06月25日 | 台湾
拙ブログでは以前、台湾におけるレンタカーの利用方法について記事にしたところ(その記事はこちら)、非常に多くの反響があり、有難いことに公開から7年経った今でもアクセス数が多い状態が続いています。そして私がその記事をアップして以降は、台湾のレンタカーを利用した旅行記や、別の切り口で紹介した台湾レンタカー利用情報などが、ネット上で多く見られるようになりました。台湾における日本人のレンタカー利用者数を増加させたのは拙ブログであると自負しております。もちろん私も毎年台湾でレンタカーを利用し、効率良く旅を満喫しております。

しかしながら、こんなことを偉そうに申し上げたところで、私はいつもトヨタのYARIS(旧Vitz)か同等クラス、つまり小さくて安いクラスの車しか借りていないため、台湾のレンタカーにおける車種については、あまり知識や経験がありません。あぁお恥ずかしい…。
そんな中、前回及び前々回記事で取り上げた高雄市の復興温泉へのアタックを計画した際、車で向かう道の一部が荒れているらしい、との情報を得たので、これを機にいつものYARISから脱却し、車高が高いSUVを借りてみることにしたのです。どうせ借りるのならば、台湾で圧倒的なシェアを占める日本車(約7割)ではつまらない。台湾には台湾オリジナルの「LUXGEN(裕隆)」というメーカーがありますから、台湾車で台湾をドライブしてみたくなりました。

いざ現地レンタカー業者に問い合わせてみると、上述のように日本車のシェアが圧倒的であるという状況ゆえ、なかなかLUXGENに巡り会えません。あったとしても台数が少なかったり、金額が中途半端だったりして、つい予約を躊躇してしまいます。そんな中で今回お世話になったのが台湾の大手レンタカー業者「格上租車」。私がこちらのお世話になるのは3回目で、前2回の利用時には、安定したサービスと早いレスポンスのおかげで安心して予約やピックアップができました。
さてこの格上租車の親会社は裕隆汽車。つまり私が乗りたいLUXGENを生産しているメーカーそのものです。つまり、台湾でLUXGENの車を借りたければ、まず格上租車に問い合わせるのが確実なんですね。ということで、格上租車の公式サイトから予約を済ませ、復興温泉へのアタック当日に営業所へと向かいました。


今回車をピックアップしたのは高鉄(台湾新幹線)左営駅の駅前にある格上租車の高雄営業所。
高鉄駅前という立地なので、てっきり外国人観光客に慣れているのかと思いきや、私を担当してくれたスタッフは華語オンリー。片言の華語しかわからない私はちょっと困ってしまいましたが、でも何とか借りることができました(前2回の時、スタッフは英語が話せたのですが…)。


今回借りたLUXGENのSUV"U5"。
なかなか精悍でスタイリッシュな外観ですね。フロントグリルや切れ長のライトなど、プジョーのSUVにちょっと似ているような気もしますが、ツートンカラーのボディーや独特な形状のルーフレールなど、U5ならではの個性もしっかり光っています。


こちらは後姿。ヨーロッパ車と中国車を足して2で割ったような雰囲気と表現したらよいのでしょうか。いずれにせよ、日本車にはあまり見られないデザインであり、もし日本で走らせたら注目を集めること必至でしょう。ご覧のように、ハッチバックが上の方へ出っ張っている形状をしているのですが、その分容量も大きく、ゴルフのキャディーバックなども心配なく積載できるでしょう。


運転席。革のステアリングの真ん中で、LUXGEN(裕隆)のロゴが燦然と輝いています。速度計はちょっぴり野暮ったいデジタルメーターですが、その他は当たり障りの無いデザインと申しましょうか、特に操作性や視認性で気になるところはなく、初めて運転しても、さほど戸惑うことなく運転・操作ができるかと思います。なおクルーズ機能が搭載されていますので、高速道路などでの定速運転が可能です。

