温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

燕温泉 山の湯宿 針村屋

2020年02月28日 | 新潟県



前回記事で申し上げましたように、新潟県の名峰妙高山の頂上から下山する途中で、私は称明滝の下にある白濁の露天風呂に浸かりましたが、完全に下山した後にもシャワーで全身を洗って綺麗にしながらゆっくり湯船で疲れを癒したいと考え、その入浴先として、登山口(下山口)から最も近い場所にある燕温泉の旅館「針村屋」を訪ねることにしました。
帳場で入浴の可否を訪ねると快く受けいれてくださいました。下山者が多い場所ゆえ、私のような日帰り入浴利用もウェルカムなんですね。なお貴重品は帳場で預かってもらいます。階段を上がって2階へ。



階段を上がって左に折れると、紺と紅の暖簾をさがっています。脱衣室は至ってシンプル。白い壁紙が張られた室内に、白い棚が括りつけられ、そこに青い籠が置かれているばかりです。



浴室は谷に対して開けており、私が利用した日中はとても明るい環境で入浴することができました。



洗い場にはシャワー付き混合水栓3つ並んでおり、ボディーソープやシャンプー類も備え付けられています。



浴槽はタイル貼りで、その大きさを計り忘れてしまいましたが、おおよそ5~6人サイズと言ったところ。石積みの湯口からトポトポとお湯が注がれています。私が入室した時、湯船のお湯は比較的透明度が高い状態でしたが、湯船に入った途端、底に沈んでいた湯の花が舞い上がって一気に白濁しました。とはいえ濁り方はさほど強くなく、底が目視できる程度です。




内湯の隣には「渓雲の湯」と名付けられた小さな露天風呂が設けられています。一坪あるかないかの狭さですが、深い谷を一望する爽快なロケーションです。私の入浴時にはちょうど雲が谷を上がっており、まさに渓雲の湯という名に相応しい状況でした。湯船は2人入るといっぱいになってしまうコンパクトなものですが、こちらにもしっかりと白濁湯が注がれ、内湯より若干ぬるめながらも程よい湯加減となっていました。

内湯・露天ともに燕温泉の集合升から引いたお湯で、一見すると透明なのですが、よく見ると薄く青白く濁っており、上述のように底には白い湯の花が沈殿しているため、人が入るなどしてお湯に流れが生じると、それらが舞い上がって白濁を呈します。お湯からは焦げたようなたまご臭が漂い、口に含むとイオウ感と甘味、粉っぽい味、そしてほろ苦味が感じられます。肌に馴染んでしっとりするとても良いお湯です。なお館内表示によれば、加温加水循環を行っていない完全掛け流しの湯使いとのことです。



2階へ上がる階段の右手(道路側)には座敷の部屋があり、日帰り客用の休憩室として開放されています。窓を開け、座布団に座りながら、お湯で火照った体を冷まし、ゆっくり休憩させていただきました。
妙高の自然に抱かれた静かで清らかな環境の中、掛けながしの白濁湯に浸かれる素敵なお風呂でした。次回は宿泊で利用したいと思います。


温泉分析表見当たらず
燕温泉(集合升)
カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉

新潟県妙高市大字関山6113-3
0255-82-3121

日帰り入浴時間不明
600円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品帳場預かり、

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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称明滝の下の露天風呂

2020年02月22日 | 新潟県
昨年(2019年)の秋の某日。私は越後富士の別称を持つ新潟県の名峰妙高山と、それに連なる火打山を縦走しました。


笹ヶ峰から登っていった火打山の山頂では、あいにく全視界を濃い雨雲に覆われてしまい、景色を眺めることができなかったのですが・・・


山小屋で夜を越してから登った翌朝の妙高山山頂では見事に晴れ・・・


四方に広がり、十重二十重に果てしなく続く、この上なく美しい山稜を眺望することができました。日常生活の世界では決して得ることのできない絶景を、飽きるまでひたすら眺めていられる幸せは、苦労して頂へ登り着けた者だけが得られる特権です。これだから山登りはやめられません。

さて、無事二峰の連続登頂を終えた後は、燕温泉へ向かうルートを選んで下山しました。なぜかと言えば・・・


ちょうどルートの中間にある称明滝に用事があったからです。
滝を見たいのではなく、滝に用事があったのです。登山しないと辿り着けない滝であるため知名度は低く、それゆえ観光名所にはなっていないのですが、そんな滝に私はいかなる用事があったのか。マニアの方なら言わずもがなですが、どういうことかと申しますと、滝行するわけでも、治山工事をするわけでもなく・・・


