温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

タイ チェンライ県ムアンチェンライ郡 ポーンプラバート(バンドゥ)温泉

2014年05月18日 | タイ
約1ヶ月にわたって連載してまいりましたタイ北部の温泉もひとまず今回でオシマイ(東南アジア関係はもう少し続きますけどね)。ラストを飾る温泉は、チェンライの近郊にあるポーンプラバート温泉(Pong Phrabat Hot Spring)です。この温泉は地域名に因んでバンドゥ(Ban Du)温泉とも呼ばれているようですが、今回は施設の銘板に記されていた通りにポーンプラバート温泉という名称で統一いたします。この温泉はチェンライ空港から車で10分以内という至近にありますので、飛行機で現地を発つ直前に立ち寄りました。


 
アクセスも至って容易です。チェンライから国道1号線をメーサイ方面へ北上すると、コック川の橋から約6.5kmで左手にバンドゥ市民市場が目に入ります。市場の前で国道を跨ぐ歩道橋が目印です。なおチェンライの街でソンテウ(ピックアップトラックを改造したバス)に乗ると、ここで降ろされるようです。



市場の歩道橋から200メートルほど先で左折し、このゲートから1151号に入ります。


 
あとは道なり進めば良いだけ。道中にも標識があるので安心です。


 
市場から2.5km程度でポーンプラバート(バンドゥ)温泉に到着しました。


 
一帯は誰でも無料で入園できる公園となっており、市民の憩いの場として愛されているらしく、園内は多くの人で賑わっていました。また駐車場に隣接してマッサージ室があるのですが、技術が優れているのか人気があるらしく、私が訪問した時は施術師さんに空きがなくて予約も埋まっているとのことで断られてしまいました。なお入口付近ではなぜか真っ白なティラノサウルスがお出迎え。


 
園内の池では噴水が上がっていました。池畔の傘下では魚の餌が10バーツで無人販売されていましたが、驚くべきはその柱に張られているサインでして、なんとここではフリーのWifiが飛んでいるのでした! といっても使っていないので強さや速度等はわかりませんけど…。


 
 
園内を奥の方へ進んでゆくと、ASEAN諸国の国旗が一列に並んでいる箇所があり、その下には屋根付きの大きな足湯や温泉の噴水が設けられていました。上画像は利用客が途切れたタイミングで撮っていますが、訪問時にはたくさんの方が和気藹々がと足湯を楽しんでおり、タイ人がいかに足湯を好むかを再認識させられるほどでした。この噴水周りは西欧の庭園風でなかなかの美観なのですが、その傍らにはなぜか真っ白なトリケラトプスがこちらを睨みつけていました。この公園は美白の恐竜に何かしらのご縁があるのかな。


 
足湯の隣には20バーツで利用できるプールがあり、この時はラテン系の親子連れが水遊びに興じていましたが、私は興味が無いのでここはパス。


 
プールの右隣にある"VISITER CENTER"に個室風呂があり、正面の受付カウンターで料金50バーツを支払って、利用すべき個室の指定を受けます。この受付では20バーツでタオル(使い捨てのボディーソープ付)を貸してくれますので、濡れたタオルを飛行機に持ち込みたくなかった私は、便利なレンタルタオルを利用しました。なお受付カウンターの横にはドライヤーが用意されていますし、受付の手前にはちょっとした売店もあります。


 
こちらでは小浴室9室と大人数用2室を擁しているんだそうです。一人旅の私は当然のごとく小さな浴室へ。室内には窓が無くて照明を点けても薄暗く、それなりの床面積が確保されてゆとりがあるはずなのに、独居房を連想させるような閉塞感が否めません。そんな浴室には丸い浴槽が一つ据えられている他、黒い大きなバケツやシャワー、そして手桶や腰掛けが用意されています。


 
円形の浴槽は2人入れそうな大きさを有し、槽内にはアクアブルーとホワイトのタイルが市松状に貼られています。室内の隅っこに置かれている黒いバケツには水がたっぷり溜められており、その中へシャワーヘッドが突っ込まれていました。シャワーから出てくるのは水ですので、このシャワーでバケツの水を溜めるのかな。


 
こちらの湯船は使用の度にお湯を張り替えますので、私も入室と同時にコックを全開してお湯を吐出させたのですが、湯口の温度は61.5℃もあり、しかも吐出される量も多いため、お湯だけを出しっ放しにしておくと、熱すぎて湯船に入れなくなっちゃうんですね。お湯の熱さに驚いた私は、慌てて水のバルブも開け、湯温調整に努めました。なお水素イオン濃度はpH9.0ですから、れっきとしたアルカリ性泉ですね。なおお湯の見た目は無色透明で、湯口からは薄っすらとタマゴ臭が漂い、口にすると弱いタマゴ味と微かな砂消しゴム的硫黄味が感じられました(匂い・味ともにかなり弱めです)。


