温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

掛落林温泉 あすなろ温泉 2016年7月宿泊 後編(公衆浴場)

2017年04月29日 | 青森県
前回記事の続編です。
「あすなろ温泉」の宿泊客は、棟続きになっている公衆浴場のお風呂にも入ることができますので(入浴できるのは営業時間内)、私は深夜の閉館時間直前(22時前)と、翌朝の7時過ぎの2回、利用させていただきました。


●公衆浴場(内湯)
 
公衆浴場部の様子は、拙ブログで以前に取り上げた時とほとんど変わっておりません(当時の記事はこちら)。スピーカーから流れてくる演歌を耳にしながら番台のおばちゃんに会釈をし、玄関前にに設けられている小上がりを右に見ながら、紺色の暖簾をくぐります。


 
青い色調が目立つタイル張りの浴場の中央には主浴槽が据えられ、それを囲むようにして3方向の壁に洗い場のカランが並んでいます。「あすなろ温泉」といえばアブラ臭温泉マニアの聖地。この日も浴場内には温泉由来のアブラ臭が強く充満していました。とはいえ、匂いに関しては前回記事で紹介した家族風呂の方がはるかに強いので、一度その強さを体験しちゃうと、公衆浴場の匂いが物足りなく感じてしまいます。実に贅沢な悩みであります。


 
壁にズラッと並んでいるカランは、青森県の温泉銭湯でよく見られる、押しバネ式(宝式)と壁直付けシャワーの組み合わせ。カランやシャワーから出てくるお湯は温泉です。


 
浴場中央の主浴槽は、浴槽内の仕切りによって二分割されており、脱衣室側の浴槽は加水により適温に調整されていました。お湯は木箱の湯口から投入されており、浴槽縁からしっかりオーバーフローしていますが、それでも混雑時にはお客さんが集中するためか、私が閉館時間直前に訪れた時には、お湯がちょっと鈍って濁りを呈していました。しかし、お湯がすっかり入れ替わった翌朝にはクリアな状態になっていましたから、こちらのお風呂にはなるべく早い時間に入った方がよいのかもしれません。


 
もうひとつの浴槽は脱衣室側よりもやや小さいのですが、その代わり若干深い造りになっていて、加水も控えめなのか(あるいは非加水なのか)、ちょっと熱め(体感で45℃前後)のお湯が張られていました。熱いため長湯できませんが、お湯の濃さがしっかりと現れていたので、私個人としては、公衆浴場の中でこの浴槽が最も気に入りました。



浴場の片隅には水風呂と打たせ湯が隣り合っていました。水風呂といっても、そこに張られていたのはぬるま湯で、薄い塩味と石膏のような知覚的特徴を有していたので、おそらく温泉とは別の鉱泉ではないかと思われます。この鉱泉は、水風呂のみならず各カランからも出てきます。


●露天風呂
 
浴場(内湯)奥の小さなドアを開け、クランク状の通路を抜けると、上画像の露天風呂に行き着きます。周囲には目隠しの塀が立てられているのですが、露天風呂の浴槽まわりだけはちょっと高くなっており、しかも屋根が建てられているので、露天風呂はまるで土俵のよう。そんなつくりの浴槽縁に立つと、塀の向こう側に広がるリンゴ畑とその彼方にそびえる岩木山を一望することができました。


 
露天の浴槽は3〜4人サイズといったところでしょうか。上画像では湯口らしきものが2本写っていますが、うち一本からは熱い源泉が注がれており、他方からは内湯の水風呂で使われていた鉱泉水と思しきぬるい水が吐出されていて、両者がブレンドされることで良い塩梅の湯加減に保たれていました。この露天風呂は高架タンク裏のバックヤードみたいな場所に設けられており、目隠し塀によって視界が遮られているため、露天風呂という言葉に対して連想したくなるような開放感や温泉情緒はあまり期待できないのですが、それでも上述したように、小高くなっている浴槽縁に立てば田園風景が眺められますし、夜間には星空を仰ぎ見ることもできるので、状況に応じて工夫をすれば、露天風呂ならではの楽しみ方を享受することができるかと思います。

