温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

2021年の湯めぐりを振り返る

2021年12月29日 | 旅行記
私はもちろん、このブログをご覧の皆様も、そして世界中も、この地球上に生活するほぼ全ての人々がコロナ禍に振り回されたと言っても過言ではなかった2021年。まったく海外に行くことができず、国内にしても状況を見極めながら慎重にタイミングを図って出かけたため、思うように湯めぐりすることができなかったのですが、これは皆さんも同様のことかと思います。またコロナ禍に加えて私の場合は仕事の繁忙化によって思うように時間を確保することもままならず、今年を振り返ると新規開拓できた温泉施設数は40にとどまりました。とはいえ、数は少なくとも一つ一つはときめく記憶で彩られた個性派揃い。そこで今年最後の記事は、2021年の湯めぐりを振り返って締めくくることにします。

●新規オープンの温泉
コロナ禍にめげず、関東周辺では2021年も温泉施設が新規オープンしています。私はその中のいくつかへ訪問しました。


千葉県流山市の「すみれ」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
露天風呂では東葛地区らしい濃厚な化石海水型温泉がかけ流され、出来たばかりの綺麗な施設でのんびり寛ぐことができました。館内には温泉に関する頓珍漢な説明が書かれていましたが、今でも掲出しっぱなしなのかしら。


川崎市川崎区の「朝日湯源泉ゆいる」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
こちらは元々銭湯でしたが、リニューアルの際に温泉掘削に成功し、温泉施設として生まれ変わりました。かけ流し浴槽こそ無いものの、塩辛くて濃い温泉、そしてかなり深い水風呂に入れますし、サウナではロウリュウも実施されるため、温泉ファンのみならずサウナ愛好家にとっても利用価値のある施設かと思います。


埼玉県吉川市の「アクアイグニス武蔵野温泉」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
三重県湯の山の手前にある「アクアイグニス片岡温泉」が関東へ進出。片岡温泉の良さを実感している私としては、是非とも行ってみたかった施設です。周辺の競合施設よりちょっと高く、また皆さん大好きな(私は正直無くても良い)サウナが別料金なので、人によって評価が分かれるものの、いかにも埼玉県東部らしい濃い化石海水型温泉がかけ流されており、また施設もとっても綺麗で、館内の食事も美味しく、私個人としては高評価したいところです。片岡温泉とは泉質が全く異なるので、名前は同じだけれども別施設として捉えるのが吉です。


大沢温泉「依田之庄」(来年ブログで紹介予定)。
こちらは2021年ではなく、2020年12月下旬にオープンしたのですが、私は開業1年以内に利用しましたので、新規オープンのグループへ加えさせていただきました。以前は「大沢温泉ホテル 依田之庄」として営業していましたが、廃業後は敷地内の「旧依田邸」が静岡県指定有形文化財に指定されて、史跡として一般公開されるようになり、同敷地内の西側で2020年12月に日帰り温泉入浴施設「大沢温泉 依田之庄」が新規開業しました。大きく明るいお風呂ながら、とても静かで湯量も多く、大沢温泉自体の質の良さも相俟って、大変素晴らしい入浴時間を過ごせました。ここはお勧め。


番外編として、新規オープンではないものの、先日何の予備知識も無いまま飛び込みで訪問したら、いつの間にかこの画像のような立派な露天風呂ができていましたので、ここでご紹介致します。くらくら燃える地を這って越えた峠の先で、某温泉ホテルが所有する洞窟風呂があり、そこにこの露天風呂が付帯しています。以前この場所にはもうちょっと簡素なお風呂がありましたが(立ち風呂という名前だったかな)、ご覧のようにきれいなお風呂になり、万人受けするような形になりました。その代わり日帰り料金がアップされています。この露天風呂がどこにあるのか、来年記事にする予定です(来年ブログで紹介予定)。


●貸切風呂の積極利用
コロナ禍という状況で、安心して入浴するには、貸切風呂をするのが良い方法かと思います。昨年に引き続き、今年のゆめぐりでは、積極的に貸切風呂を利用しました。


「伊豆市富戸 藤よし伊豆店」(ブログで紹介済。記事はこちらこちら
相模灘を望む大きな露天風呂を貸切利用し、しかもお風呂上りは美味しい伊豆の海の幸をいただきました。時間内なら自由に空いているお風呂を貸切れるのも良いですね。とっても気分爽快な施設でした。


伊豆高原 城ヶ島温泉「花吹雪 貸切風呂(ヒュレヒュレイセポ)」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
日中は予約なしで日帰り利用できるのですが、施設内にあるお風呂の全てが貸切。空いていれば好きな浴室を使えます。しかも一人利用も可能。さすが人気のあるお宿だけあり、コンセプトがしっかりしており、お湯も良く、綺麗で快適な湯あみを楽しめました。おすすめ。