このU5で目を引くのが、中央に設置された12インチのタッチパネル「THINK+」。台湾のスマホメーカーであるHTCと共同開発した情報端末であり、オーディオ、電話・通信のほか、タイヤ状態のモニタリング、走行中にも機能するバックモニターなどをこの画面で操作します。また、縦長であることから容易に想像できるように、スマホとの接続が可能となっており、「手機模式」にすれば車のタッチパネルでスマホを操作できるのです。いかにもIT先進国らしい機能ですね。
なお、この「THINK+」ではスマホの情報をそのまま取り入れられるため、日本の車のようなカーナビ機能は搭載されておらず、地図が見たければ、スマホでGoogle Mapなどを起動させ、この大型タッチパネルに映し出すことになります。




またこの大型タッチパネルが果たす大きな機能のひとつが、アラウンドビューモニター。
日産が2007年に世界で初めて商品化に成功した運転支援機能であり、具体的には、車に搭載された複数のカメラにより、自車を真上から見下ろしたような映像をモニターに映し出し(疑似表示し)、これにより自車の全方向の死角をなくして、駐車時や後進時などの運転操作を楽にする素晴らしい機能です。

さて、この有難い機能は今や日産車を中心にして各メーカーも相次いで採用しているのですが、なぜLUXGEN(裕隆)がこの機能を採用しているのか、いや採用できているのか…。それはLUXGENが長年にわたって日産の技術提携を結んでおり、開発には日産の影響が非常に強いからではないかと想像します。実際、今でもLUXGENの車のうちいくつかは日産GT-Rの生みの親である元日産・水野氏が携わっていますし、そもそもLUXGENのディーラーは必ずと言ってよいほど日産の隣に店を構えています。要するにLUXGENってほとんど日産の台湾現地生産版みたいなものですが、日産の技術を活かしつつ、台湾らしさや独自性を打ち出すことにより、その結果としてなかなか面白い車に仕上がっているのです。

実際に運転してみても、いわゆる車の味付けは日産車に近く、「あれ、俺はいま日本の車を運転しているのかな」と勘違いしそうになるほど。とはいえ上述のように独自性もしっかり発揮されています。程々に重くて安定性がありながらいざ操作すると意のままに軽快な反応を見せてくれるハンドリング、多少無理してもしっかり守ってくれる安定した車体剛性、1.6Lながらパワフルに加速してくれるエンジンなどなど、実にスポーティな車なのです。もし日本で販売してくれるならば、買ってみたいと思うほど、なかなか素晴らしい乗り心地を提供してくれました。

台湾へ旅に出かけたら、台湾らしいグルメをいただき、台湾らしい景色を眺め、台湾らしい人情や優しさに触れることに楽しみや充実感を覚えますが、COVID-19による制限が解除され、従来のように自由に旅ができるようになったら、次回の台湾旅行は是非台湾らしい車を運転してみてください。
コメント (3)
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高雄市桃源区 復興温泉 その2(入浴・源泉)

2020年06月17日 | 台湾
前回記事の続編です。
現地までのアクセスについては前回記事をご覧ください。


駐車場から河原をひたすら歩いて遡ること1時間半。台湾のアウトドア愛好家から人気を博している野湯「復興温泉」に辿りつきました。上画像をご覧になると、グレーに濁っている水たまりに人が入っていますが、ここが温泉の入浴箇所です。湯溜まりに人が入ると底の泥が舞い上がってしまうため、どうしても入浴できる湯溜まりは濁ってしまいます。また川面とほぼ同位置にあるため、ちょっと増水するだけですぐに川に飲み込まれてしまいます。前回記事でこちらへの訪問は「渇水期におすすめ」と申し上げましたが、そもそも渇水期じゃないと入れないのです。


湯溜まりの上の斜面には岩盤が剥き出しになって広がっており、その裂け目から熱い温泉が噴き上がっています。そして岩の表面を流れて川へと落ちています。


こちらの裂け目からも熱湯がフツフツと噴出していますね。湧出は複数箇所で見られました。


自噴しているお湯は非常に熱く・・・


持参した温度計で計測したところ、89.7℃と表示されました。素手で触ったら大火傷ですね!