さて公衆浴場におけるお湯の特徴は、同じ源泉を引いている前回記事の家族風呂と同じですから、強い鹹味と出汁味、そして鉱物を思わせる苦味が感じられ、湯面からは強いアブラ臭が放たれているのですが、公衆浴場という施設の性質上、万人に受けるお湯を提供しなくてはならないため、加水による温度調整が行われており、これによって家族風呂で得られる力強さはかなり弱まっているように思われました。また天井が高く床面積も広いために匂いが拡散してしまい、家族風呂のように強いアブラ臭で頭がクラクラするようなこともありません。でもこれはあくまで相対的な感覚の問題であり、家族風呂のお湯を知らなければ、この公衆浴場のお湯でも十分に「アブラ臭温泉の聖地」たらしめるお湯の個性に驚くことができるでしょう。

拙ブログで以前に取り上げた時に館内で掲出されていた分析書は平成17年のものでしたが、今回訪問時には平成27年分析のデータが掲示されていました。温泉法では10年以内の定期的な再分析を義務付けていますから、この規定に基いて再分析を実施したのでしょう。数値を比較しますと、平成17年では溶存物質10.46g/kgであったのに対し、平成27年は溶存物質8.614g/kgと、全体的にちょっと薄くなっているようです。特に食塩を構成する2つのイオン(Na+, Cl-)が減っていますので、数字だけみますと塩分が薄くなったと言えるのかもしれません。でも私はそんな差を確認できるほど鋭敏な感覚は持ち合わせていないので、知覚的にはほとんど変化がないように思われました。湯船の中では食塩泉らしい少々の引っ掛かりを伴うツルスベの滑らかな浴感が得られ、湯上りにはしっかりパワフルに火照りました。そして何よりも、この「あすなろ温泉」の知名度を(マニアレベルで)全国区たらしめているアブラ臭は、相変わらず力強いものがあり、繰り返しになりますが、前回記事で取り上げた家族風呂ではその強さに圧倒されてしまいました。個性的なお湯を楽しむだけでも十分に訪問する価値はありますが、リーズナブルに宿泊することもでき、泊まれば存分にアブラ臭温泉を堪能できるので、観光拠点としてこちらを活用するのも宜しいかと思います。


ナトリウム-塩化物温泉 56.5℃ pH7.7 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質8.614g/kg 成分総計8.672g/kg
Na+:2976mg(96.44mval%), NH4+:12.6mg,
Cl-:4040mg(85.74mval%), Br-:20.1mg, I-:1.7mg, HCO3-:1136mg(14.02mval%),
H2SiO3:195.9mg, HBO2:110.1mg, CO2:58.3mg,
(平成27年10月1日)

JR五能線・五所川原駅または板柳駅、もしくは弘前駅より弘南バスの「弘前~五所川原線」で掛落林下車、徒歩5分
青森県北津軽郡板柳町掛落林前田140-1  地図
0172-73-2567
ホームページ

公衆浴場→7:00~22:00 300円
貸切風呂→9:00~16:00 1000円/1時間(4人まで。5名以上は要追加料金)
公衆浴場:ドライヤーあり、各種販売あり
家族風呂:備品類なし、販売関係は同上

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

掛落林温泉 あすなろ温泉 2016年7月宿泊 前編(お風呂付き客室)

2017年04月28日 | 青森県

アブラ臭を放つ温泉が好きな一部の温泉マニアから聖地として崇められている青森県板柳町の「あすなろ温泉」。私もそんな臭いに心を奪われている好事家の一人なので、この温泉には再訪を繰り返しており、5年前には拙ブログで一度取り上げたことがありますが(当時の記事はこちら)、一度は泊まって一晩中思う存分アブラ臭を嗅ぎつづけてみたかったので、2016年夏の某日、一泊お世話になることにしました。


 
敷地内には温泉と同じ経営者によって運営されているデイサービスホーム「ひばの里」があり、また旅館部と称する建物も隣接しているのですが、今回はこの旅館部で泊まるのではなく・・・


