今回トルコ温泉めぐりの旅において、足として大活躍したのがレンタカーです。予算などの都合により利用できたのは4日間だったのですが、それでも公共交通機関では訪問が難しいような場所を含め、限られた時間の間に多くの温泉を効率よく廻ることができました。私が誘惑されるような鄙びた温泉は、交通の便が悪いところに立地していることが多いので、公共交通機関よりはるかに機動力が勝る車は、温泉巡りに欠かせません。
拙ブログではこれまで、台湾・アイスランド・マレーシアで初めてレンタカーを利用した際の体験記を書き綴ってまいりましたが、これらの同様に今回の記事では、トルコで初めてレンタカーの借りた際の実体験を初心者目線で書き綴り、自分の旅の備忘録としてだけでなく、今後レンタカーでトルコを巡ろうとお考えの方に、微力ながらお役立てくださればと考えております。
●予約・貸出・返却
トルコのレンタカー事情は他の各国と大差なく、少なくとも私が利用した限りでは、ご当地ならではの特別な手続きや商習慣のようなものも無かったように感じております(トラブルが発生した場合はどうなるかわかりませんが…)。当地には国際資本の大手レンタカー会社も進出していますし、現地資本も業者もたくさんあります。また都市や有名観光地を中心にして、各地の各社の営業所がありますので、ニーズに応じて使い分けられるかと思います。
今回私は世界各国にネットワークを持つAVISを利用しました。現地資本よりも料金は高めですが、これまで他国で利用した時も問題が無かったので安心できますし、他の大手業者に比べて全体的な料金が低めに設定されていたので、トルコでもAVISを選びました。
AVISのブルサ営業所は、私が宿泊した温泉地チェキルゲからブルサ中心部へ向かうチェキルゲ通り沿いにあり、ホテルから徒歩10分ほどの距離でしたので、ホテルのチェックアウト後に直接歩いて営業所まで赴きました(営業所の位置はこちら)。
予め出発前にインターネット上で予約を済ませて、予約確認のメールをプリントアウト。貸出当日は営業所へ直接出向いて、カウンターにて「予約をしている●●です」と名乗ってメールを提示したところ、スムーズに手続きが進みました。ここのスタッフは英語が流暢なので、トルコ語がわからなくても大丈夫。貸出手続きの際に必要なものは、以下の4点です。
・パスポート
・日本の免許証
・国際免許証
・クレジットカード
カウンターで手続きをしている最中に、別のスタッフが駐車場から車をもってきれくれました。ほほぉ、この車が今回の私の相棒になるわけだな。この車については後述にて詳しく述べます。この実車については外装状態や燃料計の確認が行われ、英語対応の緊急連絡先について書類を用いながらきちんと説明されました。日本でレンタカーを借りる時と同じように、諸々の確認はキッチリしており、大変安心できます。
当然ながら車のサイズや排気量等によって料金クラスが異なるのですが、今回私が選択した4ドア・ATのエコノミークラスですと、免責補償(CDW)・車両盗難保険(TP)・税金を含めて4日間合計で約650リラ(33,000円弱)で、これにオプションとしてGPSが1日当たり15リラ加算されました。支払いは貸出時に行うのですが、この際にカードからデポジットとして300リラ余計に引かれます。もちろん、無事に返却することにより、このデポジットはちゃんと返金手続きされました。なおこのAVISなど一部業者では他営業所への乗捨が可能ですが、乗捨料金がかなり高いので、今回は貸出と同一営業所へ返却しました。
オプションで貸し出してくれたGPSは、欧米では結構なシェアを誇るオランダ・TOMTOM社製でした。設定によっていろいろな言語で表示することができるらしく、メニューの中には日本語も見られましたが、なぜか変更が上手くいかず、旅行中は仕方なくトルコ語表示のまま使い続けました。でも、そんなこともあろうと、私は事前に訪問したい場所のGPS座標をGoogle Mapで調べておいたのですが、これが大正解。地名の入力方法がわからなかったり、入力できてもデータベースとマッチングできずに地点検索されなかったりと、海外で自動車用GPSを使う場合には、現地で戸惑うことがしばしばですが、そんな場合でも世界共通のGPS座標(つまり緯度と経度)がわかっていればピンポイントで検索できますから、非常に有用でした。私のトルコ温泉レポート各記事で、各ポイントのGPS座標を掲載しているのはこのためです。
ちなみに、このGPSは郊外など都市以外では問題なく反応くれたのですが、都市部では画面表示がわかりにくくて大通りと路地が判別できず、一方通行や諸々の通行規制にも対応がいまいち。更には画面の現在位置が実際より遅れる上、若干ズレて表示されるので、かなり使いづらくて手を焼きました。最終的に頼りになったのは、紙の地図とスマホのグーグルマップ、そして自分の方向感覚だったのでした。ドライブはデジタル機器に振り回されるのではなく、自分の脳味噌で能動的にコントロールするものだということを、再認識させられました。
●道路
今回は地方の温泉を巡るためにレンタカーを利用しましたので、起終点となったブルサ以外の都市部はほとんど走行していません。このため交通量の多い都市部に関しては言及できませんが、各地を結ぶ幹線道路はとても走りやすく、舗装状態も良好であったので、自動車専用道路のような感じでスイスイ走行できました。一方、地方の田舎道は、舗装されているもののデコボコがあったり、非舗装区間があったりと、場所によって状態に善し悪しがあり、一概にどうだと断言できる状況ではありませんが、少なくとも私が走行した区間に限れば、特別悪いような印象は受けませんでした。ごく普通に走行できます。
