※今回取り上げる「かのせ温泉 赤湯」は2020年5月末で第三セクターによる営業を終了し、現在は休業中です。今後は阿賀町直営施設として営業再開を見込んでいますが、その時期は未定です。
新潟県阿賀町の「かのせ温泉 赤湯」は、ほぼ完全な公営と言っても良い第三セクター(※1)が運営している温泉にもかかわらず、湯船の温度がびっくりするほど熱いお風呂として一部の温泉マニアには有名な施設です。公営施設は公共性の建前がありますから、保健所の指導に従って湯使いや施設運営を決めてゆく傾向にありますが、そんな常識を覆してくれる不思議な施設なのです。
(※1)株式会社上川温泉。阿賀町が資本金の98.5%を出資
津川の街から国道459号線を北上して鹿瀬駅を通り過ぎ、昭和電工鹿瀬工場跡(新潟水俣病の発生源)の外をぐるっと回って阿賀野川のダム湖近くへ向かい、途中で左に曲がって登り坂を上がってゆくと、坂の途中の右手に上画像のようなログハウス調の建物が目に入ってきます。
道の反対側(つまり登り坂の左側)には上画像のような設備が設けられていました。おそらくここが源泉なのでしょう。
こちらの施設はシックで且つぬくもりが感じられるログハウス調の木造2階建。緑豊かな周囲環境に調和しています。玄関には「赤湯」とかかれた大きな行燈が置かれ、優しい光を灯していました。館内の券売機で料金を支払い、受付に券を差し出します。
受付前のホールでは地場産品などが物販されています。その受付前ホールから通路をまっすぐ進んだ突き当たりの左手には休憩用お座敷が広がり、訪問時にはお風呂から上がったお客さんたちが思い思いの姿勢でゆったり寛いでいらっしゃいました。これとは反対側の右手に浴室の暖簾がさがっています。
男湯の脱衣室にはL字型に棚が、そして正面向かいに流し台がそれぞれ設置されています。なお流し台にはドライヤーの備え付けもあるのですが、古いビジネスホテルにあるようなパワーの弱い機種なので、しっかり乾かしたい方には物足りないかもしれません。
さて肝心のお風呂についてですが、ちょうど私は夕方の最混雑時に訪問してしまったため、内部を記録することはできませんでした。お風呂の様子をご覧になりたい方は公式サイトをご覧ください。
外観と同じく浴室もウッディな造りです。男湯の場合、窓下にタイル貼りの浴槽が2つ並んで据えられ、内湯左側の壁に沿ってL字型にシャワー付きカランが計6基並んでいます。
左右に並んだ2つの浴槽はそれぞれ4~5人サイズですが、どのお客さんも右側を避け、左側にしか入ろうとしません。というにも、湯口がある右側は箆棒に熱いので、入りようがないのです。冒頭で申し上げた熱い湯船というのは、この湯口側の浴槽の事でした。私もトライしてみましたが、あまりの熱さに脛を入れただけで諦めてしまいました。もっとも、お客さんが入っている左側の浴槽ですらも一般的なお風呂よりは熱く、長湯なんてできません。繰り返しになりますが、管理面で色々とうるさい準公営と言うべき第三セクターの施設でこんなに熱いお湯は珍しいかと思います。
そんな熱いお湯を浴槽に注いでいる湯口は、タイルを煉瓦積みのようにしてドームを4分の1にしたような形状をしているのですが、析出の石灰華が吐出口のまわりに大量付着しており、カイゼル髭を分厚くしたような八の字型に広がっています。その姿はまるでRPGゲームの「ドラゴンクエスト」に登場するドロルみたいです。また周囲には赤色の鱗状析出も現れていました。見るからに濃そうなお湯です。