 
以前に拙ブログで紹介した家族風呂のお部屋へと向かいました。温泉浴室付きの客室を希望する場合は、ここで泊まることになります。
まずは公衆浴場部の玄関の右手にある家族風呂の受付を訪ね、料金を支払って、客室の指定を受けます。


●お風呂付きの客室(「王林」の場合)と朝食
 
各室はリンゴの品種名でネーミングされているのですが、この日私が一晩お世話になった客室は、廊下の一番奥にある「王林」でした。
訪問の数日前に電話で宿泊予約をお願いした際、温泉風呂付きの部屋を指定する客はマニアだと心得ているらしく、番台のお婆ちゃんは「王林で良いよね」とこちらの意図を忖度して話を進めてくれました。そうです、私はこの部屋に泊まりたかったんです。



カーペットが敷かれた室内は約8畳の広さがあり、全体的な古さは否めませんが、テレビ・冷蔵庫・エアコンなどの電化製品が揃っているほか、洗面台やトイレなども備え付けられているので、宿泊中は不自由なく過ごせるかと思います。なお、私がチェックインした時(20:30頃)には既に布団が敷かれていたほか、天井のスピーカーから有線放送の演歌が流れていましたが、有線放送に関してはいつの間のやら消えていました。


 
お部屋の冷蔵庫を開けると、キンキンに冷えた水(ピッチャー)が用意されていました。後述するように、こちらのお湯は非常によく火照り、発汗作用も強いので、水分補給が欠かせません。一晩に何度も風呂に入る私にとって、こうした配慮は非常にありがたいものです。


 
宿泊は素泊まりと朝食付きのいずれかを選択(夕食は現在行っていないそうです)。私は朝食付きのプランをお願いしたのですが、その料金はなんと5,076円! 温泉に入り放題で、しかも朝食が付いてこのお値段なのですから、とってもリーズナブルですね。なお、朝食は大広間でいただきます。献立としてはごく一般的なものであり、具体的には塩シャケ、煮物、卵、小鉢、そしてご飯と味噌汁といったラインナップでした。


●お風呂

さて、お部屋のお風呂へ入ることにしましょう。先述したように、お部屋には洗面台やトイレが付いており、その奥に浴室が設けられているのですが、客室に入ってすぐに洗面台で手を洗おうとすると、浴室のドアの隙間から温泉由来のアブラ臭が漏れてくることに気づき、早くも私は危ない中毒患者のように鼻をクンクンと鳴らしながらその匂いを嗅いで、フライング気味に悦に入ってしまったのでした。


 
匂いに反応してしまった私は、居ても立ってもいられず、すぐに服を脱いでお風呂へ。
ドアを開けて浴室に入った途端、あまりに濃厚なアブラ臭に包まれ、その匂いを思いっきり吸い込んだ私は、すぐに頭がクラクラしてしまいました。こんなにも強い匂いだったっけ? まるで灯油を室内にぶちまけたような石油系の強いに私は大興奮。狂ったように欣喜雀躍してしまいました。私のような変態は好き好んでこの匂いを胸いっぱいに吸い込んで、その独特なアロマに大喜びしているのですが、かなり強い臭いであるため、石油系の臭いが苦手な方は頭痛を催すかもしれません。

あすなろ温泉の家族風呂は、部屋によってその造作が異なっています。「王林」のお風呂は、白いタイル張りの室内に、大理石のような材質の湯船が据え付けられており、白亜の湯殿と称したくなるような作りになっていました。手前側には1基のシャワー付き混合水栓が取り付けられており、お湯のハンドルを開けると源泉のお湯がアブラ臭を放ちながら吐出されました。シャンプーしながら、アブラ臭の温泉を頭から存分に浴びれるのですから、私にとっては天国としか表現のしようがありません。


 
湯船のお湯は水栓から注がれています。この水栓の先から出るお湯の温度を計測したところ、46.8℃でした。湯船に浸かるにはちょっと熱い温度であるため、投入量を絞ることによって温度調整が図られており・・・


