温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

女川温泉 ゆぽっぽ

2024年10月04日 | 宮城県

(2023年6月訪問)
車で出かけることが多いとはいえ、たまには列車に揺られて旅をしながら長閑な車窓を眺めたくなるもの。そんな衝動に駆られた私は、某日みちのくへ出かけて、石巻線普通列車の窓枠に頬杖をつきながらのんびりとした旅時間を過ごしていました。列車は終点の女川駅に到着です。


震災の被害を受けた女川駅は復興事業により場所が内陸へ200メートルほど移動すると共に、坂茂氏の設計により鉄骨造3階建に木造屋根を載せた形で建て替えられました。左右に広がる大きな屋根はウミネコが羽ばたく様子をイメージしているんだとか。


今回はこの駅舎内にある温泉施設「ゆぽっぽ」を訪ねます。日本全国に駅前温泉は数あれど、駅ナカ温泉はかなり稀少ですよね。
なお「ゆぽっぽ」は震災の前にもあり、当時は駅舎に隣接する形で営業していました。震災前に訪ねた「ゆぽっぽ」に関しては拙ブログで取り上げたことがないので、当記事の後半で触れます。震災後の新しい「ゆぽっぽ」を利用するのは今回が初めてです。


後述するように震災前の旧「ゆぽっぽ」には足湯がありましたが、現在の新しい施設にもちゃんと足湯があるんですね。


さて改札や出札の目の前にある入口から中へ入り、靴を魚形のキーホルダーがついた下駄箱へ収め、その鍵と券売機で買った入浴券を受付に差し出しますと、引き換えにロッカーキーが渡されます。お風呂は物販コーナーを抜けて階段を上がった先の2階です。


この建物を設計した坂茂氏といえば、紙管のシェルターなど、紙からできた素材を建材にしたシェルターや仮設住宅を世界各地で作り、難民の救済や災害支援に取り組む建築家として有名。この建物でも踊り場のベンチや天井には坂茂氏らしくボール紙のロールが用いられています。
踊り場ベンチの脇には家族風呂が1部屋設けられており、貸切で入浴することが可能です。また、ベンチと家族風呂の間には、発災3日後に出された石巻日日新聞の手書き壁新聞(実物)が保存掲示されており、津波によりあらゆるものが失われた中で避難者たちに情報を伝えようとする記者たちの熱意が伝わってきます。


階段を上がったところの休憩室は、天井が高くて窓も大きいため、明るく広々としてスタイリッシュ。


休憩室の脇を通り、駅通路の真上を通って浴場へ。
脱衣所内の内装は白色と木目で統一されており、明るくて使い勝手良好です。


(浴室内の画像は公式サイトより借用)
お風呂は内湯のみで露天はありません。天井は木材を井桁に組んで緩く撓ませることによりドーム状となっており、窓からの採光と相まって高く明るく気持ち良い入浴空間を生み出しています。壁は白いタイルが用いられており、奥には青い鹿の絵(当地が牡鹿郡だから?)、手前側には青い富士山のような絵がそれぞれ描かれています。男女両浴室を仕切る塀の上部には、後述する震災以前の旧ゆぽっぽを記録した写真が並べられています。洗い場は浴室の左右に分かれて配置されており、シャワー付きカランが計10個取り付けられています。浴槽は2つあり、手前側のオーバルを半分にしたような青い豆タイルの浴槽には真湯が張られていました。


