温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

朝倉 卑弥呼ロマンの湯

2024年07月24日 | 福岡県

(2023年3月訪問)
JRから第三セクターの甘木鉄道に乗り継いで、終点の甘木で下車。


駅前ロータリーからまっすぐ伸びるその名も「駅前通り」を800メートルほどてくてく歩くと、やがて市民センター(文化会館)や図書館、警察署など公的機関が集まるエリアにたどり着きます。今回の目的地である「卑弥呼ロマンの湯」は市民センター(文化会館)に隣接しており、初見でもわかりやすい立地です。この画像の近くに入口があるのかと思いきや・・・


敷地内を歩いた奥に位置するこちらが玄関です。
靴を脱いで下足箱へ収め・・・


下足箱のカギと券売機で発行された券を一緒に受付へ差し出すと、引き換えに更衣室のロッカーキーが手渡されます。


受付から通路を進み、食事ができる座敷の前を通り過ぎます。
こちらの施設はスタッフの皆さんがとても明るく接客してくださいますので、利用する側としても気持ち良く過ごせます。


暖簾を潜って浴場へ。更衣室のロッカーにはスチール製(100円リターン式)と木製に分かれており、私は木のロッカーが宛がわれたのですが、スチールと木製でどのように区分しているのかは不明です。


(浴場内の画像は公式サイトより借用しております)
どうやらご当地福岡県朝倉市は邪馬台国の有力な候補地の一つらしく、この施設名もその説に則って名付けられたと思われるのですが、もしかしたらこの施設の全体的にウッディーな造りは弥生時代の遺跡を意識しているのかしら。特に天井が高くて梁が剥き出しになっている浴場内は、いわゆる湯屋建築風であると同時に、弥生遺跡をイメージしたと言われたら「あぁそうかもしれない」と頷いてしまいそうになる雰囲気を醸し出しています。
そんなことを考えながら着替えて浴場へ入った瞬間、温泉由来のほのかなタマゴ臭がプンと香ってきました。その芳香にお湯への期待が高まる一方で、遺跡云々についての意識は瞬時に消えてしまったのですが、でも消えてしまうことが致し方ないと弁解したくなるほど、このタマゴ臭が香るお湯は素晴らしいのです。

入口から見て左に洗い場が設けられ、正面にはぬる湯の浴槽、右手にあつ湯の浴槽と打たせ湯が配置されています。また中央にはベンチが設置されており、ゆっくり腰を掛けてクールダウンできるのが嬉しいところです。なおぬる湯浴槽とあつ湯浴槽はL字型に並んでおり、それぞれ12~15人、15〜20人サイズでしょうか。いずれもかけ流しの湯使いながら、おそらくぬる湯は加水して湯温調整しており、あつ湯は源泉そのままのお湯が投入されているものと思われます。そうした事情によるものか、両浴槽とも良いお湯なのですが、特にあつ湯が素晴らしく、湯船のお湯は無色透明ですが湯口付近のお湯は軽く白濁するほど気泡が多く、湯船へ入った時の肌への泡付きもしっかり。

特筆すべきはウナギ湯と称したくなるほどの滑らかさで、湯船に入るとローションを塗ったかのような極上のニュルニュル且つツルツルスベスベ感に包まれます。分析表によればpH9.44のアルカリ性であることのほか、炭酸イオンが51mgも含まれているので、こうした要因が極上のなめらかさをもたらしているものと考えられます。また、上述したように室内にはタマゴ臭が漂っているわけですが、湯口のお湯からも、ほろ苦みや甘みを伴いながら、茹で卵の卵黄のような香りと味がしっかり感じられます。総イオウが1.9mgなのでギリギリのところで硫黄泉を名乗れないのですが、でも実質的にアルカリ性単純硫黄泉と表現しても過言ではないかと思います。筑後川流域の原鶴温泉に近い泉質であり、あまりの浴感のすばらしさに感動しました。


素晴らしいお湯に感動しながらお風呂から上がり、帰りは歩いて西鉄の甘木駅へ。


西鉄電車を乗り継いで天神方面へと向かったのでした。

今回記事で連続してきた九州編は終了です。
次回から別の地方を取り上げます。


アルカリ性単純温泉 47.6℃ pH9.44 460L/min(動力揚湯) 溶存物質0.35g/kg 成分総計0.35g/kg
Na+:106.1mg(98.10mval%),
Cl-:77.3mg(41.76mval%), OH-:0.5mg, HS-:1.9mg, CO3--:51.0mg,
H2SiO3:58.7mg,
(2022年11月29日)
加水して湯温を調整することがある

