温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

南道後温泉 ていれぎの湯

2024年09月20日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)

(2023年5月訪問)
今回も愛媛県松山市の温泉を取り上げます。市街中心部から国道11号や県道40号を走り、松山市南部を東西に流れる信茂川を渡って県道23号へ左折すると、程なく上画像の大きな看板が見えてきます。この施設「南道後温泉 ていれぎの湯」では完全かけ流しのお湯に入れるそうなので、実際に行ってみることにしました。


朝6時から営業しているとのことで、6:30頃に行ってみたところ、広い駐車場には既に多くの車が停まっており、人気の程が窺えます。いわゆるスーパー銭湯であり、敷地も施設も広くて大きく、全体的にゆとりのある造りです。


広い敷地内ではBBQ場やテントサウナなど、いかにも当世風なサービスが提供されています。


さて入館しましょう。新しそうな施設なのに、下足箱は昔ながらの松竹錠で施錠するタイプ。これってレトロ感を演出しているのか、はたまた単なるチグハグなのか。


館内も綺麗でスタイリッシュ。券売機で入浴券を購入し、券を目の前の受付へ差し出します。


受付の先に広がるホールはとても広く、座り心地の良さそうなソファーがたくさん置かれ、セルフのエステマシーンもあり、無料で20分使えるマッサージチェアーが10台以上も用意されていて、癒しを求めたい私のような人間にとってはまさに夢のような空間。しかも漫画などの読書コーナーも充実し、子供の遊び場もあったりして、日がな一日過ごせちゃいそうです(ただ仮眠できるようなソファーは見当たりませんでした)。

浴場内については文章のみでご説明します。
更衣室のロッカーは任意の場所を使こことができます。室内はそこそこ広く、ドライヤーも多く用意されていますので、使い勝手良好です。
浴場に入ってびっくり。いろんな種類の浴槽があるんですね。男湯の場合、まず入って左手に洗い場が配置され、たくさんのシャワーが設けられています。そして各種浴槽は出入口の正面や右手にあり、例えば最も大きなメイン浴槽の「長寿の湯」、打たせ湯、気泡湯、ジェットバスなどを利用できます。これら内湯の浴槽には無色透明のお湯が張られており、後述する金泉のお湯とは全く異なるごく普通のお湯で、源泉を濾過処理したものなのか、はたまた井戸水の沸かし湯なのか、そのあたりは不明です。この他にオジサン達が大好きなサウナもあり、私の訪問時も朝から全身汗ダルマ状態になっているお父さん達が次々にサウナから出てきて、水風呂へドボンと入っていました。水風呂には「石鎚山系の名水」と書かれているので、おそらく地下水なのでしょう。また内湯の隅にはドーム状の浴槽があり、こちらは潜れる水風呂でした。

露天エリアにも複数の浴槽があり、歩行湯と樽風呂には普通のお湯が張られているのですが、「銀泉」と書かれた岩風呂には徐鉄された温泉が、「金泉」の岩風呂には源泉そのままの温泉が完全かけ流しで注がれています。言い換えれば、ひとつの源泉をそのままの状態で浴用にしているのが「金泉」、徐鉄処理しているのが「銀泉」です。この「金泉」と「銀泉」双方の分析表が館内に掲出されており、同じ源泉でも徐鉄処理の有無で成分構成が大きく異なることに驚かされます。個人的な感想を申し上げますと、正直なところ「銀泉」は普通のお湯みたいで面白みの欠けるのですが、「金泉」は四国では珍しい金気混じりの食塩泉ですから一浴する価値が大いにあります。具体的な特徴として、見た目は少々緑色掛かった赤っぽい濁り湯で、その透明度は30cmほど。湯口は焼け爛れたような色に染まっており、しかもカルシウムと思しき細かな鱗状の析出も現れています。分析表によれば「金泉」の成分総計は9g以上有するため、相当しょっぱいのかと予想しながら湯口のお湯を舐めてみたのですが、意外にもそこまで塩辛くなく、また赤く濁っているので相当量の金気が含まれているのかと思いきや、やはりこちらもそこまで強いわけではなく、むしろ金気はちょっとあるかな、と微かに感じる程度で、味覚的にはマイルドな塩味と石灰感(カルシウム感)がメインでした。湯中ではカルシウム由来のキシキシ感よりも、食塩泉らしいツルスベ感が勝っているように感じられました。