都市部に関して、ブルサに限って言えば、アタチュルク通りのヘイケル付近など、市街の中心部はグリッドロックが発生しているのようなひどい渋滞が起きていましたが、ちょっとでも離れると、交通量は多いものの比較的順調に流れており、なかにはアグレッシブな運転(※)をするドライバーもいますが、日本の東京都内や大阪で運転できる方でしたら、当地でも問題なくハンドルを握れるかと思います。逆に言えば、日本でも都市部での運転に自信が無い方は、ちょっと難しいかも。
(※)割り込み・急な車線変更・車間詰め・煽り・急停車・信号冒進などなど。この手の危険な運転は、トルコのみならず都内や大阪など日本の都市部でもよく遭遇しますし、交通量の多いところでは、多少無理しないと自分の希望する進路へ進めませんから、お国柄云々の問題ではなく、都市部で運転するなら仕方のないことだと覚悟するしかないのかも。尤もその乱暴さは日本の比ではないのですけど。
ブルサの近郊では道路工事があちこちで行われており、上画像のように右側の側道に入りたくても、工事で通行止めになっているような区間も随所で遭遇しました。このためGPSがちっとも役に立たず、行きたい方向になかなか進めず難儀しました。立体交差が多く、中央分離帯で対向車線と分かれており、しかも車の流れが早いので、∪ターンがしにくいんです。このため、上画像のような場所では大きく迂回するはめに…。
駐車場はトルコ語で"OTOPARK"。私が目的地とするような田舎の温泉地には、大抵駐車場がありましたので、車を停める場所に苦労することはあまり無かったのですが、食事や買い物などで街へ出た際、気軽に駐められるような駐車場が見つからなければ、斜めに頭から突っ込んだり、あるいは縦列駐車したりと、他の車に倣って路上駐車しました。これはトルコのみならず、洋の東西を問わず、他の多くの国でも路上駐車はごく普通に見られますよね。なお都市部では有料の駐車場もありました。
一般道でも主要都市を結ぶ幹線道路の分岐点はインターチェンジになっており、車線も標識もきちんとしていますから、私のようにトルコを初めて運転する者でも、安心してドライブできました。
果てしなく広がる大地に伸びる一本道をぶっ飛ばす気持ち良さったら、日本じゃなかなか体験できませんね。制限速度は集落や街などが50km/h、それ以外は90km/hなんだそうですが、速度規制はあって無いようなものなのか、レーサー顔負けでビュンビュン飛ばして先行車を追い抜かしてゆくドライバーも結構多く見られました。その一方、たまにネズミ捕りらしきパトカーの姿もたまに見られたので、チキン野郎な私は100km/hを上限にして、それ以上飛ばさないよう心がけました。
悠然と道路を横切る家畜の群れに遭遇することがあるので、前方の障害物には要注意。こんなときには焦らないで、家畜達が横断し終わるのをゆっくりと待ちましょう。4日間ドライブしましたが、1日1~2度はこのような場面に出くわしました。
某所の幹線道路上で信号待ちをしていると、左折レーンに荷車を曳く馬が現れました。なんとも牧歌的じゃありませんか。一応日本の道路交通法でも馬は軽車両としてきちんと規定されていますが、実際にお目にかかることはほとんどありませんから(※)、新しいアウディと前世代的な馬車が一緒に並んで信号待ちをしている風景は、私にとっては却って新鮮に映りました。
(※)東京界隈ですと、世田谷の馬事公苑や川崎の小向厩舎あたりなど、都市部でも意外といろんな場所で公道上の馬を目にできるんですけどね。
●標識
交通標識はヨーロッパに準拠しているようです。詳しくは以下の各ページなどをご参照ください。
トルコの道路標識(規制標識)
トルコの道路標識(警戒標識)
国際連合の道路標識
(いずれも株式会社キクテックのホームページ内)
大体は見ればわかるものばかりですが、以下の点は日本と大きく異なりますので、海外の標識に慣れていらっしゃらない方は、事前に頭へ入れておく必要があるかと思います。どのようなものであるかは「国際連合の道路標識(規制標識)」でご確認ください。
・通行禁止(日本ならば赤丸に赤斜線が引かれるが、海外では斜線が無く赤い丸だけ)
・追い越し禁止(2台の車が並んで表示されている)
・優先道路(黄色い菱型。日本とは全く異なる)
・対向車優先(赤い矢印と黒い矢印で表示される。黒い矢印の方向が優先)
・禁止の終了(グレーで表示されるか、グレーの斜線が引かれる)
以下、私が現地で撮影した(たまたま画像に写っていた)交通標識をご紹介します。
規制標識を中心に。
とまれ・行き止まり・(トラック)進入禁止・左折禁止・直進左折可能・路地あり・追い越し禁止・右折禁止・進入禁止・一方通行。
地名および方向は基本的に青地白文字で表示されますが、特定の建物や施設は白地黒文字で表示されることもあり、また観光地や名勝などは茶地に白抜き文字です。この「茶地に白抜き文字」はヨーロッパでも中華圏でも、世界各国で採用されている観光地の表示方法ですが、なぜか日本では一部自治体が採用するだけに留まっているですよね…。
また、集落や町に入る箇所で、その地名が記された横長の標識が立っている点も、ヨーロッパ各国と同様です(集落が終わる箇所では、地名に斜線が引かれた標識が立っています)。速度制限を厳守するヨーロッパ各国では、集落に入ると度の車もキッチリ速度を制限速度以下に落としますが、トルコでは心持ちアクセルを緩める程度といった感じで、そのあたりは比較的アバウトみたい。
●ロータリー
ヨーロッパに多いラウンドアバウトは、トルコでも数カ所で見られましたが、それほど多くは無かったように記憶しています。どちらかといえば、次に示すようなロータリーが随所に見られました。
(1)信号が無いロータリー
上の図では、左右に伸びる2車線道路が優先道路、上下に伸びる道が路地です。右折は楽勝ですが、問題は左折する場合と、路地から優先道路に出る場合です。具体的に説明しますと…
・優先道路から路地へ左折する場合(緑線のルート)
緑の矢印の通りに進んで①はスルーし、左折して奥の方へ入って、③の場所で一時停止。対向車線の車を待ってから、路地へ進みます。左折のみならず、∪ターンもこの方法で可能。