 
湯船の温度は40.3℃という長湯したくなるような素晴らしい湯加減になっていました。
四角い浴槽は、1人はもちろん、詰めれば2人なら入れそうな大きさがあり、元々は白い材質だったのでしょうけど、温泉成分のこびりつきのよって、全体的に薄い褐色に染まっていました。湯船のお湯は淡い飴色を呈した透明で、湯中ではベージュ色をした小さな繊維状の浮遊物がチラホラ舞っています。お湯を口に含むと、しょっぱさの他に出汁味や苦味も同時に感じられました。そしてお湯に浸かると全身がとても滑らかなツルスベ浴感に覆われるのですが、少々引っ掛かる浴感も混在しており、湯上がりには力強く火照って、海水浴の後のようなベタつきが皮膚に残りました。濃い食塩泉ですので、お風呂から上がる時は多少上がり湯を浴びた方が良いかもしれません。
それにしてもこの家族風呂に漂っているアブラ臭の強さには、改めて驚かされます。次回記事では公衆浴場部のお風呂を取り上げますが、同じ源泉を使っているにもかかわらず、家族風呂の方が狭い空間に篭っている分、匂いが凝縮されるのですね。私は宿泊中、何度もお風呂に入ってこの匂いを思う存分嗅がせてもらいました。ただ、その度に軽く頭が痛くなり、そして食塩泉の温浴パワーによって体が火照ってしまうのですが、そんな時に冷蔵庫の冷水をグビッと飲むと、体に水分が行き渡り、心身がシャキッと蘇るので、しばらく時間が経って体が落ち着いてきた頃、再びお風呂へ・・・。このサイクルを何度も繰り返してしまいました。最高です!

宿泊者は公衆浴場のお風呂にも入れるので、次回記事では公衆浴場に関して取り上げます。

次回記事
に続く。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嶽温泉 田澤旅館

2017年04月26日 | 青森県

岩木山の南西側山腹はトウモロコシ「嶽きみ」の名産地。私が訪れた2016年初夏某日、津軽富士を目の前に頂く山腹の畑では、まだ背丈の低いトウモロコシの芽が燦々と降り注ぐ太陽の光を受けて、天に向かってグングンと伸びようとしていました。



さて嶽温泉街へと向かいましょう。拙ブログでは嶽温泉の各旅館を何度か取り上げていますが、今回訪れるのはバス停目の前にある「田澤旅館」です。通りに面した店構えは、食堂兼トウモロコシ屋さんといった佇まいで、よく見ないと宿であるか判別しづらいのですが、嶽温泉のバス停前にはこうした外観をした昔ながらの湯治宿が何軒か並んでおり、こちらのように今でも温泉宿として営業を続けているところもあれば、宿を止めて土産物専門店となっているところもありますから、実際に訪れてみないと実情はよくわからないかもしれません。なお今回は宿泊ではなく、日帰り入浴での利用です。玄関の引き戸を開け、下足場まわりに貼ってある「入浴400円」という張り紙を確認してから、「ごめんください」と声をかけて入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。この玄関の内側には「瀧之湯」と記された扁額が掛かっているのですが、この「瀧」が意味するものは何なのか、それは後ほどのお楽しみ。



玄関から奥へ伸びる廊下は左右半分ずつに分かれており、右半分はゆるやかな下りのスロープとなっていました。このスロープの頭上には「浴↓場」というプレートがさがっていますので、その文字に導かれるようにしてスロープと階段を下ってゆくと・・・


 
男女別の出入口に突き当たりました。脱衣室内は至って質素。一枚の細長い板が括り付けられており、その上にカゴが置かれているばかりです。しかしながら、室内には鼻をツーンと刺激する温泉由来の匂いが漂っていたり、また男女の仕切り塀の上に小さいながらも神棚(おそらく岩木山神社の神様なのでしょう)が祀られていたりと、嶽温泉らしい要素がしっかりと備わっているので、それらに接すると自ずとお湯への期待に胸が膨らみます。