 
お湯も水もドバドバ出てきましたから、湯船にお湯が満たさせるまでさほど時間を要しません。私のように飛行機の時間が迫っている人でも、せっかちな人でも問題無しです。浴槽はやや深い造りになっており、底にお尻をつけようとすると顔が湯面下に潜っちゃうのですが、槽内のステップに腰掛けると肩まで浸かれて丁度良い塩梅になりました。
これまで巡ってきたタイの温泉の個室風呂では、浴槽内にお湯を逃がす排水口が設けられていたため、浴室の床に湯船のお湯が溢れ出るようなことはあまり無かったのですが、こちらのお風呂はそのようなものがなく、思いっきりオーバーフローしますので、まるで日本の温泉に浸かっているかの如く、ザバーっと大音響を轟かせながらお湯を室内へ溢れ出させ、豪快な湯浴みを堪能しました。なお私のpH計測器はpH9.0という数値を表示しましたが、成分の問題なのかそれほどツルスベ浴感は強くなく、どちらかと言えばサラサラ&アッサリ系の感触が得られました。また利用の度にお湯を張り替えるので、鮮度感が素晴らしく、心地よいシャキッとしたフィーリングは名湯そのものでした。



でも、密閉された狭い空間で熱い風呂に浸かっていると、たちまち体が逆上せてしまい、せっかくの良泉なのに、体が長湯に耐えられないのが残念なところ。
室内の張り紙にはタイ語や英語とともに日本語でも注意が手書きされていました。けだし現地滞在の邦人の方が、施設側に依頼されて書いたのでしょうね。この注意に従い、入浴後はちゃんとお湯の栓を抜いて空っぽにしましたよ。


 
風呂あがりの逆上せた体をクールダウンすべく、売店で買った冷たいジュースをグビグビ飲みながら、公園の奥の方を散策してみると、足湯の裏側を流れる小川の岸に、お湯がパイプからチョロチョロ注がれている土管を発見。もしかしてここは元々土管風呂だったのかな? また、その川をよく観察すると、底からはプクプクと泡が上がっていますし、川面では湯気が立ち上っていましたので、川の周囲一帯が源泉地帯になっているのでしょうね。


 
川を渡った対岸には、コンクリで築かれた温泉の貯湯タンクが設置されていました。ここで源泉のお湯をストックすることにより、浴室や足湯などへの安定的な供給を図っているのでしょうね。

浴室に開放感はありませんが、使用の度に湯船のお湯を張り替えるので、常に新鮮な状態のお湯に浸かることができ、しかも2人が入れるサイズのお風呂に50バーツで入れるのですから、チェンマイ近郊の有名な温泉に比べたらはるかにコストパフォーマンスが優れています。そんなクオリティの高さゆえか、現地滞在の邦人の方もこちらをよく利用されるそうです。湯めぐりの最後を締めくくるに適役な温泉でした。


GPS:19.977745N, 99.832747E,


営業時間調査忘れ
50バーツ(1人)
ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (4)
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タイ チェンライ県メーチャン郡 パートゥン(ファイヒンフォン)温泉

2014年05月17日 | タイ
 
チェンマイから西へ東へと寄り道しつつチェンライ方向へ北上してきた今回のタイ北部湯めぐり旅ですが、せっかくなら最北の温泉にも立ち寄っておきたいと考え、私が調べた中ではタイ最北に位置するであろうメーチャン郡パートゥン村のパートゥン(ファイヒンフォン)温泉(Par Tung Hot Spring (Huay Hin Fon Hot Spring))へ行ってみることにしました。いや、もっと北にも温泉があるのかもしれませんが、当地の訪問は初めてで殆ど何も知らないまま出かけておりますので、調査が甘いとしてもどうかお許しを。

その温泉メーチャンからファーン方向へ抜ける1078号線沿いにあり、一帯は広い公園となっています。歩道入口には左右両側で合掌しているお人形さんが出迎えてくれましたが、その足下のステップは無残にも崩れっぱなしになっており、早くもイヤな予感を覚えます。そんな入口から園内を奥へ歩いてゆくと、画像右(下)のような、みんなで和気藹々楽しんでいる場面をイメージしていると思しき大きなモニュメントが現れました。



園内には大きな池(というか沼)が広がっており、池畔にはガゼボも設けられていますので、のんびり休憩するには良い環境です。


 
歩道を進んでゆくと、やがて上画像のような小さい自噴源泉に出くわしました。どんなお湯なのか直に触れようと思ったのですが、もしかしたら…という経験則に基づく警戒心が働いて温度を計測したら、案の定というべきか「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と表現すべきか、こんな小さな源泉でもしっかり熱く、私の温度計には85.4℃と表示されました。迂闊に触れていたら火傷するところだった…。危ない危ない。