・路地を直進する場合および路地から左折する場合(紫線のルート)
まず②で一時停止し、更に③でも一時停止して、直進もしくは左折します。
(2)信号があるロータリー
同様に、左右に伸びる2車線道路が優先道路、上下に伸びる道が路地です。基本的には直進も右折も信号に従えば良いわけですが、左折する場合は以下のようになります。
・優先道路から路地へ左折する場合(緑線のルート)
まず①の信号に従う。そして左折直後の③でも信号に従う。
・路地を直進する場合および路地から左折する場合(紫線のルート)
まず②(および③)の信号に従う。直進の場合はそのまま進む。左折の場合は更に④の信号にも従う。
・優先道路から路地へ左折する場合の具体例を上画像で表してみました。
早い話、ロータリーで左折したら、その直後も一旦停止、と覚えれおけば問題ないのかも。
●ガソリンスタンド
レンタカーは満タン返しなので、利用すると必ず1度はお世話になるのがガソリンスタンド。近年の日本では厳しい経営環境のため、ガソリンスタンドの数が年々減少傾向にあって、特に地方では給油に難儀することもしばしばですが、私が走行したトルコの各県(キュタフヤ県やバルケシル県など)では、余程の田舎でない限り、それなりの規模の村や町でしたら、大抵の場所ではガソリンスタンドが営業していました。またブルサのような都市部でも幹線道路沿いを中心に、多くの店舗が存在しており、レンタカー営業所へ返却する際にも、給油で困るようなことはありませんでした。
トルコのガソリンスタンドは、フランスのトタルや、日本でもおなじみのシェル(ロイヤル・ダッチ・シェル)など、いろんな業者が進出してしのぎを削っているようですが、中でも存在感が際立っていたのが、石油小売の最大手のペトロール・オフィシ(PO)です。Oの字の中で犬が吠えているロゴが目印のこのガソリンスタンドは、さすが最大手だけあって、都市部から閑村までいろんな地点を網羅しており、このロゴを見かけない日はありませんでした。日本のガソリンスタンドと同様に、道路から目立つ看板には油種別の単価が表示されています。
今回の道中では、田舎で1回、都市部で1回、都合2回給油をしましたが、いずれもスタッフによる給油でした。当地にセルフ給油はあるのかな? 給油方法は日本のスタッフ給油とほぼ同じで、給油機の前に車を止めて、スタッフに油種と量を告げれば良いだけ。「ディーゼル フル プリーズ」と中学生並みの英単語を並べただけで、問題なく通じました(ガソリンの場合は、油種名のかわりに95などのオクタン価を告げれば良いと思います)。ただし、油種によって給油機が異なる場合があるので、スタンドへ入るときには、各給油ブースに表示されている油種名を要確認(ガソリンはBenzin、軽油はMotorin)。
私の車へ給油中、その様子をカメラに収めようとしたら、スタッフ達は笑顔でポーズを決めてくれました。皆さん陽気です。
給油が終わると、給油機から伝票がプリントされるので、それを手にしてレジカウンターへ提示して支払いを済ませます。もちろんクレジットカードも使用可能。レシートには油種・単価・給油量・合計金額の他、車のナンバーも印字されており、どうやら食い逃げならぬ給油逃げを防止しているようです。
なお私が借りた車はディーゼルだったので、軽油を給油したのですが、ユーロディーゼルという欧州の品質基準に合わせた油種ですと、2014年11月現在でリッター当たり4.23リラ(約210円)でした。なおレギュラーガソリン(オクタン価95)の場合は4.95リラ(250円弱)です。原油安が続いている現在ですともう少し下がっているかと思いますが、それにしても日本より物価が安い国なのに、石油関係だけ突出して高いのは驚きます。どうやら税金がその原因のようですが、車を所有している皆さんは、どうやってやりくりしているんでしょう…。
●フィアット500L
今回私があてがわれた車は、フィアット・チンクエチェントの派生型である"500L"という車種です。Lという文字が示しているように、一般型のチンクエチェント(2ドア)よりも車体長が大きい4ドア仕様となっていますが、小型車であることには変わりなく、外観といい大きさといい、Miniっぽい感じです。
この車はディーゼルエンジンで排気量は1.3L。トランスミッションはセミオートマチックです。私の愛車もディーゼル車(マツダ・CX-5)ですから、ディーゼル車ならではの力強さと燃費の良さはもちろんのこと、最近のディーゼル車の静粛性なども日々実感しているのですが、この500Lもガソリン車と遜色ないほど振動が少なく音も静かであり、しかも同等な排気量のガソリン車よりトルクもあって、走りもまずまずでした。
トルコは右側通行ですから、もちろん左ハンドル。イタリア車だけあって、車内のデザイン性が高く、カジュアル感のあるシートに座るだけでもウキウキします。しかもこのシートは見た目だけではなく、若干固めの座り心地やホールド性も良く、長時間の運転でもあまり疲れを感じません。
トルコのナンバープレートはEU各国に準じており、左端は青地で、国名の略である"TR"という文字が記されています。「準じている」という点がミソでして、この"TR"の上の青地に12個の星の輪っかが入ればEUとなるわけですが、まだトルコはEUに加盟できておりませんので、青地のままとなっているわけですね。長年にわたってトルコはEU加盟を大きな外交目標に掲げていますが、そんなEUに入りたい願望が、車のナンバープレートにも表れているようです。なお左側の2桁の数字はその車が登録されている地域によって異なり、この車の34はイスタンブールを示しているんだとか。
給油口は指で直接開けるタイプ。蓋の裏にはちゃんとディーゼルであること明示されていました。
