猛暑で意識が朦朧とする毎日。冷房を使わずに涼しさを求めるならば、緯度の高い地域へ避暑へ出かけるか、あるいは高い山に登るかのいずれかを選択することになるが、私の仕事は夏に繁忙期を迎えるため、あまり長期に及んで休暇を取ることができず、いずれの選択肢も現実的ではない。日帰り可能な近距離で手軽に涼を得られるところはないか。そう考えた時に思いついたのが、甲州の大菩薩嶺であった。甲府盆地の夏は都心顔負けの猛暑に見舞われるが、それは盆地の中の現象であって、盆地を取り囲む山の上へ登っちゃえば、状況は一変し、盆地とは全くの別世界が待っているのだ。
日程:2013年8月上旬(日帰り)
人数:単独行
天候:曇りのち晴れ
持ち物:日帰り登山の一般的な持ち物
ルート:裂石(丸川峠分岐駐車場)→上日川峠→小屋平→石丸峠→大菩薩峠→大菩薩嶺→丸川峠→裂石(丸川峠分岐駐車場)・・・反時計回りの周回コース
【7:00 丸川峠分岐駐車場(標高900m+α) 登山スタート】
中央道の勝沼インターから一般道を走り、塩山の市街地を抜けて国道411号(青梅街道)を北上。裂石から上日川峠へ向かう小道に入り、その途中にある丸川峠分岐駐車場に車を止める。車道自体はこの先の上日川峠まで続いているので、大菩薩嶺を目指すハイカーの多くは上日川峠まで車(もしくは運行日限定の路線バス)で行ってから登山をスタートさせるのだが、それでは歩行距離も高低差も得られないから登山としては面白みに欠けるし、上記のような周回コースを辿るのならば、この駐車場を起点・終点にするのが最も合理的であったので、敢えてこの駐車場を選んだのだった。さすがにここからスタートしようとするハイカーは圧倒的に少数派なのか、駐車場には私の車以外は一台もとまっておらず、ハイカーの車は上日川峠を目指して目の前の道を次々に通過してゆくが、そんな車道をしばらく歩く。
遠回りする車道をショートカットするような形で歩道がスタート。
【7:10 千石平・千石茶屋】
間もなく車道と合流して千石平に至るが、茶屋前で歩道はすぐ右手へ分かれる。
茶屋の脇から伸びるコンクリ舗装の道を数十メートル歩き、やがて左手へ分かれる登山道を進む。
両側が深くえぐれたこの登山道は、大菩薩峠を越えるための古道だったらしく、道幅にはゆとりがあり、古道らしい趣きも感じられる。
【7:43 第二展望台】
展望台とは云うものの、木々が生い茂っているためにほとんど展望が効かない。そもそも展望台の第一はどこだ?
