温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

『サイハテ交通をゆく』のご案内

2018年04月29日 | その他
前回に引き続き告知系の記事で申し訳ございません。



今月(2018年4月)19日にイカロス出版社より、ムック本の『サイハテ交通をゆく』が発売されました。
イカロス出版の紹介ページ

恥ずかしながら私も一部の執筆を担当させていただきました。だからというわけではありませんが、なかなか面白く出来上がっているので、今回ご紹介させていただきます。

日本全国の秘境や辺境と言われるような僻地でも、公共交通機関が存在し、地元で生活する人やその土地を訪れた旅人を運んでいます。しかしながら、限られた人員や予算、厳しい環境、複雑な地形など、様々な理由によって、運行形態や輸送方法などに制約が発生してしまいます。特に近年は過疎化により運営そのものが厳しくなり、交通機関の維持そのものが困難になっています。そうした諸々の制約をいかに克服して旅客や貨物を輸送するかが、公共交通機関としての使命のひとつであり、結果的にその解決策や形態が、その土地ならではの個性につながっていることもしばしばです。

都会では法令や安全対策など厳格に考えがちな運用方法を、僻地では融通を利かせることによって、上手くやりくりしています。あらゆることがデジタル化され、さらには人工知能で処理され今日にあって、生身の人間を運ぶ交通機関はデジタルで代用することができません。特に僻地はあらゆるリソースが限られているので、綺麗事や理想論なんて掲げていられません。このため、前時代的と思われるような方法が、実は僻地の交通機関にとっては最も合理的であり、かつ経済的でもあったりします。ご当地ならでは問題解決方法は、あらゆる面で恵まれている都会では考えつかないものが多く、そのひとつひとつが興味深くて実に面白く、土地柄をよく反映しています。そしてその交通機関が歩んできた歴史そのものなのです。

本書は北海道から沖縄まで、各地の秘境・辺境と呼ばれるような地域で人知れず活躍するバス・鉄道・船・ヘリなど、地元の方しか知らないような交通機関を多く取り上げており、その一つ一つが個性の塊です。各交通機関は魅力にあふれており、そうした個性を有するに至る歴史も実に多様。しかしながら、こうして何らかの機会で取り上げられない限り、僻地の交通機関は、誰にも知られることがなかったはず。狭い日本といいながら、いかに自分が日本各地のことを知らなかったか、各交通機関の記事を読んで痛感しました。おそらくみなさんにとって、取り上げられている交通機関の多くはご存じないものばかりかと思います。でも、たとえ知名度がゼロに限りなく近いとはいえ、今日も人を運んで、生活を支え、旅人を送っているのです。
それぞれの項目を読んで目から鱗が落ちたり、感心したり、心配になったり・・・。読み物としてはもちろん、各記事を書いたライターの旅を追体験したり、あるいは旅情を駆り立てられて実際に本書を片手に旅に出たりと、単なるマニアックな乗り物の本という枠を超え、読むことでいろんな使い方ができるユーティリティー性の高い書籍だと思います。よろしければ是非ご一読を。

以下、Amazonのリンクです。
『サイハテ交通をゆく』
ISBNコード:978-4-8022-0512-2
刊行種別:ムック
発売日:2018年04月19日
サイズ:B5判
ページ数:112
定価:1728円(税込)



コメント (8)
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栗駒 駒の湯温泉 2018年期は4月28日オープン

2018年04月25日 | 宮城県
 
(※2017年撮影)
拙ブログで応援している栗駒の名湯「駒の湯温泉」。北国の山奥ですから、雪深い冬は営業を休止しますが、春が訪れ、東風が吹いて雪が融けるとともに、幟旗を掲げて営業を再開します。2018年は、連休初日の4月28日(土)にオープンします。

具体的なアナウンスや営業案内については、公式サイトでご確認ください。
「駒の湯温泉公式サイト」

昨年までと同じく、入浴と飲食による営業となります(宿泊はできません)。
入浴のみ(1時間まで)は、大人500円(中学生以上、入湯税込み)、小学生以下300円、3才以上の幼児100円です。