 
公園の中心部には構える丸く大きな構造物は、噴水か湯釜の跡なのでしょう。90℃と記されたプレートが残っていますので、現役時代は沸騰状態の熱湯を噴き上げていた(あるいは湛えていた)のでしょうけど、いまでは防護フェンスが外されており、完全に枯れちゃっていました。


 
その周りには屋根付きの立派な足湯も設けられていたのですが、全ての槽が空っぽであり、しかも単に空なのではなく、相当長い年月にわたって使われていないような状態でした。



足湯の近くにはコインで稼働すると思しき装置が設置されていました。これって一体何なのかな? 作動させてみたい衝動に駆られたのですが、私は他の場所で、興味本位でコインを投入したものの何も反応せずにお金を無駄にした経験が何度もあり、同じような悪い展開が予想されましたので、ここでは衝動を抑え、写真を撮るだけにしておきました。


 
枯れている噴水(もしくは湯釜)跡の傍には、このような立派な建物が建てられていたので、もしかしたらここでお風呂に入れるかも、と淡い期待を抱いて中に入ったのですが、その期待は見事に裏切られ、内部はすっかり廃墟と化していました。


 
館内には個室風呂もあったのですが、こちらもご覧の有様。完全に荒廃しています。お湯を溜めたらさぞかし良いお風呂になりそうなんだけどなぁ…。もったいない。



もう少し奥へ進むと、このようなコテージのような独立した建物が幾棟か並んでいるのですが…


 
シャワーや大きなプールを兼ね備えているこの建物も使われている形跡がなく、すっかり放置されて干からびていました。


 
スタート地点からグルっと一周すると、このような営業していそうな風呂棟を発見! エントランスの屋根に提げられている幕にはミネラルバスと記されているではありませんか。ようやく入浴の機会にありつけるのか!?


 
窓口脇のボードに記されている80という数字は大人の入浴料金に違いないのですが、辺りに人の気配が全く感じられず、窓口は固く閉ざされているし、個室風呂と思しき扉も南京錠でガッチリ施錠されています。まさか…



もしやと思い、窓口前の柱に掛かっていたこの札をスマホの翻訳機能で訳したところ"CLOSE"と表示されました。万事休す、已んぬる哉。パートゥン温泉で入浴する途は絶たれてしまいました。単に定休日だとしたら己の運の悪さを呪えば良いのですが、受付や個室の様子を窺うに、全体的にかなり埃っぽく、長い期間にわたり人の動きが及んでいないような気配を感じましたので、もしかしたらこの施設も営業をやめてしまったのかもしれません(現在も営業中でしたらゴメンナサイ)。



ではパートゥン温泉は過去帖入りしてしまったのかと言えば、今でもしっかり高温の温泉が湧出しており、公園の外れを流れる小川を渡った対岸にある池の畔では、上画像のように天高く温泉が噴き上がっていました。その様は上述の小さな源泉なんて比べ物にならないほど立派なものです。


 
お湯は91.6℃という激熱でして、pH8.9のアルカリ性です。熱さも噴出する勢いも素晴らしいのですが、残念ながらその量が少ないらしく、傍の売店で温泉卵をつくる程度しか活用方法が無いようでした。あぁ、もったいない。この温泉はもったいないことだらけですね。

この温泉について調べてみると、元々は地熱発電を目的として開発されたようですが、期待するような結果が得られなかったので、発電用としての開発は断念され、単なる温泉としての道を歩むようになります。しかし2005年頃に枯れてしまったので、チェンマイ大学が再ボーリングしたところ、再び温泉の噴出が得られたんだとか。上写真の噴泉がおそらくその掘り直した源泉かと思われます。その当時は簡易なパーテーションがあるだけの土管風呂に20バーツで入浴できたようですが、2007年頃には再開発が行われ、噴水装置や個室風呂棟などが整備されました。これによって当地は温泉地として脚光を浴びるものと期待されたのでしょうけど、安普請だったのか翌年には早くもメンテナンス不良等により建物に不具合が現れはじめ、利用客自体も少なかったのか、やがて放置されて廃墟となってしまったようです。タイにはこのように開発されたものの、早々に放置されて荒廃してゆく温泉が多いんだとか。しかも公的機関による開発でその傾向があることを鑑みますと、こうした温泉開発は、リゾートもしくは健康増進施設としての需要を満たしたり、地域振興を図ったり、あるいはマーケットを開拓してゆくことが目的ではなく、開発行為そのものが最終目的であり、温泉はその行為のための大義名分にすぎず、工事が終わればその後の運営や維持はどうでもよい、という思惑が見て取れます。温泉の湯の香ではなく、政治的な臭いが漂っているような気がしてなりません。これは一介の旅人である私の邪推に過ぎませんので、けだし多分に誤った認識もあるかと存じますし、この温泉のように予定していたよりも早く温泉が涸れてしまったのではどうしようもないのですけど、それにしても、ここにせよノーンクロック温泉にせよタケノコ温泉にせよ、お金を浪費する無駄な温泉開発が目立っており、荒廃した光景を目にする度、温泉を愛するものとしては慙愧の念に絶えませんでした。