(浴室内の画像は公式サイトより借用)
一方、奥にある四角いタイル張りの浴槽が温泉浴槽。その大きさは目測で奥4m✕幅3.5m程かと思われます。浴槽に張られた温泉はやや黄色みがかっている透明で、塩味と苦汁味がしっかりと得られ、消毒臭もはっきりと感じられます。この浴槽の洗い場側にあるステンレス製の湯口から鉱泉が投入されている他、浴槽内からも投入しており、これによって浴槽内の湯加減が均一になるよう図られているようです。源泉の湧出温度は25.3℃ですので、温泉法の規定によりギリギリのところで鉱泉ではなく温泉を名乗れるラインをクリアしていますが、この温度のまま入れるはずもなく、また湧出量も少ないことが推測されますので、浴用に際しては加温循環消毒が行われています。泉質名には「含硫黄」の文字が含まれ、分析表によれば総硫黄が3.1mgも含まれていますので、おそらく源泉湧出時にはかなりはっきりとした硫黄臭が嗅ぎ取れるはずですが、加温や循環などを経る中で硫黄はすっかり飛んでしまい、湯船で硫黄らしさを感じることはできません。またpH9.0とアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが9.6mgも含まれているのでツルツル滑らかな浴感なのかと思いきや、実際に肩まで湯船に浸かってみると寧ろキシキシと引っかかる浴感が強く、これはカルシウムイオンを1589.0mgも有しているためではないかと思われます。ま、小難しいことはともかく、硫黄が多かったりしょっぱかったりと、内湾性の化石海水温泉にありがちな特徴を有しており、港町女川ならではの温泉と言えるでしょう。綺麗且つ快適な浴場で旅の汗を流す気持ち良さは大変ありがたく、この場所に再び温泉施設を設けてくれた女川の関係者の方々には感謝です。


さてお風呂上がりに、駅前から海に向かってまっすぐ伸びる商店街「シーパルピア女川」でお土産や・・・


ランチのお寿司を購入。安くて美味い!


ついでにホタテの浜焼きをその場で食べ・・・


震災遺構「女川交番」を見学。横倒しになった建物を見て津波の脅威を知り・・・


そして女川の美しい海を眺め、再び女川駅から石巻線の列車に乗り込んだのでした。


【以下、2008年8月撮影】

拙ブログでは取り上げてこなかった震災前の「ゆぽっぽ」も、ここで簡単にご紹介します。
上画像は2008年8月に撮影した女川駅です。


同じタイミングで撮影した旧「ゆぽっぽ」。現在は駅の建物に内包されていますが、当時は駅舎に隣接する形で別棟となっていました。そして施設の前には足湯も設けられていました。


浴室内部の様子。お風呂は檜風呂と岩風呂があり、男女日替わりで使い分けられ、この時は檜風呂に男湯の暖簾がかかっていました。当時もお風呂は内湯のみ。主浴槽の前には大きなテレビが設けられ、この時のお客さんは湯浴みしながらバラエティー番組を見ていました。主浴槽のほか、サウナなどもあったはずです。
また画像には残していませんが、館内には信号機があり、石巻線の出発時刻が迫ると信号が青から黄色にかわり、出発直前になると赤が点灯する、という面白い試みが実施されていました。


館内にはちゃんとした休憩室があるほか、石巻線のホームに面した場所には本物の鉄道車両キハ40を改築した休憩所も用意されていました。当時の私のメモによれば、車内ではカラオケができる、と書かれています。ただ車内の画像が残っていないので、車内がどのようになっていたかは分かりません。
以前の私は「温泉かけ流し原理主義」に囚われていたのでこの旧「ゆぽっぽ」を取り上げてこなかったのですが、最近はそのような呪縛から解放されていますので、今回新しい「ゆぽっぽ」を取り上げる機会に旧「ゆぽっぽ」の画像も掲載させていただくことにしました。


含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 25.3℃ pH9.0 溶存物質7925.3mg/kg 成分総計7925.3mg/kg
Na+:1448.0mg,(43.87mval%), Ca++:1589.0mg(5523mval%),
Cl-:4671.0mg(97.74mval%), Br-:16.5mg, HS-:1.4mg, S2O3--:1.7mg, CO3--:9.6mg,
H2SiO3:21.0mg,
(令和5年2月13日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
塩素系薬剤使用(衛生管理のため)
フィルター設置(水酸化鉄緩和のため)
.
宮城県牡鹿郡女川町女川2-3-2
0225-50-2683
ホームページ