 
浴室へ入ると、アクリル波板の仕切りの手前に小さな浴槽、そしてシャワーが設けられていました。後で判明するのですが、この小さなスペースは男性専用ゾーンなのであります。おそらく女湯側はこれとシンメトリな構造になっているものと思われます。


 
この小さい浴槽は約1.5m四方で2人サイズ。石積みの仕切り塀から突き出た湯口より、嶽温泉の酸っぱいお湯がトポトポと注がれていました。嶽温泉のお湯は建材を劣化させてしまう強酸性であるため、床や浴槽など温泉が常に触れる部位には、耐腐食性の青い塗料が塗られているのですが、この影響によって足元が大変滑りやすいので、入浴の際は要注意です。


 
アクリル波板の向こう側には、窓に面して大きな浴槽が据えられており、手前側の小さな浴槽よりもはるかに明るい環境でのびのび湯浴みすることができるのですが、石積みの塀で仕切られているはずの女湯側とつながっているということは、この浴槽は混浴なんですね。幸いにしてこの時はどなたもいらっしゃらなかったので、人様の気配を気にせず入浴することができました。
浴槽の大きさは小さな浴槽のほぼ倍の5人サイズ(目測で1.2m×2.5ほど)。こちらも耐腐食性の塗装が施されており、ケミカルな青さの床と浴槽はまるでプールのようです。浴槽からはお湯が溢れ出ていますが、上述のようにとても滑りやすく、実際に私もこの上で危うく転倒するるところでした。
大小両浴槽ともお湯は放流式の湯使い。オーバーフローが流れる床は、硫黄の付着によって黄色い模様がこびりついていました。


 
この浴槽では、男女仕切り塀の上を伝ってきた塩ビ管からお湯が落とされており、打たせ湯のようになっていました。上述した「瀧之湯」の瀧とはこの打たせ湯を指していたんですね。


 
湯船のお湯は、入浴前は浴槽内部がしっかり目視できるほど無色透明で高い透明度を有していました。画像左(上)は入浴前の湯船です。しかしながら、浴槽の底には湯の花がたくさん沈殿しているため、私が湯船に入ると湯の花が忽ち舞い上がって、浴槽底面が見えなくなるほどしっかり白濁しました。画像右(下)は濁った後の様子です。もっとも、この湯の花は間もなく再沈殿しますので、数分経過すれば透明度が戻ってきます。
こちらに引かれているいるお湯は、嶽温泉各旅館で組合管理している混合泉です。口に含むと、グレープフルーツを想像させる柑橘系の収斂酸味があるのですが、他の強酸性温泉のようにいきなり粘膜を刺激せず、若干のタイムラグがあった後に口腔がキュッと収斂しました。湯面からは刺激を伴う硫黄の香りが放たれており、その匂いが脱衣室まで達していることは上述した通り。小さな浴槽は41℃、大きな浴槽は39〜40℃と、いずれも長湯仕様の湯加減だったので、皮膚がしわしわになるまでしっかりと湯船に入り続けさせてもらいました。実に良い湯です。湯中では強酸性のお湯らしい少々のぬめりを伴うツルスベ浴感が得られ、湯上がりは少々のベタつきとパウダリーな感覚に包まれました。


 
さて、お風呂からあがって玄関へ向かって戻っていると、廊下の天井からさがっている看板に思わず目が惹かれました。上述したように、玄関から浴場へ向かって行くときに見る面には「浴↓場」と記されているだけでしたが、その裏側、つまり風呂上がりの客が見る面には「ありがとうございました ありがとうございました またお出で下さい」という文言が手書きで記されていたのです。何気ない気遣いなのかもしれませんが、そんな手書きのメッセージにこそお宿の方の温かい心が宿っているようにも思いました。