(※2017年撮影)
ぬる湯ですので、本来でしたらじっくりと長湯していただきたいのですが、お風呂のスペースが限られているため、できるだけ1時間以内のご利用でお願いいたします(特に混雑時)。



(※2017年撮影)
駒の湯で湯浴みなさる際は、ぜひ併設の「そばカフェ」で、十割蕎麦を召し上がってください。北海道幌加内産のそば粉を100%使った、湯守手打ちの美味しいお蕎麦です。



(※2017年撮影)
お蕎麦だけでなく、石巻木の屋水産のカレーもおすすめ。私も実際に頂きましたが、大変美味です。

入浴とそば、もしくは入浴と休憩室利用を組み合わせたセット料金もありますよ。
・入浴+休憩室利用込み料金:2時間で800円(入浴は時間内何度でも可能、小学生600円)
・入浴+おそば:1000円(小学生800円)。おそばは入浴前or入浴後との選択可能です。
・入浴+おそば+2時間休憩セット(サービスのコーヒー付き)、入浴は複数回OK:1400円。

 
(駒の湯温泉のブログより画像をお借りしました)
お客様をお迎えするべく、この春もご主人(湯守)が頑張って準備作業しています。
本当ならば、今年も私が現地へ赴いて準備のお手伝いをしたかったのですが、仕事など諸々の用事が重なったため、残念ながら今年はお手伝いできませんでした。
そこで、このブログをご覧の皆様にご案内です。駒の湯温泉では、随時お手伝いを募集しています。具体的な内容については、駒の湯温泉の公式サイトFacebookなどをご覧ください。清掃・資材運搬・補修など、いろんな仕事について、皆様のお力添えが必要です。岩手宮城内地震の被災から立ち上がった駒の湯温泉ですが、まだまだマンパワーが足りません。何卒宜しくお願いします。お問い合わせは当ページのコメント欄、あるいは拙ブログPC版の左サイドメニューに表示されるメールアドレスまでどうぞ。

お出かけ日和が続くと予想されるこの連休。
駒の湯のぬる湯に浸かりながら、北国の春を感じてみませんか。


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尼崎市 蓬莱湯

2018年04月22日 | 兵庫県
 
前回記事の「クア武庫川」を出た私は、再び阪神電車に乗って梅田方面へ向かい、今度は尼崎センタープール前駅で下車しました。駅名にプールとありますが、人間が泳げるプールではなく競艇場の池を指しているんだとか。実際に高架の駅の目の前には漫然と水を湛える大きな競艇場を見ることができますが、ということはレース開催日になるとガラの悪いオジサン達が集まって、駅前は一種独特の雰囲気に包まれるはずです。ただでさえ尼崎という街に対して抱くネガティブな先入観に加え、その先入観を駄目押しさせるギャンブルという要素が重なると、柔な関東人である私はその様子を想像するだけで怖気付いてしまい、電車を降りて改札を出るときには、自分の身を守ろうと妙に緊張してしまいました。


 
警戒心が解けぬまま、昭和の下町風情が強く漂う街中を歩くこと数分で、旅館を思わせるシックなファサードの銭湯にたどり着きました。今回の目的地である「蓬莱湯」です。ここだけ見ると尼崎とは思えません。昔ながらの銭湯をモダン和風にリノベーションしたのかもしれませんね。



建物の裏手には銭湯のシンボルである煙突が天高く屹立しています。


 
また建物の脇には温泉スタンドのほか、温泉を使ったペットシャワーと称する珍しい設備も設けられていました。


 
暖簾をくぐって中へ入ってみます。玄関には「地湧の湯」と記された札が立てかけられていました。こちらで使っている源泉の名前です。番台というよりフロントと称したくなるような受付で、ちょっとご機嫌宜しくないようなおばちゃんに湯銭を支払います。館内はいかにも現代的な、温もりある色調と明暗のコントラストをはっきりさせたモダン和風な内装が施されており、近隣の銭湯とは一線を画す上品な雰囲気を感じ取ることができます。また決して広くはないものの、旅館の応接空間のような休憩室が設けられていて、これまた下町の銭湯とは思えない趣きです。