福岡県朝倉市甘木198-1
0946-21-8800
ホームページ

9:00~22:00 月曜と年末年始定休(月曜が祝日の場合は営業)
530円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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佐賀大和温泉 ホテルアマンディ(日帰り入浴)

2024年07月19日 | 佐賀県

(2023年3月訪問)
意外にも拙ブログ初登場となる佐賀県。
県内には武雄温泉や嬉野温泉など有名な温泉地があるものの、他の九州各県と比べると温泉のイメージがあまりなく、それゆえ拙ブログでもこれまで取り上げる機会が無かったのかもしれません。
今回ご紹介する「佐賀大和温泉 ホテルアマンディ」は長崎道の佐賀大和インター近くに位置しており、佐賀駅から無料送迎バスで約20分ですので、比較的アクセスには恵まれた施設と言えるでしょう。このホテルは元々別名称だったようですが、数年前に現行の名称へ変更して再出発したそうです。なるほど、建物の外観はいかにも昭和といった佇まいです。


私の訪問時、広い駐車場には多くの車が止まっていました。人気の程が窺えます。
エントランスを入った先はひと昔前のリゾートホテルを思わせる吹き抜けのロビー。
まず下足箱に靴を預けてフロントへ差し出し、日帰り入浴したい旨を伝えて料金を支払うと、引き換えにロッカーキーを手渡してくれます。


お風呂はフロントのすぐ先。移動距離が短いので楽ちんです。
さてここから先の画像はございません。文章のみのご紹介となりますのでご了承ください。

暖簾を潜った先のロッカールームはとても広く、青いスチールロッカーがずらっと並ぶ光景はなかなか壮観です。またパウダーゾーンも広く確保されていますので、使い勝手は良好です。
ロッカールームからドアを開けて内湯浴場へ。左側にはサウナや白湯の浴槽など、(失礼ながら)私にとってはあまり興味がない設備が配置されています。一方、入ってすぐのところにはこれといった説明が無く飾り気のない5~6人サイズの小さな浴槽があるのですが、これについては後ほどしっかりご説明します。この小浴槽を越えた先の右斜め前には白湯の檜風呂、右側全体には洗い場が配置され、右の手前側(ロッカールーム側)には「源泉かけ流し」と書かれた浴槽が設けられています。このかけ流し浴槽は6~7人は入れそうな大きさがあり、透明度を保ちながらも僅かに濁ったお湯が張られており、浴槽全体には見るからに成分が濃そうな赤茶色を帯びたカルシウム分がびっしりとコーティングされています。この光景を見たら温泉ファンなら興奮すること間違いありません。なお湯加減はかなりぬるく、人によっては水風呂と勘違いしてしまうかもしれません。

露天風呂には浴槽が2つあり、1つの白湯が張られた岩風呂、もうひとつは大きな赤い和傘が掛かっている源泉かけ流しの浴槽です。内湯のかけ流し浴槽と異なり、露天の方は(少々ぬるめであるものの)温かいと感じる程度まで加温されており、はっきりと黄土色に濁って金気味も現れていました。

私は入浴中、たまたま各浴槽の湯温を計測しにきたスタッフの方に話しをきいたところ、これら複数ある浴槽のうち、源泉を使っているのは入口付近の小浴槽と、右側手前のかけ流し浴槽、そして露天かけ流し浴槽の計3つ。源泉の温度は25℃で炭酸を多く含んでいるのだが、そのうち露天はしっかり加温されており、その影響で炭酸が抜けちゃっているけれども濁りが出ている。内湯手前側(ロッカールーム側)のかけ流し浴槽は33℃に加温しており、加温をが抑えめなので炭酸はさほど抜けていない。一番おすすめなのが、何も説明が書かれていない入口付近の小浴槽で、ここは非加温の源泉をそのまま投入しているから、源泉の良さを味わいたければこの小浴槽がおすすめ、とのこと。