左(上)画像は後部座席から車内を見た様子。センターコンソールはオーディオ関係やライトの付帯機能のスイッチが並んでいます(ライトのON/OFFはハンドル横から出ているレバーで操作します)。私はFMトランスミッターを持参し、自分のオーディオプレーヤーから音楽や落語などを流していました。古典落語を聴きながらトルコをドライブするだなんて、ちょっとオツでしょ。
●フィアット500Lのデュアロジック(セミオートマチック)
さて、フィアット500Lに関して私が重点的に述べたかったのは、外観でも性能でもなく、セミオートマチックの一種であるデュアロジックについてであります。私はトルコが欧州と同様にマニュアル車が主流であることは承知しており、MT車だって運転できるのですが、AVISのホームページの予約画面ではAT車も選択できたので、それならば運転の楽チンなATが良いと考え、AT車を予約しました。しかし、実際にあてがわれたフィアット500Lは、フィアット独自のデュアロジックという、独特のセミオートマチック車だったのでした。
トルコだけでなく、AT車が少数派である国において、レンタカーでAT車を予約しても、実際にはこのようなセミオートマチック車が手配されちゃう可能性があるので、もし読者の方が私と同じような状況におかれた場合に備え、この記事でセミオートマチックに関して言及することにしました(トルコとは全く関係ないのですが)。
上画像をご覧くださればお気づきになるかと思いますが、このシフトレバーはMT車のものであるかのように見えます。私も初めて見た時には「あれ? AT車を借りたのに、間違ってMT車が手配されちゃったか」と疑ったのですが、レバーをよく見ますと、どうも様子がおかしい。マニュアルならあるはずの1・2・3・4…といった数字がない代わり、NとR、+と-、そしてA/Mというポジションがあり、その一方でAT車にあるはずのPやDが無い。そもそもNが右上に位置しているってどういうこと? なんじゃこりゃ? そこでひと呼吸置いて自分の記憶をたどったところ、10年ほど前、私はダイムラーのスマートというチョロQみたいな小型車を愛車にしていたことがあり、このスマートがセミオートマチックであったことを思い出しました。そこで、ブレーキを踏みながら、右上のNからレバーを中央へ動かし、アクセルを踏んだところ、車はきちんと前進してくれました。
ここで、デュアロジック車の運転について、4日間ドライブした実績に基づき、私なりの解釈を述べさせていただきます。まずシフト位置は上図のような関係になっており、AT車のPが無いかわり、駐車時にはNに入れてサイドブレーキを引きます(MT車と同じ感覚)。また、AT車を運転する際のDレンジが無いのですが、そのかわり、ブレーキをしっかり踏みながらレバーを真ん中(上図の白丸の部分)に持ってくると、1速に入った状態となり、アクセルを踏めば前進します。後述するオートマ状態のままであれば、日本のAT車と同じく、あとはアクセルを踏むだけでどんどん加速していきます。
このデュアロジックは上述のようにセミオートマチックであり、AT車と同様にクラッチは無いのですが、車がシフトチェンジする際は、「クラッチを切る→ギアを変える→クラッチを繋げる」という、MT車ではドライバーが行うべき操作を、車が自動的にやってくれる構造を持った車です。このため、ギアが変わるときには、ドライバーの意思とは関係なく、クラッチが自動的に切られるので、はっきりガックンと前後衝動が発生します。
AT車しか運転できない方はこの衝動にイライラするかもしれませんが、MT車が運転できる方はマニュアルモードにすることをおすすめします。A/Mがオートマとマニュアルの切り替え位置となっており、レバーを左へ動かす度にATとMTが切り替ります。+と-はご想像通り、シフトのアップ・ダウンを操作するものですので、マニュアルモードにすれば、自分の好みのタイミングでシフトチェンジでき、その操作と同じタイミングで、車の方でも自動的にクラッチ操作をしてくれます。なおシフトチェンジの際は、ちょっとアクセルを離すと、クラッチがスムーズに繋がり、衝動も少なくて済みます。なお普通のMT車でしたら、2速発進できますが、この車は2速から動かそうとすると、エラーとなって警告音が鳴ってしまい、前進してくれませんでした。
ハンドルの向こう側の、速度計のタコメーターの間に挟まれた表示に、シフトなど運転に関する各種の状態が表示されます。
画像左(上)の右上にご注目。"5"は5速を示していますが、その下に表示されている"AUTO"は、現在ATモードで走行しているという意味です。
一方、画像右(下)では、5速表示の下がブランクになっていますが("AUTO"の表示が消えています)、これはMTモードになっていることを表します。ATモードで運転しているつもりでも、スピードを上げてもシフトが進段しない場合は、MTモードになっちゃっている場合がありますので、画面で状況を確認の上、A/Mを切り替えればOKです。走行中は随時A/Mの切り替えが可能です。そのかわり、NやRにする場合は、きっちりブレーキを踏まないと、ピーピーと警告音が鳴って、ギアが入りません。
上述のように、普通のマニュアル車と異なり、この車の場合はMTモードであっても2速発進できません(※)。
(※)スマートのセミオートマは2速発進できるんだけどなぁ…。
MTモード時は、速度などの状況に応じ、シフトのアップ・ダウンをするタイミングを、車がアドバイスしてくれます。上画像では左側に「↑SHIFT」と表示されていますが、これは「シフトアップしろ」という意味であり、いまは4速だけど、スピードが上がってきたから、5速にあげてね、と車がアドバイスしてくれているわけです。なお、中央の表示は燃料の残量から計算した走行可能距離です。満タンで1203kmも走れるんですから、燃費はかなり良いですね。上述のように、4日間乗り続けて給油したのは2回だけ(うち1回は満タン返却のため)ですから、この数値は決して偽りではありません。ビバ!ディーゼル!