登山道は車道とほぼ並行しているため、車道を走る車の走行音がしばしば耳に入ってくる。わざわざ下から歩こうとする登山者は少ないらしく、車の通行量こそ多いが、この道を歩く人の姿は見られない。この先は登山道が崩れているので、標識に従って車道へ迂回する。
車道を数十メートル歩いて再び登山道へ戻る。案内が丁寧に掲示されているから迷うことはない。
登山道は上り勾配一辺倒だが、危険な箇所はほぼ皆無であり、とても歩きやすい。幼い子でも問題なく歩けちゃうだろう。
今回の山行で唯一道を間違えた箇所がこの「イタヤカエデ」の看板があるところ。画像を見てもわかるように道は分岐しており、一見すると左のほうが幅員が広いのでそちらを進みたくなる。私も左に向かったのだが、ちょっと進んだら行き止まりとなっており、それ以上進むと崖の下に転落してしまう。従ってここは右に進路をとる。
頭上にはブナの葉、地面には笹藪が茂っている中を進む。
やがて車道に合流し…
【8:20 上日川峠・ロッヂ長兵衛(1580m)】
上日川峠に到達。峠の山小屋は「ロッヂ長兵衛」。
上日川峠のトイレの奥に広がる無料駐車場にはたくさんの車がとまっていた。繰り返しになるが、普通はここまで車で来るのが一般的であり、私のように下から登る人は少数派であり、途中誰にも会わなかった。
車で上日川峠までやってきたハイカーが大菩薩峠および大菩薩嶺を目指す場合は、ここから唐松尾根分岐を目指すのが一般的であるが、ここでまたへそ曲がりな私はマイノリティな石丸峠へ向かう道に進む。遠回りとなるこの道を進む人は少ない。
裂石から上日川峠までせっかく600m近く登ってきたのに、峠からは緩やかな坂を下ってダム湖の最上流部を辿って小さな沢を3本越える。まず峠から10分弱で1回目の渡渉。石の上を跨いで沢を越える。
それから4分後に2回目の渡渉。こちらの沢も小さいので楽勝。
針葉樹の森を歩いてマイナスイオンを全身に浴びる。空気が清々しい。
2回目の渡渉から12分後に3回目の渡渉。前2回と比べてここは川幅がしっかりあるので、飛ぶべき石をしっかり選んで川を越える。この川は上日川ダム(大菩薩湖)の最上流であり、下流側は視界がひらけている。
【8:52 小屋平】
小屋平で車道を横断。上日川峠へ向かう路線バスはここを通過し、バス停も設けられている。
小屋平のバス停前が石丸峠への入口であり、本格的な登山道はここから。
両側にクマザサが生い茂る斜面。比較的急な登りであり、ここに至ってようやく登山をしている気分になれた。なかなか登り甲斐がある。しかしながらアブが鬱陶しい。
小屋平から20分ほど登ると未舗装の林道に出た。
本来はこの林道をすぐに横断するのだが、登山道の一部区間が崩壊しているので、林道を150mほど歩き、道標に従って迂回する。
森林浴をしながら大菩薩連嶺の稜線を目指す。徐々に勾配が緩やかになってきた。
樹林帯を抜けて稜線上の草原地帯に出た。天気はあいにくの曇り空だが、大菩薩湖の湖面やロックフィル式のダム本体も望める。
草原地帯はちょっとしたお花畑になっており、色とりどりの花が咲いていた。黄色い花はニガナ。オレンジ色はコウリンカ。薄紫の花はカイフウロ(フウロの一種)。特にコウリンカは群生をなしていた。
笹原を行く爽快な道。曇っているおかげで強い陽射しを避けることでき、足取りも軽い。もうすぐ石丸峠だ。
石丸峠の手前には、シカによる高山植物の食害被害を調査するためのフェンスが設置されていた。たしかに登山道にはそれらしき足跡がはっきり残っている。
【10:00 石丸峠】
登山道が交差する石丸峠。上日川峠にはたくさんの車がとまっており、ハイカーが達の姿も多く見られたが、ここに至るまで一人も行き違ったり追い抜いたりしていない。そんなにマイナーな道なのかね。石丸峠からは大菩薩連嶺の稜線上を辿る。