滝の真下に立派な温泉の露天風呂があるからです。
このあたりはふもとに広がる温泉地の源泉のひとつとなっており、目の前から白濁した硫黄の温泉がコンコンと湧いているのです。


岩を組みモルタルで固められた立派な浴槽は、地元有志の方がつくったもの。
温泉の源泉に築かれたこの浴槽は、普段は空っぽであることが多いのですが、私の訪問日はたまたま湧いたばかりの白濁硫黄泉が注がれ、十分な嵩にまでお湯が張られていましたので、失礼して入浴させていただいたのです。

ちなみに、目の前で轟を上げている称明滝から落ちる水にも白濁した温泉成分が濃く含まれているため(尤も滝の時点では完全に冷めています)、滝はまるで生糸を垂らしたように真っ白に見えます。また滝壺付近でもお湯が自然湧出しているため、浴槽が空っぽの時に当地を訪れた温泉マニアのみなさんは、泥まみれになりながら滝壺の湯溜まりに入っているらしく、ネット上で当地を調べると、滝壺で尻湯をしながら滝飛沫を浴びている画像や記事を散見します。私を含めた温泉マニアは、常識人が避けるような行動を嬉々としてしまう傾向にあり、当地に関する記事を拝見する都度、その変態性に思わず共感していたのですが、私は普段の行いが良くないにもかかわらず、どういう訳かこの日ばかりは運よく浴槽にお湯が張られていたため、私は滝壺で泥にまみれた「滝行」のような変態的行動をとらずに済みました。


お湯は目の前の源泉からホースで引かれており、湯船の温度は43~4℃でちょっと熱めでしたが、その熱さのおかげで身がシャキッと締り、疲れがすっかり吹き飛びました。まわりにはご丁寧にベンチや桶まで用意されていますので、桶をお借りして入浴前に掛け湯して、汗を落としてから湯船に入りました。

お湯はたしかに白濁しており、湯の花もたくさん浮遊していますが、綺麗な青みを帯びており、また湧出してまだ間もない新鮮な状態であるため、そこまで強い濁り方を呈しているわけでもありません。またお湯からは甘み伴う硫黄味とほろ苦みが感じられますが、そこまで硫黄感が強いとも言えず、むしろ優しいマイルドな感覚が印象的でした。湯船に入ると引っ掛かる浴感が全身に得られます。あくまで私の勘ですが、おそらく重曹と硫酸塩が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、麓の赤倉温泉街で入るお湯とは全く異なり、むしろ燕温泉に近いタイプのお湯と言えるでしょう。


目の前で落ちる真っ白な滝を仰ぎ見ながら、フレッシュな白濁の硫黄泉に浸かるひとときはこの上ない極楽です。登山の疲れが一気に癒されました。

分析表なし

新潟県妙高市関山
麓から最も近いアクセス方法は、燕温泉より燕登山道をひたすら登るルートです。

お湯が張られていれば入浴できますが、通常は空のことが多いので、入れるかは運次第です。
無料
ほぼ野湯に近いお風呂のため備品類なし

私の好み:★★★
コメント (3)
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韓国の目次

2020年02月21日 | 韓国
2020.2.22作成


当ブログで記事にしてきた韓国の温泉や旅行記を一覧にしました。一部の旅行記を除き、県別に分けております。



海雲台温泉 海雲温泉
海雲台温泉 海雲台温泉センター
東莱温泉 大盛館温泉ホテル
東莱温泉 虚心庁
東莱温泉 マンス湯
水安堡温泉への道
水安堡温泉 水安堡温泉ランド
水安堡温泉 水安堡Hi-Spa
温陽温泉 神井館温泉湯


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温陽温泉 神井館温泉湯

2020年02月16日 | 韓国

年明けから連続して韓国の温泉を取り上げてまいりましたが、今回でひとまず打ち止め。
最後にご紹介するのは、ソウルから容易に日帰り可能な距離にある忠清南道牙山市の温陽温泉(オニャンオンチョン。온양온천)です。韓国で最も古い温泉らしく、その歴史は百済の時代まで遡れるんだそうですが、長らく王朝の保養や湯治に使われ続け、歓楽や庶民の入浴といった用途へ開放されるようになったのは日本統治時代なんだとか。
ソウルからこの温陽温泉へ向かうには、いくつかの方法がありますが、私はKTXで天安牙山駅まで乗り、その駅構内で接続しているソウルの首都圏電鉄1号線に乗り換えて、温陽温泉駅で下車しました。



