温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

沼尻元湯

2009年07月31日 | 福島県
復帰第一弾は、私がとても気に入っていて何度も通っている野湯「沼尻元湯」をご紹介します。福島県・安達太良山の西側山腹には各地に見られる地獄谷のようにガレが広がる谷があるのですが、そこで湧き出す硫黄の熱湯が山の頂から流れてくる川と混じりあい、川そのものがちょうどよい湯加減となっているので、そこへドボンと浸かってしまおうというわけです。

磐越道を磐梯熱海インターで下り、母成グリーンラインを通って会津戦争の戦地である母成峠を越え、中ノ沢温泉を過ぎ北へ折れると沼尻温泉にたどり着きます。この沼尻温泉の奥にある田村屋旅館を左に見て「白糸の滝」と書かれた看板に従い背面に広がるスキー場のゲレンデを縫うように貫く凸凹のダートを約3km登ってゆくと、やがて道は果てて駐車スペースが広がる所に行き当たります。ここが安達太良山の登山口で、ここからは登山道を歩くことになります。

登山道にはふたつあり、ひとつは駐車スペースから目立つ位置に入り口がある「船明神ルート」で、もうひとつは駐車スペースの奥から伸びる「沼の平ルート」ですが、現在「沼の平ルート」は通行止になっているため、公には「船明神ルート」を選ぶことになります。しかしこのルートは勾配がきつく遠回りである一方、「沼の平ルート」は源泉である元湯からお湯を温泉街へ運ぶパイプライン(*)に沿っていて目的地まで短絡している上、急な勾配がほとんどないため、私は危険を承知で「沼の平ルート」を選んでしまいます(途中の路面が一部崩落しているのですが、何とか通れてしまうので)。

(*)沼尻温泉や中ノ沢温泉は沼尻元湯からパイプラインで引湯されてくる源泉を利用しています。


正規ルートである「船明神ルート」入口


「船明神ルート」から眺めた磐梯山


「船明神ルート」を登ってゆくとこの分岐点に至ります。
ここを右に行けば安達太良山の頂上方面、左にそれると沼尻元湯です。


上の分岐点から沼尻元湯(及び沼の平方面)を見下ろした様子。
この谷の底まで直滑降のように一気に下っていきます。


こちらは「沼の平ルート」入口


「沼の平ルート」から眺めた白糸の滝


沼尻元湯はかつて硫黄鉱山があったところで、「沼の平ルート」を進んでゆくと鉱山跡の廃屋や、湯の華の搬出に使用されているロープウェイ、そして積み出し用の木枠の箱がたくさん積まれた小屋が見られます。また途中では白いお湯が流れ落ちる白糸の滝、そして磐梯山やそれに連なる山々がとても美しく望むことができます。路面崩落箇所を越え川に沿いながらしばらく歩くうちに廃屋が目に入り、温泉のパイプが木製の樋に換わってくる場所まで来ると、視界の前方に荒涼とした白い谷が広がってきます。樋の内側は硫黄で真っ黄色になっており、硫黄の匂いも漂ってきますが、樋を通るお湯は熱湯ですので、はやる気持ちを抑えてくれぐれもお湯には手を触れませんよう。


硫黄鉱山跡の潰れた廃屋


湯の華搬出用の木箱が積まれた小屋


更に進むと左手に湯の華採取の小屋が建ち、川に橋が架かっているところに至ります。ここから上流の川が入浴に適した温度になっており、湯船になりそうな天然の湯壷が点在していますので、自分の好みのところを見つけていざ入浴。更衣室なんてありませんから、その場で脱衣してください。川の岩や石は硫黄がこびりついていて滑りやすいので足を踏み入れるときはご注意を。
川の上流からは白濁したレモン汁のような上質のお湯が流れてきます。当たり前ですがお湯が常に流下していますので、野湯にありがちな気持ち悪い沈殿物や浮遊物はありません(硫黄の泥湯によくある白い泥なら沈殿しています)。何しろお湯と川の水のブレンド具合が絶妙で、いくらでも長湯できます。川そのものが入浴できる硫黄の温泉になっているところは、そう多くはないと思います。ここは北海道ではありません。東京から300km程度で日帰りも可能な圏内であるにもかかわらず、この自然。この環境。そしてこのお湯。まさに至福の環境。頭が空っぽになり、世俗の憂き事がすべて忘却されてしまいます。時間の経過すら感じられなくなります。晴れていれば突き抜けるような晴天、山々の緑、そして硫黄の湯の白、という素晴らしきトリコロールの世界に浸れます。


元湯から「沼の平ルート」の駐車場(登山道入口)方面を眺めた様子。
谷底の川に沿って送湯用パイプラインと登山道が伸びているのがわかります。


川に沿って湯の華採取用と思われる木製の樋が架けられています。


こんな感じで川に湯壷ができているので、そこで入浴します


ただし、ここは硫化水素ガス発生地帯です。ガレのあちらこちらに「致死量に達する硫化水素ガスが発生している」と書かれた立入禁止の札が立てられています。1997年にはこの奥にある沼の平に迷い込んだ登山客4人が硫化水素ガス中毒により死亡する事故が発生しています。従いまして、状況をご自分で判断し、特に無風のときなど硫化水素ガスが滞留しやすい状態のときには入浴を諦め早急に立ち去ることをおすすめします。


酸性-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉

福島県耶麻郡猪苗代町沼尻 地図

私の好み:★★★
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7月23日頃までお休みします

2009年07月01日 | その他
私事ですが本日(7月1日)より約3週間程ヨーロッパへ出かけます。
このため当ブログはその間お休みさせていただきます。
帰国は7月23日を予定していますので、再開はそれ以降となります。
ご了承ください(メール等の返信も同様です)。
再開後も何卒宜しくお願い申し上げます。
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