大菩薩連嶺は多摩川水系と富士川水系の分水嶺となっており、ちょうどその境界上を歩くことになるのだが、多摩川水系サイドには「東京都水道局」の標柱や境界石が設置されており、この境界石から多摩川側は東京都の水源林であることがわかる。東京都水道局のHPによれば「東京都最西部の奥多摩町から山梨県下の小菅村、丹波山村、甲州市に至るまで、東西30.9km、南北19.5kmに広がっており、面積は約22,000haに及んでい」るとのこと。この広大な森林が都民の生活を守っているわけだ。
石丸峠から熊沢山と称するちょっとしたピークに入る。この辺りは鬱蒼とした針葉樹林だ。
ピークを越えて樹林帯の中を下りてゆくと、やがて人の声が聞こえ始めて、山小屋「介山荘」が姿を現し…
【10:30~11:00 大菩薩峠(1897m)】
大菩薩峠へと至る。スタートからここまで無休憩・無給水で来てしまったため、標柱のそばに腰掛けてコンビニのおにぎりを頬張った。下界では既に30℃を超える暑さにもかかわらず、この峠は涼しいを通り越して寧ろ肌寒く、半袖の上に一枚羽織りたくなるほどだった。
後編につづく
日程:2013年8月上旬(日帰り)
人数:単独行
天候:曇りのち晴れ
持ち物:日帰り登山の一般的な持ち物
ルート:裂石(丸川峠分岐駐車場)→上日川峠→小屋平→石丸峠→大菩薩峠→大菩薩嶺→丸川峠→裂石(丸川峠分岐駐車場)・・・反時計回りの周回コース
【7:00 丸川峠分岐駐車場(標高900m+α) 登山スタート】
中央道の勝沼インターから一般道を走り、塩山の市街地を抜けて国道411号(青梅街道)を北上。裂石から上日川峠へ向かう小道に入り、その途中にある丸川峠分岐駐車場に車を止める。車道自体はこの先の上日川峠まで続いているので、大菩薩嶺を目指すハイカーの多くは上日川峠まで車(もしくは運行日限定の路線バス)で行ってから登山をスタートさせるのだが、それでは歩行距離も高低差も得られないから登山としては面白みに欠けるし、上記のような周回コースを辿るのならば、この駐車場を起点・終点にするのが最も合理的であったので、敢えてこの駐車場を選んだのだった。さすがにここからスタートしようとするハイカーは圧倒的に少数派なのか、駐車場には私の車以外は一台もとまっておらず、ハイカーの車は上日川峠を目指して目の前の道を次々に通過してゆくが、そんな車道をしばらく歩く。
遠回りする車道をショートカットするような形で歩道がスタート。
【7:10 千石平・千石茶屋】
間もなく車道と合流して千石平に至るが、茶屋前で歩道はすぐ右手へ分かれる。
茶屋の脇から伸びるコンクリ舗装の道を数十メートル歩き、やがて左手へ分かれる登山道を進む。
両側が深くえぐれたこの登山道は、大菩薩峠を越えるための古道だったらしく、道幅にはゆとりがあり、古道らしい趣きも感じられる。
【7:43 第二展望台】
展望台とは云うものの、木々が生い茂っているためにほとんど展望が効かない。そもそも展望台の第一はどこだ?
登山道は車道とほぼ並行しているため、車道を走る車の走行音がしばしば耳に入ってくる。わざわざ下から歩こうとする登山者は少ないらしく、車の通行量こそ多いが、この道を歩く人の姿は見られない。この先は登山道が崩れているので、標識に従って車道へ迂回する。
車道を数十メートル歩いて再び登山道へ戻る。案内が丁寧に掲示されているから迷うことはない。
登山道は上り勾配一辺倒だが、危険な箇所はほぼ皆無であり、とても歩きやすい。幼い子でも問題なく歩けちゃうだろう。
今回の山行で唯一道を間違えた箇所がこの「イタヤカエデ」の看板があるところ。画像を見てもわかるように道は分岐しており、一見すると左のほうが幅員が広いのでそちらを進みたくなる。私も左に向かったのだが、ちょっと進んだら行き止まりとなっており、それ以上進むと崖の下に転落してしまう。従ってここは右に進路をとる。
頭上にはブナの葉、地面には笹藪が茂っている中を進む。
やがて車道に合流し…
【8:20 上日川峠・ロッヂ長兵衛(1580m)】