電車の運転本数は決して多くないのですが、駅舎はなかなか立派。
駅前広場も広く、そのスペースを活かして、私の訪問日には何やらイベントが開催されていました。


駅の周辺には庶民的な街並みが広がっているのですが、温泉を駅名に冠する場所だけあって、駅の徒歩圏には温泉の公衆浴場が点在しています。たとえば入口にアーチが立っている上画像の施設とか・・・


線路に近い場所に位置するこの施設・・・


商店街の中で存在感を放つこの施設や・・・


路地の奥にポツンと佇むこんな施設まで、とにかく駅前周辺をあてもなくフラっと散歩しただけでも、たくさんの温泉公衆浴場を見つけることができました。絶対数は大分県別府に歯が立ちませんが、一定面積当たりの密度でしたら、意外と良い勝負になるかもしれません。できれば、その全てをハシゴしてみたかったのですが、旅程の都合で1ヶ所に絞らざるを得ませんでした。


関西の商店街を彷彿とさせる庶民的なアーケード商店街をどんどん歩いてゆくと・・・


アーケードを抜けた先の広い通りに面して建っているのが、今回私が目指した温泉公衆浴場「神井館(シンジョングァン 신정관)温泉湯」です。男女別の入り口、庇の温泉マークなど、昭和の日本でよく見られた銭湯と同じような懐かしい佇まいに、思わず心が躍ってしまいました。調べたところによると、この浴場は当地で営業する最古の浴場らしく、70年近く前からお客さんに愛され続けているんだとか。なるほど、施設名の下にハングルで「第1号元湯」と書かれていますね。


男女別の入口を入ってすぐのところにある小さなカウンターは、日本の銭湯と同じ番台です。中にいるおばあちゃんに湯銭を支払うと、「入浴券」と漢字で印刷された赤い小さな券が手渡されますので、それを手にして脱衣室へと向かいます。


番台の裏には衝立に囲まれた古い革張りのソファーが置かれていました。何十年にもわたって湯上がり客がここに座り、汗を拭いながら休憩していたのでしょう。茶色い皮革の放つ鈍い光沢が、浴場の歴史を静かに物語っているようでした。


入室するや否や一気に40~50年前へタイムスリップしたかのような錯覚に陥る脱衣室の雰囲気もたまりません。中には三助のおじいさんがいるので、先程手にした入浴券をその方に手渡しました。なお一般的な韓国のサウナと違い、タオルは有料のようです(おそらく200ウォン)。


浴室も一般的な韓国の銭湯に比べると小さいのですが、天井に湯気抜きを設けたその場内は飾り気がなく実用本位。相当の年季が感じられます。九州あたりの古い温泉銭湯を彷彿とさせるその味わい深い雰囲気に私は心を奪われ、しばしその場で立ち尽くしてしまいました。床は全面タイル張りですが、至る所に補修の跡があり、何度も何度も修繕を繰り返しながら今日まで使われ続けてきたことがわかります。

洗い場には7か所のカランが並び、その反対側には立って使うシャワーが5ヶ所取り付けられています。カランやシャワーから出てくるお湯はおそらく温泉でしょう。古い銭湯ですからカランは混合水栓ではなく、熱いお湯と水が別々ですので、カランを使う際には水栓の下に大きな盥を置き、お湯と水を適温に混ぜてから使います。こんなところも九州の古い温泉銭湯みたいです。


温泉浴槽はひとつだけですが、アメーバのような歪な形状をしており、10人は余裕で入れる大きさです。お湯は浴槽内で投入されており、たしかオーバーフローがあったような気がしますが(記憶が曖昧ですいません)、浴槽内に循環用の吸引口は見当たらず、そもそも料金が安いので循環装置を導入しようにもできないでしょう。お湯は無色透明無味無臭でアッサリしたタイプですが、湯船に浸かるとしっかりツルスベ浴感が得られました。泉質はわかりませんが、おそらく弱アルカリ性の単純泉かそれに近いタイプではないかと思われます。湯加減もちょうど良く、レトロな雰囲気の中で実に心地よい湯浴みを楽しむことができました。

泉質不明


ソウル1号線温陽温泉駅より徒歩10分
忠清南道牙山市温陽1洞

3500ウォン
石鹸あり、ロッカーあり、ドライヤー有料(100ウォン)

