温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新横浜フジビューホテル 日帰り入浴

2024年08月09日 | 神奈川県

(2023年4月訪問)
2023年3月に東急と相鉄の新横浜線が開通し、神奈川県東部の鉄道旅客の流れに変化がもたらされました。相鉄沿線と東急がつながることで、県央部から都心へのアクセスが飛躍的に向上するとともに、県内各部のみならず渋谷や目黒など東急沿線などから新横浜へのアクセスが良くなったため、状況によっては品川より新横浜から東海道新幹線へ乗り継いだ方が便利になるような状況も生まれています。

私も一介の鉄ちゃんとして、開業フィーバーが落ち着き始めた1ヶ月後の4月に現地へ向かい、開通したばかりの駅や路線、旅客の状況を確認してまいりました。個人的な感想としては、開業して間もないのに結構利用客が多く、早くも県民の足として定着していることに驚きました。
さて、東急新横浜駅の駅窓口で東急「のるるん」と相鉄「そうにゃん」のツーショットを撮ってから・・・


私は新横浜でひとっ風呂浴びることにしました。駅至近にある「新横浜フジビューホテル」は温泉の自家源泉を所有しており、その温泉に日帰り入浴利用することが可能です。こちらは駅前の通りに面したホテルの正面ですが・・・


温泉浴場の入口は角を曲がって路地に入った先の西館にあります。


なお路地を入ってすぐのところにあるホテル駐車場には、この直下から温泉を汲み上げていることをアピールする看板が立っています。


西館に入り、エレベーターもしくは階段で地下へ下るとすぐに温泉浴場です。
券売機で料金を支払って券を受け取り、下足箱の鍵と入浴券を受付に差し出しますと、引き換えに大小の各タオルとロッカーキーを受け取ります。つまり手ぶらで利用が可能なのです。実に便利ですね。

脱衣室はそんなに広くないものの頻繁に清掃が入るため清潔に保たれ、気持ち良く利用できます。また室内にお水のサービスが用意されていますので入浴前後の水分補給も万全。


浴場入った途端、ふんわりとアブラ臭が鼻孔をくすぐってきたのでビックリ。まさか新横浜の駅前でアブラ臭のお湯に出会えるとは。温泉のアブラ臭といってもいろんなタイプがありますが、こちらの香りは日本海側の富山や新潟あたり、もしくは山形県などで湧くグリーンタフ型温泉によくある石油的な匂いです。
なお受付で「滑りやすいので気をつけて」と注意を受け、聞いた時にはありきたりの注意喚起かと高を括っていたのですが、実際に浴場に踏み入れてみると、床が本当に滑りやすくてこれまたビックリ。おそらく温泉成分の影響でしょうけど、匂いといい滑りといい、なかなか面白い温泉のようです。なお、浴場入口付近に温泉のかけ湯がありますので、入室直後に頭からお湯を被ってアブラ臭を満喫するのも良いかと思いますよ。


中華圏の建物を連想させる丸い飾りを潜った先に洗い場があり、8ヶ所のシャワーが設けられています。


洗い場の隣にはサウナと水風呂が並び、さらにその奥には1階地上(屋外)と吹き抜けになっているスペースがあって、ベンチに腰掛けてクールダウンすることができます。私が利用した時には、広くてゆったりとした温泉浴槽よりも、サウナと水風呂やこのクールダウンゾーンを行き来するお客さんが多かったようです。自家源泉が自慢のお風呂ですが、実は温泉よりもサウナ目当ての利用客の方が多いのかもしれませんね。


入浴槽は2つに分かれており、広いジャグジー槽と、その6割程度の大きさの普通の温泉浴槽で、いずれも鼈甲色(飴色)且つ笹濁りのお湯が張られています。私が訪問した時には後者の普通温泉浴槽の方が若干熱めの湯加減でした。広いジャグジー槽では、成分が濃い温泉にありがちな、泡がなかなか消えずに湯面に残る現象が起きており、ビジュアル的にもお湯の濃さを実感できました。加水は無く加温・循環・消毒は行われていますが、消毒に関してはあまりに気になりませんでした。

