栃木県最後の村だった栗山村が市町村合併によって消滅したのは2006年3月で、それ以来日光市として新たなスタートを切ったわけですが、当地が山奥の過疎地であることには変わり無く、訪れればおよそ関東地方とは思えないような深山幽谷の秘境を目にすることができましょう。
川俣湖へ伸びる県道23号線を走っていると、上栗山周辺で日帰り温泉の存在を誇示する幟がたくさん立てられている箇所に出くわします。この幟につられて鬼怒川を渡って上栗山集落に入ると、やがて温泉施設「開運の湯」に辿りつきます。温泉施設といってもほとんど集落の共同浴場といった趣でこじんまりしており、脱衣所も浴室も決して広くありませんが、ウォシュレットが設置されていたりドライヤーが置かれていたりと、共同浴場の割にはなかなかしっかりしています。
お湯の方もなかなかの実力を有しており、赤茶けた色(赤錆の色)に濁るお湯が掛け流されて浴槽から溢れ出ていました。溢れ出るところを中心に浴槽まわりは金気(鉄分)の析出によって赤茶色に染まっています。湯船からは鬼怒川の渓流を見下ろすことができました。お湯からは金気味と薄らとした塩味が、また金気の匂いと何かが焦げたような匂いが感じられました。周辺の温泉は無色透明な泉質のものが多いので、こうした赤茶色の濁り湯は貴重かと思われます。
特筆すべきは湯上り後にいただくお漬け物です。入口のホールにはこたつが置かれ、いつも2人ほどの地元のお婆ちゃんがそこに入っているのですが、湯上り後の客をこたつに招きいれて、卓上に並べられているお漬け物やちょっとした惣菜類を御馳走してくれるのです。お婆ちゃんは交代制でいつも同じように接してくれるかは不明ですが、私の訪問時は他の客も含めて歓迎してくれました。提供される食べ物はすべて地元の畑か山で採れたものばかりで、シンプルな味付けながらも素材の味が十分に活きており、また新鮮ゆえの食感も素晴らしいものがありました。地元の方との話に華を咲かせながら、地元のおいしい漬物や惣菜をいただくと、あぁここに来てよかったと実に心温まる思いがします。ハードだけではなくソフトこそ大切なんだと思い知らされたお風呂でした。
ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉
50.2℃ pH7.4 成分総計1958.5mg/kg
栃木県日光市上栗山179-31 地図
0228-97-1126
9:00~17:00
500円
私の好み:★★★