熱い温泉を見かけたら食材をボイルしたくなっちゃうのが人間の性というもの。訪問時にも、ここでテントを張っていた方々がトウモロコシ(玉米)や卵などをボイルしていました。なお画像をご覧になればお気づきになるかもしれませんが、湧出時の温泉は無色透明です。
仄かなイオウ臭を放ちながら湧出する源泉のお湯をちょっと飲んでみると、タマゴ風味とともにマイルドながらはっきりとした塩味が感じられました。


自噴したアツアツのお湯が川面へ落ち、川水と適度に混じりあうことで入浴に適した温度になっているのです。




私は訪れた時には複数の湯溜まりがあり、それぞれ大きさや温度が異なっていたのですが、その中でも最も大きな湯溜まりは43.1℃でした。一般的な湯船よりもちょっと熱めですが、十分入れる湯加減ですので・・・


いざ入浴!
人によっては濁りが気になるかもしれませんが、決して汚いものではありませんので衛生的には問題なし(個人的見解ですが)。浅いのでしっかり寝そべらないと肩まで浸かれませんが、それでも大自然に抱かれながらのワイルドな湯浴みは最高に気持ち良く、まさに極楽気分です。
素晴らしいのは大自然の中の開放的なロケーションだけではありません。お湯だって良質なのです。湯溜まりに体を沈めてみると、まるでウナギ湯のような強いヌルヌル且つスベスベ感に包まれるのです。このヌルヌル感には正直驚きました。これぞ天然のローションですね。


結構人が多いでしょ。ひたすら1時間半歩けば辿り着けちゃうので、老若男女を問わず人気なのです。とはいえ、流石にここまで来る日本人はいないらしく、周囲の人から「どこから来たのか」と尋ねられた私が「日本から」と伝えると、皆さん一様に驚かれ、お弁当や飲み物など、いろんなものを分けてくださいました。台湾の方は本当に優しい方が多いので感謝感謝です。
お湯で体が逆上せかかったら、隣の川に入れば一気にクールダウン。湯浴みと川浴びの両方を楽しめるのですから、楽しいことこの上ありません。


いつまでものんびりしていたかったのですが、私が訪ねたのは冬の某日。日没が早いので、明るいうちに帰ることにしました。帰路もほぼ同じ所要時間で駐車場へ戻ってこられたのですが、自分の車(レンタカー)が視界に入ったころには、既に日が傾きはじめてしまいました。もしこちらを訪ねる機会があれば、朝から時間をたっぷり確保して行動すると、のんびりゆっくり楽しめそうですね。



高雄市桃源区

野湯につき無料。入浴できるのは川の渇水期のみ。
水着着用のこと

私の好み:★★★

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高雄市桃源区 復興温泉 その1(現地まで)

2020年06月13日 | 台湾
COVID-19の影響で、しばらくは海外旅行へ行けそうにありません。おそらく拙ブログをご覧くださっている方の多くは旅が大好きでいらっしゃるかと思いますので、海外はもちろん、国内旅行ですら出かけ難い昨今の状況に、心が折れかかっているのではないでしょうか。かく言う私もそんな人間の一人。旅に行けるからこそ仕事を頑張れるのに、自分を奮起させる燃料が無ければ、毎日の生活がモノトーンで単調なものになってしまいます。
そこで拙ブログでは、世界的なパンデミックが発生する直前の今年2月に出かけた台湾の野湯を取り上げ、画面だけでも台湾旅行の気分を味わっていただければと思っております。


私が今年2月に向かった台湾の温泉は、南部の高雄市にある復興温泉(復興野溪溫泉)です。高雄市といっても都市部ではなく、高雄の中心部から100km以上、車で2時間以上も離れた山奥に湧く野湯です。以前拙ブログでは同市の宝莱温泉を取り上げたことがありますが、そこから更に南横公路(台20号)を奥へ進んだ秘境に位置しています。
一般的に野湯といえばアクセスが難しく、険しい道のりを進まなければなりませんが、この復興温泉については、途中までは車で、そこから先は頑張って歩けば比較的容易に辿りつけることから、近年台湾のアウトドア愛好家を中心として、老若男女を問わずいろんな層から人気を集めている注目の野湯なのです。


宝莱温泉から南横公路(台20号)を北上し、復興と称する小さな集落を抜けた先に上画像のような小さな分岐があります。特に看板など立っていないので、この景色を頭に叩き込んでおく他ないのですが、強いて言えば102.5キロポストの小さな標識の先です(これですら見逃す可能性がありますけどね…)。
この分岐から右側の小さな路地へと入っていきます。