嶽温泉旅館組合4・5号集湯槽、6~8号集湯槽(再)
酸性・含硫黄-カルシウム-塩化物温泉 48.2℃ pH2.03 湧出量測定不能(自噴) 溶存物質2.314g/kg 成分総計2.991g/kg
H+:9.4mg(23.08mval%), Na+:128.5mg(13.83mval%), Mg++:59.5mg(12.12mval%), Ca++:275.8mg(34.04mval%), Al+++:53.2mg(14.64mval%), Fe++:5.5mg, Fe+++:1.5mg,
Cl-:1130mg(81.09mval&), Br-:2.0mg, I-:0.2mg, S2O3--:2.6mg, HSO4-:90.8mg, SO4--:289.0mg(15.32mval%), 
H2SiO3:213.1mg, HBO2:20.5mg, H2SO4:2.1mg, CO2:676.6mg, H2S:0.8mg,
(平成24年12月10日分析)

弘前バスターミナルまたは弘前駅より弘南バスの枯木平行で嶽温泉下車すぐ
青森県弘前市大字常盤野字湯の沢10  地図
0172-83-2752
嶽温泉旅館組合公式サイト内の紹介ページ

日帰り入浴時間7:00〜20:00
400円
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

屏風山温泉 2016年7月再訪

2017年04月24日 | 青森県

引き続き津軽の温泉を巡ります。今回は旧木造町(現つがる市)の「屏風山温泉」です。拙ブログでは6年前に一度取り上げていますが、その時は吹雪真っ只中の真冬であり、浴場内は真っ白な湯気で満ちていましたから(6年前の記事はこちら)、今回は真逆の季節に訪れて、視界がクリアな状態で湯浴みをしようと考えたわけです。


 
券売機で料金を支払って入館します。番台前には休憩用の小上がりが設けられ、その向かいに男女両浴室の入口が暖簾をさげていました。なお、この小上がり前の廊下の奥には家族風呂があり、1時間1,300円ですが、3,200円のフリータイム制もあり、また宿泊することも可能です(素泊まりと2食付きを選択可)。


 
脱衣室を抜けて浴場に入ると、磯のような匂いがプーンと香ってきました。浴場の中央に浴槽が据えられ、左右両壁に沿って洗い場が配置されているという、青森県の銭湯でよく見られる標準的なレイアウトです。


 
洗い場のカランは全てが使えるわけではなく、(脱衣室から見て)右側の列は12基中8基、左側は11基中9基が使用可能でした。なお水栓の多くが、混合水栓にもかかわらず何故かシャワーのみ。そのシャワーから出てくるお湯は温泉で、水は後述する水風呂に使用されている鉱泉水でした(カランから吐出される冷たい水を桶に溜めると、うっすらと褐色を帯びていました)。


 
浴槽は縦長の矩形で、浴槽内は丸い豆タイル張り。かなり年季が入っているらしく、温泉成分の付着によってタイルの表面は飴色に光沢していました。また部分的にタイルが剥がれて地がむき出しになっていました。この浴槽の脱衣室側に立っている出っ張りには、バルブ付きの湯口が2本設置されています。6年前の湯口はフレキ管でしたが、その後改修されたらしく、この時は塩ビ管に変わっていました。
浴槽は仕切りで大小に分割されており、湯口側の小さな浴槽は(目測で)2.5m×3m、おおよそ10人サイズ。後述する大きな浴槽に比べると若干熱いかも。


 
この小さな浴槽には、男女両浴場を仕切る塀の上から配管が伸びており、その先から温泉が打たせ湯のように落とされていました。


 
仕切りの向こう側の大きな浴槽には泡風呂装置が埋め込まれており、一定時間ごとに運転と停止を繰り返していました。また、上述の小さな浴槽に注がれたお湯は、この大きな浴槽へと流れ込んでおり、さらには大きな浴槽の縁から洗い場の床へオーバーフローしていました。おそらく多少の加水はあるかと思いますが、循環は行われておらず、放流式の湯使いかと推測されます。


 

浴場の最奥には、ぬるい温泉の打たせ湯と水風呂(そしてサウナの跡)が並んでいるのですが、この中でも水風呂は白眉です。蛇口から吐出される冷たい水は、薄い褐色を帯びており、ほのかに金気を有していました。おそらく井戸を掘って汲み上げている鉱泉水なのでしょう。青森県の温泉銭湯では、こうして自前の井戸で汲み上げた鉱泉水を水風呂に使っている施設が多く、温泉と同じくらいに面白い泉質に出会えることがしばしばです。こちらの鉱泉に入ってみますと、一般的な水道水より滑らかでやさしく、それでいてシャキッと冴える冷たさが全身に走り、温泉で火照った体を非常に気持ち良くクールダウンさせることができました。