石和温泉「深雪温泉」貸切風呂(来年ブログで紹介予定)。
何度か宿泊している「深雪温泉」に今年も1泊お世話になったのですが、その際に貸切風呂も利用しました。そもそも大浴場だったと思しき浴室はかなり広く、しかも露天風呂もあって、贅沢な湯あみのひと時を過ごせました。やっぱり石和ではこの「深雪温泉」が良いですね。

●2週連続で草津通い
なにをとち狂ったか、今夏は2週連続で草津温泉へ出かけてしまいました。恋の病以外は何でも癒してくれる草津の湯に惹かれてしまうほど、その時の私は心身が病んでいたのかもしれませんが、良い湯にたっぷり浸かれ、しかも避暑することもでき、病んでいたらしい私の心身はしっかり健康になったのでした。今回お世話になったお宿はいずれも再訪でしたが、改めて良い湯であることを実感しました。


「草津館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
湯畑の目の前という好立地はもちろん、館内湧出の若乃湯と白旗源泉の2源泉が楽しめるお宿として温泉愛好家には夙に有名なお宿。お湯もお宿の方も、本当に素晴らしい。


「極楽館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
3室あるお風呂は全て貸切利用のため、コロナ禍でも安心して宿泊できました。特にお宿ご自慢の大日の湯源泉が実に良く、草津にしては穏やかな浴感なので、ついつい微睡んでしまいます。朝食も美味しいですよ。おすすめ。

●熱海市伊豆山の土石流災害に驚く
今年7月に発生した熱海市伊豆山の土石流災害には多くの方が驚き、特に当地に思い入れがある温泉ファンは大変嘆かれたかと思います。ニュース映像で何度も放映されたあの現場の急坂を、私は3か月前に自分の足で歩いて登り下りしていたので、まさかあの場所がこんなことになるとは、と絶句してしまいました。


自分で坂を登って入りに行った某施設の温泉露天風呂。大変眺めが良いのですが、確かに急な地形ですし、無理して開発しているなぁ、という感は否めません。今回の土石流の原因となった場所はここから東側の稜線を越えたところですが、そこで発生した土石流は一気に山を下ってこの施設へアクセスする道やその周辺民家を呑み込み、逢初橋を泥濘で覆いつくして、海に達したのでした。


上画像の施設を訪ねた翌日も私は熱海におり、相模灘を一望する某ホテルの大浴場で日帰り入浴を楽しんでいました(来年ブログで紹介予定)。
ここも熱海らしく海に落ち込む急峻な地形の上に立地しているため、その建物の最上階にある大浴場からの眺めは大変素晴らしいのですが、私が露天風呂に入っていたら、なんと目の前の相模灘をに綺麗な虹が掛かったのです。風呂に入りながら虹を眺める経験って滅多に得られず、非常に珍しいかと思います。今回被災された伊豆山の方々の生活にも美しい虹がかかることを祈念するとともに、犠牲になった方々にはご冥福をお祈り申し上げます。

●東北へあまり行けなかった・・・
私の湯めぐりではホームグラウンドと称しても差し支えない東北6県ですが、今年はあまり行けず、福島県と山形県にちょこちょこと足を運んだだけでした。あぁ悲しい・・・。


「蔵王国際ホテル」(来年ブログで紹介予定)。
なかなか足を運べなかった東北ですが、私が大好きな蔵王で、お盆休みに辛うじて1泊することができました。近江屋旅館グループらしいコンセプトが随所に感じられるホテルで、お湯もスタッフの対応も良く、同行者曰く大変素晴らしく再訪したいとのことでした。


蔵王温泉「かわらや」
蔵王に来たらここは外せません。何度入ってもこのスノコのお風呂は最高。


郡山市「ホテルバーデン」宿泊者用大浴場(来年ブログで紹介予定)。
晩秋の某日、会津磐梯山を登山したのですが、その前日に泊まったのが郡山市「ホテルバーデン」でした。郡山南インター付近は知る人ぞ知る温泉郷であり、特にこの「ホテルバーデン」や「バーデン温泉」は湯量豊富で良いですね。ちなみに翌日の下山後はこの近所の「月光温泉大浴場」にも入っています。なお私が郡山の温泉で一番好きなのは「月光温泉大浴場」なのですが、果たしていままで何回入っているのかしら・・・。


●あの震災を扱う2つの常設展示
あの震災から10年は経ち、記憶が徐々に風化してゆく中で、私は春の某日にいわき湯本温泉で泊まりながら、福島県浜通りで新設された震災や原子力災害に関する二つの常設展示施設を訪ねました。