山間に切り拓かれた畑の間を貫く一本の道。
車1台しか通れない狭隘な道ですが、コンクリ舗装されています。


畑が終わり、川に近づいて崖のような場所に近づくと、路面状況が俄然悪くなります。普通車でも走行できるかと思いますが、車高の高いSUVだと安心です。車の底を擦らないよう注意しながら川岸へ下る坂をゆっくり進み・・・


砂煙をあげながらコブを乗り越え、川に沿って道なりに進むと・・・




砂防ダムの手前に広がる礫の河原に駐車場が設けられていますので、そこで車をとめます。一応ダートの道は先にも続いているのですが、普通車では行けそうにない道ですから、ここから先は歩きましょう。
私はここで身支度を整えました。身支度と言っても、大したものではなく、小さなバックパックに水と軽食、水着、着替えポンチョなどを詰め込み、足元をアクアシューズに履き替えただけ。後述するように大して険しい道ではないので、重装備の必要性は全くありません。服装だって、上はTシャツと薄い長袖、下はトレッキング用のズボンという軽装でした(短パンでも良かったくらいです)。先に人工物や施設、水場などは全く無いのですが、最低限水分とおやつ程度の食料さえ確保しておけば大丈夫です。
ちなみに画像の最も手前に写っている青いSUVは、今回私が借りたレンタカーです。この車については、後日改めて記事にするつもりです。


駐車場の前に聳える砂防ダムの大きな袖を急な坂道で乗り越えたら、ゴールの野湯に向かって川沿い砂利道をひたすら前進。道しるべなどはありませんが、工事用車両の轍がはっきり残っていますから、ここを辿れば迷うことはありません。


途中何度か渡渉します。今回訪れる復興温泉は冬の渇水期にアタックするのがベスト。渇水期ならば渡渉箇所は大抵くるぶしが浸かる深さしかなく、深くてもひざ下程度なので、危ない思いをすることもありません。先ほど述べたように、私は駐車場でアクアシューズ(マリンシューズ)に履き替えていますから、ズボンの裾をたくし上げてから、靴ごと川へジャブジャブ入っていとも簡単に渡渉をクリアしてしまいました。


こんな砂防ダムの脇を上がったり・・・


小鳥のさえずりを聞きながら平坦な路を軽快に歩いたり。
とにかく道に迷う心配が無く、また、よじ登ったり、転落しそうな崖を歩いたりすることもないので、気楽に歩けるのですが・・・


延々と続く礫の道に、やがて飽きてきます。歩けども歩けどもゴールらしき温泉の姿はちっとも見えてきません。


歩き始めて30分ほど経った頃でしょうか。
この渡渉ポイントを越えた先で・・・


道の右の路傍にやけにゴツい岩が並び、道自体が川から離れて登り勾配になる箇所があります。
先程から道に迷う心配がないと繰り返し申しておりましたが、唯一間違いやすいので注意を要するところがこの地点です。
ここで道なりに坂を上がってしまうと・・・


川から離れて山を登り、温泉とは関係のない別の貯水湖へ行ってしまいます。とにかく今回のルートはひたすら川沿いに遡ることであり、川を高巻いたり迂回するような箇所はありませんので、歩いている途中で妙に坂が続くな、と感じたら既に、道を誤っている可能性が大です。
実は私もそのことを知らず、初めは間違えて坂をぐんぐん登ってしまいました。もっとも、温泉を楽しんだアウトドア愛好家の方は、その貯水湖へ寄り道して水浴びも楽しまれているようですが、私はそんな余裕が無かったので、道が川と離れるところまで一旦戻ることにしました。


ではどのように進むのが正しいのか。先ほど申し上げた、道が川から離れて山へ上がってゆく箇所から道を離れ、石だらけに河原へ入ってゆくのが正解なのです。つまりここから先は道なき道を遡ります。わかりやすい轍はありません。歩きやすい場所を選んで、ひたすら河原を遡るだけ。