GPS:20.118031N, 99.798522E,
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タイ チェンライ県ムアンチェンライ郡 パースー温泉

2014年05月16日 | タイ
 
チェンライの中心部に辿り着いた日のこと。街の郊外に熱い温泉が湧いているという情報を得ていたので、ホテルへチェックインする前にそこへ立ち寄ってみることにしました。事前に調べていた情報によればチェンライの街からコック川に沿ってひたすら西進すればよい、とのことでしたが、まずチェンライの街の入り組んだ道を抜けるのに一苦労し、更には街から抜けても温泉までなかなか行き着かないことに焦りを覚え、私が調べておいた情報が正しかったのか不安に陥りましたが、やがて路肩に"HOT SPRING"の案内標識が現れたのでひと安心。コック川の南側に伸びる道はやがて人里から離れてゆき、道も徐々に険しさを増し、河岸の急斜面をワインディングでかわしながら、道なりにどんどん西進していきます。


 
チェンライの街から約23キロ、小さなお寺を過ぎて橋を渡った先に、今回の目的地であるパースー温泉(Pha Soet Hot Spring)がありました。この温泉は公園のようになっているのですが、特にバリアのようなものは無く、すんなり無料で入園できました。


 
公園内にはタイ人が大好きな足湯や後述する温泉プールの他…


 
朦々と湯気を上げる源泉池がお湯を湛えており、その傍らに立てかけられた"Danger"と表示されたプレートがお湯の熱さを訴えていました。またそこには温泉の成分も列挙されており、記載されていた内容は以下のとおりでした。
Temperature(温度) 87℃
Bicarbonate(炭酸水素イオン) 170
Carbondioxide(二酸化炭素) 0.97
Sodium chloride(塩化ナトリウム) 9.7
Sulphate(硫酸塩) 31.6
Fluoride(フッ素イオン) 19.33
Iron(鉄) 0.26
Lead(鉛) 0.01
明示されていないものの、おそらく1リットル当たりの成分をmgで示しているのかと思われますが、最も多いのは炭酸水素イオン、その次は硫酸塩であり、この辺りはタイ北部の他の温泉と似たような構成比率と言えそうです。しかしながらフッ素イオンが20近くもあるのが特徴的でして、これだけ多いのは温泉大国日本でも珍しいのですが、実はここのみならずタイ北部の温泉ではフッ素イオンを多く含む温泉が散見されるようでして(※)、タイの温泉に共通する特徴の一つと言えそうです。また当地域の温泉でしばしば体感されるスベスベの浴感にも一役買っているのかもしれません。
(※)手元の資料によれば、タイ北部の温泉のフッ素溶存量は、サンカムペーンで17前後、メーチャンやファーンで20、パパエ(ポーンドゥアット温泉付近)で11とのことです。


 

ピーコックブルーに塗られた巨大な湯の釜を覗くと、青々としたクリアなお湯が深い底からアブクとともに間断なく上がっており、湯面に温度計を突っ込んだら74.3℃でした。誤ってこんなところに転落したら即死ですね。



青い湯の釜は深すぎて危険だからか、その傍には"Boiling Area"つまり食材を茹でるための小さな槽が設けられていました。ここでしたら安全に温泉卵をつくることができますね。


 
公園内には貸切の個室風呂小屋が建ち並んでおり、料金表によれば、1人使用時で50バーツ、2人使用時で80バーツなんだとか。結構お安いですね。



こんなプールもありましたが、訪問時にはステップにロープが張られており、使用中止のようでした。


 
さてお目当ての温泉プールへ。プールサイドの受付小屋で料金を支払います。外国人客の利用が多いためか、受付のお姉さんは簡単な英語が通じますし、小屋の内部には英語が併記された料金表も掲示されていますので、私のようにタイ語がチンプンカンプンでも問題ありません。受付小屋の左隣には男女別のシャワー棟があり、それぞれシャワー室が2室ずつありますので、その室内で水着に着替えます。