私の好み:★★★
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水安堡温泉 水安堡Hi-Spa

2020年02月10日 | 韓国

前々回の記事では水安堡温泉までの道のりと温泉街の様子を取り上げましたが、その中で、表通りに面した角の曲面ガラス窓に53℃を示す温度計を大きく描いた建物があることをご紹介しました。この建物は「水安堡Hi-Spa(수안보하이스파)」と称し、図書館や集会所など公的な施設のほか、内部に大きな温泉公衆浴場を擁していますので、入ってみることにしました。



こちらが入口です。たしかに温泉浴場というより、お役所みたいな雰囲気でした。でもその左側には観光地図が掲示されているほか、上部には「1日4800トン」「疲労回復」「53℃」「地下250m湧出」といった当地の温泉をアピールする文言が書かれているので、温泉に関係する建物であることがわかります。



入口ドアの脇に掲示されていたフロア案内。浴場は地下にあり、2階から上には図書館や住民センター・観光協議会など公的な施設が入っているようです。



まずは1階玄関を入り、正面左側の番台で座っているおばちゃんに湯銭を支払います。公営だからなのか、前回記事で取り上げた「温泉ランド」よりも料金が安いんですね。



女湯は番台の左側、男湯は右側という感じで、それぞれ入口が分かれており、番台の前には休憩用のベンチが置かれています。脱衣室は番台と同じ1階にあり、小さな子供なら走り出してしまうのではないかと思われるほど中は広々しています。なお下足箱(任意の場所を使う)の鍵と脱衣室のロッカーキーは共通でした。



浴場は地下なんですね。上画像は脱衣室から浴場へ下る階段を写したもの。全裸になって階段を上下すると、体にぶら下がっている臓器と言うか付帯物と言うか、いわゆる息子(しかもダメ息子)が動きにつられて上下運動を繰り返すので、通常の生活では得られない不思議な感覚を得ながら異国のお風呂へと向かったのでした。

浴場の中では多くのお客さんがいらっしゃいましたので、写真はございません。文章のみですのであしからず。

浴場はとても広く、天井も比較的高いので、地下であることを忘れてしまいます。洗い場も広く確保されており、たくさんのシャワー付きカランが並んでいました。奥の方にはアカスリ場とサウナが、そしてサウナの近くのちょっと高い位置に大きな水風呂がそれぞれ配置されています。私の訪問時には垢すり台の上でオジサンが気持ちよさそうな面持ちでゴシゴシと全身を擦られていましたが、客はもちろん、施術をするオジサンも途中から水着を脱いでスッポンポンになったことには驚きました。

浴場の中央に2つの浴槽が設けられています。主浴槽と称すべき大きなものは湯加減が39℃に設定されており、槽内では泡風呂装置も稼働しています。この湯船に入って天井を見上げると、地元の観光地や名産物・グルメ等を撮った写真が電照パネルになって大きく掲示されていました。湯あみ客に訴えかける地域振興策の一環なのでしょうか。
この主浴槽の隣には、3分の1程度の大きさの副浴槽があり、44℃というちょっと熱めのお湯が張られていました。私が訪れたのは夏の暑い日でしたから、みなさんは39℃の主浴槽かサウナ近くの水風呂に集まる傾向がありましたが、身をシャキッと引き締めたいと考えるオジサンたちは涼しい顔をしながら44℃の湯船に浸かり、瞑目していらっしゃいました。

浴槽のお湯は無色透明無味無臭で癖のないアッサリとしたタイプです。主副量浴槽とも槽内にてお湯が投入されており、いずれにおいても(私が見た限りでは)浴槽内循環が見られず、熱い浴槽から39℃の主浴槽へお湯の流れ込みも見られました。


水安堡温泉では温泉資源を集中管理しており、玄関横には日付とともに、外気温、温泉の湧出温度、この日の湧出(汲み上げ量)、そして供給温度がそれぞれ表示されていました。マニアとしては重要な関心事項です。

安くて広いからか、私が訪問した夕方には常時10人以上のお客で賑わっていました。地元中高年のオアシスなのでしょう。地元の雰囲気が味わえる便利で快適な温泉浴場でした。



忠清北道忠州市水安堡面温泉里227-1(충청북도 충주시 수안보면 온천리 227-1 )
043-846-8898

6:00~21:00 年中無休
入浴6,000ウォン
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★
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