なお両浴槽の間にあるS字形の湯口からチョロチョロとぬるい温泉が出ているのですが、、おそらくこれは生源泉ではないかと思われます(間違っていたらごめんなさい)。化石海水型の温泉なので非常に塩辛く、アブラ臭を有し、ツルスベな浴感ながら強烈に火照ります。分析表によれば炭酸イオンを多く含んでおり、その数値だけ見ると滑らかな感触が強そうに想像したくなるのですが、実際には他のイオンも多いため炭酸イオンの存在感が埋もれてしまい、数値の割りにツルスベ感は控えめです(それでも一般的な温泉よりはしっかりツルスベ感があります)。また化石海水にもかかわらずヨウ素が少ないのも特徴的と言えるでしょう。なおアンモニアや臭素はしっかり多く、それゆえお湯から漂う匂いも強いのでしょう。
都市部の駅前にもかかわらず意外な良泉に出会える温泉浴場でした。


新横浜温泉
ナトリウム-塩化物温泉 33.2℃ pH7.73 蒸発残留物14800mg/kg 成分総計15751mg/kg
Na+:5210mg, NH4+:42.3mg, Mg++:65.5mg, Ca++:251mg, Fe:2.54mg,
Cl-:9030mg, Br-:39.3mg, HCO3-:654mg, CO3--:24.0mg,
H2SiO3:139mg, HBO2:24.7mg, CO2:24.1mg,
(平成27年11月12日)
加水無し
加温・循環・消毒あり

神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-1
045-473-0021
ホームページ

14:00~23:30 (最終受付22:30) 最終月曜定休
1500円(温泉のみの場合) 貸タオル付
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



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宮ノ下温泉 太閤湯

2023年03月08日 | 神奈川県

(2022年4月訪問)
拙ブログは私が行き当たりばったり的にご紹介しておりますので、有名なのにご紹介が漏れていた温泉施設も数多くあります。箱根の宮ノ下温泉にある公衆浴場「太閤湯」もその一つ。てっきり取り上げていたつもりだったのですが、記事を振り返ってみたところ「太閤湯」の「た」の字も見当たらなかったので、今回ご紹介させていただきます。

宮ノ下の「太閤湯」には私が温泉巡りをするようになってから何度か利用しているのですが、それからしばらく足が遠のいていました。特に理由はないのですが、灯台下暗しと申しましょうか、どうしても遠方の温泉を優先するばかり、箱根など近場の温泉は優先順位が下がってしまうのですね。今回はおそらく約20年ぶりの再訪ではないかと思います。

以前は箱根という観光地にもかかわらず常連さん相手の共同浴場という感が強く、他所者が利用するとつっけんどんな対応をされることがしばしばでしたが、現在は諸々の体制が変わったらしく、国道1号には観光客に浴場の存在をアピールする看板や幟が立つようになりました。なお国道からはわかりにくいのですが、奥の方に3台分ほどの駐車場もあります。

久しぶりの再訪なので浴場の様子をほぼ忘れかけていたのですが、それでも建物を目の前にして違和感というか、以前と異なる印象を受けました。外観が綺麗になっているばかりか、明らかに以前と比べて湯屋がスッキリしているのです。その場で以前の画像を検索してみたところ、かつてはいかにも増設した感が強いプレハブと思しき2階部分があったのですが、外装改修に当たり2階部分を完全に取り払ってしまったようです。これによって外観が大幅に変わったんですね。


外観は大きく変わりましたが館内は昔のまま。以前はぶっきらぼうな年輩の方が番台にいらっしゃったような記憶があるのですが、現在は東南アジア系の若い女性が店番をしており、実に愛想よく接客してくださいました。時代は変わったんだと実感します。

男湯は奥の方にあり、脱衣室の先には2つの浴室に分かれています。脱衣室の右手にあるドアを開けると小浴室、左手のドアを開けると大浴室につながります。脱衣室内に用意されている施錠可能なロッカーは5個か6個程度であり、全部の棚に鍵が掛けられるわけではないので、その辺りは運次第なのかもしれません。室内には扇風機が取り付けられている他、天井からドライヤーがぶら下がっていて無料で使えます。


大小どちらの浴場を使っても良いのですが、今回は大浴場を利用させていただきました。窓から燦燦と春の陽が射し込む明るい室内には、しっかりとお手入れされている綺麗なタイル張りのお風呂がひとつ据えられています。浴槽は台形のような歪な四角形をしており、縦2.5m×横1.5mほどでしょうか。4人は入れそうな容量がありますが、訪問時はひたすら独り占めできて幸せでした。浴槽には無色透明のさらりとしたお湯が掛け流されています。