 
とっても広い温泉プールは槽内が水色に塗装されており、清掃も行き届いていて内部にはヌメリ等不快な点は一切ありませんでした。頭上の低い位置に張られているネットがちょっと鬱陶しいかもしれませんが、訳あって張っているのでしょうから(日除け?)、仕方ありません。ちなみに画像右(下)の奥に写っている白い壁の小屋がシャワー室でして、右側が女性用、左側が男性用です。


 
そら豆みたいに片側だけ窪んだ形状をしているプールは、シャワー室側が湯尻となっており、その反対側(公園の入口側)に源泉投入口があります。排水口から最も遠い位置でお湯を注ぐのはごく自然なことであり、湯尻では小さな子どもが遊べるようなぬるさになっている一方で、湯口に近づくに連れて徐々に熱くなってゆくのですが、驚くべきは湯口から落とされるお湯の温度でして、私が計測したところ、なんと74.2℃という火傷必至の激熱な温泉が、何らの防護もなく、パイプからプールへ直接注がれているのであります。過保護且つ責任問題が面倒な日本でしたら間違いなく、直に触れられないよう、柵を設けるなどの措置を施すでしょうけど、こちらの場合は、熱いかどうかは客自身がわかるんだろうから、客が自分で気をつければ良いじゃん、ということなのでしょうね。何らかの措置をとるべきか或いはそのままにしておくべきか、賛否両論あるかと思いますが、海外ではこのように自己責任に任せているケースが多く見られ、私個人としても日本の過保護さには辟易していますので、このようなタイのスタイルには賛同します。

お湯は無色透明で、湯口で僅かにタマゴ臭および味が感じられましたが、ほとんど無味無臭と言っても差し支えないほど匂いや味は希薄です。しかしながらpH8.7という数値が示すとおりにアルカリ性であり、スルスルっと肌を滑るなめらかな浴感が気持ちよく、お湯に浸かれば本物の温泉であることを実感できます。しかもれっきとした完全放流式です。



熱いお湯に浸かりたかったので、湯口の近くで撮影してみました。激熱の湯口がすぐ傍にあるにもかかわらず、私がいる辺りは(体感で)43~4℃くらいでした。表面積が広いので、いくら熱いお湯を注いでもすぐに熱を奪われちゃうんですね。でもお湯の鮮度感は良いですし、浴感も心地よく、人里離れた田舎の静かで清らかな空気のもと、鮮度感のある温泉に入浴すると、開放的な気分が味わえましたよ。しかも湯上がりはサラサラとした爽快感が得られたととも、肌はしっとり保潤しましたので、お肌のコンディションを気にする方にも嬉しい温泉であると言えそうです。

訪問時はフランス人グループが先に入浴していましたが、みなさんプール中程のぬるいエリアで寛いでいらっしゃいました。のんびり長湯するには熱いお湯よりもぬるい方が良いですからね。また、日暮れ近くになってそのグループが去ると、受付小屋のお姉さんも姿を消して無人状態となり、そのタイミングを見計らったかのように、地元の人達が続々やってきました。たとえば、地元の中高生と思しき男子たちは大はしゃぎでプールに飛び込んでいましたし、2歳くらいの小さな娘を抱いたお母さんは、湯尻で娘にシャンプーしながら自分も着衣のまま沐浴していました。観光客のみならず地元の方にも愛されているんですね。環境もお湯の質も満足度の高い温泉でした。


GPS:19.957779N, 99.691094E,



開設時間不明
プール入浴料30バーツ(個室風呂1人50バーツ・2人80バーツ・3人100バーツ)

私の好み:★★+0.5
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タイ チェンライ県メースワイ郡 ランナー温泉

2014年05月14日 | タイ
●ランナー温泉

 
チェンライの南西郊外には日本人でも十分に満足できる温泉があるらしいので、前回取り上げたファーンの地熱地帯に興奮した私は、その時の興奮を維持させながらレンタカーのハンドルを握ってその日の内に現地へ向かうことにしました。まずファーンからメースワイまでは山間部を貫くクネクネ道の109号線を、そしてメースワイからはチェンライ市街へ向かう118号線を走行して北東方向へと進みます。するとメースワイから9~10kmほどで、路肩に今回の目的地である「ランナー温泉」の案内幕が目に入ってくるようになりました。タイ語やアルファベットのみならず、ちゃんと日本語で表記されているのが嬉しいじゃありませんか。しかもアルファベットのスペルも"LANNA ONSEN"と日本語読みなんですよ。