内湯の奥にあるドアを開けると「露天風呂」なのですが、露天とは名ばかりで、実質的は別室内湯といった造りになっていました。おそらく夏は窓を開け払って半露天状態にするのでしょうけど、私が訪れた日は肌寒かったため、網戸の部分を除けば窓は閉められており、第二の内湯となっていたのでした。こうした造りは冬季に露天なんてやってられない雪国だからこその工夫なのでしょうから、致し方ありません。でもこの第二内湯(露天)の湯船は熱いお風呂が苦手な人向けに加水が許されているのです。しかも私の訪問時は一般的な湯加減より若干ぬるめにセッティングされていたため、心置きなくのんびり湯浴みできました。ただ水で薄められている分だけ、熱い内湯よりもお湯の濁り方や色合いは薄かったように記憶しています。なおこの第二内湯ではお湯を木の筧から投入しており、その量も若干絞り気味でしたから、加水しなくてもあまり熱くならないのかもしれません。なお、こちらの浴槽は横に並んで5~6人は入れそうな大きさがあり、内湯の洗い場は床がタイル敷きでしたが、こちらの床は足裏への感触が優しい緑色凝灰岩(グリーンタフ)が敷き詰められていました(でも真っ赤に染まっていて元の素材がわからないほど)。ちょっとだけグレードが高いような感じがします。
内湯のお湯はまさに「赤湯」という名前が相応しい赤茶色の強い濁りを呈しており、お湯を口に含んでみますと塩味とともに鉄錆系の金気味がしっかりと感じられます。また並行してほろ苦味や芒硝味も伝わってきます。上述したような湯口周りの分厚い析出、そして浴槽周りや手すりなどに付着している鱗状や庇状の析出は、おそらく硫酸塩ではなく炭酸カルシウムであるかと思われます(その証拠に、分析表によれば炭酸水素イオンや遊離炭酸ガスがそこそこ多く含まれています)。
第二内湯(露天)では加水が行われている一方、内湯は非加水・非加温・循環なしという湯使いです。湧出温度が60℃近い温泉を加水しないでそのまま浴槽へ落としているのですから、湯船が熱くなるのは当然ですね。熱くて塩気があるお湯ですから、湯船に入るとスピーディー且つパワフルに温まります。それゆえ湯船の回転が速く、長湯している方はいらっしゃいません。また逆上せやすいお湯ですから、お風呂上がりに皆さんが座敷でグッタリしているのも頷けます。でも熱いお湯をそのまま提供しているのは、それだけ源泉の状態を損なうことなく触れてほしいという施設側の配慮なのでしょう。私個人としてはその思いをありがたく受け取りたいと思います。
地域の人気施設であり、私の訪問時(2019年秋)も次々とお客さんが建物へ入っていました。そんな光景を目にしているのでてっきり経営は盤石なのかと思いきや、新型コロナの影響でこの施設を運営している第三セクター(株式会社上川温泉)の経営が行き詰まり、「かのせ温泉 赤湯」など複数の施設(※2)が相次いで休業へと追い込まれてしまいました。
(※2)温泉施設に限定すると、「かのせ温泉 赤湯」の他には、「御神楽温泉 あすなろ荘」「七福温泉 七福荘」「かのせ温泉 赤崎荘」など。
休業となってしまった施設のうち、当記事の「かのせ温泉 赤湯」は阿賀町が直営で営業を再開することになっているそうです。再開の日を心待ちにしています(再開時期未定)。
鹿瀬温泉1号
Na・Ca-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 59.4℃ pH6.4 pH234L/min(動力揚湯) 溶存物質3623mg/kg 成分総計4076mg/kg
Na+:790.5mg(65.98mval%), Mg++:36.2mg, Ca++:269.5mg(25.82mval%), Fe++:2.8mg,
Cl-:354.9mg(20.02mval%), Br-:1.7mg, I-:0.4mg, SO4--:1379mg(57.40mval%), HCO3-:678.5mg(22.24mval%),
H2SiO3:57.3mg, CO2:453.1mg,
(平成27年2月13日)
加水加温循環なし
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬11540-1
0254-92-4186
ホームページ
※2020年5月末を以て休業。町営施設として再開予定だが、時期は未定。