この「金泉」の岩風呂は自噴した約40℃の源泉を非加温でかけ流しているため、湯船の湯加減は微睡みをもたらす38℃前後となっており、しかも容量的に5~6人しか入れないため、微睡んだり寝ちゃったりするお客さんが長い時間湯船を占有してしまい、回転が悪いのが残念なところ。実際に私も入れるスペースが空くまでかなり待ちました。とはいえ、四国でしょっぱい濁り湯のかけ流しは大変珍しいため、近くへ寄ったら入るべき貴重な存在と言えましょう。


【金泉】
南道後温泉第1源泉
ナトリウム-塩化物温泉 40.5℃ pH7.3 溶存物質9.383g/kg 成分総計9.418g/kg
Na+:3287mg(91.37mval%), Mg++:44.8mg, Ca++:134.9mg, Fe++:2.7mg,
Cl-:5269mg(95.26mval%), Br-:12.4mg, I-:0.6mg, HCO3-:438.4mg,
H2SiO3:31.8mg, HBO2:82.9mg, CO2:35.2mg,
(平成26年3月28日)
加温加水循環消毒なし

【金泉以外】(徐鉄ろ過処理水)
南道後温泉第1源泉
ナトリウム-塩化物温泉 37.2℃ pH7.6 溶存物質6.052g/kg 成分総計6.065g/kg
Na+:2083mg(91.24mval%), Mg++:28.8mg, Ca++:88.9mg,
Cl-:3396mg(94.65mval%), Br-:7.7mg, I-:0.2mg, HCO3-:308.2mg,
H2SiO3:27.2mg, HBO2:49.0mg, CO2:12.7mg,
(平成26年3月28日)
加水無し
加温・循環濾過・消毒あり

愛媛県松山市中野町甲853
089-963-3535
ホームページ

6:00~24:00(最終受付23:00) 年中無休
平日660円、土日祝770円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


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松山ニューグランドホテル 「天然温泉ゆるりん」

2024年09月13日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)

(2023年5月訪問)
前回記事の徳島県から、今回は愛媛県松山市へと移動してまいりました。松山の温泉と言えば道後温泉ですが、松山市街地の中心であり且つ随一の歓楽街でもある大街道エリアにも温泉浴場があるんです。しかもその温泉はビジネスホテルに併設されており、宿泊でも日帰りでも入浴が可能です。今回は一晩こちらの「松山ニューグランドホテル」でお世話になりつつ、併設する温泉浴場「天然温泉 ゆるりん」で大街道に湧く温泉を楽しんでみることにします。


客室はごくごく一般的なビジネスホテルそのものですが、快適に一晩を過ごせましたよ。


さすが松山の中心部だけあって大街道エリアにはたくさんのホテルが営業していますが、そんな中でもこの「松山ニューグランドホテル」にしかないものがこれ。ホテル駐車場の隅には「これ温泉やけん 触っとおみ~」と書かれた手水らしきものがあり、大きなアヒルさんが浮かぶ甕に注がれているのは、正真正銘の温泉なのです。温泉らしい芳ばしい香りを放つこのお湯はちょっとぬるめですが、明らかに水道でも井戸水でもない、まぎれもない温泉です。後述する浴場内には非加温かけ流しの源泉浴槽があるのですが、そちらでは塩素が行われているため、源泉のありのままの姿を感じるにはこの手水のようなモニュメントで落とされる温泉を触るのが一番。温泉マニアでしたらまずはこれを見つけるべし。


温泉浴場はホテルと棟続きになっている別館にあります。館内1階でつながっていますので、宿泊客でしたらわざわざ外に出る必要なありません。宿泊中は朝10時まで夜通し利用可能です。
建物の脇には「グランド温泉 泉源地」と書かれた柱が立っていますね。どうやら源泉はここにあるようです。施設の説明によれば、pH8.9のアルカリ性単純泉を地下670mから揚湯しており、100%かけ流しで提供しているんだとか。早くお風呂に行きたい。楽しみだ。


日帰り入浴利用の場合は、ホテルの角を曲がって路地に入った先にある、この専用玄関から入館します。日帰り入浴料金にはレンタルタオルなども含まれていますので、手ぶらで利用可能です。


