前回記事の「折戸温泉」から西へ進んで、深耶馬渓の核心部へと近づいてまいりました。深耶馬渓を南北に貫く県道28号線沿いには、温泉浴場が点在していますが、その中のひとつである「岩戸湯」で入浴してまいりました。民家と見紛う小さな建物なので、注意しないと見逃してしまうかもしれません。
看板の下にある小屋は、温泉のポンプ小屋かな?
上で「民家と見紛う」と申し上げましたが、経営しているファミリーのものと思しき靴がたくさん並んでいる玄関は、まさに民家そのもの。そんな玄関の前で靴を脱ぎ、ドアを開けて中へ入ります。入ってすぐ左手にカウンターがあり、声をかけると、奥の居間と思しき部屋からおばちゃんがやってきて対応してくださいました。玄関があるフロアには有料のお座敷があり、だんご汁などの軽食がいただけるようですが、今回は入浴のみの利用としました。
お風呂は階段で1フロア下ったところ。暖簾をくぐった先の脱衣室もやはり民家然としているのですが、フローリングの室内は綺麗に維持されているので、使い勝手に問題ありません。私がこの脱衣室で着替えていると、サッシの向こう側にある浴室から、ボコボコとお湯が噴き出る音が響いてきました。勢いよく温泉が吐出されているのでしょうね。その音を耳にすると、お湯への想いが否応無く前のめりになってしまいます。
お風呂は男女別の内湯のみですが、白く塗られた壁と床に敷かれた黒い石板のコントラストが鮮やかで、また2方向が窓ガラスになっているため、室内は明るくて開放的です。窓と並んで配置されている洗い場には、シャワー付きカランが2基取り付けられており、コックを開けると真湯が出てきました。
浴室の窓外に広がる景色がとっても長閑で美しい。小さな耕作地の向こうには、深耶馬渓の絶景をつくりだしている山移川のせせらぎが流れ、そして川の対岸に青々とした山が広がっています。私が訪れた日には心地よい微風が吹いていたので、窓を全開にして半露天風呂状態にし、風を体で感じながら湯浴みさせていただきました。
脱衣室まで響いていたボコボコ音の正体は、言わずもがな温泉の湯口です。上画像では水平方向に伸びる細いパイプが写っているのみですが、浴槽内にもうひとつ投入口があり、そこから勢いよく噴出されるお湯がボコボコという音を立てていたのでした。また画像に写っているパイプから吐出されるお湯も、まるで間欠泉のように時折ドバッと大量にお湯を噴き出すこともありました。エアリフトポンプでお湯を汲み上げているのか、送湯される過程でエアを噛んでしまうのでしょうね。
台形の浴槽は4〜5人サイズで、浴槽内はタイル張りですが、縁は緩やかな曲線を描く洗い出しになっており、ちょっと古風ながら柔らかな印象をもたらしていました。そしてその縁の切り欠けから湯船のお湯が惜しげも無く捨てられていました。おそらく完全放流式の湯使いかと思われます。お湯は淡い紅茶色の透明で、浮遊物や泡つきなどは見られませんでした。お湯を口に含むと、木材を焦がしたような香りとほんのりビターな味わいが感じられます。湯加減は40℃前後という長湯仕様。ツルツルスベスベの滑らかな美人湯。体への負担が少ないので、時間を忘れていつまでも浸かっていられます。また湯上がりもさっぱり爽快。長閑な景色を眺めながら爽快系の湯浴みを楽しめた、とっても気持ち良い一湯でした。
単純温泉 40.0℃ pH7.7 18L/min(自噴・掘削450m)
その他のデータは不明
(平成元年12月22日)
大分県中津市耶馬溪町大字深耶馬3216-2 地図
0979-55-2923
10:00~20:00 水曜定休
300円
備品類なし
私の好み:★★★