 
118号から案内幕に従って路地に入り、ちいさな集落を抜けて山間の何もないところへ出、更に奥へ進んでゆくと、最後の数百メートルは未舗装となります。


 
未舗装道路の区間に入れば人家もほとんど無くなりますので、迷うこと無く現地に辿り着けるでしょう。ゲート前の幕にもちゃんと日本語表記と温泉マークが表示されていました。なお日本人は温泉マークを見れば即座に温泉を認識しますが(ご年配の方ですと温泉以外に「サカサクラゲ」つまり赤線や連れ込み宿なども連想なさるでしょうね)、これって決して国際的なサインじゃなく、このサインが通用するのは日本とかつて日本の統治下にあった台湾や韓国ぐらいですから、タイの山間部で温泉マークに出会えるということは、日本語を表記するのことと同じ意味合いがあるように私には思えてならず、こんな僻地で日本文化と邂逅できたことにちょっぴり感動してしまいました。


 
このランナー温泉はバンコクに住むお坊さんがマネージメントしているらしいのですが、このお坊さんは日本の温泉が大好きなんだそうでして、仏教関連のイベントで日本へ出張するときには必ず日本の温泉を巡るんだそうです。そしてその温泉好きが昂じて、日本の温泉施設をイメージして当地を開発したのが、この「ランナー温泉」というわけです。ゲート近くに建つバンガローには、日本のおみやげでしょうか、「初心忘れるべからず」と染め抜かれた小さな旗がぶら下がっていました。


 
中央のガーデンを取り囲むように、宿泊可能なバンガローや個室風呂の小屋が並んでいます。お庭はよく手入れされており、山の緑も借景となって、胸いっぱいに空気を吸いたくなるような実に清々しい環境です。ガーデンの中央部にはタイ人が大好きな足湯も設けられていました。



駐車場から見て右側の建物で料金を支払って受付を済ませると、料金と引き換えに湯浴み着1セットとバスタオル1枚は入ったバスケットを貸与してくれました。なお日本語が表記されていた道中の案内とは裏腹に、受付のスタッフさんは残念ながら日本語が全く通じませんでしたし、日本語表記の料金表も見当たりませんでしたので、仕方なく身振り手振りで受付を済ませました。


 
ランナー温泉のお風呂は全て個室風呂となっており、サイズの異なる個室が計9室あって、受付時に利用する個室が指定されます。今回私は5号室をあてがわれました。


 
ドアを開けて室内に入ると、入ってすぐのところに4畳半ほどの何も無いスペースが広がっていました。何もないとはいえ、壁にはフックや鏡が取り付けられていましたので、ここは着替えスペースとして設計されたのかもしれません。その何もない空間を抜けると、浴槽がひとつ据えられている浴室となります。浴室は半露天状態となっていて、山の緑が望める壁の上からそよ風が吹き込み、壁の下にもたくさんの鉢植えが並べられています。また室内には腰掛けもあれば、ボディーソープが備え付けられたシャワーもあったりと備品類が充実している上、上述のように受付ではタオルも貸してくれますから、手ぶらで来ても何ら問題なく入浴が楽しめます。



浴槽はオバケのQ太郎というか鍵穴というか、端的に言えば前方後円的な形状をしており、3~4人は同時に入れそうなサイズを有しています。一般的なお風呂よりは深い造りになっていて、底面にお尻をつけると潜ってしまいそうになるのですが、槽内には幅広のステップが設けられていますので、ここに座って入浴すると胸までお湯に浸かれて良い感じになりました。


 
 
こちらのお風呂では予め浴槽にお湯が張られていたので、わざわざお湯を溜める手間は省けました。しかしながら、はじめのうちはタイ人仕様のぬるい湯加減でしたので、自分好みの温度にする方法はないものかと、湯口に被せられているボックスの蓋を開けてみたら、その中にはバルブがありましたので、このバルブをオープンにしたところ、吐出口からは熱いお湯がドバドバ出てくるではありませんか。その状態でデータを測ったところ61.5℃およびpH8.8でした。お湯の見た目は若干白く霞が掛かっているように見えるもののほぼ無色透明と言って差し支えない状態でして、薄いながらも明瞭な硫化水素感が感じられました。細かく表現しますと、タマゴ感と砂消しゴム感を足して2で割ったような知覚が得られたのですが、どちらかといえばタマゴ感の方が勝っており、特に湯口ではタマゴ臭とタマゴ味をしっかりと確認できました。



個室で誰にも見られませんから、心置きなく全裸入浴できるのが嬉しいところです。しかも普通の個室と違って露天状態ですから、それなりの開放感や外気の爽やかさも得られ、入浴環境はとっても良好です。またpH8.8という数値が示すようにアルカリ性のお湯であり、肌を擦るとスルスルっと滑るなめらかな浴感が心地よいので、いつまでも長湯していたくなります。なお槽内には循環装置など無く、バルブから落とされたお湯は湯船を満たした後、浴槽縁の切り欠けから排水口へと溢れ出ていきます。すなわち完全放流式です。お湯は良質でお風呂の造りもしっかりしており、しかも裸で入れますから、温泉に一家言ある日本人でもきっと満足できるでしょうね。私もとても気に入りました。