そこで、入口付近の小浴槽に入ってみたところ、たしかに水風呂のような冷たさで体がキュッと緊張するのですが、無色透明のお湯の中には高濃度の炭酸ガスが溶けており、入った瞬間、私の肌が刺激で痛くなるほどパチパチと気泡が弾け、やがて炭酸泉ならではの程よい刺激と優しさに包まれ、永遠に入っていたくなるほど気持ち良くなりました。お湯を口に含んでみると炭酸の味が強く、市販の炭酸水と比肩するほどの濃さかと思われます。一方、非加温だからか金気感は弱めで(加温による酸化が少ない)、その代わりカルシウム分が多いために硬水らしい硬さや重さが得られます。もちろん湯船から出る瞬間にも全身に付着した気泡がパチパチと勢いよく弾けました。
もちろん33℃に加温されている内湯ロッカールーム側のかけ流し浴槽でも同様のパチパチ感や清涼感、そして気持ち良さを得られるのですが、源泉そのままの状態である小浴槽が非常に素晴らしく、私はこの白眉の非加温小浴槽と加温されたかけ流し浴槽との間を何回も往復してしまいました。

これまで私は同じ九州で、大分県や都城方面に湧出する炭酸の強いお湯に入ってきましたが、まさか佐賀県でこんな炭酸の多い温泉に出会えるとは想像だにせず、あまりの気持ち良さにとても感動しました。素晴らしい!
暑い夏に非加温炭酸泉に入ればこの上ない極楽ではないでしょうか。


川上峡温泉 大和第一源泉
カルシウム-炭酸水素塩温泉 25.1℃ pH6.24 60L/min(動力揚湯)
Na+:111.4mg(16.87mval%), Mg++:94.6mg(27.10mval%), Ca++:308.9mg(53.67mval%), Fe:5.7mg,
HCO3-:1668.0mg(98.04mval%),
H2SiO3:128.6mg, CO2:1600.0mg,
(令和元年9月30日)

佐賀県佐賀市大和町大字久池井3667 
0952-62-1126
ホームページ

日帰り入浴 平日12:00~21:00、土日祝12:00~22:00(受付各1時間前まで)
(火曜のみ19 時まで)
平日910円・土日祝960円
(朝風呂料金設定あり。公式サイトをご覧ください)

私の好み:★★★
コメント (2)
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おすすめ温泉書籍 『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』

2024年07月10日 | その他
今年(2024年)6月26日に温泉関連の素晴らしい書籍が刊行されましたので、久しぶりに拙ブログでは本を紹介させていただきます。


鈴木浩大さんのご著書『さあ、海外旅行で温泉へ行こう 〜親切ガイド 世界の名湯50選〜 (ビジュアルガイド)』
です。鈴木さんのご著書はこれまでも拙ブログで2冊取り上げており、1冊目は私が台湾の温泉を巡るきっかけにもなった私にとってのバイブル的存在である『湯けむり台湾紀行: 名湯・秘湯ガイド』(まどか出版・絶版)、2冊目は昨年9月の記事でご紹介した『ほぼ本邦初紹介! 世界の絶景温泉』(みらいパブリッシング)です。

鈴木さんによる今回の新刊は前作と同じ版元から刊行され、海外の温泉を取り上げているという点でも同じなのですが、前作は知る人ぞ知る秘湯がメインだったのに対し、今作はできるだけ多くの皆さんへ実際に行ってもらうべく、各地の比較的アクセスしやすい温泉を厳選して取り上げてる点が決定的に異なります。
拙ブログもしばしば海外の温泉を取り上げており、その場合には地図や現地到達までの過程を紹介する等、ブログをご覧になる方が実際に現地訪問する際の参考になるよう努めておりますが、この新刊は拙ブログと同じ方針で編集されており、しかもアジア・北南米・ヨーロッパ・北アフリカ・オセアニアといった地球規模の超広範囲にわたっていますので、内容がこの上なく充実しています。まさに私が欲しかった(出したかった)本です。

「浸かって気持ちいい温泉」「見るだけでワクワクする温泉」「海外旅行のついでに行ける温泉」「著者が太鼓判を押す温泉」
という4つのテーマに沿った計50カ所の各温泉は、いずれもビジュアル的に魅力的であるのはもちろんのこと、容易にアクセスできるところもあれば、ちょっと頑張れば行けそうなところもあり、また温泉のみならず周辺の観光情報や海外旅行のちょっとしたHow toも紹介されていますので、かなり実用的な旅行ガイド本となっています。ちなみに書中で紹介されている温泉の中には、拙ブログで取り上げている温泉も多くございますので、併せてご参照くださいませ。