一般的なAT車と違い、セミオートマチック車はメーカーや車種によって、シフトレバーの形状や、実際の操作方法が異なり、今回の記事で述べたことが他の車種にも通用するとは限らないのですが、基本的な概念はどの車種も似たり寄ったりですので、もし海外でセミオートマに遭遇してしまった場合は、この記事を参考にしていただければと思います。むしろ、クラッチペダルの操作が不要であるかわりに、シフトチェンジは思いのままというこのセミオートマは、実際に運転するとかなり面白いんですよ。4日間のレンタカー旅では、ほとんどMTモードで運転しちゃいました。
さて次回記事からは、このレンタカーで巡った温泉を取り上げてまいります。
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拙ブログではこれまで、台湾・アイスランド・マレーシアで初めてレンタカーを利用した際の体験記を書き綴ってまいりましたが、これらの同様に今回の記事では、トルコで初めてレンタカーの借りた際の実体験を初心者目線で書き綴り、自分の旅の備忘録としてだけでなく、今後レンタカーでトルコを巡ろうとお考えの方に、微力ながらお役立てくださればと考えております。
●予約・貸出・返却
トルコのレンタカー事情は他の各国と大差なく、少なくとも私が利用した限りでは、ご当地ならではの特別な手続きや商習慣のようなものも無かったように感じております(トラブルが発生した場合はどうなるかわかりませんが…)。当地には国際資本の大手レンタカー会社も進出していますし、現地資本も業者もたくさんあります。また都市や有名観光地を中心にして、各地の各社の営業所がありますので、ニーズに応じて使い分けられるかと思います。
今回私は世界各国にネットワークを持つAVISを利用しました。現地資本よりも料金は高めですが、これまで他国で利用した時も問題が無かったので安心できますし、他の大手業者に比べて全体的な料金が低めに設定されていたので、トルコでもAVISを選びました。
AVISのブルサ営業所は、私が宿泊した温泉地チェキルゲからブルサ中心部へ向かうチェキルゲ通り沿いにあり、ホテルから徒歩10分ほどの距離でしたので、ホテルのチェックアウト後に直接歩いて営業所まで赴きました(営業所の位置はこちら)。
予め出発前にインターネット上で予約を済ませて、予約確認のメールをプリントアウト。貸出当日は営業所へ直接出向いて、カウンターにて「予約をしている●●です」と名乗ってメールを提示したところ、スムーズに手続きが進みました。ここのスタッフは英語が流暢なので、トルコ語がわからなくても大丈夫。貸出手続きの際に必要なものは、以下の4点です。
・パスポート
・日本の免許証
・国際免許証
・クレジットカード
カウンターで手続きをしている最中に、別のスタッフが駐車場から車をもってきれくれました。ほほぉ、この車が今回の私の相棒になるわけだな。この車については後述にて詳しく述べます。この実車については外装状態や燃料計の確認が行われ、英語対応の緊急連絡先について書類を用いながらきちんと説明されました。日本でレンタカーを借りる時と同じように、諸々の確認はキッチリしており、大変安心できます。
当然ながら車のサイズや排気量等によって料金クラスが異なるのですが、今回私が選択した4ドア・ATのエコノミークラスですと、免責補償(CDW)・車両盗難保険(TP)・税金を含めて4日間合計で約650リラ(33,000円弱)で、これにオプションとしてGPSが1日当たり15リラ加算されました。支払いは貸出時に行うのですが、この際にカードからデポジットとして300リラ余計に引かれます。もちろん、無事に返却することにより、このデポジットはちゃんと返金手続きされました。なおこのAVISなど一部業者では他営業所への乗捨が可能ですが、乗捨料金がかなり高いので、今回は貸出と同一営業所へ返却しました。
オプションで貸し出してくれたGPSは、欧米では結構なシェアを誇るオランダ・TOMTOM社製でした。設定によっていろいろな言語で表示することができるらしく、メニューの中には日本語も見られましたが、なぜか変更が上手くいかず、旅行中は仕方なくトルコ語表示のまま使い続けました。でも、そんなこともあろうと、私は事前に訪問したい場所のGPS座標をGoogle Mapで調べておいたのですが、これが大正解。地名の入力方法がわからなかったり、入力できてもデータベースとマッチングできずに地点検索されなかったりと、海外で自動車用GPSを使う場合には、現地で戸惑うことがしばしばですが、そんな場合でも世界共通のGPS座標(つまり緯度と経度)がわかっていればピンポイントで検索できますから、非常に有用でした。私のトルコ温泉レポート各記事で、各ポイントのGPS座標を掲載しているのはこのためです。
ちなみに、このGPSは郊外など都市以外では問題なく反応くれたのですが、都市部では画面表示がわかりにくくて大通りと路地が判別できず、一方通行や諸々の通行規制にも対応がいまいち。更には画面の現在位置が実際より遅れる上、若干ズレて表示されるので、かなり使いづらくて手を焼きました。最終的に頼りになったのは、紙の地図とスマホのグーグルマップ、そして自分の方向感覚だったのでした。ドライブはデジタル機器に振り回されるのではなく、自分の脳味噌で能動的にコントロールするものだということを、再認識させられました。
●道路
今回は地方の温泉を巡るためにレンタカーを利用しましたので、起終点となったブルサ以外の都市部はほとんど走行していません。このため交通量の多い都市部に関しては言及できませんが、各地を結ぶ幹線道路はとても走りやすく、舗装状態も良好であったので、自動車専用道路のような感じでスイスイ走行できました。一方、地方の田舎道は、舗装されているもののデコボコがあったり、非舗装区間があったりと、場所によって状態に善し悪しがあり、一概にどうだと断言できる状況ではありませんが、少なくとも私が走行した区間に限れば、特別悪いような印象は受けませんでした。ごく普通に走行できます。