いわき湯本温泉の旅館「古滝屋」の一室を改造して3月12日にオープンした「原子力災害考証館」。
宿泊客が減って使わなくなった部屋を転用したんだそうです。


お部屋の中央には、子供の靴や服、道具、そして劣化した写真などを、復元した瓦礫とともに展示しているのですが、これは福島第一原発傍の民家で被災した家族が、数年後に自分たちで捜索して見つけ出した娘さんの遺品とのこと。どうやら遺骨もその時に発見されたらしく、ご家族の気持ちを思うと言葉を失います。
また一角には東電へ賠償金請求する書類が積まれているのですが、その分厚さ、複雑さ、難しさ、難解さを目にして、思わずため息が出てしまいました。
この他、室内にはたくさんの関連書籍が置かれており、手に取って目にすることができます。余計な説明を敢えてしない代わりに、自分で見て手に取ってもらうことで訪問者に考えてもらおうという意図だと思われます。改めて自分の不勉強を痛感し猛省したのでした。

私は以前、熊本県水俣市の民間施設「相思館」を訪ねたことがあり、この部屋の展示を見学した時には「相思館」と非常に似た感覚を覚えたのですが、それもそのはず、この展示を設けたお宿のオーナーさんは「相思館」に影響を受けて今回オープンさせたのだそうで、お部屋も、展示物の一つ一つも、たしかに小さいかもしれませんが、被害者や生活者の側に立脚しており、見る人の心に訴えかける力がとても強く、被災者の声や心が如実に伝わってくるのです。そして女の子の遺品が、女の子の寂しさ、悲しさ、そして親の無念さ、怒り、やるせなさ、国や東電に対する怒り、理不尽さ、無理解を端的に示しているようでした。更には多くの被災者の心情(亡くなった方の気持ちを含め)を代弁する象徴的な存在でもあるのでしょう。


続いて、常磐線で湯本から北上し、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」へ。
さすがに公的な施設だけあって、大きく見やすく、分かりやすく、館内で説明してくださるスタッフの方も親切にかつ心を込めてお話ししてくださいました。開館当初は東電や国に対する批判はご法度だとか箝口令が敷かれているとか展示は撮影禁止だとか、いろいろな締め付けがあったらしく、方々から批判されていましたが、私が訪ねた時にはそのような締め付けは緩くなっており、撮影も可能でしたし、批判が許されないような雰囲気でも無かったような気がします。しかし・・・


原発立地を象徴するこの看板を、何の説明も無いまま建物の裏手にひっそりと置いているところに、当施設の姿勢が端的に表れています。確かに縛りは弱くなったのかもしれませんが、でもやっぱり全方位外交的であり、感情的なものは排除され、どのような立場で来館者に訴えたいのかわからず、玉虫色な決着を目指そうとしているような雰囲気を感じずにはいられません。公的機関なので致し方無いのかもしれませんが、「原子力災害考証館」を見学した私には、何だかモヤモヤした感情が残ったのでした。

以前私は水俣病のことを深く知るため、水俣を訪ねたことがあります。上述した民間施設「相思館」は水俣病の患者の立場で細かく展示しており、一方で水俣市立の「水俣病資料」は綺麗で分かりやすいが心情的なものが伝わってこない、という両者の違いを実感したのですが、今回福島浜通りでオープンした二つの展示施設に関しても全く同じ感想を抱きました。とはいえ、どちらかについて良し悪しを評価するつもりはなく、寧ろ両方を訪問し、そこで見て感じて、自分なりの考えを持つことが大切なのでしょう。


「東日本大震災・原子力災害伝承館」見学後は、周辺を散歩。他の被災地では既に撤去されているようなものも、ここではまだ残っているんですね。まるで時計の針が止まっているかのよう。

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以上、今年一年を振り返りました。

新年は果たして再び自由な旅をすることができるようになるのか。あるいは進展が無いままなのか。
どうなることやら見当がつきませんが、ともかく、本年も拙ブログをご覧くださり誠にありがとうございました。
新年も宜しくお願い申し上げます。

コメント (6)
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横浜温泉チャレンジャー 惜別入浴

2021年12月24日 | 神奈川県
(2021年12月入浴)
私は温泉巡りを計画する際、行く機会に恵まれない遠方の温泉を優先するあまり、気軽に行ける距離の温泉はついつい後回しにしてしまうのですが、それが原因で首都圏の温泉には疎く、閉館の情報に気づかないこともしばしば。今回取り上げる「横浜温泉チャレンジャー」もその典型。十年以上前に一度行ったきり久しくご無沙汰で、いつか再訪しようと思いながらも後回しを繰り返していたら、なんと2021年12月末を以て閉館してしまうという残念なお知らせを耳にしたので、時間を作り慌てて惜別入浴へ行ってまいりました。