この大浴場は早川が深く刻んだ谷に面しており、窓からは向かいの山を眺められます。訪問時は窓を開けて半露天風呂状態にし、新緑の中で咲く山桜を鑑賞しながら湯浴みを楽しませていただきました。


洗い場にはお湯と水の水栓の組み合わせが3ヶ所設けられています。石鹸類の備え付けは無いので、持参するか番台で購入するか、いずれかになります。番台にはタオルやボディーソープがセットになった「手ぶらセット」が250円で販売されていますので、入浴グッズを持参せず行き当たりばったりで太閤湯に入ることもできますね。


浴槽の温泉は専用の蛇口から投入されており、そのコックを開けると源泉がたくさん投入されますので、ご自身のお好みに合わせて湯量を調整することが可能です(とはいえ公共の場ですから、極端な熱さやぬるさは避けましょう)。なお温泉の蛇口にはパイプがはめられており、熱いお湯が底面で供給されるようになっています。これによって湯船の温度均衡を図っているのでしょう。

以前に入浴した時はすごく熱かった記憶があるのですが、今回は温泉の投入量が絞られていたためか、入りやすい温度というか、むしろ若干ぬるめでしたので、蛇口を開けて源泉を大量投入させてもらいました。これにより完全かけ流し状態。癖が無く滑らかで体を優しく包んでくれるような、実に心地良いお湯で、いつまでも浸かっていたくなりました。やっぱり宮ノ下のお湯は良いですね。


お風呂上がりに小浴場も見学。
もちろん大きなお風呂と同じお湯が使われています。


お風呂上がりは、小さな冷蔵庫に入っている三ツ矢サイダーで喉を潤しました。なお代金は番台へ直接支払います。この冷蔵庫には三ツ矢サイダーのほかバヤリースなど懐かしい銘柄の瓶ジュースが売られていました。このレトロな感じもうれしいですね。

今回再訪して個人的な心理障壁が下がり、以前よりはるかに利用しやすくなったように感じました。
箱根はいつでも気軽に行ける場所なので、また気が向いたらふらっと太閤湯へ出かけてみようかと考えています。


太閤湯(温泉村第28・29号混合)
ナトリウム-塩化物温泉 63.9℃ pH7.8 溶存物質1.321g/kg 成分総計1.324g/kg
Na+:341mg, Ca++:40.5mg,
Cl-:545mg, SO4--:60.7mg, HCO3-:144mg,
H2SiO3:134mg, HBO2:19.5mg,
(平成30年3月5日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下223
0460-82-4756

13:00~21:00(受付20:30まで)、第2・第4の火曜及び水曜定休
600円
ロッカー、ドライヤーあり。石鹸類販売あり(備え付け無し)

私の好み:★★★
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強羅温泉(大涌谷造成泉) 国民宿舎太陽山荘

2023年03月03日 | 神奈川県

(2022年4月訪問)
久しぶりに箱根の温泉を取り上げましょう。まずは強羅から。
箱根登山鉄道強羅駅の改札を出てすぐ右に曲がり、地下通路を潜って駅の裏手に出て、線路と並行する坂を登って函嶺白百合の脇を通り過ぎると、その先の右手に今回の目的地である「国民宿舎太陽山荘」があります。できれば宿泊したかったのですが、今回は日帰り入浴で利用させていただくことにしました。


お手頃なイメージがある国民宿舎ですが、建物はなんと重文指定を受けており、戦時中の昭和17年に建てられた木造2階建(一部3階建)の伝統的な木造建築なのです。重文に入れるというだけでワクワクしちゃうのは私だけでしょうか。
玄関の手前から建物を眺めると、2つの棟を連絡する渡り廊下が掛けられていたり、玄関横に掛けられている扁額が立派だったりと、外観だけでもとても風情があります。


建物自体は古いのですが、館内は綺麗にリニューアルされており、建物の躯体も耐震化改修工事が施されているんだそうです。日帰り入浴の場合、まず扁額が掛けられている本館の玄関を入り、帳場で入浴したい旨を申し出て入浴料を支払うとタオルを貸してくれます。その際、お風呂までの手順について簡単に説明してくださいます。
なお本館1階には休憩室があり、お水のサービスも用意されていますので、お風呂上がりにひと息つく際は、この休憩室を利用すると良いでしょう。帳場で借りたタオルは、利用後に帳場の真下にあるカゴへ返します。