都市部に関して、ブルサに限って言えば、アタチュルク通りのヘイケル付近など、市街の中心部はグリッドロックが発生しているのようなひどい渋滞が起きていましたが、ちょっとでも離れると、交通量は多いものの比較的順調に流れており、なかにはアグレッシブな運転(※)をするドライバーもいますが、日本の東京都内や大阪で運転できる方でしたら、当地でも問題なくハンドルを握れるかと思います。逆に言えば、日本でも都市部での運転に自信が無い方は、ちょっと難しいかも。
(※)割り込み・急な車線変更・車間詰め・煽り・急停車・信号冒進などなど。この手の危険な運転は、トルコのみならず都内や大阪など日本の都市部でもよく遭遇しますし、交通量の多いところでは、多少無理しないと自分の希望する進路へ進めませんから、お国柄云々の問題ではなく、都市部で運転するなら仕方のないことだと覚悟するしかないのかも。尤もその乱暴さは日本の比ではないのですけど。
ブルサの近郊では道路工事があちこちで行われており、上画像のように右側の側道に入りたくても、工事で通行止めになっているような区間も随所で遭遇しました。このためGPSがちっとも役に立たず、行きたい方向になかなか進めず難儀しました。立体交差が多く、中央分離帯で対向車線と分かれており、しかも車の流れが早いので、∪ターンがしにくいんです。このため、上画像のような場所では大きく迂回するはめに…。
駐車場はトルコ語で"OTOPARK"。私が目的地とするような田舎の温泉地には、大抵駐車場がありましたので、車を停める場所に苦労することはあまり無かったのですが、食事や買い物などで街へ出た際、気軽に駐められるような駐車場が見つからなければ、斜めに頭から突っ込んだり、あるいは縦列駐車したりと、他の車に倣って路上駐車しました。これはトルコのみならず、洋の東西を問わず、他の多くの国でも路上駐車はごく普通に見られますよね。なお都市部では有料の駐車場もありました。
一般道でも主要都市を結ぶ幹線道路の分岐点はインターチェンジになっており、車線も標識もきちんとしていますから、私のようにトルコを初めて運転する者でも、安心してドライブできました。
果てしなく広がる大地に伸びる一本道をぶっ飛ばす気持ち良さったら、日本じゃなかなか体験できませんね。制限速度は集落や街などが50km/h、それ以外は90km/hなんだそうですが、速度規制はあって無いようなものなのか、レーサー顔負けでビュンビュン飛ばして先行車を追い抜かしてゆくドライバーも結構多く見られました。その一方、たまにネズミ捕りらしきパトカーの姿もたまに見られたので、チキン野郎な私は100km/hを上限にして、それ以上飛ばさないよう心がけました。
悠然と道路を横切る家畜の群れに遭遇することがあるので、前方の障害物には要注意。こんなときには焦らないで、家畜達が横断し終わるのをゆっくりと待ちましょう。4日間ドライブしましたが、1日1~2度はこのような場面に出くわしました。
某所の幹線道路上で信号待ちをしていると、左折レーンに荷車を曳く馬が現れました。なんとも牧歌的じゃありませんか。一応日本の道路交通法でも馬は軽車両としてきちんと規定されていますが、実際にお目にかかることはほとんどありませんから(※)、新しいアウディと前世代的な馬車が一緒に並んで信号待ちをしている風景は、私にとっては却って新鮮に映りました。
(※)東京界隈ですと、世田谷の馬事公苑や川崎の小向厩舎あたりなど、都市部でも意外といろんな場所で公道上の馬を目にできるんですけどね。
●標識
交通標識はヨーロッパに準拠しているようです。詳しくは以下の各ページなどをご参照ください。
トルコの道路標識(規制標識)
トルコの道路標識(警戒標識)
国際連合の道路標識
(いずれも株式会社キクテックのホームページ内)
大体は見ればわかるものばかりですが、以下の点は日本と大きく異なりますので、海外の標識に慣れていらっしゃらない方は、事前に頭へ入れておく必要があるかと思います。どのようなものであるかは「国際連合の道路標識(規制標識)」でご確認ください。
・通行禁止(日本ならば赤丸に赤斜線が引かれるが、海外では斜線が無く赤い丸だけ)
・追い越し禁止(2台の車が並んで表示されている)
・優先道路(黄色い菱型。日本とは全く異なる)
・対向車優先(赤い矢印と黒い矢印で表示される。黒い矢印の方向が優先)
・禁止の終了(グレーで表示されるか、グレーの斜線が引かれる)
以下、私が現地で撮影した(たまたま画像に写っていた)交通標識をご紹介します。
規制標識を中心に。
とまれ・行き止まり・(トラック)進入禁止・左折禁止・直進左折可能・路地あり・追い越し禁止・右折禁止・進入禁止・一方通行。
地名および方向は基本的に青地白文字で表示されますが、特定の建物や施設は白地黒文字で表示されることもあり、また観光地や名勝などは茶地に白抜き文字です。この「茶地に白抜き文字」はヨーロッパでも中華圏でも、世界各国で採用されている観光地の表示方法ですが、なぜか日本では一部自治体が採用するだけに留まっているですよね…。
また、集落や町に入る箇所で、その地名が記された横長の標識が立っている点も、ヨーロッパ各国と同様です(集落が終わる箇所では、地名に斜線が引かれた標識が立っています)。速度制限を厳守するヨーロッパ各国では、集落に入ると度の車もキッチリ速度を制限速度以下に落としますが、トルコでは心持ちアクセルを緩める程度といった感じで、そのあたりは比較的アバウトみたい。
●ロータリー
ヨーロッパに多いラウンドアバウトは、トルコでも数カ所で見られましたが、それほど多くは無かったように記憶しています。どちらかといえば、次に示すようなロータリーが随所に見られました。
(1)信号が無いロータリー
上の図では、左右に伸びる2車線道路が優先道路、上下に伸びる道が路地です。右折は楽勝ですが、問題は左折する場合と、路地から優先道路に出る場合です。具体的に説明しますと…
・優先道路から路地へ左折する場合(緑線のルート)
緑の矢印の通りに進んで①はスルーし、左折して奥の方へ入って、③の場所で一時停止。対向車線の車を待ってから、路地へ進みます。左折のみならず、∪ターンもこの方法で可能。
・路地を直進する場合および路地から左折する場合(紫線のルート)
まず②で一時停止し、更に③でも一時停止して、直進もしくは左折します。
(2)信号があるロータリー
