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(2023年2月訪問)
前回記事に続いて外房の魅力的な鉱泉を巡ってまいります。今回取り上げるのは県内では歴史ある鉱泉宿「矢指ヶ浦温泉館」です。1952(昭和27)年に千葉県温泉指定の第一号を受けた鉱泉で、その渋い佇まいは温泉ファンから支持を集めており、日帰り入浴も可能なので、私も訪問してみることにしてみました。
九十九里浜に沿って伸びる県道30号線を東に向かって走ると、施設の看板が目に入ってきます。施設自体はこの看板の下から左の路地に入ればすぐなのですが、車の場合はここを右に曲がって・・・
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廃車体が放置されているこの場所(お寿司屋さんの向かい)に車を停めます。3〜4台は駐車できるでしょうか。
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なお駐車場の目と鼻の先は九十九里浜ですので、お風呂上がりにこの雄大な景色を眺めるもの良いかと思います。
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さて、車を停めて県道を横断し、お宿の施設に向かいましょう。一軒すると民家と見紛うような佇まいのお宿で、玄関もまさに民家そのもの。私が訪ねたのは14時半頃。引き戸を開けてごめんなさいと声をかけ、出てきて下さった女将さんに日帰り入浴をお願いしますと、コロナの影響で入浴は15時からになったとのことですが、お湯がちょうど沸いたところだったので、一番風呂に入れさせていただきました。
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祖父母の家へお邪魔しているような感覚で館内を進み、お風呂の暖簾をくぐります。さぁ、どんなお湯に出会えるのかしら。
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お風呂は内湯のみでかなり年季が入っており、長年にわたってお客さんを癒してきた浴槽のタイルは、入浴客の疲れを吸い取り続けてしまったのか、やや草臥れて変色していました。ガラス窓の外はのどかな農村の景色。鄙びた昭和の鉱泉宿という表現がピッタリです。
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こちらの源泉は冷鉱泉ですので加温しており、おそらく循環も行われているかと思われます。そのお湯は無色透明に見えますが、薄っすら黄色を帯びているのかもしれません。お湯に浸かると弱いツルスベ浴感があり、良く温まります。
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浴槽用の水栓を開けると、非加温の新鮮な生冷鉱泉が出てきます。この冷鉱泉を風呂桶に溜めると、はじめは泡立って白く濁るのですが、やがて無色透明になりました。驚くべきはこの冷鉱泉の味と匂い。まるで茹で卵の卵黄を思わせる濃厚な硫化水素の香りと味が感じられるのです。外房といえば、濃い目のモール泉か、ガス湧出を伴う鹹水かのいずれかかと思っていましたので、この立地でチオ硫酸イオンらしさが際立つタマゴ感の鉱泉に出会えるとは想像だにしませんでした。なおこのタマゴ感の他には弱い土気も感じられましたが、海の近くにもかかわらず塩気は得られませんでした。
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館内に掲示されている昭和28年の古い分析表によれば、泉質名が「含ヨウ素食塩泉」と表記されています。千葉県域では明治期から天然ガスの掘削が行われており、現在も県内の一部エリアでは天然ガスの地産地消が行われています。特に外房エリアの北部(九十九里一帯)はガス田が多く点在しており、矢指ヶ浦温泉も元々は天然ガス掘削のついでに出た鉱泉を浴用に提供していたそうですから、天然ガスを伴う鉱泉は一般的にヨウ素を多く含む鹹水であることを考えると、矢指ヶ浦温泉の鉱泉もかつてはヨード臭をプンプンと漂わせる塩辛い鉱泉だったのかもしれません。それが長年の汲み上げに伴って次第に泉質が変化し、現在のタマゴ水のような特徴を有するようになったのでしょう。
のどかで静かな環境のもと、非加温の冷鉱泉をたっぷり堪能させていただきました。このような鉱泉宿が長く続いてくれることを祈っています。
千葉県旭市足川3918
0479-64-2218
日帰り入浴15時以降(終了時間は施設へお問い合わせください)
650円
私の好み:★★+0.5