お風呂は一旦玄関を出て、向かいの離れへ移ります。お風呂がある離れは一見するとかなり古そうに見えますが・・・


本館同様に内部は綺麗に改装されており、外観とのギャップに良い意味で面食らってしまいました。


男湯の更衣室は、右手にタイル張りの大きな流し台があり、左手に衣類や荷物を収める棚が設けられています。なお施錠できるロッカーは本棟にあるので、本館の帳場で支払いを済ませたら、こちらへ来る前に預けておきましょう。
この脱衣室も綺麗に整備されており、天井が高くて気持ち良い環境です。



浴室に入って更にびっくり。決して広くはないのですが、綺麗で明るい室内からは不思議な開放感が得られ、我々が温泉のお風呂に求めたくなる非日常的空間との邂逅をしっかりと実現しているのです。一部にステンドグラスのような色ガラスが採用されていたり、天井が高かったり、屋根は明かり取りのためガラスが使われていたりと、なかなか凝った造りなのです。しかもその高い天井も脱衣室とつながっており、余計に広さを感じさせてくれます。でもよく見ると、脱衣室側とつながっているのかと思いきや、その部分の天井にはガラスが嵌められているので、湯気が脱衣室へ流れることはなく、それでいて高天井の開放感や明るさを脱衣室と浴室の両方にもたらしているのです。岩、木材、ガラスそれぞれの素材の美しさが活かされているお風呂です。


浴槽は岩風呂1つのみで、ちょっと浅めの造りです。湯船には灰色を帯びた白濁のお湯が張られ、湯口からパイプを通じて湯面下へ供給されています。このパイプを湯面から上げてお湯が出てくる様子を見たところ、投入量それほどは多くないものの、しっかりとかけ流されており、湯船のお湯はまずまずのコンディションがキープされていました。温泉を入れすぎると熱くなってしまうため投入量を絞っているのかもしれません。

こちらに引かれている源泉は強羅エリアでおなじみの大涌谷造成泉。湯船から硫黄の香りが漂い、お湯を口に含むと明瞭な酸味が口腔内を刺激し、同時に砂消しゴムを思わせる風味も広がります。タマゴ味も得られます。それでいて天然の硫黄泉のような強い刺激や主張はなく、味も匂いも、さらには浴感もマイルドなので、総じて湯浴みしやすいお湯と言えるでしょう。火山活動の噴気に水を当てて人工的に作る造成泉については賛否が分かれるところですが、天然の硫黄泉よりマイルドで優しいにも関わらず、硫黄感や酸味など酸性硫黄泉の特徴が得られて温泉気分が楽しめるので、私個人としては大好きなタイプのお湯です。

趣きたっぷりな重文の本館、綺麗で雰囲気の良い浴舎、そして白濁の温泉。
どれをとっても良いですね。
なお今回は岩風呂の浴室を紹介しましたが、もう一つのお風呂はぬくもりが伝わる木のお風呂なんだそうです。
次回こそ宿泊で利用したいものです。


大涌谷温泉 蒸気造成混合泉3号線(強羅方面)と箱根登山鉄道株式会社5号、6号井蒸気造成泉(宮城野第133,134号)の混合泉
酸性-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 56.3℃ pH2.5 成分総計1.286g/kg
H+:3.19mg, Na+:155mg, Mg++:29.8mg, Ca++:81.1mg, Al+++:6.28mg, Fe++:19.8mg,
Cl-:402mg, HSO4-:41.3mg, SO4--:390mg,
H2SiO3:120mg, H2S:0.1mg, H2SO4:0.43mg,
(平成27年10月21日)
加水あり(冬季に湯温が足りないときはお湯を足す)、加温循環消毒なし

神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-375
0460-82-3388
ホームページ

日帰り入浴11:00~15:00終了 不定休
1100円
ロッカー、シャンプー類、ドライヤーあり

私の好み:★★★
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塔ノ沢温泉 環翠楼別館

2022年08月27日 | 神奈川県

(2021年11月訪問)
日頃の仕事に追われ、週末もろくに休息時間が確保できない日々が続いているのですが、日帰りならば何とか時間がとれそうなタイミングを見つけたので、11月の土曜日、小田急ロマンスカーに乗って箱根へ向かい、箱根湯本からてくてく散歩しながら塔ノ沢温泉「環翠楼別館」を訪ねました。今回は事前に公式サイトで日帰りランチプランを予約した上での訪問です。
見るからに立派なこの建物は大正時代に建てられた木造3階建の鉄板葺で、登録有形文化財に指定されています。文化財の指定を受けるような立派な造りの建物にお邪魔するときには気分が高揚しますね。