9:00~21:00(最終受付20:30)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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川渡温泉 高東旅館 2022年10月再訪問(後編 2つのお風呂)

2023年12月05日 | 宮城県
前回記事の続編です。

さてお風呂へまいりましょう。お風呂は新館・別館いずれの宿泊客も同じ浴室を利用します。

●男女別浴室

前回記事で取り上げた宿泊客用のラウンジの前に男湯の暖簾がさがっており、女湯はその右手の廊下を進んだ先にあります。


以前もこのお風呂の様子を拙ブログで取り上げたことがありますが(以前の記事はこちら)、基本的には前回記事当時と変わっていません。お湯が湯船に落とされる音だけが木霊するシンプルで静かな浴室に入ると、湯気と共に川渡温泉ならではの硫黄臭がプンと香り、硫黄泉好きな私の気持ちが条件反射的に高揚しました。なお室内のカランは1つだけです。


U字形の湯船は2~3人サイズ。暗い鶯色を帯びた濁り湯が湛えられています。お湯の色合いや濁り度合いはその時々によって違うような印象を受けました。


湯口から静かにお湯が注がれており、そのまわりには白い湯の花が付着しています。湯船にも同様に白い溶き卵のような湯の花が浮遊しており、匂い、色合い、そして湯の花といった川渡らしい要素が非日常的な温泉気分を高めてくれます。


窓の外には源泉枡があり、ここからお湯が直接湯船へ注がれているものと思われます。直接だとすればその距離は非常に短く数メートル程度ですから、お湯の鮮度は非常に良好。この上なくフレッシュです。源泉枡ではボコボコと音を立てながら温泉が湧出しており、お風呂で使いきれない余り湯が周辺へ漏れ出ていました。

●貸切風呂

男湯出入口の向かいに貸切風呂のドアがあり、空いていれば随時利用可能です。


全体的にオフホワイト基調のこぢんまりとした浴室に、湯船とカランが一つずつ。湯船には男女別浴室と同じお湯が注がれていますが、湯船が小さい分、熱が冷めにくく、湯加減もちょっと熱めです。とはいえ私は加水せずそのまま入っちゃいました。


上画像は宿泊した翌朝に私が利用した時の様子ですが、前夜と翌朝で湯船の色合いや濁り方が異なっており、前夜は鶯色にミルクを入れてかき混ぜたような色合いにしっかり濁っていたものの、翌朝は鶯色を帯びながらも透明度が高い状態でした。その時々によって見せる姿が異なるのは硫黄泉らしい特徴ですね。

この自家源泉「東五郎の湯」に関するインプレッションですが、チオ硫酸イオンが多い温泉に診られる濃いタマゴ感を伴う硫化水素臭と、淡い卵味、焦げ感、そして重曹の清涼感を伴うほろ苦みが感じられます。57℃で湧出する温泉を数メートルという僅かな距離で浴槽へ注いで掛け流しているため、湯船は比較的熱めですが、それでも重曹が多い泉質ゆえによく温まると同時に粗熱の抜けがよく、湯上がりはさっぱりサラサラとした爽快感を楽しめます。実に素晴らしいです。

以前こちらのお宿は「鳴子湯めぐりチケット」を使えば入浴のみの利用も可能でしたが、現在その取扱いは中止され、宿泊客のみ入浴可能となっています。従ってこの名湯「東五郎の湯」に入るには泊まるほかありませんが、前回記事でご紹介したように大変リーズナブルな料金設定ですので、名湯に入れるという意味でも利用価値は非常に高いかと思います。


東五郎の湯
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉 57.0℃ pH7.8 溶存物質1150.7mg/kg
Na+:228.2mg(78.56mval%), Ca++:34.7mg(13.69mval%),
HS-:3.8mg, S2O3--:15.0mg, SO4--:162.5mg(26.89mval%), HCO3-:481.5mg(62.77mval%),
H2SiO3:169.0mg, CO2:41.4mg, H2S:0.8mg,
(令和元年12月6日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字築沢23-1
0229-84-7220