道が無いので不安になりますが、先行者が石を積み重ねて道しるべを作ってくれていますので、これを見つけると安心します。日本も台湾も、仏教圏で暮らしている人間は、大量の石ころを目にすると、賽の河原の石積みのようなことを条件反射的にやってしまうのでしょうか。


自分で歩きやすいところを見つけてひたすら遡れば良いのですが、しかしながら、温泉まで行くルートの傾向として、できるだけ上流に向かって左側(右岸)の河原の、崖下に近い場所を選んで進んでゆくと、随所に踏み跡や獣道があって歩きやすいようです。


川の流れの近くを歩けば最短かつ確実に辿りつけるのではないかと、無闇矢鱈に流れに沿って歩こうとすると、大きな岩をよじ登ったり、浮石に足元をすくわれたりして、無駄に体力を消費するばかりか、時間も余計にかかってしまいます。私もそんな余計な苦労をしてしまった一人なのです。


駐車場から歩き始めて約1時間半。
川が上流に向かって大きく右に湾曲し、河原の幅も徐々に狭くなり川面に向かって収斂しはじめる辺りで・・・


設営したテントの中でランチの用意をしている若者のグループに遭遇。
そのテントの先に・・・


今回の目的地である復興温泉の湯溜まりがあったのでした。
ついに到着です!

さて、ここではどんなお湯に入れるのでしょうか。
次回に続く



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かのせ温泉 赤湯

2020年06月06日 | 新潟県
※今回取り上げる「かのせ温泉 赤湯」は2020年5月末で第三セクターによる営業を終了し、現在は休業中です。今後は阿賀町直営施設として営業再開を見込んでいますが、その時期は未定です。


新潟県阿賀町の「かのせ温泉 赤湯」は、ほぼ完全な公営と言っても良い第三セクター(※1)が運営している温泉にもかかわらず、湯船の温度がびっくりするほど熱いお風呂として一部の温泉マニアには有名な施設です。公営施設は公共性の建前がありますから、保健所の指導に従って湯使いや施設運営を決めてゆく傾向にありますが、そんな常識を覆してくれる不思議な施設なのです。
(※1)株式会社上川温泉。阿賀町が資本金の98.5%を出資

津川の街から国道459号線を北上して鹿瀬駅を通り過ぎ、昭和電工鹿瀬工場跡(新潟水俣病の発生源)の外をぐるっと回って阿賀野川のダム湖近くへ向かい、途中で左に曲がって登り坂を上がってゆくと、坂の途中の右手に上画像のようなログハウス調の建物が目に入ってきます。


道の反対側(つまり登り坂の左側)には上画像のような設備が設けられていました。おそらくここが源泉なのでしょう。


こちらの施設はシックで且つぬくもりが感じられるログハウス調の木造2階建。緑豊かな周囲環境に調和しています。玄関には「赤湯」とかかれた大きな行燈が置かれ、優しい光を灯していました。館内の券売機で料金を支払い、受付に券を差し出します。


受付前のホールでは地場産品などが物販されています。その受付前ホールから通路をまっすぐ進んだ突き当たりの左手には休憩用お座敷が広がり、訪問時にはお風呂から上がったお客さんたちが思い思いの姿勢でゆったり寛いでいらっしゃいました。これとは反対側の右手に浴室の暖簾がさがっています。
男湯の脱衣室にはL字型に棚が、そして正面向かいに流し台がそれぞれ設置されています。なお流し台にはドライヤーの備え付けもあるのですが、古いビジネスホテルにあるようなパワーの弱い機種なので、しっかり乾かしたい方には物足りないかもしれません。

さて肝心のお風呂についてですが、ちょうど私は夕方の最混雑時に訪問してしまったため、内部を記録することはできませんでした。お風呂の様子をご覧になりたい方は公式サイトをご覧ください。