さて、こちらのお湯に関するインプレッションですが、山吹色を帯びた透明で、しょっぱく、出汁味も伴っており、湯面からは臭素臭やヨードのような匂いが漂っていました。津軽平野に多く見られる化石海水型の温泉でしょう。湯船に浸かると、ツルツルスベスベな浴感が肌に伝わり、特にジャグジーが稼働している大きな浴槽では湯温が抑えられていたため、滑らかな浴感と相まって、いつまでも長湯していたくなりました。分析書によれば炭酸イオンが60.0mgも含まれているんだそうですから、これがツルスベ浴感をもたらしている要因のひとつなのでしょう。とはいえ、食塩泉ですから、たとえぬるめであっても容易く火照ります。そんな時には水風呂へダイブ! 一気にクールダウンするととっても気持ち良い! 私は湯船と水風呂を何度も行き来してしまいました。夏季は締めに水風呂へ入ると、湯上がり後の発汗が抑えられ、着替えた跡でも爽快な状態が続きます。その一方、冬季は湯船でしっかりと温まれば、湯上がり後も食塩泉ならではの温浴効果が長時間持続します。
良質なお湯と鉱泉のおかげで、夏でも冬でも、季節に応じた楽しみ方ができるこちらの温泉。今回再訪して温冷両方の良さを改めて認識しました。泉質重視の方にはおすすめの一湯です。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 温度・pH・溶存物質・成分総計記載なし
Na+:2703mg(94.16mval%),
Cl-:3381mg(75.66mval%), Br-:8.2mg, I-:1.5mg, HCO3-:1739mg(22.61mval%), CO3--:60.0mg,
(平成元年10月18日)

JR五能線・木造駅より徒歩15分(約900m)
青森県つがる市木造浦船58-2  地図
0173-42-1697

6:00~22:00
390円(家族風呂あり、料金などについては本文をご参照ください)
ドライヤー10円/3分、ロッカー100円有料、その他販売

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

じょっぱり温泉

2017年04月22日 | 青森県

上画像は旧柏村(現在はつがる市の一部)の水田から眺めた津軽の霊峰岩木山。別称津軽富士。実質的に単独峰であるこの山は、見る方角によってそのスタイルや印象が異なります。太宰治の『津軽』では・・・
さまざまの方面からこの津軽富士を眺めたが、弘前から見るといかにも重くどつしりして、岩木山はやはり弘前のものかも知れないと思ふ一方、また津軽平野の金木、五所川原、木造あたりから眺めた岩木山の端正で華奢な姿も忘れられなかつた。西海岸から見た山容は、まるで駄目である。崩れてしまつて、もはや美人の面影は無い。
と記述されており、まさにその表現の通り、木造と五所川原の間に挟まれている柏から眺める岩木山は、左右対称に山裾を広げて端正そのものです。右上の稜線がちょっとギザギザしていますが、好きな異性の八重歯みたいなものと解釈すれば、むしろ可愛く見えてくるようにも思えます。いや、それは津軽を第二の故郷だと思い込んでいる私独特の、「あばたもえくぼ」的な主観なのかもしれません。


 
さて、そんな岩木山を眺めがら、私は久しぶりに旧柏村の県道37号線沿いにある公営温泉入浴施設「じょっぱり温泉」でひとっ風呂浴びてきました。じょっぱりとは津軽弁で意地っ張りや頑固者を意味する言葉。個人的には10年ぶりの再訪なのですが、別に強情を張って再訪を躊躇っていたわけではありません。


 
玄関を入って券売機で料金を支払い、受付のおばちゃんにその券を手渡します。受付前のロビーにはワインレッドのタイルカーペットが敷かれており、ベンチが設置されて休憩できるようになっていました。