立ち寄り入浴不可(宿泊のみ)

私の好み:★★★



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川渡温泉 高東旅館 2022年10月再訪問(前編 お部屋など)

2023年12月02日 | 宮城県

(2022年10月訪問)
温泉番付で東の幕内に必ず入る宮城県の鳴子温泉郷。ひとくちに鳴子と言っても場所によって泉質がかなり異なるのですが、私は温泉郷の東端に位置する川渡温泉のお湯が大好きで、機会があれば川渡の湯に浸かりたくなります。鶯色を呈した川渡のお湯は硫黄臭が強く、湯の花も多いので、温泉に入っている感が強いんですよね。
今回はそんな川渡にあるお宿のひとつ、高東旅館で一晩お世話になった時のことを記事にします。なお、こちらのお宿は以前にも拙ブログで記事にしたことがあり(当時の記事はこちら)、お湯の良さが忘れられず、今回宿泊利用で思う存分湯浴みを堪能しようと思ったわけです。


宿泊は別館と新館のいずれかを利用でき、新館の方が若干高い料金設定なのですが、それでも素泊まりで1泊5,000円未満ですから(私の利用時)、何でもかんでも物価高騰の昨今、財布に優しい大変ありがたいお宿です。
私が利用したのは新館のお部屋。清掃が行き届いた8畳の和室で、洗面台のほか、エアコンやテレビは備え付けられていますが、金庫やドライヤーは無く、タオルも用意されていないため持参が必要でした。なお室内にWifiは飛んでいないものの、窓を挟んだ向かいには後述するラウンジがあり、そのラウンジ内に飛んでいるのwifiを客室で拾うことができました。


こちらがそのラウンジ。新館・別館両方のお客さん共用の寛ぎスペースです。


こちらは湯治宿という側面もあり、それゆえ料金設定が低いほか、湯治宿なので共用キッチンもあり、宿泊者は自由に利用できます。炊事場には共用の冷蔵庫もありますので、飲料は共用冷蔵庫へ入れておきましょう。


なお素泊まり利用が基本ですが、事前に予約すれば仕出し弁当を用意してくれます。今回私は夕食のみ仕出し弁当をお願いしました。こちらがそのお弁当。なかなか立派じゃありませんか。もちろんお味も佳。

さて次回記事ではお待ちかねのお風呂について取り上げます。

次回に続く。

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青根温泉 名号湯

2023年11月28日 | 宮城県

(2022年10月訪問)
今回記事からしばらくの間はみちのくの温泉を連続して取り上げてまいります。東北は私の第二のホームグラウンドと言うべきエリアですので、ブログ記事を書いている時でも訪問時を思い出して気分が高揚してしまいます。
宮城県青根温泉は、蔵王連峰の麓にある温泉地で、拙ブログでもこれまで何度が取り上げています。今回取り上げる「名号湯」は、かつて「大湯」とともに当地の共同浴場として親しまれてきましたが、2006年の「じゃっぽの湯」開業に伴って「大湯」とともに一旦閉鎖されてしまいました。その後、「大湯」は旅館「湯元不忘閣」の宿泊者専用内湯として復活。一方「名号湯」は長年閉鎖されたままでしたが、数年前に貸切風呂としてようやく復活に至っています。