外観と同じく浴室もウッディな造りです。男湯の場合、窓下にタイル貼りの浴槽が2つ並んで据えられ、内湯左側の壁に沿ってL字型にシャワー付きカランが計6基並んでいます。
左右に並んだ2つの浴槽はそれぞれ4~5人サイズですが、どのお客さんも右側を避け、左側にしか入ろうとしません。というにも、湯口がある右側は箆棒に熱いので、入りようがないのです。冒頭で申し上げた熱い湯船というのは、この湯口側の浴槽の事でした。私もトライしてみましたが、あまりの熱さに脛を入れただけで諦めてしまいました。もっとも、お客さんが入っている左側の浴槽ですらも一般的なお風呂よりは熱く、長湯なんてできません。繰り返しになりますが、管理面で色々とうるさい準公営と言うべき第三セクターの施設でこんなに熱いお湯は珍しいかと思います。

そんな熱いお湯を浴槽に注いでいる湯口は、タイルを煉瓦積みのようにしてドームを4分の1にしたような形状をしているのですが、析出の石灰華が吐出口のまわりに大量付着しており、カイゼル髭を分厚くしたような八の字型に広がっています。その姿はまるでRPGゲームの「ドラゴンクエスト」に登場するドロルみたいです。また周囲には赤色の鱗状析出も現れていました。見るからに濃そうなお湯です。


内湯の奥にあるドアを開けると「露天風呂」なのですが、露天とは名ばかりで、実質的は別室内湯といった造りになっていました。おそらく夏は窓を開け払って半露天状態にするのでしょうけど、私が訪れた日は肌寒かったため、網戸の部分を除けば窓は閉められており、第二の内湯となっていたのでした。こうした造りは冬季に露天なんてやってられない雪国だからこその工夫なのでしょうから、致し方ありません。でもこの第二内湯(露天)の湯船は熱いお風呂が苦手な人向けに加水が許されているのです。しかも私の訪問時は一般的な湯加減より若干ぬるめにセッティングされていたため、心置きなくのんびり湯浴みできました。ただ水で薄められている分だけ、熱い内湯よりもお湯の濁り方や色合いは薄かったように記憶しています。なおこの第二内湯ではお湯を木の筧から投入しており、その量も若干絞り気味でしたから、加水しなくてもあまり熱くならないのかもしれません。なお、こちらの浴槽は横に並んで5~6人は入れそうな大きさがあり、内湯の洗い場は床がタイル敷きでしたが、こちらの床は足裏への感触が優しい緑色凝灰岩(グリーンタフ)が敷き詰められていました(でも真っ赤に染まっていて元の素材がわからないほど)。ちょっとだけグレードが高いような感じがします。

内湯のお湯はまさに「赤湯」という名前が相応しい赤茶色の強い濁りを呈しており、お湯を口に含んでみますと塩味とともに鉄錆系の金気味がしっかりと感じられます。また並行してほろ苦味や芒硝味も伝わってきます。上述したような湯口周りの分厚い析出、そして浴槽周りや手すりなどに付着している鱗状や庇状の析出は、おそらく硫酸塩ではなく炭酸カルシウムであるかと思われます(その証拠に、分析表によれば炭酸水素イオンや遊離炭酸ガスがそこそこ多く含まれています)。
第二内湯(露天)では加水が行われている一方、内湯は非加水・非加温・循環なしという湯使いです。湧出温度が60℃近い温泉を加水しないでそのまま浴槽へ落としているのですから、湯船が熱くなるのは当然ですね。熱くて塩気があるお湯ですから、湯船に入るとスピーディー且つパワフルに温まります。それゆえ湯船の回転が速く、長湯している方はいらっしゃいません。また逆上せやすいお湯ですから、お風呂上がりに皆さんが座敷でグッタリしているのも頷けます。でも熱いお湯をそのまま提供しているのは、それだけ源泉の状態を損なうことなく触れてほしいという施設側の配慮なのでしょう。私個人としてはその思いをありがたく受け取りたいと思います。

地域の人気施設であり、私の訪問時(2019年秋)も次々とお客さんが建物へ入っていました。そんな光景を目にしているのでてっきり経営は盤石なのかと思いきや、新型コロナの影響でこの施設を運営している第三セクター(株式会社上川温泉)の経営が行き詰まり、「かのせ温泉 赤湯」など複数の施設(※2)が相次いで休業へと追い込まれてしまいました。
(※2)温泉施設に限定すると、「かのせ温泉 赤湯」の他には、「御神楽温泉 あすなろ荘」「七福温泉 七福荘」「かのせ温泉 赤崎荘」など。