入浴の前にランチをいただきます。案内された席は1階ラウンジの窓側。この窓ガラスは建築当時のままなんだとか。100年近く使われ続けたガラスの窓から外を眺めると、何度も通っているはずの国道1号線の往来ですら、風情ある絵葉書のように見えてくるのが実に不思議です。


ラウンジの一角には自由に利用できるドリンクコーナーが設けられています。この「環翠楼別館」は歴史ある建物の風格を大切に残しつつ、随所を綺麗にリニューアルしており、居住性や利便性に関しては古さを感じさせないどころか、寧ろ新しさを覚えるほどです。


まずはワインで乾杯。


歴史の風格漂うこの建物でいただくお食事は、意外にもイタリアンです。
目の前に提供された前菜3種は、海鮮サラダ、パンチェッタとほうれん草のキッシュ、そして野菜とコンソメゼリーのテリーヌ。


お食事のコースは、パスタセット、魚料理セット、肉料理セットから選択でき、今回は予約時に肉料理セットを申し込みました。前菜を食した後に出されたメインの肉料理はアンガス牛ステーキ。実に美味。美味しさのあまり、あっという間に平らげてしまいました。もう少し落ち着いて食べればよいものを、ついつい焦って頬張ってしまい、あまりに品が無くて情けないのですが、出自は誤魔化せないので仕方ありません。

さてお腹を満たした後は、塔ノ沢の温泉に入りましょう。
受付でレンタルのタオルを受け取り、屋外にあるお風呂へと向かいます。


お風呂へ出る勝手口のようなところには、かわいらしいウサギが飼われていました。


屋外履きに履き替え、一旦屋外に出てお風呂へ。
おそらく日帰り入浴のみは受け付けていないかと思いますが、ランチプランを利用することにより、お風呂の利用が可能になるようです。この別館のお風呂は男女別に分かれており、男女の浴場は固定されています。男湯は国道側の「藤の湯」、女湯は南側の山斜面に面した「楡の湯」です。ここからは「藤の湯」についてご紹介します。


別館のお風呂は「藤の湯」「楡の湯」ともに露天風呂で、更衣ゾーンから既に露天状態です。
別館で宿泊する場合は本館のお風呂で体を洗い、内湯でしっかり温まり、そうした上で別館のこれらの露天風呂へ入ることになるのでしょう。そのようなコンセプトのためか、この別館の露天風呂には洗い場がありません。桶でお湯を汲んで掛け湯するなど、工夫して体を綺麗にしてから湯船へと向かうことになります。なお今回我々は別館のお風呂のみの利用ですので、本館のお風呂については利用しておりません。


長方形の露天風呂は、周囲を塀で囲まれているため、景色を眺めることはできませんが、何しろ目と鼻の先は往来が激しい国道1号線ですから、下手に視界を開かせるわけにはいきません。秋に訪ねたので推測するほかないのですが、浴槽手前の頭上にかかっているパーゴラが藤棚のようなイメージなのでしょうか。なお訪問時は特に藤らしき植物は見られませんでした。とはいえ、立派な木立に囲まれ、山の風も入り込み、設えのセンスの良さも相俟って、意外にも静かで落ち着いた雰囲気です。


最も奥にあるこの石塔のようなものは、てっきり湯口かと思いきや、実際にはただの飾りのようで・・・


湯船のお湯は、浴槽内にある複数の吐出孔から供給されていました。お湯は無色透明無味無臭で、癖のないあっさりとした優しいお湯です。この浴舎を含め別館には温泉分析表や湯使いに関する掲示が無かったので、スタッフの方に伺ったところ、湯使いはかけ流しとのことです。分析表に関しては公式サイトに掲載されていたので、スマホでそちらを確認することにしました。
この時は他にお客さんがいらっしゃらなかったので、思いっきり手足を伸ばし、思う存分ゆったりと湯あみさせていただきました。