私は蔵王山麓に紅葉が広がり始めた2022年10月に利用させていただきました。利用に際しては事前の予約が必要です。私の利用時にはネット(じゃらん)からの予約を求められましたが、この記事をしたためるに当たって現状を確認したところ、現在はネット予約ではなく、前日から電話予約のみ受け付けるスタイルへ変更されたようです。なお私が予約した時には、予約確定メールに利用方法や守るべき決まり事がいろいろと説明されていまたのですが、電話予約のみの現在は電話越しで説明を受けるのでしょうか。今回記事ではメールでやりとりしていた2022年時点での利用方法をご紹介します。現在と異なる可能性がありますので、その点はご了承ください。
出入口は男女別に分かれており、ドアには暗証番号式の電子錠が取り付けられていますので、メールに記載された番号を入力することで開錠されてドアが開きます。


こちらの浴場は無人施設です。
上画像はドアを開けたところに位置する更衣スペースの様子。カゴ、ドライヤー、扇風機、綿棒など、各備品類が用意され、室内は綺麗に維持されています。上述の通り、私の利用時はじゃらんで予約したものの、支払いは現地で現金払いでしたので、メールでの指示通り、洗面台のミラー下に置かれている小箱へ料金を投入しました。


浴室はシンプルな設えながら綺麗に維持されており、どなたでも気持ち良く利用することができます。
なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が設置されており、私の利用時には石鹸類の備え付けが無かったものの、現在ではボディーソープやシャンプー類が備え付けられているそうですので、タオルさえあれば湯浴みを楽しめますね(タオル類の販売はありません)。


浴槽はタイル張りで縁には木材が採用されています。その大きさは目測で2.5×1.8メートル程でしょうか。
無色透明の綺麗に澄み切ったお湯が静かに張られていました。加温加水循環消毒が一切ない完全掛け流しの湯使いです。


湯口からトポトポと投入されるお湯は無色透明無味無臭で、サラサラやスルスルといった形容が相応しい、やや熱めですが、優しく癖のない上品なお湯です。完全かけ流しのお湯は鮮度感も抜群。あまりの気持ち良さにいつまでも入っていたくなり、後ろ髪を引かれてしまいますが、貸切の時間には制限があるので、時間ギリギリまで湯船に浸かって、その浴感をしっかりと心身に滲み込ませました。


混合泉(新名号の湯・花房の湯・新湯・山の湯源泉・蔵王の湯・大湯)
単純温泉 49.5℃ pH7.5 溶存物質849.6mg/kg 成分総計868.8mg/kg
Na+:207.6mg(84.47mval%), Ca+++:23.2mg(10.85mval%),
Cl-:71.3mg(19.27mval%), SO4--:220.3mg(44.01mval%), HCO3-:224.4mg(35.28mval%),
H2SiO3:75.2mg,
(平成30年11月26日)
加水加温循環ろ過消毒なし

宮城県柴田郡川崎町青根温泉4-6
.ホームページ(「一棟温泉宿」公式サイト内)
予約電話番号は上記サイト内にてご確認ください。
なお予約は利用の前日から受付とのことです。

7:00〜18:00 利用可能時間:50分間
1名利用時 1,200円 / 2名以上利用時は一人につき1,000円

私の好み:★★★
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作並温泉 作並ホテル

2023年03月14日 | 宮城県

(2022年4月訪問)
今回記事よりみちのくの温泉を連続してご紹介いたします。
まずは仙台の奥座敷である作並温泉から取り上げてまいりましょう。今回ご紹介する「作並ホテル」は大型旅館「一の坊」の陰に隠れるような場所にあるため、初見では少々わかりにくいのですが、かけ流しのお湯に日帰り入浴できる施設として、温泉ファンから一定の評価があるお宿のひとつです。


作並で営業する他の旅館と比べて明らかに地味な感じが否めない玄関を入ると・・・


ロビーは薄暗くガランとしていて不気味な静けさに包まれているのですが、声を掛けると奥の方からスタッフの方が現れ、丁寧に対応してくださいました。今回は日帰り入浴での利用です。


旅館というより、昭和のお役所というか学校というか、どことなく無機質で前世紀的な佇まいの館内を歩き、案内表示に従って階段を下りると・・・


男女別のお風呂に到着です。女湯は階段に近い方にあり、男湯は奥の方に位置しています(なお階段を下ってすぐのところには貸切風呂があるのですが現在は閉鎖されています)。
脱衣室内は改装されたのか、館内の他の場所に比べると明るく、スノコ敷きの室内には流し台が1台、ドライヤーが1個備え付けられています。ロッカーは室内に無く、階段を下りたところのホールに設置されていますので、貴重品は脱衣室入室前に預けることになります。


お風呂は内湯のみで、男湯の場合は画像に写っている大きな岩風呂がひとつ。岩盤を刳り抜いて作ったようなその浴槽は歪なひょうたんみたいな形状をしており、その形に沿って御影石が縁を囲んでいます。なかなか大きな浴槽で十数人は同時に入れるかと思います。


洗い場に設けられているシャワーは4つで、新しい水栓が取り付けられています。以前はもっと水栓があったようですが、いまは4つに絞られ、使われなくなった配管跡には封栓が嵌められていました。


窓の外に流れる川はおそらく広瀬川の上流でしょう。窓が嵌め殺しになっているため開けることができず(上の窓は排煙窓のような感じで手前に開きますが)、川の風を直接肌に感じながら入浴できないのは残念ですが、季節によっては虫が入ってきやすい環境なので、これは致し方ないのかと思います。


湯口には真っ白いモンスターみたいな硫酸塩の析出がこんもり付着しています。この湯口から注がれた温泉「神の湯」は一旦湯壺に落とされた後、トンネルを通って浴槽内部へ注がれています。無色透明できれいに澄んだお湯を口に含んでみますと、芒硝風味のほか石膏のような風味が少々感じられますが、硫酸塩の味や匂いははっきりしているわけではなく、比較的あっさりしています。一方、浴感はスベスベの中に硫酸塩泉っぽい引っ掛かりがあり、硫酸塩泉としての個性がしっかり表れています。作並温泉は単純温泉が多いかと思いますが、ここは溶存物質がギリギリ1000mgを上回っているため、単純という名前から逃れ、含塩化土類芒硝泉を名乗ることができているんですね。


岩の浴槽は深めに刳り抜かれているため、肩までしっかりお湯に浸かることができ、入り応えがあって私は大変気に入りました。湯船に湛えられたお湯はとても綺麗なので、とても気持ち良く湯あみできます。でもやや熱めですし、温泉が持つパワーによって火照りやすいため、ここで長湯を楽しむのは難しいかもしれません。実際に私は長く浸かることができなかったため、湯船に入ったり出たりを何回も繰り返しました。


湯口のお湯は全量湯船に注がれているわけではなく、結構な量が脇へ逸れて漏れてしまっており、浴槽近くの床を流れて浴用にされることなく排出されていました。また浴槽のお湯は湯尻からトド寝ができるほどの量がオーバーフローしていました。なお湯使いは完全かけ流し。惜しげもなくお湯を捨てられるのですから、それだけ湯量が豊富なのでしょう。良質なお湯が大量に湧くのですから、まさに「神の湯」ですね。

こんなお風呂を私は終始独り占めで楽しむことができました。とっても贅沢な体験です。尤も連休中なのに空いていて大丈夫なのか、という点が心配ですので、お近くにお立ち寄りの際は是非入浴し、神の湯を皆さんで応援しましょう。なお今回ご紹介できなかった女湯には露天風呂もあるそうですよ。


神の湯
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 54.0℃ pH7.6 溶存物質1010.5mg/kg
Na+:191.3mg(56.41mval%), Ca++:123.6mg(41.83mval%),
Cl-:128.1mg(26.39mval%), SO4--:450.3mg(68.57mval%), HCO3-:38.8mg,
H2SiO3:58.4mg, HBO2:11.4mg,
(令和元年12月23日)
加水加温循環消毒なし

宮城県仙台市青葉区作並長原3-2
022-395-2341

11:00~16:00
600円(1時間以内)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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