休業となってしまった施設のうち、当記事の「かのせ温泉 赤湯」は阿賀町が直営で営業を再開することになっているそうです。再開の日を心待ちにしています(再開時期未定)。


鹿瀬温泉1号
Na・Ca-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 59.4℃ pH6.4 pH234L/min(動力揚湯) 溶存物質3623mg/kg 成分総計4076mg/kg
Na+:790.5mg(65.98mval%), Mg++:36.2mg, Ca++:269.5mg(25.82mval%), Fe++:2.8mg,
Cl-:354.9mg(20.02mval%), Br-:1.7mg, I-:0.4mg, SO4--:1379mg(57.40mval%), HCO3-:678.5mg(22.24mval%),
H2SiO3:57.3mg, CO2:453.1mg,
(平成27年2月13日)
加水加温循環なし
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬11540-1
0254-92-4186
ホームページ

※2020年5月末を以て休業。町営施設として再開予定だが、時期は未定。
10:00~20:00(最終受付19:30) 火曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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新三川温泉 寿の湯

2020年06月01日 | 新潟県

今回は新潟県阿賀町の新三川温泉を取り上げます。新と名乗るからには、新ではない普通の三川温泉もあり、拙ブログでは11年前に三川温泉「湯元館」のお風呂を取り上げたことがあります。非常に良いお湯で女将さんのおもてなしも温かく、その時のことはいまだに忘れることができません。そんな「湯元館」は今でも営業を続けていますが、当地で営業していた他のお宿の多くは廃業に追い込まれており、温泉地としては見る影もありません。
一方、その手前にある新三川温泉には「ホテルみかわ」(※)のほか、温浴施設「YOU&湯」などがあり、特に「YOU&湯」はそこそこ多くのお客さんでにぎわっています。上画像の左側に写っている青緑色の建物は「ホテルみかわ」。それに隣接している白い建物が「YOU&湯」です。どうやら当地は純粋な地元の民間経営よりも、第三セクターが建てて中国資本が買収した施設の方にお客さんが偏っているようです。


さて今回取り上げるのは、「ホテルみかわ」でも「YOU&湯」でもなく、それらに隣接している入浴施設「寿の湯」です。隣接というか、両者は廊下でつながっており、容易に行き来することができます。私は当初どこから入館してよいかわからず、とりあえず外観が目立ってわかりやすかった「YOU&湯」の玄関から入ってみたところ、フロントの前には入浴券の券売機が設置されていたので、ここで料金を支払えばよいのだな、と早合点してしまいました。いや、たしかにここで支払ってもよいのですが、券売機で買える入浴券には500円と350円の2種類あることに気づかず、うっかり500円の券を買ってしまったのです。「YOU&湯」の入浴料は500円なのですが、私が入りたかった「寿の湯」は350円。その区別に私は気づかなかったんですね。フロントの方に間違って買ったことを伝えると、面倒な面持ちで渋々払い戻しに応じてくれました。同じ施設ですし簡単に行き来できるわけですから、お金の調整も簡単にできるのかと思いきや、どうやら会計は別になっているようです。
私のように苦い経験をしたくなければ、正面ではなく、上画像に写っている勝手口みたいな出入口から入ると「寿の湯」に最短で行けます。しかもこの勝手口のような入口の先には「寿の湯」専用の有人受付もありますので、「寿の湯」に入るなら、断然こちらの方が良いでしょう。


「寿の湯」専用の小さな受付の右側にお風呂へつながる通路があり、その入口には浴場名が記された扁額が掛けられています。通路の左手には飲料の自販機が設置された小上がりが設けられており、突き当たりに2枚の暖簾が下がっています。
脱衣室はそこそこ広いのでさほどストレスなく着替えることができます。またエアコンや扇風機が設置されていますので、夏や冬の利用も快適です。もっとも、利用者が多いためか、随所に使い込まれている感があるのですが、お手入れはしっかりされているので、不快に思うことはないかと思います。


