温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台温泉 松田屋旅館 その1(本館客室・食事)

2022年01月27日 | 岩手県

(2020年秋宿泊)
いつもタイムリー性の無い記事ばかりで申し訳ございません。だいぶ前ですが、岩手県台温泉「松田屋旅館」に一晩お世話になりましたので、今回記事ではその時のことを書き綴らせていただきます。こちらのお宿は本館と別館の二棟に分かれているのですが、私は本館の客室を利用しました。
一般的に本館と別館があるならば、文字通り本館の方に営業や運営のメイン機能が備わり、別館はあくまでテンポラリーな位置づけとなるものですが、こちらの場合は別館が実質的なヘッドクォーターで、本館がサブという主客逆転したような関係になっています。私の利用時は予め到着時間を伝えておいたので、仲居さんが本館側の帳場で待機してくださったのですが、基本的にスタッフの方は別館にいらっしゃるので、何か用事があれば別館を訪ねるようにしましょう。


木造の建物自体は年季が入っているものの、内部は綺麗に維持されており、特に1階ロビーには滞在中にゆっくり寛げる空間が広がっています。


仲居さんに館内を案内されながら、客室へと向かいます。階段の壁には宮沢賢治などご当地に所縁がある作家などの書籍が置かれ、飾りになっているのみならず、滞在中手に取って読むことも可能です。また随所でお香が焚かれ、館内にはその香りが漂っています。


さて今回案内された部屋は2Fの「爆湯の間」。
温泉マニアにふさわしい名前じゃありませんか。


客室の内部は一般的な温泉旅館そのもの。入室時には既にお布団が敷かれていたので、本音を申し上げればそのまま布団へ潜り込みたかったのですが、この時はご飯もお風呂もまだでしたので、眠い目をこすりつつ、まずは腹拵えです。


お食事は夕食朝食ともに別館へのお食事処へ移動します。
夕食はご覧のような献立。仲居さんの手により、色鮮やかなお皿に盛りつけされた山海の幸がバランスよく提供されていきます。中央に置かれた蓋を閉じているものは・・・


宿泊予約時に選んだ岩手牛でした。実に美味。ついついビールもすすんでしまいます。


こちらは朝食。旅館らしさと家庭的な味をミックスさせたような内容で、とても美味しくいただきました。

さて肝心のお風呂については次回以降の記事でご紹介いたします。

次回に続く。

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峰温泉 花舞竹の庄 その3(2階 大正檜風呂)

2022年01月20日 | 静岡県
前回記事の続編です。


続きまして、2階のお風呂「大正檜風呂」を利用します。
1階のお風呂もこの2階「大正檜風呂」もそれぞれ1室しか無く、1階のお風呂は空いていれば使えましたが、こちらは時間帯によって男女の暖簾が掛け替えられ、私の訪問時はチェックインから夜11時までが男湯となっていました。
私が一晩お世話になった「霞」という客室の前にある階段を上がってすぐのところに位置しています。


引き戸を開け更衣スペースを抜けた先に開けている、この浴室の光景を目にした時には、その美しさに思わずウットリし、嘆息とともに「うわー」という声がが漏れてしまいました。


かなりレトロな市松模様のタイル、窓や仕切りのガラス部分に施されている木工細工、伊豆青石の床とそこに設えられた立派な檜の浴槽、湯浴みの最中ちょっとひと息入れるために使う周囲の腰掛けなどなど、その全てがいい塩梅に枯れつつも美しく、ここだけ戦前の大正から昭和一桁の時空間が留まっているかのようでした。
窓外には蔦が絡まっているのですが、てっきり意匠なのかと思いきや本物の蔓で、窓の一部はガラスがはめられておらず、隙間風がしっかり入り込み、蔓の一部も浴室内へ伸びて存在感を静かに主張していました。ま、これも風情と言えましょう。
なお市松のタイルがはめられている仕切り塀の向こうには、元々もうひとつの檜風呂があるのですが、現在は使用されていません。


湯口から滔々と注がれるお湯は峰2号源泉。前回記事で取り上げた1階内風呂や露天風呂と同じお湯で、見た目は無色透明、ほぼ無臭、口に含むとほんのりとした優しい塩味が感じられます。そして湯船に浸かるとトロミとともにツルスベ感が肌へ伝わります。分析表によれば炭酸イオンが22.7mgも含まれており、それだけあれば強く印象に残るほどのツルスベ浴感(ヌルヌルに近い浴感)が得られるはずですが、実際にはそれほどでもないので、おそらく加水の影響なのかもしれません。とはいえ循環の無い放流式の湯使いですから、お湯のコンディションは良好です。