同様に、左右に伸びる2車線道路が優先道路、上下に伸びる道が路地です。基本的には直進も右折も信号に従えば良いわけですが、左折する場合は以下のようになります。
・優先道路から路地へ左折する場合(緑線のルート)
まず①の信号に従う。そして左折直後の③でも信号に従う。
・路地を直進する場合および路地から左折する場合(紫線のルート)
まず②(および③)の信号に従う。直進の場合はそのまま進む。左折の場合は更に④の信号にも従う。
・優先道路から路地へ左折する場合の具体例を上画像で表してみました。
早い話、ロータリーで左折したら、その直後も一旦停止、と覚えれおけば問題ないのかも。
●ガソリンスタンド
レンタカーは満タン返しなので、利用すると必ず1度はお世話になるのがガソリンスタンド。近年の日本では厳しい経営環境のため、ガソリンスタンドの数が年々減少傾向にあって、特に地方では給油に難儀することもしばしばですが、私が走行したトルコの各県(キュタフヤ県やバルケシル県など)では、余程の田舎でない限り、それなりの規模の村や町でしたら、大抵の場所ではガソリンスタンドが営業していました。またブルサのような都市部でも幹線道路沿いを中心に、多くの店舗が存在しており、レンタカー営業所へ返却する際にも、給油で困るようなことはありませんでした。
トルコのガソリンスタンドは、フランスのトタルや、日本でもおなじみのシェル(ロイヤル・ダッチ・シェル)など、いろんな業者が進出してしのぎを削っているようですが、中でも存在感が際立っていたのが、石油小売の最大手のペトロール・オフィシ(PO)です。Oの字の中で犬が吠えているロゴが目印のこのガソリンスタンドは、さすが最大手だけあって、都市部から閑村までいろんな地点を網羅しており、このロゴを見かけない日はありませんでした。日本のガソリンスタンドと同様に、道路から目立つ看板には油種別の単価が表示されています。
今回の道中では、田舎で1回、都市部で1回、都合2回給油をしましたが、いずれもスタッフによる給油でした。当地にセルフ給油はあるのかな? 給油方法は日本のスタッフ給油とほぼ同じで、給油機の前に車を止めて、スタッフに油種と量を告げれば良いだけ。「ディーゼル フル プリーズ」と中学生並みの英単語を並べただけで、問題なく通じました(ガソリンの場合は、油種名のかわりに95などのオクタン価を告げれば良いと思います)。ただし、油種によって給油機が異なる場合があるので、スタンドへ入るときには、各給油ブースに表示されている油種名を要確認(ガソリンはBenzin、軽油はMotorin)。
私の車へ給油中、その様子をカメラに収めようとしたら、スタッフ達は笑顔でポーズを決めてくれました。皆さん陽気です。
給油が終わると、給油機から伝票がプリントされるので、それを手にしてレジカウンターへ提示して支払いを済ませます。もちろんクレジットカードも使用可能。レシートには油種・単価・給油量・合計金額の他、車のナンバーも印字されており、どうやら食い逃げならぬ給油逃げを防止しているようです。
なお私が借りた車はディーゼルだったので、軽油を給油したのですが、ユーロディーゼルという欧州の品質基準に合わせた油種ですと、2014年11月現在でリッター当たり4.23リラ(約210円)でした。なおレギュラーガソリン(オクタン価95)の場合は4.95リラ(250円弱)です。原油安が続いている現在ですともう少し下がっているかと思いますが、それにしても日本より物価が安い国なのに、石油関係だけ突出して高いのは驚きます。どうやら税金がその原因のようですが、車を所有している皆さんは、どうやってやりくりしているんでしょう…。
●フィアット500L
今回私があてがわれた車は、フィアット・チンクエチェントの派生型である"500L"という車種です。Lという文字が示しているように、一般型のチンクエチェント(2ドア)よりも車体長が大きい4ドア仕様となっていますが、小型車であることには変わりなく、外観といい大きさといい、Miniっぽい感じです。
この車はディーゼルエンジンで排気量は1.3L。トランスミッションはセミオートマチックです。私の愛車もディーゼル車(マツダ・CX-5)ですから、ディーゼル車ならではの力強さと燃費の良さはもちろんのこと、最近のディーゼル車の静粛性なども日々実感しているのですが、この500Lもガソリン車と遜色ないほど振動が少なく音も静かであり、しかも同等な排気量のガソリン車よりトルクもあって、走りもまずまずでした。
トルコは右側通行ですから、もちろん左ハンドル。イタリア車だけあって、車内のデザイン性が高く、カジュアル感のあるシートに座るだけでもウキウキします。しかもこのシートは見た目だけではなく、若干固めの座り心地やホールド性も良く、長時間の運転でもあまり疲れを感じません。
トルコのナンバープレートはEU各国に準じており、左端は青地で、国名の略である"TR"という文字が記されています。「準じている」という点がミソでして、この"TR"の上の青地に12個の星の輪っかが入ればEUとなるわけですが、まだトルコはEUに加盟できておりませんので、青地のままとなっているわけですね。長年にわたってトルコはEU加盟を大きな外交目標に掲げていますが、そんなEUに入りたい願望が、車のナンバープレートにも表れているようです。なお左側の2桁の数字はその車が登録されている地域によって異なり、この車の34はイスタンブールを示しているんだとか。
給油口は指で直接開けるタイプ。蓋の裏にはちゃんとディーゼルであること明示されていました。
左(上)画像は後部座席から車内を見た様子。センターコンソールはオーディオ関係やライトの付帯機能のスイッチが並んでいます(ライトのON/OFFはハンドル横から出ているレバーで操作します)。私はFMトランスミッターを持参し、自分のオーディオプレーヤーから音楽や落語などを流していました。古典落語を聴きながらトルコをドライブするだなんて、ちょっとオツでしょ。
●フィアット500Lのデュアロジック(セミオートマチック)