こちらが男女別浴場の入口。自動ドアの枠にカードリーダーがあり、宿泊客は自分の客室のカードキーを読み取り部分にタッチすれば開錠されてドアが開きます。男女でカードキーの色が異なるため、誤った浴場に入ることは無いでしょう。
建物自体は建築から相当の年月が経過しているものと思われますが、この浴場部分は最近改修したらしく、更衣室はとても綺麗で現代的。ロッカーやドライヤーなどひと通りの備品が完備されているほか、飲料水のサービスも用意されています。


(浴場内の画像は公式サイトから借用)
お風呂は内湯のみですが、こちらも綺麗に改修されており、とても快適に利用できました。
出入口付近には今や温浴施設に欠かせなくなったサウナと水風呂があり(いずれも男湯のみ)、浴場のほぼ中央が洗い場が設けられています。洗い場のシャワーは計10個で、新しい水栓ゆえ水圧良好です。温浴槽は2つあり、入って右手に源泉浴槽、奥の方に加温循環の温泉が張られた大浴槽がそれぞれ設けられています。


私は初めての利用ですのでひとまずサウナを含む全ての浴槽に入ってみましたが、やっぱり抜群に素晴らしかったのがこの源泉浴槽でした。こちらでは36℃の源泉を非加温非加水で掛け流しています。アルカリ性単純泉とはいえ印象に残るような滑らかさこそ無いものの、優しく柔らかいお湯で、しかも不感温度帯の湯加減ですから、このお湯に浸かったら微睡んでしまうこと必至。いつまでも長湯できちゃいます(とはいえ混雑時は他のお客さんと譲り合いましょうね)。塩素消毒は仕方ありませんが、でも松山の街中でかけ流しのお風呂に入れるのですから有難いですね。微睡みの湯に浸かって旅の疲れを癒し、湯上がりに客室へ直行すれば熟睡間違いなし。道後の湯も良いけど大街道の湯もなかなか良いですね。


グランド温泉 
アルカリ性単純温泉 36.4℃ pH8.9 溶存物質0.4009g/kg 成分総計0.4011g/kg
Na+:116.0mg(95.10mval%),
F-:18.3mg, Cl-:81.3mg(44.21mval%), OH-:0.1mg, S2O3--:1.2mg, HCO3-:102.5mg(32.43mval%), CO3--:5.5mg,
H2SiO3]57.4mg, HBO2:12.0mg,
(平成27年3月2日)
加水無し
大浴槽のみ加温・循環あり
大浴槽・源泉槽とも塩素系薬剤による消毒あり(松山市の公衆浴場の衛生に関する基準を満たすため)

愛媛県松山市二番町3-4-10
089-933-3661
ホームページ

日帰り入浴15:00~24:00 (受付終了23:00)
1,000円/2時間(貸タオル含む)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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三好市 松尾川温泉

2024年09月06日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)

(2023年5月訪問)
前回記事に引き続き四国の温泉を巡ります。今回は徳島県へやってきました。徳島県の名湯と言えば祖谷温泉ですが、私が訪ねた5月連休の某日は非常に多くのお客さんで大混雑しており、とてもゆったりできそうになかったため、目的地を変更して、祖谷峡から北へ伸びる県道32号を進んだ先にある「松尾川温泉」を目指すことにしました。途中で県道32号線から140号に逸れ、綺麗な渓谷に沿っていかにも四国の山間部らしい狭隘な道を東進し・・・


対向車が来るか来ないかドキドキしながらクネクネと曲がる山道を走行してゆくと、やがて公営の無料駐車場が目の前に広がります。「松尾川温泉」に到着です。後述する「しらさぎ荘」の奥に建つこげ茶色で平屋の建物が今回利用する温浴施設です。こちらも訪問時はとても混んでおり、入場規制がかけられていて、受付のおじちゃん曰く「外で待っていてほしい」とのことで、順番待ちの札が渡されました。しばらく待つうちにお客さんが多少出てきてキャパシティに余裕が出てきたらしく、順番待ち札と引き換えにようやく入湯券を購入することができました。ちなみに待っている間は券売機が隠されて購入できなくなります。順番待ちの札や券売機の隠蔽などの対応ができているということは、普段も混雑する機会が多いのかもしれませんね。
なお連休中の夕方に訪問したため、館内の画像はございません。ご了承ください。


なお、公営無料駐車場の前に公営と思しき「しらさぎ荘」という古いコンクリの建物があります。自炊湯治の宿と書かれており、「松尾川温泉」の公式サイトで紹介されている宿泊料金はこの「しらさぎ荘」のものかと思われます。周囲には店舗が無いため自炊するための食材などは事前に市街地などで調達する必要がありますが、自炊の手間さえ気にならなければ、こちらに泊まってのんびり「松尾川温泉」に浸かるという楽しみ方もできるわけですね。宿泊すれば朝7時から夜7時まで何度も入浴可能なんだとか。


さて、入浴券を購入して券を受付のおじちゃんに手渡します。男女両浴室は受付を挟んで左右に分かれており、男湯は受付の左側です。
脱衣室はシンプルな構造ですが、定員20名を収容できるだけの広さを有しており、ロッカーの個数も問題なし。ドライヤーは2つあり、扇風機もあって使い勝手はまずまずです。

お風呂は内湯のみで露天風呂などはありませんが、室内は木造建築で綺麗に維持されており、特に洗い場周りは黒いタイルでシックにまとめられていて、落ち着いた雰囲気の中で湯浴みを楽しめます。なお洗い場に取り付けられているシャワーは6つあり、ボディーソープやシャンプー類が備え付けられています。シャワーの吐出圧力も良好なので快適に利用できました。

浴槽は窓に面して横長に作られており、寸法としては縦1.8m×横5mくらいでしょうか、7~8人は入れそうなサイズ感があって、その窓からは清流が眺められます。浴槽の右端には小さな木の滑り台みたいな湯口が設けられていて、そこから加温された温泉が注がれています。本来こちらのお湯は無色透明なはずですが、混雑のためか湯鈍りが発生していたらしく、若干黄緑色っぽく(あるいは若干エメラルドグリーンっぽく)濁っていたように見えました。後述するように硫黄を多く含むお湯ですので、コンディションによって色合いがかわるのかもしれません。

湯口から出るお湯は無色透明で、ローションを彷彿とさせるヌルヌルスベスベとした大変滑らかな浴感がはっきりと得られます。もしかしたら四国の温泉や鉱泉の中では1位か2位を争うほどの強いヌルスベ感ではないでしょうか。アルカリ性に強く傾いている上、炭酸イオンが66.5mgも含まれていることが、このような強いヌルスベをもたらすのかもしれません。しかも湯口のお湯を手に取ってみると、明瞭なタマゴ感(タマゴ味とタマゴ臭)が感じられます。加温の過程でタマゴ感が飛んでしまうのか、浴槽のお湯からはさほど感じられませんでしたが、それでも他の鉱泉に比べればハッキリとしたタマゴ感を放っています。とりわけ湯口のお湯はチオ硫酸イオンを多く含む温泉によくある茹で卵の卵黄のような味を帯びていました。更にはアルカリ性単純泉らしい微収斂も感じられます。
ローション的なヌルヌル浴感、そしてタマゴのような味や匂いなど、知覚的特徴がはっきり出ている良泉であり、且つ加水・循環・消毒を行っていない加温かけ流しという湯使いも素晴らしく、わざわざこのような山奥を目指してお客さんが来て混雑するのも十分に納得できます。ここは一浴の価値がありますね。おすすめ。


アルカリ性単純硫黄温泉 25.0℃ pH10.2 蒸発残留物0.2445g/kg 溶存物質0.3037g/kg
Na+:83.8mg,
OH-:15.8mg, HS-:12.2mg, CO3--:66.5mg,
(平成29年12月26日)
加水・循環・消毒なし
加温あり(入浴に適した温度に保つため)

徳島県三好市池田町松尾黒川2-1
0883-75-2322
ホームページ

10:00~19:00 水曜・年末年始定休
550円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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安芸市 こまどり温泉

2024年08月30日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)

(2023年5月訪問)
四国の山間部はどこも道が狭く険しい…。四国の僻地を運転していると、そのことを否応なく実感させられます。
今回目指す安芸市の「こまどり温泉」も狭隘な山道をひたすら進んでいった先にあり、そこそこ車幅の大きな自分の愛車(SUV)で訪ねた私は、途中で不安に陥りながら目的地を目指したのでした。
公式サイトによればアクセス方法は2つあり、初めて当地を訪ねる私は「比較的道路が広く、運転しやすい経路」と表現されている「伊尾木川側の県道208号から」向かうルートを選択しました。たしかに私の車でも通行できるのですが、それでも離合に苦労するような狭い区間が長く続き、しかも途中に集落が複数あるため行き違う車も少なくなく、往復共にバックしたり、ギリギリのところで擦れ違ったり…を繰り返しました。
集落を抜けて山を登り、車1台しか通れない上画像のトンネルを抜け・・・


突き当たりを道しるべに従って左折。坂を下ると集落に入り・・・


今回の目的地「こまどり温泉」に到着です。山の緑に囲まれ、また集落を囲うように山の斜面には畑が切り拓かれ、空では小鳥がさえずり、大変長閑で麗しい場所です。この施設がある東川地域は約200の人口を擁しているんだとか。たしかに景色は素晴らしいのですが、都会に生まれて育った私にとってはいろんな意味で想像を超越する環境です。


安芸駅からコニュニティーバスが施設の目の前まで来るのですが、1日たった2本。観光ではちょっと使いにくいかも。


この施設は農水省によるウルグアイラウンドの対策事業として建てられたようです。90年代のニュースでよく聞いた言葉ですね。農業分野に関してはコメの輸入を認め、ミニマムアクセスとして少しずつ輸入することになったんでしたっけ。もちろん農業関係者は大反対だったでしょうから、当時の細川内閣は事業費6兆100億円、国費2兆6,700億円という巨額の補助金を全国にばらまいたわけですね。その補助金で作られた施設のひとつが「こまどり温泉」というわけか…。


建物右側のスロープを下った先の建物裏手が駐車場です。車を停めていざ施設へ。
玄関の引き戸を開けるとすぐに受付カウンター。スタッフの方に湯銭500円を支払って中へ進みます。
浴室は受付の右手です。なお反対側の左手の奥には食堂や休憩室があり、館内での食事利用も可能なんだとか。


暖簾を潜った先の更衣室は至ってシンプルで余計なものはありませんが、ロッカーにはカギがあり、ドライヤーも用意され、扇風機・エアコンも完備されていますので、使い勝手に問題なし。
浴室のドアには「源泉かけ流し」と書かれた紙が貼られていますね。これは楽しみだぞ。


浴室も質実剛健と申しましょうか、飾り気の無いシンプルな構造です。タイル張りの浴室内では、窓下に浴槽が据えられ、反対側の壁側にはシャワーが4つ並んでいます。


窓の外には山の美しい景色が広がり、心地よい風が入ってきます。うん、気持ち良い!


浴槽もタイル張りですが縁のみ御影石が用いられています。詰めれば4人入れそうですが、3人がベストでしょうか。


浴槽のお湯は常時注がれているわけではなく、非加温の冷鉱泉と加温された鉱泉という2つの水栓があって、適宜開閉して湯加減を調整しています。所謂貯め湯式の湯使いであり、循環こそしていませんが、果たして源泉かけ流しと言い切って良いものか、ちょっと躊躇するところです。とはいえ各自で好みの湯加減にして良いのですからありがたいですね。ちなみに私がお風呂から出ようとしたタイミングで入ってきた常連さんと思しきお客さんは、浴室へ入るや否や加温湯と冷鉱泉を同時にジャンジャン出して、実質的なかけ流し状態にしていました。私にとっては初めて利用する施設ですので、出し続けることに躊躇いがあり、適度な湯加減にしたらすぐに栓を締めちゃったのですが、なるほど出しっぱなしなら確かに掛け流せますね。なんだぁ、出しっぱなしにして良かったのかぁ。

非加温の冷鉱泉は12℃という冷たさですから、注ぎ過ぎちゃうと湯船はすぐにぬるくなっちゃいますが、できるだけ湧出時の姿に近い状態の源泉を知りたい私は、お言葉に甘えて他のお客さんにご迷惑が及ばない程度に非加温の水栓を開けて浴槽へ注いでみました。
分析表によれば総硫黄の量(チオ硫酸・硫化水素イオン)がそこそこ多いので、冷鉱泉からタマゴ臭的なものを期待したのですが、私の訪問時は冷鉱泉からは硫黄感が感じられず、しばらく出し続けたのですが状況は一向に変わりませんでした。なお加温された鉱泉からも硫黄感は得られません。日によって状況は変化するもかもしれませんが、おそらく鉱泉をストックしているうちに硫黄感が飛んでしまったのかもしれませんね。期待した硫黄感が得られずちょっと残念です。なお浴感もごく普通で、特に印象的な引っ掛かり感もツルスベ感もあるわけではなかったように記憶しています。

お湯自体は取り立てて面白いものではありませんが、循環装置を使っておらずかけ流しに近い状態で入浴できる鉱泉浴場は高知県では珍しく、また秘境然としたこの長閑な山村にポツンと佇む静かな共同浴場でのんびりとした環境や風情を味わうだけでも十分に価値がありますから、なんだかんだで訪問して良かったと思っています。


受付前にある大きな冷凍ストッカーにはご当地高知県の有名食品メーカーである久保田食品のアイス各種が入っていたので、湯上りにそれを購入して食べました。久保田食品のアイスは素材感が存分に活きていて本当に美味。東京でもクイーンズ伊勢丹やビオセボンなどオーガニック食材を扱う店舗で見かけますが、この久保田のアイスを食べると他のメーカーの商品が食べられなくなっちゃいます。


アルカリ性単純硫黄冷鉱泉 12.1℃ pH8.6 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質0.432g/kg 成分総計0.433g/kg
Na+:95.2mg(86.07mval%),
HCO3-:261.7mg(86.32mval%), HS-:3.4mg, S2O3--:1.2mg,
H2SiO3:28.1mg,
(2020年2月21日)

高知県安芸市黒瀬550
0887-36-2260
ホームページ

11:00~19:00(11月~2月は18:30まで)(受付は30前で終了) 毎週水曜及び年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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香美市 温泉cafe湖畔遊

2024年08月21日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)
(2023年5月訪問)

拙ブログでは初めての登場となる高知県の温泉・鉱泉を取り上げます。今回訪ねる「温泉cafe湖畔遊」は、物部川のダム湖畔に位置するcafeレストラン併設の温泉宿泊施設です。日帰り入浴も受け付けているため、今回は入浴のみの利用です。このエリアはダム湖の対岸側にアンパンマンミュージアムがあったり、また国道195号線沿いには小洒落たカフェやレストランが点在していたりと、美しい自然環境を活かした観光業が盛んなエリアと言えましょう。なお「温泉cafe湖畔遊」は国道沿いではなく、途中から狭い道を入って進んだ集落の中にあり、そこそこ対向車も来るため、運転にはちょっと気を遣いました。

目的地へ到達すると、道の左右両側に「湖畔遊」のものと思しき建物や看板が見え、初見の私はどちらへ行けばよいのか迷ってしまったのですが、看板などをよく見たところ、宿泊客だったら湖側の舗装路面を下った先にある駐車場を利用できるのですが、私のような日帰り入浴やレストランのみ利用の場合は、山側の狭い砂利敷き駐車場を使うことになることがわかりました。そこで愛車のSUVを砂利の駐車場に入れ、何度か切り返しながらなんとか駐車スペースに車を収め、道路を渡って、反対側(湖側)の建物へと向かったのでした。
ちなみに施設の看板には音符のフラットが描かれているのですが、これって前進を続ける毎日の生活からひとつ戻してリラックスしよう、という意味なのかしら。あるいは自然に帰るということなのかしら。とにかくそんな感じの意味合いが含まれていそう(勘違いだったらごめんなさい)。


坂を下った先の湖畔に建つ施設群はそれぞれ緑の木々に囲まれており、木々に隠れ周囲の自然に溶け込むかのように佇んでいます。また建物自体も黒く塗装されて目立たないようになっています。


入浴利用の際は、湖畔を臨むレストランのレジで受付を行います。料金は先払いで、入浴料の他、ロッカーキーのデポジットとして更に100円を納め、それと引き換えに更衣室のロッカーキーが手渡されるのですが、この100円は退館時にカギを返却すれば戻されますのでご安心を。


一旦レストラン棟を出て、右隣の建物(浴舎)へ移ります。この浴舎は僻地集落の共同浴場をひと回り大きくした程度の規模で、思いのほか小さな建物です。なお偶数日と奇数日で男女の暖簾を替えており、私は訪問した偶数日は右側が男湯の暖簾が掛かって、ロッカーキーのバンドの色は赤でした。なお左右のお風呂はどのように異なるのか、その違いにはついては不明です。
スペースの関係なのか、靴は出入口に置かずロッカーの中に収めます(ロッカー内は2段式になっていて、下段に靴を入れます)。このためスニーカーのような低い靴でないと入りません(ブーツの場合はどうするんだろう…)。
更衣室内にはエアコンと扇風機が用意されているので、季節を問わず快適に利用できます。


外観から想像できるようにお風呂はコンパクトな造りですが、落ち着いた大人な雰囲気がなかなか良く、大きな窓からはダム湖を臨み、しかも露骨な展望ではなく、梢や木々の緑の間から湖面を眺めるような構造になっている点に品の良さを感じます。なお洗い場に設けられているシャワーは計5か所。シャンプー・リンス・ボディソープが備え付けられ、シャワーの吐水圧力も問題ありません。


浴槽はいわゆる岩風呂で、6〜7人は入れそうなサイズを有しており、上述のように木々の梢越しに湖を眺めながら入浴できます。
壁に「掛け流し」と書かれており、たしかに窓側の縁からオーバーフローしているのですが、その量は決して多くなく、また湯口もよくわからなかったので、純然たるかけ流しなのかあるいは循環併用なのか、その辺りは判断できませんでした。なお「掛け流し」と書かれた扁額の下に金属のパイプが立ち上がっていて、そこからチョロチョロと冷鉱泉が出ています。この冷鉱泉といってもそんなに冷たくなく20℃はありそうなので、おそらくこれは生源泉かと思われます。このチョロチョロ源泉のほかに加温されたお湯が浴槽内で出ているのでしょう。

湯船のお湯は若干モスグリーンを帯びた山吹色に濁っており、その透明度は底面がかすかに見える程度です(室内の薄暗さが透過性を低めている可能性あり)。化石海水由来の温泉によく見られるような色や濁りであり、実際にチョロチョロ落ちる鉱泉を口にしてみますとかなり塩辛く、とても山の中にいるとは思えません。内陸部にもかかわらず塩辛い温泉といえば東北地方のグリーンタフ型温泉はその一例ですが、分析表によればグリーンタフ型温泉と異なり硫酸塩はほとんど含まれておらず、食塩や重曹イオンが主成分となっています。また金気も少々感じられます。更には青森県八甲田の「みちのく深沢温泉」みたいな、癖のある独特の匂いも嗅ぎ取れました。
湯船に浸かると食塩泉的な弱いツルスベの滑らかな浴感が得られる一方、この手の温泉によくあるキシキシと引っかかるような感触はありません。多く含まれる炭酸イオンが滑らかな浴感をもたらしている一因かもしれません。金気の影響なのか、チョロチョロと冷鉱泉が落ちるところは焼け爛れたような色に染まっており、浴槽の岩も赤黒く、また浴室の内装も黒く塗装されているため、結果的にお風呂はダークカラーで統一されているような印象を受けます。その色合いが落ち着いた雰囲気をもたらすのですね。


露天エリアにはコンクリの四角い浴槽があるのですが、これはお湯ではなく水風呂です。この露天エリアには腰掛けが4つ用意されており、お湯で火照った体をクールダウンできます。樹々越しに湖面を眺められますが、その環境ゆえ、夏は虫が多いのではないかとちょっと心配です。

私がお風呂から出てレストランへ鍵を返却しに行くと、ちょうどランチタイムを迎えたレストランはお客さんで満席になっており、空席待ちのお客さんがいらっしゃるような状況でした。レストランも湖面を臨む心地よい立地ですし、きっと料理も美味しいのでしょう。環境や雰囲気、そして高知県では非常に貴重な「掛け流し」という点にどれだけ価値を見出せるのか、その価値に納得できるのならば、利用価値のある施設ではないかと思います。


ナトリウム-塩化物冷鉱泉 21.5℃ pH8.4 41L/min(掘削動力揚湯)
Na+:3039mg(93.25mval%), Ca++:117.9mg, Fe++:1.7mg,
Cl-:4765mg(93.12mval%), Br-:24.4mg, I-:9.4mg, HCO3-:525.7mg, CO3--:22.4mg,
H2SiO3:15.1mg,
(2021年5月20日)

高知県香美市香北町有瀬100
0887-59-4777
ホームページ

日帰り入浴11:00~16:00
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤあり

私の好み:★★+0.5
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