肩までお湯に浸かって瞑目し、いにしえの賑わいや雰囲気を想像しながら、のんびり入浴。
建物の質感を肌で感じるべく、湯船から上がっては腰掛や石の床に座ってクールダウンし、落ち着いたら再び湯船へ、といううサイクルを何度も繰り返してしまいました。

素泊まりで大変安く宿泊できるばかりでなく、昭和の立派な旅館建築にも触れることができ、しかもお風呂も大変素晴らしいという、温泉ファンにおすすめのお宿です。全体的な老朽化が気がかりですが、ぜひとも末永く営業を続けていただきたいものです。


峰温泉第2号
ナトリウム-塩化物温泉 99.3℃ pH8.4 成分総計2.359mg/kg
Na+:674.4mg, Ca++:91.2mg,
Cl-:1111mg, Br-:2.4mg, HS-:0.2mg, SO4--:162.7mg, CO3--:22.7mg,
H2SiO3:208.4mg,
(平成30年5月23日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

静岡県賀茂郡河津町峰487-2
0558-32-0261
ホームページ

日帰り入浴可能(時間は施設へお問い合わせください)
1000円

私の好み:★★★
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峰温泉 花舞竹の庄 その2(1階 内風呂・露天風呂)

2022年01月14日 | 静岡県
前回記事の続編です。


こちらのお宿には、1階と2階にそれぞれ浴場があり、全く趣向が異なるので、拙ブログでは分けて取り上げます。まずは1階の内風呂と露天風呂から。


1階の内風呂と露天風呂はそれぞれ1つずつしかなく、しかも浴場内でつながっているため、男湯か女湯のいずれか一方、もしくは貸切の家族風呂、という使い方になります。
出入口の左側には、「家族」「女性」「男性」のランプとそのスイッチがあり、無点灯の時は誰も使っていないことを示します。入浴の際は、それぞれ自分(もしくは自分たち)の利用用途に合わせたランプを点灯させます。私は男性ですから、入室前にまず「男湯」のランプを点灯させてから、中へと入るわけです。実際に上画像の場合は男湯のランプを点けたところです。このランプが点灯していれば、男性なら他のお客さんも入浴できますが、女性は先客の男性が出てランプが消えるまで待つことになります。また家族風呂として利用している時は、男女問わず他のお客さんは利用できません。

前回記事でも触れましたが、この建物はかなり古い木造建築であるため、随所に老朽劣化が顕在化しており、この1階浴場の脱衣室も相当草臥れています。特に脱衣室から浴場へ出る出入口まわりの壁や床などはかなり崩れており、本気で心配になってしまいました。


曇った画像で見難く申し訳ございません。内湯は当地で産される伊豆青石(緑色凝灰岩)が多用されており、床のみならず壁の下半分も伊豆青石が採用されています。また室内には大きさの異なる浴槽が1つずつあり、いずれもコバルトブルーの丸い豆タイルが貼られていて、目にとても鮮やかです。


洗い場は二手に分かれており、それぞれシャワーが一つずつ(計2つ)設置されています。カランから出てくるお湯は、おそらく温泉のお湯かと思われます。


大きな方の浴槽は湯面がちょっと熱いのですが、かき混ぜれば入浴できる湯加減に落ち着きます。心身がシャキッとする良いお湯です。


こちらは小さい浴槽。大きな浴槽よりは若干ぬるいのですが、それでも一般的な浴槽と比べればちょっと熱めかな。


内湯から引き戸を開けて屋外の露天へ。
この露天風呂は大きい岩風呂なのですが、頭上をすっぽり覆う感じで屋根が掛かっており、また目の前には壁が立ちはだかっているので、露天風呂に期待したくなるような開放感はあまり得られません(周囲には他の宿や民家が建ち並んでいるため仕方ありません)。しかも荒れ放題の裏庭が丸見えなので、ちょっと悲しくなるかもしれません。その一方で、内湯よりぬるく入りやすい湯加減になっているので、のんびり寛ぎながら長湯できます。

ちなみに内湯・露天ともに無色透明の峰2号源泉を掛け流しており、お湯の鮮度感は良好です。多少草臥れているとはいえ、これだけ大きく立派な内湯と露天を、貸切って入浴することができるのですから有り難いではありませんか。私は滞在中、3~4回入ってしまいました。

次回記事では2階の「大正檜風呂」を取り上げます。

次回に続く。
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峰温泉 花舞竹の庄 その1(客室等)

2022年01月06日 | 静岡県
あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
新年最初の記事は、東伊豆・河津町の峰温泉「花舞竹の庄」を取り上げます。2021年初冬に1泊お世話になりました。


こちらのお宿は峰温泉の代名詞である大噴泉に隣接しており、ご覧のように古いながらも立派な木造建築が県道に面して建っています。ネットで知らべると必ず出てくるエピソードなのですが、かつて新宿で遊郭として使われていた建物の建材を当地へ移して、旅館として建て直したんだそうです。


破風の屋根を見上げると懸魚に「三井家旅館」と彫られているのですが、これは創業当時の旅館名のようで、その後オーナーが2度ほど変わって現在の宿名になっているんだとか。


玄関の三和土から上り框、そして帳場やラウンジ方向を見たところです。
自分の語彙力の乏しさが悔しいのですが、何と申しましょうか、玄関の引き戸を開けて中に入った瞬間、普通の旅館とはちょっと違うぞ、造作に相当金がかかっているぞ、絨毯などの色遣いが鮮やかだな、相当な趣味人が手がけたんだろうな、ということがよくわかります。普段安っぽいものばかりに囲まれている私はその雰囲気に負けそうになり、沓脱石で躓きそうになってしまいました。あぁ情けない。


欄間の透かし彫りも立派じゃないですか。


現在は素泊まり専門の宿として細々と営業していますが、バブルの頃は豪華さを売りにしていたため、その当時の名残が館内のそこかしこにしっかり残されています。帳場向かいのラウンジに何気なく置かれているソファーも骨董品並みに古いながらも、かつては相当立派なものだったと思われます。今時珍しい柔らかさのある懐かしい座り心地のソファーに座ると、バブル期の華やかさが腰から伝わってくるようでした。
また上の写真には写っていませんが、床の一部はガラス張りになっており、その床下へ入り込んでいる庭の池の鯉を眺めることができたようです。


こちらは池を臨む縁側。バブル期には池にちゃんと水が張られていたようですが、現在は管理面の問題があり、水が抜かれて空っぽになっています。


その池を擁する庭も同時はさぞかし立派だったんでしょう。でも私が訪問した日は少々荒れ気味の様子。素泊まり専門となった現在のお宿は、お年を召したご夫婦で全てを切り盛りしているらしく、お庭までなかなか手が回らないのでしょう。同じ理由で、館内にはお部屋がたくさんあるにも関わらず、宿泊可能な部屋を4室に限っているんだそうです。


さてお宿の御主人に挨拶をし、帳場にて料金先払いを済ませてから、御主人に案内されつつ廊下を進んで客室へ。




今回通されたのは1階の「霞」というお部屋。名前こそボンヤリしていそうですが、当然ながら雲でも霞でもない2間続きの広いお部屋で、テレビや冷蔵庫も備え付けられており、不自由なく過ごすことができました。床の間にはちゃんとお花も活けられています。なおエアコンも設置されているのですが、今時どこ探しても無さそうな非常に古い機種で、一応運転できるものの、もし故障したら間違いなく修理対応不能であり、スイッチを入れる時にはちょっと不安になってしまいました。


洗面台も室内に備え付けられているので、歯磨き等のために室外へ出る必要はありません。なおお手洗いも室内にあるのですが、和式しかないので、洋式じゃないと出るものも出ないような体質の私にはちょっと辛く、用をたすときには共用のトイレを使用しました。


洗面台やトイレのみならず部屋には内風呂もあるのですが、使うことはできません。お風呂は次回記事以降で紹介する浴場を利用することになります。

上述したように素泊まり専門の宿であり、電子レンジの利用は可能ですが、館内で自炊することはできません。かと言って至近に飲食店が多いわけでも無いので、食事面で少々工夫を要するかもしれません。ちなみに私は夕食のため片道2km(往復4km)、散歩を兼ねて河津駅付近の飲食店まで歩きましたし、朝食は事前にコンビニで買って冷蔵庫に入れておきました。
また建物が全体的に草臥れているので、そのような建物が苦手な方はちょっと厳しいかもしれませんが、鄙びた佇まいや渋い雰囲気を好む方、あるいは昔ながらの立派な造作が好きな方には是非とも泊まっていただきたい宿です。

次回記事では館内のお風呂について取り上げます。

次回に続く。

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