脱衣室の壁には湯使いに関して、写真付きで説明されていました。毎日お湯を入れ替え、純然たるかけ流しでお湯を提供しているそうですよ。これは非常に楽しみですね。


お風呂は内湯のみですが、350円で入れるお風呂にしては大きく、誰しもが十分に寛げるかと思います。男湯の場合、入って正面の窓側に浴槽が据えられ、右側に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が6つ取り付けられていますが、混雑時にはカラン待ちが発生するかもしれません。
浴槽は大きなひとつの槽を板で二つに仕切っており、湯口側は熱く、湯尻側が適温になっていました。その仕切り板は底が刳りぬかれており、湯面側にも細長い穴が刳りぬかれていて、仕切り板の上下でお湯が貫通できるようになっています。小さく熱い湯口側は目測で2.5m四方、大きくて適温の湯尻側は5m×2.5mくらいの大きさです。私の利用時、熱い方へ入るお客さんはせいぜい一人か二人で、大抵は大きな適温槽だけで満足なさっていました。


温泉に含まれる金気の影響で湯口は赤く染まっているのが印象的。そんな湯口から投入されるお湯の量はかなり多く、上に噴き出す感じで浴槽へ供給されています。
湯舟のお湯はうしお汁のような感じで少々の青白い笹濁りを呈しており、またタイルの材質によるものなのか、はたまた金気の影響なのか、浴槽内は赤黒く光っていました。そんな湯舟に肩まで浸かってみますと、食塩泉的なツルスベ浴感と硫酸塩泉的な引っかかる浴感が拮抗して肌に伝わってきます。そして食塩の影響か、しばらくは汗が止まらなくなるほど非常によくあたたまります。鮮度感も良好です。


このお風呂で驚くべきは、浴室内に立派な飲泉所が設けられていることです。もちろん保健所の許可を得ている本格派。温泉に自信がある証なのでしょう。実に素晴らしいですね。
この飲泉所では熱々のお湯がトポトポと落とされているのですが、空気に触れやすい状態だからか、周りには析出がたくさんこびりついており、壁やお湯受けは赤黒い色に濃く染まっていました。そんなビジュアル面だけでも温泉に含まれる金気の多さがわかります。実際に温泉をコップに汲んでみますと、コップの中には弱い金気臭、クスリのような芒硝臭、少々のゆで卵の卵黄臭が充満しており、口につけて飲んでみますと、はっきりとした塩味、弱い出汁味、芒硝味、そして金気味が感じられました。

完全掛け流しのフレッシュなお湯はとても気持ちよく、しかも個性的なお湯であり、そんなお湯を飲泉することもできるのですから、源泉のお湯の状態を重視する御仁には堪らない一湯ではないでしょうか。私個人としても地味で控えめな建物からは想像できなかった素晴らしいお湯に感動してしまいました。隠れた名湯と言っても過言ではありません。

さて、こんな素晴らしいお湯に入れる新三川温泉ですが、新潟日報ネット版によれば「ホテルみかわ」は2020年3月に休業してしまったようです。
「阿賀・ホテルみかわ 3月20日で休業 中国人客のキャンセル響く」(2020年2月27日付)
この記事には「従業員は13人いるが、営業を継続する日帰り温泉の従事者以外は全員解雇する方針」と書かれています。残念ながらホテルの従業員は解雇されてしまうようですが、日帰り温泉については営業を継続するようです。素晴らしいお湯にはまだ入れますが、三川温泉といい、新三川温泉といい、当地の温泉はどうも元気がありません。両方ともお湯は良いので、是非とも奮起して頑張っていただきたいものです。


新三川温泉2号泉
Na-塩化物・硫酸塩温泉 57.3℃  pH7.5 130L/min(動力揚湯) 溶存物質3480mg/kg 成分総計3487mg/kg
Na+:986.5mg(81.15mval%), Ca++:155.3mg(14.66mval%), Fe++:0.4mg,
Cl-:918.0mg(48.86mval%), Br-:2.6mg, I-:0.8mg, SO4--:1187mg(46.63mval%), HCO3-:131.5mg,
H2SiO3:40.1mg,
(平成22年2月24日)
加水あり(温泉の温度が高温のため)
加温循環消毒なし

新潟県東蒲原郡阿賀町五十沢2598
0254-99-3677
ホームページ

13:00~21:00
350円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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