上日川峠に到達。峠の山小屋は「ロッヂ長兵衛」。
上日川峠のトイレの奥に広がる無料駐車場にはたくさんの車がとまっていた。繰り返しになるが、普通はここまで車で来るのが一般的であり、私のように下から登る人は少数派であり、途中誰にも会わなかった。
車で上日川峠までやってきたハイカーが大菩薩峠および大菩薩嶺を目指す場合は、ここから唐松尾根分岐を目指すのが一般的であるが、ここでまたへそ曲がりな私はマイノリティな石丸峠へ向かう道に進む。遠回りとなるこの道を進む人は少ない。
裂石から上日川峠までせっかく600m近く登ってきたのに、峠からは緩やかな坂を下ってダム湖の最上流部を辿って小さな沢を3本越える。まず峠から10分弱で1回目の渡渉。石の上を跨いで沢を越える。
それから4分後に2回目の渡渉。こちらの沢も小さいので楽勝。
針葉樹の森を歩いてマイナスイオンを全身に浴びる。空気が清々しい。
2回目の渡渉から12分後に3回目の渡渉。前2回と比べてここは川幅がしっかりあるので、飛ぶべき石をしっかり選んで川を越える。この川は上日川ダム(大菩薩湖)の最上流であり、下流側は視界がひらけている。
【8:52 小屋平】
小屋平で車道を横断。上日川峠へ向かう路線バスはここを通過し、バス停も設けられている。
小屋平のバス停前が石丸峠への入口であり、本格的な登山道はここから。
両側にクマザサが生い茂る斜面。比較的急な登りであり、ここに至ってようやく登山をしている気分になれた。なかなか登り甲斐がある。しかしながらアブが鬱陶しい。
小屋平から20分ほど登ると未舗装の林道に出た。
本来はこの林道をすぐに横断するのだが、登山道の一部区間が崩壊しているので、林道を150mほど歩き、道標に従って迂回する。
森林浴をしながら大菩薩連嶺の稜線を目指す。徐々に勾配が緩やかになってきた。
樹林帯を抜けて稜線上の草原地帯に出た。天気はあいにくの曇り空だが、大菩薩湖の湖面やロックフィル式のダム本体も望める。
草原地帯はちょっとしたお花畑になっており、色とりどりの花が咲いていた。黄色い花はニガナ。オレンジ色はコウリンカ。薄紫の花はカイフウロ(フウロの一種)。特にコウリンカは群生をなしていた。
笹原を行く爽快な道。曇っているおかげで強い陽射しを避けることでき、足取りも軽い。もうすぐ石丸峠だ。
石丸峠の手前には、シカによる高山植物の食害被害を調査するためのフェンスが設置されていた。たしかに登山道にはそれらしき足跡がはっきり残っている。
【10:00 石丸峠】
登山道が交差する石丸峠。上日川峠にはたくさんの車がとまっており、ハイカーが達の姿も多く見られたが、ここに至るまで一人も行き違ったり追い抜いたりしていない。そんなにマイナーな道なのかね。石丸峠からは大菩薩連嶺の稜線上を辿る。
大菩薩連嶺は多摩川水系と富士川水系の分水嶺となっており、ちょうどその境界上を歩くことになるのだが、多摩川水系サイドには「東京都水道局」の標柱や境界石が設置されており、この境界石から多摩川側は東京都の水源林であることがわかる。東京都水道局のHPによれば「東京都最西部の奥多摩町から山梨県下の小菅村、丹波山村、甲州市に至るまで、東西30.9km、南北19.5kmに広がっており、面積は約22,000haに及んでい」るとのこと。この広大な森林が都民の生活を守っているわけだ。
石丸峠から熊沢山と称するちょっとしたピークに入る。この辺りは鬱蒼とした針葉樹林だ。
ピークを越えて樹林帯の中を下りてゆくと、やがて人の声が聞こえ始めて、山小屋「介山荘」が姿を現し…
【10:30~11:00 大菩薩峠(1897m)】
大菩薩峠へと至る。スタートからここまで無休憩・無給水で来てしまったため、標柱のそばに腰掛けてコンビニのおにぎりを頬張った。下界では既に30℃を超える暑さにもかかわらず、この峠は涼しいを通り越して寧ろ肌寒く、半袖の上に一枚羽織りたくなるほどだった。
後編につづく