 
広々とした脱衣場を抜けて浴場へ。お風呂は内湯のみであり、中央に据えられた浴槽を囲むようにして四方の壁に洗い場が配置されるという、青森県の温泉銭湯では標準的に見られる構造ですが、天井が高くて広いため、屋内空間であってもストレスなくのびのびと入浴することができるかと思います。大きなお風呂は銭湯ならではの醍醐味ですよね。
その浴槽は、後述する湯口のところで大小に二分割されており、大きな浴槽ではブクブクと音を立てながら泡風呂装置が稼働していました。


 
浴槽を囲むようにカランが約30基並んでいるのですが、シャワー付きの混合水栓だったり、あるいは宝式(押しバネ式)水栓と固定式シャワーの組み合わせだったりと、場所によって取り付けられている水栓の種類が異なっていました。なお全てのカランから出てくるお湯は40℃前後に調整された温泉のお湯でした。


 
男女両浴場を隔てる高い塀の一部には装飾目的の石がたくさん埋め込まれており、パーテーションで仕切られた内側には1本の打たせ湯が設けられていました。



浴室の奥にはサウナと小さい浴槽が2つ並んでいます。2つのうち、ひとつは源泉のお湯が張られた泡風呂で、もうひとつは水風呂でした。


 
独楽のような形状をしている丸い湯口から、大小両方の浴槽へ温泉が均等に落とされていました。出入口に近い大きな方には、上述のように泡風呂装置が設置されていて、ブクブクと泡を立てています。一方、小さな浴槽にはそのような設置はないのですが、その代わり若干深めに作られており、湯温も若干高く、私個人としてはこちらの方が入り応えがあるように感じられました。

湯船のお湯は薄いモスグリーンを帯びた山吹色で、透明度は高く、湯の花などの浮遊は見られません。浴場内には磯を思わせる香りが漂っており、カランのお湯を口に含んでみると強い塩気と出汁味が感じられました。津軽平野の温泉でよく見られる典型的な化石海水タイプのお湯かと思われます。館内には湯使いに関する表示が見当たらなかったのですが、源泉温度に比べて湯口における温度が低く(適温になっており)、また浴槽の縁からお湯がオーバーフローしている一方で、浴槽底面に吸引口も設けられているので、おそらくはしっかり加水した上で、循環と放流式を併用しているものと想像されます(もしかしたら循環は止まっているかも)。
湯中ではツルツルスベスベの大変滑らかな肌触りが得られ、入浴中は何度も自分の肌をさすってしまいました。分析書によれば、炭酸水素イオンが429.1mg、そして炭酸イオンが29.1mgも含まれており、ミリバル%に換算すると小さな数値になって目立ちませんが(ナトリウムと塩化物の両イオンが圧倒的に多いので)、絶対的な数量としては比較的多く、これらが滑らかな浴感をもたらしているものと思われます。また食塩泉ですから、湯上がりはしっかりと火照ります。夏ですと汗が止まりにくいのですが、冬には長時間にわたって温浴効果が続くので、厳冬期には心強い味方になってくれるはずです。

駐車場や館内に昭和の歌謡曲が流れ続けるこの温泉施設。地域のご老人にとって無くてはならない憩いの場なのでしょうね。名前こそじょっぱりですが、決して意地っ張りでも頑固でもない、ジェントリーで且つ力強い温泉でした。


桑野木田温泉
ナトリウム-塩化物温泉 58.8℃ pH7.9 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質11.626g/kg 成分総計11.652g/kg
Na+:4156mg(95.41mval%), NH4+:4.7mg, Ca++:57.1mg,
Cl-:6551mg(95.35mval%), Br-:26.0mg, I-:1.9mg, SO4--:30.8mg, HCO3-:429.1mg, CO3--:29.1mg,
H2SiO3:131.5mg, CO2:26.1mg,
(平成24年10月12日)

青森県つがる市柏桑野木田若宮258  地図
0173-25-2390
つがる市公式サイト内の紹介ページ

9:00〜21:00 第1・3月曜定休
320円
有料ドライヤー(10円/5分)・ロッカーあり、番台にて入浴グッズ販売あり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする