ロサンゼルスの東部からインターステートハイウェイ15号でラスベガス方面へ走ると、途中にベイカーという小さな街を通り過ぎるのですが、この街で進路を北に変え、デスバレーに向かって伸びるその名も「デスバレー・ロード」(127号線)で、見渡す限り何にもない荒野をひたすら北上します。
ベイカーから50マイル強走り続けると、やがてオアシスのまわりに形成された小さな集落であるテコパに辿り着きます。観光地デスバレーへ向かう途中に通過する集落のひとつに過ぎず、これといった観光資源があるようには思えないので、デスバレーを取り扱う観光ガイド(書籍やウェブサイト)を見てもこの集落が登場することはありませんが、なんとここには温泉が湧いており、いくつかの温泉施設で入浴することができるのです。そこで今回は、集落に複数ある温泉関係施設の中でも、モーテルとして営業している"Tecopa Hot Springs resort"で一晩を過ごすことにしました。
だだっ広い敷地内にはいくつかの建物が点在しています。その中で道路に面しているこの小屋がフロントなのですが、フロントが開いているのはお昼から夕方5時まで。私がここへ辿り着いたのは夜6時過ぎだったため、小屋の扉は閉まっていました。
時間外はバスを改造した"Campground Host"を訪ねて、かつてヒッピーだったような風貌をしているおじさんに対応してもらうことになります。私は予約せず飛び込みで訪問したのですが、難なく部屋を確保することができました。
なお、宿の名前に「リゾート」という語句が入っているものの、正直なところそれらしき要素は見当たりません。しかし、私が利用したモーテル棟のほか、コテージや車中泊用スペースなど客のニーズに合わせた泊まり方ができるので、その多様性と後述する温泉浴場の存在を以てリゾートと称しているのかもしれません。実際に"Campground Host"のバスの近くには複数のトレーラーハウスが数台止まっており、この荒野の真ん中で長期滞在している人がいらっしゃるようでした。
さて私は上述のようにモーテル棟の客室で一晩を過ごしました。左or上画像がその外観で、右or下画像が客室内(10号室)の様子です。ちなみにお値段は素泊まりで一晩95ドルと各種税金。
客室にはクイーンサイズのベッドが1台据えられているほか、冷蔵庫・エアコンなどが備え付けられ、洗面台・トイレ・シャワールームも完備されています。なおシャワーから出てくるお湯は温泉です。
客室を出て、敷地内をちょっと散策してみることに。
敷地内にはビストロと称する食堂があり、ここで夕食や朝食を別料金でとることもできますが、私は事前に購入しておいたサンドウィッチなどで食事を済ませたので、そのビストロで提供される内容に関してはわかりません。ビストロの隣には青空ステージが設けられていて、ドラムセットが置きっぱなしになっていたのですが、楽器を屋外で吹き晒しにして大丈夫なのかな?
上述のトレーラーハウスが止まっている付近の丘の上にポツンと寂しく立っているのは浴場棟。後述しますが、モーテル棟にもお風呂がありますから、この独立した浴場棟は車中泊のお客さん向けなのでしょう。私が訪ねたときには鍵が閉まっており、中も真っ暗でしたので、残念ながら中の様子は窺えませんでした。
さて、モーテル棟に戻りましょう。棟の中央を貫く廊下に沿ってバスルームが3室並んでおり、いずれも貸切で利用することができます。3室とも同じレイアウトであり、時間の制限もありませんから、任意の時間に任意のお風呂を利用して良いかと思います。
空いている浴室に入ってドアの内側から鍵をかけます。お風呂は実用本位の至って質素なもので、窓が無いため少々の圧迫感を覚えるのですが、それでも室内空間はそこそこ広いので(6畳ほど)、実際に入ってみますと、さほどストレスなく利用することができました。
壁に掲示されている注意書きには、入浴前に必ず客室のシャワーを浴びるよう記されていました。というのも、このお風呂にはシャワーなど洗い場スペースがないためです。従いまして、浴室内では石鹸やシャンプーの類も使用禁止です。もちろん私も自分の部屋で汗と垢を洗い流してから、このお風呂に入りました。この注意書きの隣にはハングル表記の張り紙もあったのですが、私はハングルが全く読めないので、何を書いてあるかわかりません。ここは韓国人客が多いのかな?
浴槽は小さなプールのような感じ。コバルトブルーに塗装された浴槽は、2m×2.5mほどの四角形。深さが2段階になっており、ステップ部分に腰を掛けるといい具合に湯浴みできます。丸い湯口から出てくる無色透明の温泉の吐出温度は43.0℃。湯の花などは見られない綺麗に澄んだお湯です。湯口の傍に排水口があり、浴槽のお湯の全量がそこから排出されてゆきます。完全掛け流しの湯使いだと判断して間違いないでしょう。
湯船の温度は39.6℃ですから、ちょっとぬるめの湯加減ですが、のんびり長湯するにはもってこい。pH8.33ですから、アルカリ性泉と言っても差し支えないでしょう。実際にお湯からはアルカリ性泉によくある微収斂味が感じられます。なお匂いは特に嗅ぎ取れませんでした。無臭のお湯なのでしょうね。
屁理屈が長くなりましたが、いざ入浴です。
温泉風情はないものの、浴槽自体が比較的ゆとりのある造りであるため、四肢を伸ばしてゆっくり入れますし、ぬるめの湯加減ですから湯あたりを気にせず長湯ができます。しかもアルカリに傾いているお湯は滑らかで、湯中では全身がツルツルスベスベになりますから、湯加減と相まって大変気持ち良く、意外にも後を引いてお湯から上がるのを躊躇ってしまうほど気に入りました。なかなか良いお湯です。
さらには、このお風呂は"clothing is optional"、つまり水着の着用は任意となっており、日本のように裸で入浴できることも嬉しいところ。上述の張り紙でも裸での入浴を推奨しています。日本人なら一糸まとわない姿で湯浴みしたいものですが、ここではそんな希望を叶えてくれます。だからこそ気持ち良く感じたのしれません。
沙漠のオアシスに湧出するとっても優しい温泉でした。
GPS:35.86987, -116.23243,
860 Tecopa Hot Springs Road, Tecopa, CA
760-852-4420
ホームページ
GPS:35.86987, -116.23243,
私の好み:★★