 
湯上がりに他の個室も覗いてみました。全9室のうち、1・2号室はコンパクトなサイズ、3~6室は私が利用した5号室とほぼ同様のレイアウト、7~9号室は家族みんなで一緒に入れるような広めのサイズとなっていました。上画像は広めの浴室である9号室の外観と内部です。



●ポーン・プ・フォーン温泉(たけのこ温泉)

ランナー温泉は自家源泉があるのではなく、数十メートル離れた源泉からお湯を引いています。個室風呂の小屋のすぐ裏手にありますので、風呂あがりに立ち寄ってみました。この源泉はポーン・プ・フォーン温泉(Pong Pu Fuang Hot Spring)と称し、正面には温泉名が記されたデカいモニュメントが立っており、その上には面白いことにタケノコとタマゴのオブジェが載せられています。

以前この地では熱い温泉の自噴泉が2つあり、いずれも有効活用されずに、ただ垂れ流されていたんだそうです。このブログでは何度もご登場いただいているYさんなど、現地に滞在する温泉愛好家の日本人のみなさんは、そんな勿体無い状況を嘆きつつ、当時この温泉で地元民がタケノコをお湯に浸してアク抜きしている光景を目にして「たけのこ温泉」というニックネームを付けたんだそうです。
その後、地元の役場が温泉開発に乗り出して、上画像の大きなモニュメントやトイレ・売店などを建設したのですが、その際、モニュメントの上にタケノコが載っかっているのを見て、やはりこの温泉は地元にとってタケノコを茹でたり温泉玉子をつくる程度のものに過ぎなかったんだと実感したんだとか。



源泉の周りにはこのように小屋が幾棟も立ち並んでいるのですが、すっかり放置されて完全に廃墟となり、周辺も荒れ果てていました。ここには湯量豊富な源泉があるのに、肝心要の入浴施設が設けられなかったのです。それでは人が来ませんよね。ランナー温泉が出来たのは2010年頃のようですから、それまでの間は、廃墟に囲まれた中で自噴した温泉が垂れ流され続けてきたわけです。お湯も勿体無いですし、なにしろ多額の公金を費やしておきながら、すぐに廃墟と化してしまった役所の開発行為も実に勿体無い。


 
「国破れて山河あり」ではありませんが、役所の開発が無駄に終わった後でも温泉は絶えることなく自噴しており、このようにコンクリでしっかりと護岸された源泉は地元民の生活用として、いまでも使われております。なぜかこの源泉の傍には柄の長い熊手が置かれていたのですが、その理由は後ほど明らかになります。


 
使われているといっても浴用ではなく、開発が行われる前と同様に、食材をボイルする程度です。底からは無色透明の澄みきったお湯が泡と一緒にどんどん沸きあがっているのですが、私が温度を計測したところ67.8℃でしたから、入浴なんて以ての外、食材のボイル以外には使えないのであります。しかもお湯はどんどん川へと捨てられています。


 
私が源泉に温度計を突っ込んでいると、バイクに乗ったおじさんがやってきて、カゴに入ったたくさんのタマゴを荷台から下ろし、傍らに置いてあった熊手の先にカゴを引っ掛けて、そのまま源泉の中に沈めました。温泉たまごを大量生産しているんですね。温泉とは関係の無さそうな熊手が置かれていたのは、このためだったのでした。


 
おじさんが卵を茹でていた源泉の隣には、このように石積みの仏塔のようなタワーが立てられており、そのてっぺんからは温泉が噴き上がっていました。おそらくこの塔は役所による無駄開発の際に立てられたものと思われ、こちらもほとんど放置されたままとなっており、塔の周りに熱いお湯が溢れ出てドロドロになっていたり、非常に滑りやすかったりと、近寄りがたい状況だったのですが、足元に十分注意して慎重に塔に接近して温度を測ったところ、63.8℃のお湯が噴出していることがわかりました。塔には配管の他、トタン波板が掛けられていましたので、これらによってお湯が集められ、ランナー温泉へと導かれているのでしょう。バンコクのお坊さんがランナー温泉を開発してくれたおかげで、塔のお湯は有効活用されるようになったんですね。


(以下、ランナー温泉に関する情報)

GPS:19.715874N, 99.578736E,

営業時間不明
100バーツ
ボディーソープあり、バスタオル貸与あり

私の好み:★★★
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タイ チェンマイ県ファーン郡 ファーン温泉 後編