拙ブログは日本語で書かれたウエブサイトの中でも海外の温泉を比較的多く取り上げていると自負しておりますが、とはいえ基本的にご覧になっているのが温泉ファンの方々なので、温泉ファン以外の目に止まりにくいのが残念なところ。日本で「温泉旅行」といえば国内旅行と直結してしまいがちですが、この著作が書店の旅行ガイド本と同じ棚に並ぶことによって、海外にも温泉が無数に存在し、アクセスしやすい温泉も多くあることが海外旅行好きの方に認知されたら、海外旅行の大きな目的のひとつに「温泉」が加わり、温泉を愛する人の裾野がより広がるかもしれません。

私はこの新刊を読んで、今すぐに海外の温泉へ出かけたくなりました。
温泉ファンの方は是非ご一読を。

さあ、海外旅行で温泉へ行こう 〜親切ガイド 世界の名湯50選〜 (ビジュアルガイド)

鈴木浩大さんのブログ 「世界の絶景温泉」


次回記事から再び私が訪ねた温泉の記録に戻ります。

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壱岐 いき湯川温泉

2024年07月04日 | 長崎県

(2023年3月訪問)
前回記事までに取り上げた壱岐の温泉は全て島の西部に位置する湯本温泉郷でしたが、今回取り上げる「いき湯川温泉」は島南部の郷ノ浦地区に位置しています。郷ノ浦地区は島の玄関口であり、多くの商店のほか壱岐市の市庁舎も置かれている島の中心的な役割を担うエリアですが、この郷ノ浦地区のちょっと外れに今回訪ねる日帰り入浴施設「いき湯川温泉」があります。


平屋の建物の真ん中に番台があり、そこで湯銭を支払います。私が訪問した時には券売機が故障していたため、窓口のスタッフさんに直接支払いました。
壱岐島内にある他の温泉施設に比べると脱衣室は広い方かと思います。なお室内にはドライヤーが用意されている他、ロッカーは下足箱の左側に設置されています。


お風呂は内湯のみで、大きな湯船と窓に貼られたスタンドグラス調の飾りが印象的です。湯船も湯本温泉郷の各施設と比べるとかなり大きいのではないかと思われます。彫刻が置かれた奥の湯口より絶え間なく温泉が注がれており、しっかり掛け流されていました。


洗い場にはシャワーが4つ並んでおり、ボディーソープやシャンプー類が備え付けられています。カランから出てくるお湯は普通の真湯です。

湯船に注がれる温泉のお湯ほぼ無色透明ですが少々クリーム色に靄掛かっているように見えます。口にしてみるとかなり塩辛い一方で、苦汁の味やカルシウム感は少なく、塩味がストレートに味覚を刺激するような感じです。湯本温泉郷のお湯と比べますと、食塩分は互角と言っても良いほどの含有量ですが、こちらはカルシウムが圧倒的に少なく、それゆえ塩味ばかりが前面に出て他の味が感じられなかったものと思われます。しかしながら浴槽まわりにはクリーム色の析出がこびりついていたので、少量とはいえ長年にわたって少しずつカルシウム分が固着してゆくのでしょう。カルシウムが少ないため湯本温泉郷のお湯よりも食塩泉的なツルスベをしっかり得ることができますので、滑らかな浴感をお求めの方はこちらのお湯がおすすめです。訪問時はそんなに熱くなかったので、ついつい長湯したくなったのですが、でも塩分が濃いので長湯は禁物です。適度に温まったら湯船から出た方が宜しいでしょう。


湯口に置かれた彫刻はご当地出身の小金丸幾久さんが制作したもので、数々の賞を受賞している有名な彫刻家の方なんだそうです。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 44.3℃ pH6.9 湧出量測定せず(動力揚湯) 溶存物質9.25g/kg 成分総計9.35g/kg
Na+:2496.8mg(87.05mval%), Mg++:62.7mg, Ca++:43.9mg,
Cl-:2944.4mg(60.57mval%), Br-:13.4mg, I-:2.0mg, HCO3-:3282.6mg(39.23mval%),
H2SiO3:46.9mg, HBO2:26.4mg, CO2:95.0mg,
(平成22年2月9日)

長崎県壱岐市郷ノ浦町片原触416
0920-47-2251

14:00~22:00
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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