(2022年6月訪問)
前回記事では野沢温泉の旅館「げんたろう屋」で一晩お世話になったことをご紹介しましたが、お宿のお風呂に掲示されていた温泉分析表には、源泉名として滝の湯の名前が記載されていました。そこで、今回は同じ滝の湯源泉を使用している共同浴場「滝の湯」を取り上げます。
野沢温泉のシンボル的な存在である「麻釜」から更に急な上り坂を登った先にあり、観光客が訪れるような場所ではないため、野沢温泉の共同浴場の中では比較的目立たない存在かもしれません。とはいえ総木造の伝統的な湯屋はさすが野沢温泉というべき佇まいであり、コンパクトながら実に立派です。
この「滝の湯」は野沢温泉の共同浴場では一般的な、更衣スペースと入浴ゾーンが一体型になっているレイアウトであり、男女別の出入口から中へ入ると、そこはもう浴室です。おっ、さっそく硫黄の湯の香が漂ってきたぞ。
長年使いこまれていると思しきタイル張り浴槽には、綺麗なエメラルドグリーンのお湯が張られていました。浴槽内側に用いられているタイル自体の色は水色なので、お湯は黄色透明なのでしょうか。それにしてもうっとりするほど美しい色合いです。お湯の中では白や黒の湯の華がたくさん浮遊しています。
石が積まれ、お湯の流路が白く染まっている湯口。70℃近い源泉なので、湯口の上から真水を落として加水しています。このお湯を口に含んでみると、硫黄泉らしいタマゴ風味と硫黄臭、そして苦味がはっきりと感じられました。分析表によれば硫化水素イオンが46.6mg、遊離硫化水素が6.1mg、合計すると52.7mgもの硫化水素が含まれており、それゆえに硫黄泉らしい特徴がしっかり表れているのでしょう。おそらくお湯の色も気温や天気、時間などいろんな要因によって変化するものと思われます。
ここでちょっと不思議に思ったのが、前回記事の旅館「げんたろう屋」で紹介したお風呂のお湯の件。上述のように館内掲示の分析表には源泉名として「滝の湯」と記載されており、湧出地として記載されている所在地は、共同浴場「滝の湯」で掲示されている湧出地と全く同じ場所(日影8883-1)でした。ということは共同浴場のお湯もお宿のお湯も同じなはずですが、少なくとも両方を利用した私の実感ですと、両者のお湯には結構な違いがありました。もちろん引湯の過程で変質してしまった可能性は否定できませんが、果たしてお宿のお湯は滝の湯と同じなのか、あるいは自家源泉を謳っていたように滝の湯源泉ではない別の源泉だったのか、疑問が残るところです。
ま、そんな屁理屈はともかく、共同浴場もお宿もお湯は大変良いので、あまり気にしないでお湯を楽しんだ方が良いのかもしれませんね。特にこの共同浴場「滝の湯」は、「真湯」と同等の硫黄感を堪能できるのでおすすめです。ちょっと熱めですが実に気持ち良いお湯でした。
滝の湯
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 73.4℃ pH7.9 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質1.150g/kg 成分総計1.175g/kg
Na:270.6mg(80.73mval%), Ca++:50.7mg(17.35mval%),
Cl-:115.4mg(21.24mval%), HS-:46.6mg, SO4--:317.3mg(43.06mval%), HCO3-:244.1mg(26.06mval%),
H2SiO3:85.1mg, HBO2:10.6mg, CO2:18.4mg, H2S:6.1mg,
(平成28年8月25日)
長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字日影
4~11月→5:00~21:00
12~3月→6:00~23:00
私の好み:★★★