私が訪問した時の場内は混雑していたため、以下文章のみでご紹介します。悪しからずご了承ください。
小綺麗な脱衣室を抜けて浴場へ。
浴場内のレイアウトこそ銭湯そのものですが、大理石のような風合いのタイルを多用することで、非日常的かつ上質な雰囲気を醸し出していました。
中央の主浴槽や副浴槽を挟む形で左右に洗い場が設けられています。設置されているカランの数は計16。いずれもシャワー付き混合栓です。もしかしたらシャワーから出てくるお湯は温泉だったかもしれませんが、記憶が定かでないので、はっきりとしたことは申し上げられません(ごめんなさい)。奥の方には(左から)真湯浴槽・水風呂(2人サイズ)・ガラス張りのスチームバス・温泉使用の座湯(2人用)の順に並んでいます。

中央の主浴槽や副浴槽には温泉がふんだんに使われており、浴槽の縁から惜しげもなくお湯が溢れ出る光景を目にすると、本当にここが尼崎の街中なのかと我が目を疑いたくなりました。主副は前後に隣り合って並んでおり、手前側(脱衣室側)は主浴槽。目測で1.8m×2.5mほどの5~6人サイズ。一部は泡風呂になっており、泡風呂ではない部分はちょっと深くなっています。槽内の湯口より温泉が噴き上がっており、42℃前後の適温のお湯が張られていました。
副浴槽は主浴槽から流れてくるお湯を受けており、3人サイズで湯加減は40~41℃くらいのぬるい設定。この副浴槽からお湯が豪快にオーバーフローしており、見ているだけでも豪快な気分を味わえます。

お湯はやや濃いめのジャスミンティー色。薄いベージュや褐色の浮遊物がチラホラ確認できますが、懸濁は見られず、浴槽の底ならはっきりと見える透明度を有しています。浴槽全体がゴールド色に染まっているのですが、これはおそらく温泉成分の付着によるものでしょう。お湯からは淡い金気味と清涼感を伴うほろ苦さ、弱い金気臭とモール泉のような香りが感じられます。主浴槽に入ると肌への泡付きがみられましたが、これは温泉由来なのか或いは泡風呂の泡なのか、そのあたりは判然としません。とはいえツルツルスベスベの滑らかな浴感は素晴らしく、しかも完全かけ流しなのですから、ありがたいことこの上ありません。繰り返しますが尼崎の街中なのです。にもかかわらずかけ流しの温泉が楽しめるのですから、湯に浸かればまさに蓬莱の境地に至れることでしょう。私のような湯めぐりを趣味とする面倒な唐変木も、舟券を外してオケラになったおじさんも、こちらのお湯に肩まで浸かれば、みんな等しく幸せになれるはずです。
前回記事の「クア武庫川」はしょっぱくてカルシウムが多い濁り湯でしたが、そこから大して離れていないにもかかわらず、こちらはあっさりとした淡いモール泉のようなタイプの温泉なのですから、阪神間の温泉は実に多種多様。以前拙ブログでも申し上げましたが、阪神沿線は隠れた温泉郷と言えそうです。


湯元 蓬莱 地湧の湯
単純温泉 43.0℃ pH8.0 603L/min(動力揚湯) 溶存物質0.467g/kg 成分総計0.469g/kg
Na+:110mg(90.64mval%), Ca++:4.9mg,
Cl-:2.9mg, HCO3-:276mg(89.55mval%), CO3--:12.0mg,
H2SiO3:54.7mg,
(2011年5月30日)

阪神・尼崎センタープール前駅より徒歩5分
兵庫県尼崎市道意町2-21-2  地図
06-6411-0567
ホームページ

15:00~23:30(受付23:00まで) 金曜定休
420円
ロッカーあり、ドライヤー有料貸出(50円)、各種販売あり

私の好み:★★★
コメント (2)
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西宮市 クア武庫川

2018年04月19日 | 兵庫県
今回から数回連続して関西の温泉を取り上げます。
大阪神戸間の阪神沿線は、知る人ぞ知る温泉の宝庫。庶民的な下町の街中には、いまだに昭和の風情を色濃く残す銭湯が多く営業していますが、その中には天然温泉を汲み上げているところがあり、温泉ファンも唸る名湯に出会えることもしばしばです。拙ブログでもそんな阪神間の温泉をいままで取り上げていますが、今回ご紹介するのは西宮市にある「クア武庫川」です。


 
まずは阪神武庫川線に乗って東鳴尾駅で下車。土手の下にある小さな無人駅です。


 
駅から西に向かい、突き当たった小さな川に沿って北へ向かうこと約5分で、今回の目的地である「クア武庫川」に到着です。お盆休みの夕方4時頃に訪れたのですが、駐車場も駐輪場も埋まっており、多くのお客さんで賑わっていることが窺えました。



正面玄関の左手では、温泉がボコッボコッと音を立てて噴き上がっていました。茶色く染まったその設備は、温泉の析出が分厚くこびりついています。しかもそのお湯はとても熱いのです。この手の析出は、山奥の温泉地で時々目にしますが、まさか市街地の真ん中でお目にかかれるとは思いませんでした。

訪問時は多くのお客さんで混雑していたため、館内の様子については、文章のみで述べてまいります。ご了承ください。

松竹錠の下足箱に靴を預け、券売機で湯銭を支払って、券をカウンター式の番台に差し出します。カウンターの右が女湯で、左が男湯。脱衣室は銭湯そのもので、ここまで特に温泉があるような気配は感じられません。
浴場も都市部の銭湯でよくあるようなレイアウト。東京の銭湯とちょっと違うところは、浴室に向かって大きなテレビが設置されているところ。お盆という時期柄、ABC(朝日放送)の甲子園中継が映され、入浴客は試合の動向に釘づけになっていました。このように昼間は高校野球、夜はタイガース戦の中継が映されるのでしょう。
浴室の様子を具体的に述べると、奥へ長い室内の両サイドに洗い場が配置され、それらの挟まれる形で、手前側から上がり湯・泡風呂(ジェットバス)・電気風呂・熱めの浴槽、という順に浴槽が並んでいます。また、そこから更に奥へ入ったところに、スチームサウナ・サウナ(別料金)・水風呂がコの字に配置されており、実に多様な浴槽を楽しむことができます。でもこれらの浴槽に温泉は使われていません。

男湯の場合、浴室の左斜め前に露天のような一角があり、そこへ設けられているひとつの浴槽に温泉が張られています。一応屋外なのでしょうけど、その猫の額のような空間は高い塀に囲まれているので、屋外とはいえ開放感は得られません。でもここの浴槽は明らかに他と異なる姿を見せているのです。
浴槽は8人サイズ。角の一部が狭くなっており、その最奥にある岩積みの湯口からお湯がボコボコと音を立てながら吐出されています。湯口周りは赤黒く染まっているのですが、そこだけでなく浴槽の複数個所からも温泉が供給されており、その全量が掛け流されているのです。温泉を受ける浴槽、そしてオーバーフローが流れる床は、温泉成分によってベージュ色に分厚くコーティングされており、まるで象の肌のように深い皺を刻みながらコンモリと盛り上がり、かつゴツゴツとした表面を私たちに見せてくれます。とても街中とは思えない析出には、本当に驚かされました。

お湯はオレンジ色に濁り、透明度は15~20cmほど。とてもしょっぱく、ほろ苦みがあり、金気味や炭酸味も確認できます。また炭酸ガスが吐き出されるためか、湯口付近にいると、時折咽ることがあります。お湯からは金気臭のほかハロゲン系の匂い(臭素か)や磯のような匂いが漂っています。湯中ではギシギシと引っかかる浴感が得られ、パワフルに火照り、迂闊に長湯すると容易に湯あたりを起こしてしまうほど凶暴なお湯です。夏に入ると汗が止まりません。有馬温泉に似たような、濃厚で強烈な個性を有するお湯です。こんな個性的な温泉が街中で湧いているのですから、本当に驚いてしまいます。
土地柄、倶利伽羅紋々を背負ったお客さんが多いようですが、それでもお湯は逸品。阪神間の温泉の面白さを改めて認識しました。


ナトリウム-塩化物強塩泉 58.2℃ pH6.54 溶存物質27.8g/kg 成分総計28.6g/kg
Na+:8790mg(79.9mval%), Mg++:479mg(8.24mval%), Ca++:940mg(9.81mval%), Fe++:15.2mg,
Cl-:15900mg(96.2mval%), Br-:37.1mg, HCO3-:1050mg,
H2SiO3:93.4mg, HBO2:249mg, CO2:714mg,
(平成5年4月8日)

阪神武庫川線・東鳴尾駅より徒歩5分
兵庫県西宮市笠屋町3-10
0798-47-8565

15:00~24:00 木曜定休
420円
ロッカーあり、各種販売あり、ドライヤー有料(20円/2分)

私の好み:★★+0.5









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富士見温泉 ゆーとろん水神の湯

2018年04月16日 | 長野県
 
2017年の秋、私は八ヶ岳を登って、雄大で美しい自然を満喫したのですが(本記事の後半にて触れます)、その下山後、登山の汗を流すために向かったのが「ゆーとろん水神の湯」です。中央道の諏訪南インターから南の方へ車を走らせた富士見町にある日帰り入浴温泉施設であり、食事処などが併設されているので、このエリアでひと息入れるには便利な施設といえそうです。


東西に分かれた浴場は男女入れ替え制となっており、私が訪れた日は、西側の浴場に男湯の暖簾がかかっていました。このため今回の記事は西側のお風呂について述べてまいります。また浴場内は混雑していたため、画像に関しては公式サイト内の画像を使わせていただきました。



脱衣室は手入れが行き届いていて、明るく綺麗です。窓からは、後述する露天風呂の様子がよく見えます。
こちらの施設は露天風呂に重きを置いているらしく、内湯は洗い場中心で至って実用的。手前側にシャワー付きカランが計10基設置されており、浴室の奥にタイル張りの四角い浴槽がひとつ据えられています。
こちらで使われている温泉の源泉温度は30℃に満たないため、多くの浴槽で加温されており、特に内湯浴槽は体をしっかり温めるべく
全浴槽の中で最も高い温度(とはいえ41~2℃)まで上げられているのですが、その代償としてお湯が持つ個性、とりわけ香りが飛んでしまっているのがちょっと残念なところ。


 
内湯で体を洗ったら露天風呂へ。
露天ゾーンには多様な浴槽が用意されており、どこから入ったら良いのか迷ってしまうほど。いろんな浴槽を体験して自分のお気に入りを見つけることも、こちらの施設の楽しみ方なのでしょう。
西側露天の主浴槽は「水神の湯」と称され(左or上画像)、仕切りによって2つに分かれているのですが、いずれも適温に加温されており、特に両者の違いはわかりませんでした。加温のためか、お湯は若干貝汁のような微濁を呈していました。露天エリアで主浴槽に準ずる大きさを有しているのが「のろま湯」(右or下画像)。のろまというネーミングからもわかるように、のんびり湯浴みするべく、ぬるめの湯加減にセッティングされているのですが、この日はちょっとぬるすぎたためか、利用しているお客さんの姿はまばらでした。夏になれば気持ち良いのかもしれませんね。


 
奥の方に設置されているのは「樽風呂」。一部が屋根掛けされているので、日光を避けて湯浴みすることもできるでしょう。7~8人も入れそうなキャパを有している巨大な樽風呂。縁には枕のようなものが設けられているので、そこに頭をのせて湯浴みすると良いものと思われます。その樽風呂の隣には、蒸し風呂、つまりサウナもあるのですが、今回私は利用していないので、中の様子はリポートできません(あしからず)。