10:00~20:00(最終受付19:30) 火曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5
新潟県阿賀町の「かのせ温泉 赤湯」は、ほぼ完全な公営と言っても良い第三セクター(※1)が運営している温泉にもかかわらず、湯船の温度がびっくりするほど熱いお風呂として一部の温泉マニアには有名な施設です。公営施設は公共性の建前がありますから、保健所の指導に従って湯使いや施設運営を決めてゆく傾向にありますが、そんな常識を覆してくれる不思議な施設なのです。
(※1)株式会社上川温泉。阿賀町が資本金の98.5%を出資
津川の街から国道459号線を北上して鹿瀬駅を通り過ぎ、昭和電工鹿瀬工場跡(新潟水俣病の発生源)の外をぐるっと回って阿賀野川のダム湖近くへ向かい、途中で左に曲がって登り坂を上がってゆくと、坂の途中の右手に上画像のようなログハウス調の建物が目に入ってきます。
道の反対側(つまり登り坂の左側)には上画像のような設備が設けられていました。おそらくここが源泉なのでしょう。
こちらの施設はシックで且つぬくもりが感じられるログハウス調の木造2階建。緑豊かな周囲環境に調和しています。玄関には「赤湯」とかかれた大きな行燈が置かれ、優しい光を灯していました。館内の券売機で料金を支払い、受付に券を差し出します。
受付前のホールでは地場産品などが物販されています。その受付前ホールから通路をまっすぐ進んだ突き当たりの左手には休憩用お座敷が広がり、訪問時にはお風呂から上がったお客さんたちが思い思いの姿勢でゆったり寛いでいらっしゃいました。これとは反対側の右手に浴室の暖簾がさがっています。
男湯の脱衣室にはL字型に棚が、そして正面向かいに流し台がそれぞれ設置されています。なお流し台にはドライヤーの備え付けもあるのですが、古いビジネスホテルにあるようなパワーの弱い機種なので、しっかり乾かしたい方には物足りないかもしれません。
さて肝心のお風呂についてですが、ちょうど私は夕方の最混雑時に訪問してしまったため、内部を記録することはできませんでした。お風呂の様子をご覧になりたい方は公式サイトをご覧ください。
外観と同じく浴室もウッディな造りです。男湯の場合、窓下にタイル貼りの浴槽が2つ並んで据えられ、内湯左側の壁に沿ってL字型にシャワー付きカランが計6基並んでいます。
左右に並んだ2つの浴槽はそれぞれ4~5人サイズですが、どのお客さんも右側を避け、左側にしか入ろうとしません。というにも、湯口がある右側は箆棒に熱いので、入りようがないのです。冒頭で申し上げた熱い湯船というのは、この湯口側の浴槽の事でした。私もトライしてみましたが、あまりの熱さに脛を入れただけで諦めてしまいました。もっとも、お客さんが入っている左側の浴槽ですらも一般的なお風呂よりは熱く、長湯なんてできません。繰り返しになりますが、管理面で色々とうるさい準公営と言うべき第三セクターの施設でこんなに熱いお湯は珍しいかと思います。
そんな熱いお湯を浴槽に注いでいる湯口は、タイルを煉瓦積みのようにしてドームを4分の1にしたような形状をしているのですが、析出の石灰華が吐出口のまわりに大量付着しており、カイゼル髭を分厚くしたような八の字型に広がっています。その姿はまるでRPGゲームの「ドラゴンクエスト」に登場するドロルみたいです。また周囲には赤色の鱗状析出も現れていました。見るからに濃そうなお湯です。