同行してくれたパートナーに声を掛け、他に誰もいないことを確認した上で、もう一つの露天風呂「楡の湯」をちょっと拝見させてもらいました。「藤の湯」とは趣きや設えが全く異なる開放的な岩風呂で、箱根の山の緑に抱かれつつ、正面に落ちる滝を眺めらながら湯あみすることができ、「藤の湯」も大変居心地よいお風呂なのですが、正直なところ個人的にこちらの方がはるかに環境が優れているのではないかと思った次第です。こんな素敵なお風呂に入れる女性が羨ましいなぁ。

何はともあれ、歴史ある建物で美味しいお食事に舌鼓を打ち、落ち着いた露天風呂で心身を癒して、日帰りながらすっかり寛ぐことができました。


帰路は箱根湯本からロマンスカーGSEで新宿へ。


塔之沢温泉(湯本第37・50・110号混合)
アルカリ性単純温泉 48.2℃ pH8.9 蒸発残留物0.505g/kg 成分総計0.527g/kg
Na+:144mg, Ca++:22.8mg,
Cl-:126mg, SO4--:131mg, OH-:0.14ng, HCO3-:30.5mg, CO3--:1.85mg,
H2SiO3:51.5mg,
(平成16年12月13日)

神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤88 
0460-85-5677
ホームページ

私の好み:★★★
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横浜温泉チャレンジャー 惜別入浴

2021年12月24日 | 神奈川県
(2021年12月入浴)
私は温泉巡りを計画する際、行く機会に恵まれない遠方の温泉を優先するあまり、気軽に行ける距離の温泉はついつい後回しにしてしまうのですが、それが原因で首都圏の温泉には疎く、閉館の情報に気づかないこともしばしば。今回取り上げる「横浜温泉チャレンジャー」もその典型。十年以上前に一度行ったきり久しくご無沙汰で、いつか再訪しようと思いながらも後回しを繰り返していたら、なんと2021年12月末を以て閉館してしまうという残念なお知らせを耳にしたので、時間を作り慌てて惜別入浴へ行ってまいりました。


若葉台団地のエントランスゲートとでも称すべき、大貫谷戸水路橋を潜って現地へ向かいます。


若葉台団地からちょっと外れた、昔からの谷戸地形らしい細い坂道や雑木林、そして沢筋が残る一角に今回の目的地があります。


「横浜温泉チャレンジャー」という温泉施設名には以前から謎めいたものや違和感を覚えていました。まずチャレンジャーとは何に挑戦しているのかしら。どんなことをチャレンジしているのかしら。そして確かに当地は横浜市だけれども、いわゆる港町横浜の中心部からは相当離れた横浜市の端っこの丘陵地帯にあたるので、横浜温泉と言い切ってしまうのは若干無理がなかろうか・・・なんて余計なことを考えていたのですが、いざ閉館してしまうと聞けばそんな重箱の隅をつつくような愚問はどうでも良く、ただひたすら残念な思いと、今まで訪問を後回しにしていたことに対する後悔の念に駆られるばかりです。


駐車場に車を停めて、玄関から中へお邪魔します。


エントランスの外側には、閉館のお知らせとその理由が張り出されていました。新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少し、毎月の赤字が膨らんで事業継続が困難になってしまったそうです。


下足箱に靴を入れ、右手にある券売機で料金を支払って、反対側の受付カウンターへ券を差し出します。玄関の右手は食堂兼休憩スペースとなっており、お風呂は左側へと進みます。館内はふた昔前のクリニックや保健所みたいな雰囲気なので、温泉に来たのか、あるいは体調を診てもらうのか、私の訪問目的が一瞬わからなくなってしまいました。

(更衣室から先の画像はございませんので、以下文章のみで紹介いたします)

更衣室は明るいものの全体的に古く、壁紙や天井がくすんでいたり、エアコンの化粧パネルがガムテープで補修されていたりと、随所に経営でご苦労されている形跡が見て取れます。なお他の温浴施設とちょっと異なる点として注意を要するのが、下足箱の鍵が脱衣室のロッカーキーを兼ねていることです。一応館内には説明があるのですが、注意書きの掲示箇所が少なく且つ小さいので、そのことを知らないと初回訪問時はどのロッカーを使って良いのか当惑するでしょう。自分の靴を預けた下足箱の鍵で、下足箱と同じ番号のロッカーを開閉するのです。それゆえ更衣室のロッカーには鍵が刺さっていません。