上述の各浴槽(サウナを除く)は、程度の違いこそあれ、30℃に満たない源泉を加温して入浴しやすい湯加減にし、その上で放流式の湯使いとしているのですが、唯一の例外が上画像の打たせ湯です。こちらも放流式、つまり循環しないかけ流しなのですが、他浴槽と異なり、加温されていない完全放流式なのです。私が訪問したのは紅葉が始まった時季ですから、30℃未満の打たせ湯はほとんど水と変わらず、その冷たさにほとんどのお客さんは敬遠していたのですが、入りしなの冷たさを堪えると、まもなく体が慣れて気持ち良くなり、むしろ長い時間浸かっていたくなるような気持ち良さに包まれました。気持ち良いだけでなく、非加温ゆえに源泉の個性が素直に表れているのも、この打たせ湯の良いところ。無色透明でトロトロ&ツルツルしているこちらのお湯からは、いわゆるタマゴのような香りが放たれ、ゆで卵のような味覚も感じられます。埼玉県秩父などでよくみられる「たまご水」のような感じです。この手の香りは加温など人の手が加わることによって忽ち飛んでいってしまいますから、この打たせ湯のような非加温状態でないと味わえません。あえて非加温の打たせ湯を用意している施設側の、お湯に対する造詣と愛情の深さに心から感謝します。

いろんなお風呂があって迷ってしまうこちらの露天ですが、上述の通り、私のフェイバリット浴槽は上画像の打たせ湯でした。皆さんも是非ご自身のお気に入りを見つけてみてください。


単純硫黄温泉
28.7℃ pH10.5 143L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質158.2mg/kg 成分総計158.2mg/kg
Na+:43.3mg(94.96mval%),
OH-:5.4mg(12.17mval%), HS-:4.2mg, CO3--:34.2mg(43.36mval%), HSiO3-:60.2mg,
(平成20年11月28日)
加水・循環なし
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

長野県諏訪郡富士見町富士見9547
0266-62-8080
ホームページ

10:00~21:30分(受付21:00まで) 木曜定休(5月連休と8月は無休。4月・11月・12月は毎週水・木の2日間定休日)
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



●おまけ 八ヶ岳登山記
本記事冒頭で申し上げましたように、私は2017年秋に、いつものように一人で八ヶ岳を登ってまいりました。コースは・・・
 美濃戸口→御小屋山→阿弥陀岳→赤岳→赤岳天望荘(小屋泊)→横岳→硫黄岳→赤岳鉱泉→美濃戸口
という順序であり、つまりは美濃戸口から出発し、阿弥陀岳を経由して、八ヶ岳連峰の最高峰である赤岳を登り切って、その山頂付近にある山小屋「赤岳天望荘」で一泊。翌朝は横岳や硫黄岳を回って美濃戸口へ戻ってくるという周回コースです。穏やかな径あり、険しい岩場や鎖場あり、眺望の素晴らしい尾根の縦走あり、と実に多様で面白い山行であり、山の空気と景色、そして自然の美しさに包まれていると、日頃の仕事の憂さがすっかり晴れました。






爽快な尾根歩き。そして登り応えのある岩場登り。




尾根をたどりながら赤岳山頂へ。




山小屋「赤岳天望荘」。週末なので大混雑。雑魚寝の就寝スペースは、肩を寄せ合いながらようやく自分のスペースを確保するような状況。



西の中央アルプス方面へ太陽が沈む。乗鞍や御嶽山などがはっきりと望める。そして手前の諏訪湖もよく見える。




翌朝、山小屋から日の出を拝む。奥秩父の山々から太陽があがり、次第に、麓に広がる佐久の田園地帯がぼんやりと明るく見えてくる。そして赤岳の山肌は真っ赤に染まり、雲海の彼方では富嶽が秀麗な姿をのぞかせていた。



尾根を縦走。



硫黄岳山頂の荒々しい姿。




八ヶ岳の紅葉、そしてトリカブトの花。



沢沿いの登山道を下りながら、先ほどまで自分が頂上にいた山を眺め、充足感に満たされる。またこの山に来よう。


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