内湯の奥にあるドアを開けると「露天風呂」なのですが、露天とは名ばかりで、実質的は別室内湯といった造りになっていました。おそらく夏は窓を開け払って半露天状態にするのでしょうけど、私が訪れた日は肌寒かったため、網戸の部分を除けば窓は閉められており、第二の内湯となっていたのでした。こうした造りは冬季に露天なんてやってられない雪国だからこその工夫なのでしょうから、致し方ありません。でもこの第二内湯(露天)の湯船は熱いお風呂が苦手な人向けに加水が許されているのです。しかも私の訪問時は一般的な湯加減より若干ぬるめにセッティングされていたため、心置きなくのんびり湯浴みできました。ただ水で薄められている分だけ、熱い内湯よりもお湯の濁り方や色合いは薄かったように記憶しています。なおこの第二内湯ではお湯を木の筧から投入しており、その量も若干絞り気味でしたから、加水しなくてもあまり熱くならないのかもしれません。なお、こちらの浴槽は横に並んで5~6人は入れそうな大きさがあり、内湯の洗い場は床がタイル敷きでしたが、こちらの床は足裏への感触が優しい緑色凝灰岩(グリーンタフ)が敷き詰められていました(でも真っ赤に染まっていて元の素材がわからないほど)。ちょっとだけグレードが高いような感じがします。
内湯のお湯はまさに「赤湯」という名前が相応しい赤茶色の強い濁りを呈しており、お湯を口に含んでみますと塩味とともに鉄錆系の金気味がしっかりと感じられます。また並行してほろ苦味や芒硝味も伝わってきます。上述したような湯口周りの分厚い析出、そして浴槽周りや手すりなどに付着している鱗状や庇状の析出は、おそらく硫酸塩ではなく炭酸カルシウムであるかと思われます(その証拠に、分析表によれば炭酸水素イオンや遊離炭酸ガスがそこそこ多く含まれています)。
第二内湯(露天)では加水が行われている一方、内湯は非加水・非加温・循環なしという湯使いです。湧出温度が60℃近い温泉を加水しないでそのまま浴槽へ落としているのですから、湯船が熱くなるのは当然ですね。熱くて塩気があるお湯ですから、湯船に入るとスピーディー且つパワフルに温まります。それゆえ湯船の回転が速く、長湯している方はいらっしゃいません。また逆上せやすいお湯ですから、お風呂上がりに皆さんが座敷でグッタリしているのも頷けます。でも熱いお湯をそのまま提供しているのは、それだけ源泉の状態を損なうことなく触れてほしいという施設側の配慮なのでしょう。私個人としてはその思いをありがたく受け取りたいと思います。
地域の人気施設であり、私の訪問時(2019年秋)も次々とお客さんが建物へ入っていました。そんな光景を目にしているのでてっきり経営は盤石なのかと思いきや、新型コロナの影響でこの施設を運営している第三セクター(株式会社上川温泉)の経営が行き詰まり、「かのせ温泉 赤湯」など複数の施設(※2)が相次いで休業へと追い込まれてしまいました。
(※2)温泉施設に限定すると、「かのせ温泉 赤湯」の他には、「御神楽温泉 あすなろ荘」「七福温泉 七福荘」「かのせ温泉 赤崎荘」など。
休業となってしまった施設のうち、当記事の「かのせ温泉 赤湯」は阿賀町が直営で営業を再開することになっているそうです。再開の日を心待ちにしています(再開時期未定)。
鹿瀬温泉1号
Na・Ca-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 59.4℃ pH6.4 pH234L/min(動力揚湯) 溶存物質3623mg/kg 成分総計4076mg/kg
Na+:790.5mg(65.98mval%), Mg++:36.2mg, Ca++:269.5mg(25.82mval%), Fe++:2.8mg,
Cl-:354.9mg(20.02mval%), Br-:1.7mg, I-:0.4mg, SO4--:1379mg(57.40mval%), HCO3-:678.5mg(22.24mval%),
H2SiO3:57.3mg, CO2:453.1mg,
(平成27年2月13日)
加水加温循環なし
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬11540-1
0254-92-4186
ホームページ
※2020年5月末を以て休業。町営施設として再開予定だが、時期は未定。
10:00~20:00(最終受付19:30) 火曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5