さてお風呂へまいりましょう。
浴室のドアを開けた瞬間、この温泉独特のアブラ臭がプンと鼻孔を刺激してくれます。神奈川県東部ですので化石海水型の温泉は珍しくありませんが、まさかハッキリとしたアブラ臭がこの地で嗅げるとは思わず、とても感動してしまいました。アブラ臭に中毒的な愛好心を有する一部の温泉マニアでしたらこの「芳香」に歓喜の涙を流すこと間違いありません。 

浴室は左右に細長い造りをしており、向かって正面の壁には富士山の絵が描かれているのですが、ところどころ剥げていて、少々草臥れている感じです。横に細長い造りに合わせる形で、洗い場も左右に分かれており、シャワー付きカランは右手の壁沿いに4基、その背面の島に計6基、入口左側の壁沿いに4基の計14基設けられています。洗い場の各ブース(シャワー)の上には照明が取付られているのですが、その一部は腐食してしまったのか取り外されており、撤去跡が補修されない上、配線が剥き出しになっていました。先程の更衣室も同様でしたが、交換や修繕する費用を工面できなかったのでしょうね。ご事情お察し申し上げます。
なお出入口のすぐ右手にはぬるい掛け湯があり、蛇口から出ているのは紛れもない放流式の源泉かと思われます(味も匂いも強かったように感じられました)。

富士山の壁絵の真下に、これまた横長の浴槽が設けられています。私の目測で幅約6~7メートル、奥行2メートル程でしょうか。それを4:3程度に分けていて、窓側の槽ではジェットバスが稼働している一方、片方は特にこれといった仕掛けが無い普通の浴槽なので静かに入浴できます。この両浴槽の間に両者の間の壁面に木枠の湯口があり、間歇的にお湯がボコボコと出てくるのですが、お湯が源泉そのままなのか、あるいは循環された湯なのか、その辺りはよくわかりませんでした(鈍感ですいません)。なお、この横長浴槽の他、右奥には4人サイズの寝湯もあり、こちらにも温泉が張られています。
また、屋外へ出る扉を開けると、露天風呂があるのかと思いきや、浴槽らしきものはどこにも無く、あるのは所謂バルコニーで、椅子が6脚ほど置かれてクールダウンスペースになっています。

さてこちらの温泉のお湯は、上述のようなアブラ臭が特徴的で、版画インクを思わせる独特の匂いが湯口から放たれて室内を漂っています。湯口から出てくるお湯は無色透明のように見えますが、浴槽では淡い鼈甲色を帯びている気がします。口に含むと塩味が強く、またほのかに苦みもあり、いかにも化石海水らしい特徴を有していますが、千葉県東葛や埼玉県東部などのような著しい塩辛さは無く、金気もほとんど感じられません。湯口のお湯は塩味もアブラ臭もしっかりしているのですが、浴槽では味も匂いも弱まっているので、湯口で源泉を投入した後、循環の過程で加水されるのかもしれませんね。とはいえ溶存物質8543mgという濃さを誇る食塩泉だけあり、湯船に浸かるとツルスベの滑らかな感じと引っ掛かる浴感が拮抗し、力強く火照って、湯上り後も長い時間にわたって温浴効果が続きます。加水加温循環ろ過消毒という掛け流しとは程遠い湯使いですが、丘陵地の中で湧く温泉とは思えないほどとても面白い個性を持つ曲者の温泉ですので、閉館によってもう入れなくなるのかと思うと、残念でなりません。




こちらは駐車場に隣接している源泉施設です。閉館後はどうなってしまうのでしょうか。

閉館まで1週間ほどありますので、お近くの方は惜別入浴してはいかがでしょうか。

横浜温泉
ナトリウム-塩化物温泉 44.0℃ pH7.6 57L/min(動力揚湯) 溶存物質8543mg/kg 成分総計8857mg/kg
Na+:3110mg(91.59mval%), Ca++:140mg(4.65mval%),
Cl-:4780mg(95.51mval%), Br-:18mg, HCO3-:373mg(4.33mval%),
H2SiO3:102mg, HBO2:196mg,
(2019年10月25日)
加水あり(入浴に適した温度に保つため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環ろ過あり(衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため。次亜塩素酸ナトリウム溶液自動注入)

神奈川県横浜市旭区上川井町2287
045-922-5590
ホームページ

9:00~20:00
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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