さて、フィアット500Lに関して私が重点的に述べたかったのは、外観でも性能でもなく、セミオートマチックの一種であるデュアロジックについてであります。私はトルコが欧州と同様にマニュアル車が主流であることは承知しており、MT車だって運転できるのですが、AVISのホームページの予約画面ではAT車も選択できたので、それならば運転の楽チンなATが良いと考え、AT車を予約しました。しかし、実際にあてがわれたフィアット500Lは、フィアット独自のデュアロジックという、独特のセミオートマチック車だったのでした。
トルコだけでなく、AT車が少数派である国において、レンタカーでAT車を予約しても、実際にはこのようなセミオートマチック車が手配されちゃう可能性があるので、もし読者の方が私と同じような状況におかれた場合に備え、この記事でセミオートマチックに関して言及することにしました(トルコとは全く関係ないのですが)。
上画像をご覧くださればお気づきになるかと思いますが、このシフトレバーはMT車のものであるかのように見えます。私も初めて見た時には「あれ? AT車を借りたのに、間違ってMT車が手配されちゃったか」と疑ったのですが、レバーをよく見ますと、どうも様子がおかしい。マニュアルならあるはずの1・2・3・4…といった数字がない代わり、NとR、+と-、そしてA/Mというポジションがあり、その一方でAT車にあるはずのPやDが無い。そもそもNが右上に位置しているってどういうこと? なんじゃこりゃ? そこでひと呼吸置いて自分の記憶をたどったところ、10年ほど前、私はダイムラーのスマートというチョロQみたいな小型車を愛車にしていたことがあり、このスマートがセミオートマチックであったことを思い出しました。そこで、ブレーキを踏みながら、右上のNからレバーを中央へ動かし、アクセルを踏んだところ、車はきちんと前進してくれました。
ここで、デュアロジック車の運転について、4日間ドライブした実績に基づき、私なりの解釈を述べさせていただきます。まずシフト位置は上図のような関係になっており、AT車のPが無いかわり、駐車時にはNに入れてサイドブレーキを引きます(MT車と同じ感覚)。また、AT車を運転する際のDレンジが無いのですが、そのかわり、ブレーキをしっかり踏みながらレバーを真ん中(上図の白丸の部分)に持ってくると、1速に入った状態となり、アクセルを踏めば前進します。後述するオートマ状態のままであれば、日本のAT車と同じく、あとはアクセルを踏むだけでどんどん加速していきます。
このデュアロジックは上述のようにセミオートマチックであり、AT車と同様にクラッチは無いのですが、車がシフトチェンジする際は、「クラッチを切る→ギアを変える→クラッチを繋げる」という、MT車ではドライバーが行うべき操作を、車が自動的にやってくれる構造を持った車です。このため、ギアが変わるときには、ドライバーの意思とは関係なく、クラッチが自動的に切られるので、はっきりガックンと前後衝動が発生します。
AT車しか運転できない方はこの衝動にイライラするかもしれませんが、MT車が運転できる方はマニュアルモードにすることをおすすめします。A/Mがオートマとマニュアルの切り替え位置となっており、レバーを左へ動かす度にATとMTが切り替ります。+と-はご想像通り、シフトのアップ・ダウンを操作するものですので、マニュアルモードにすれば、自分の好みのタイミングでシフトチェンジでき、その操作と同じタイミングで、車の方でも自動的にクラッチ操作をしてくれます。なおシフトチェンジの際は、ちょっとアクセルを離すと、クラッチがスムーズに繋がり、衝動も少なくて済みます。なお普通のMT車でしたら、2速発進できますが、この車は2速から動かそうとすると、エラーとなって警告音が鳴ってしまい、前進してくれませんでした。
ハンドルの向こう側の、速度計のタコメーターの間に挟まれた表示に、シフトなど運転に関する各種の状態が表示されます。
画像左(上)の右上にご注目。"5"は5速を示していますが、その下に表示されている"AUTO"は、現在ATモードで走行しているという意味です。
一方、画像右(下)では、5速表示の下がブランクになっていますが("AUTO"の表示が消えています)、これはMTモードになっていることを表します。ATモードで運転しているつもりでも、スピードを上げてもシフトが進段しない場合は、MTモードになっちゃっている場合がありますので、画面で状況を確認の上、A/Mを切り替えればOKです。走行中は随時A/Mの切り替えが可能です。そのかわり、NやRにする場合は、きっちりブレーキを踏まないと、ピーピーと警告音が鳴って、ギアが入りません。
上述のように、普通のマニュアル車と異なり、この車の場合はMTモードであっても2速発進できません(※)。
(※)スマートのセミオートマは2速発進できるんだけどなぁ…。
MTモード時は、速度などの状況に応じ、シフトのアップ・ダウンをするタイミングを、車がアドバイスしてくれます。上画像では左側に「↑SHIFT」と表示されていますが、これは「シフトアップしろ」という意味であり、いまは4速だけど、スピードが上がってきたから、5速にあげてね、と車がアドバイスしてくれているわけです。なお、中央の表示は燃料の残量から計算した走行可能距離です。満タンで1203kmも走れるんですから、燃費はかなり良いですね。上述のように、4日間乗り続けて給油したのは2回だけ(うち1回は満タン返却のため)ですから、この数値は決して偽りではありません。ビバ!ディーゼル!
一般的なAT車と違い、セミオートマチック車はメーカーや車種によって、シフトレバーの形状や、実際の操作方法が異なり、今回の記事で述べたことが他の車種にも通用するとは限らないのですが、基本的な概念はどの車種も似たり寄ったりですので、もし海外でセミオートマに遭遇してしまった場合は、この記事を参考にしていただければと思います。むしろ、クラッチペダルの操作が不要であるかわりに、シフトチェンジは思いのままというこのセミオートマは、実際に運転するとかなり面白いんですよ。4日間のレンタカー旅では、ほとんどMTモードで運転しちゃいました。
さて次回記事からは、このレンタカーで巡った温泉を取り上げてまいります。
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