2014年05月13日 | タイ
前回記事「チェンマイ県ファーン郡 ファーン温泉 前編」の続編です。


 
前回記事では国立公園内にあるファーン温泉の源泉地帯を散策しましたが、今回記事ではようやくお風呂に入りますよ。園内の麗しい緑や花々に抱かれながらひっそりと佇む入浴ゾーンには、露天風呂とスチームバスの2種類があり、利用する施設によって料金が異なりますが、今回は露天風呂のみを利用することにし、受付で20バーツを支払いました(スチームバスは30バーツ)。


 
立派な更衣室があり、室内には南京錠付きのロッカーも用意されていましたが、肝心の鍵が見当たらなかったので、ロッカー利用の際には受付に申し出る必要があるのかもしれませんね。


 

露天風呂は一応男女別に分かれており、当然ながら私は男湯に入ったわけですが、ここが国立公園とは思えないほど綺麗に整備されており、アプローチ周りの植栽の美しさはまるで高級リゾートのガーデンを散歩しているかのようです。
露天風呂にはほぼ同じサイズの丸い槽が2つあり、投入口からは比較的熱い46.0℃のお湯が注がれていましたが、加水ができないらしく、湯船の温度を抑えるためか、投入量は絞り気味でした。特筆すべきは水素イオン濃度の数値でして、今回のタイ北部温泉巡りでは最も強いアルカリ性であるpH9.5が計測されました。この数値のお湯に入るとどんな浴感が得られるのでしょうか。楽しみですね。

 
2つの丸い槽のうち、左側は槽内は白くペイントされており、ややぬるめの38.3℃、お湯も若干鈍り気味で、明らかにお湯の投入量が少ない様子でした。


 
一方、タイルのターコイズブルーが目に鮮やかな右側の槽は41.8℃と日本人向きでして、お湯も左側の槽より遥かにシャキっとしており鮮度感がしっかりと伝わってきました。なお両浴槽とも槽内側面の湯面上に穴があってそこから常時排湯されていますし、槽内で循環させるような装置もありませんから、完全放流式の湯使いであることには相違ありません。
お湯の見た目は無色透明で湯面からは芳醇なタマゴ臭が香り、口にするとタマゴ味や砂消しゴム的な硫黄感、そしてほろ苦みが感じられます。そしてpH9.5という数値が期待させてくれたように、浴感が非常に特徴的でして、お湯に触れるとまるで全身に石鹸を塗りたくったかのような、ヌルヌル感を伴う強いツルスベ浴感があり、湯中で自分の左腕を撫でてみると、その勢いで撫でた右手がどこかへ飛んでいっちゃいそうになるほどツルツルとよく滑るのです。私個人としては「タイのウナギ湯」と称したくなるほどの魅惑的な浴感でした。



ご覧のように男湯のお風呂は結構オープンな造りになっており、園内を歩く人から丸見えなのですが、水着着用ですから見ても見られてもお互い問題ないでしょうし、何しろ木々の緑や花々を目にしながら、青空の下で入る温泉は実に爽快です。お世辞抜きでこの開放的なお風呂はとても気に入りました。
なお入浴ゾーンに施されている植栽や石の壁は、ガーデンとしての景観を作り出しているばかりでなく、女湯の目隠しを兼ねています。いくら水着(もしくは湯浴み着)着用とはいえタイ人女性は恥じらいが強いので、そんな方でも気兼ねなく湯浴みできるよう、目隠しと景観の両方を考慮して、このような造りにしているんですね。
実はこの時も私がのんびり入浴していると、遠足に来ていた女子中学生達が、受付で湯浴み着を借りて次々に女湯へと入っていきました。目隠しされていますから内部の様子はわかりませんが、「女三人寄ればかしましい」と言うように、この時は10人以上集まっていましたので、かしましいなんて表現じゃ足りないほど大騒ぎで、とっても楽しそうでした。みんなで温泉に浸かるなんてなかなかできませんから、きっと良い想い出ができたでしょうね。


 
入浴ゾーンの隣には軽食ができる売店があるほか、そこにはマッサージ室も併設されており、店頭には「マッドスパ」という文字とともにメーホンソーン県のプークロン・プーナム・ローン温泉の写真が掲示されていました。プークロン・プーナム・ローン温泉といえばマッドスパで有名ですから、ここでも温泉の泥を使ったマッサージを施術してくれるのでしょうね。

環境も温泉も素晴らしく、実に気に入りました。おすすめです。


GPS:19.964021N, 99.154374E,


温泉受付7:30~19:00
外国人入園料100バーツ、乗用車通行料30バーツ
露天風呂20バーツ(スチームバス30バーツ)

私の好み:★★★



コメント
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