若葉台団地のエントランスゲートとでも称すべき、大貫谷戸水路橋を潜って現地へ向かいます。


若葉台団地からちょっと外れた、昔からの谷戸地形らしい細い坂道や雑木林、そして沢筋が残る一角に今回の目的地があります。


「横浜温泉チャレンジャー」という温泉施設名には以前から謎めいたものや違和感を覚えていました。まずチャレンジャーとは何に挑戦しているのかしら。どんなことをチャレンジしているのかしら。そして確かに当地は横浜市だけれども、いわゆる港町横浜の中心部からは相当離れた横浜市の端っこの丘陵地帯にあたるので、横浜温泉と言い切ってしまうのは若干無理がなかろうか・・・なんて余計なことを考えていたのですが、いざ閉館してしまうと聞けばそんな重箱の隅をつつくような愚問はどうでも良く、ただひたすら残念な思いと、今まで訪問を後回しにしていたことに対する後悔の念に駆られるばかりです。


駐車場に車を停めて、玄関から中へお邪魔します。


エントランスの外側には、閉館のお知らせとその理由が張り出されていました。新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少し、毎月の赤字が膨らんで事業継続が困難になってしまったそうです。


下足箱に靴を入れ、右手にある券売機で料金を支払って、反対側の受付カウンターへ券を差し出します。玄関の右手は食堂兼休憩スペースとなっており、お風呂は左側へと進みます。館内はふた昔前のクリニックや保健所みたいな雰囲気なので、温泉に来たのか、あるいは体調を診てもらうのか、私の訪問目的が一瞬わからなくなってしまいました。

(更衣室から先の画像はございませんので、以下文章のみで紹介いたします)

更衣室は明るいものの全体的に古く、壁紙や天井がくすんでいたり、エアコンの化粧パネルがガムテープで補修されていたりと、随所に経営でご苦労されている形跡が見て取れます。なお他の温浴施設とちょっと異なる点として注意を要するのが、下足箱の鍵が脱衣室のロッカーキーを兼ねていることです。一応館内には説明があるのですが、注意書きの掲示箇所が少なく且つ小さいので、そのことを知らないと初回訪問時はどのロッカーを使って良いのか当惑するでしょう。自分の靴を預けた下足箱の鍵で、下足箱と同じ番号のロッカーを開閉するのです。それゆえ更衣室のロッカーには鍵が刺さっていません。

さてお風呂へまいりましょう。
浴室のドアを開けた瞬間、この温泉独特のアブラ臭がプンと鼻孔を刺激してくれます。神奈川県東部ですので化石海水型の温泉は珍しくありませんが、まさかハッキリとしたアブラ臭がこの地で嗅げるとは思わず、とても感動してしまいました。アブラ臭に中毒的な愛好心を有する一部の温泉マニアでしたらこの「芳香」に歓喜の涙を流すこと間違いありません。 

浴室は左右に細長い造りをしており、向かって正面の壁には富士山の絵が描かれているのですが、ところどころ剥げていて、少々草臥れている感じです。横に細長い造りに合わせる形で、洗い場も左右に分かれており、シャワー付きカランは右手の壁沿いに4基、その背面の島に計6基、入口左側の壁沿いに4基の計14基設けられています。洗い場の各ブース(シャワー)の上には照明が取付られているのですが、その一部は腐食してしまったのか取り外されており、撤去跡が補修されない上、配線が剥き出しになっていました。先程の更衣室も同様でしたが、交換や修繕する費用を工面できなかったのでしょうね。ご事情お察し申し上げます。
なお出入口のすぐ右手にはぬるい掛け湯があり、蛇口から出ているのは紛れもない放流式の源泉かと思われます(味も匂いも強かったように感じられました)。

富士山の壁絵の真下に、これまた横長の浴槽が設けられています。私の目測で幅約6~7メートル、奥行2メートル程でしょうか。それを4:3程度に分けていて、窓側の槽ではジェットバスが稼働している一方、片方は特にこれといった仕掛けが無い普通の浴槽なので静かに入浴できます。この両浴槽の間に両者の間の壁面に木枠の湯口があり、間歇的にお湯がボコボコと出てくるのですが、お湯が源泉そのままなのか、あるいは循環された湯なのか、その辺りはよくわかりませんでした(鈍感ですいません)。なお、この横長浴槽の他、右奥には4人サイズの寝湯もあり、こちらにも温泉が張られています。
また、屋外へ出る扉を開けると、露天風呂があるのかと思いきや、浴槽らしきものはどこにも無く、あるのは所謂バルコニーで、椅子が6脚ほど置かれてクールダウンスペースになっています。

さてこちらの温泉のお湯は、上述のようなアブラ臭が特徴的で、版画インクを思わせる独特の匂いが湯口から放たれて室内を漂っています。湯口から出てくるお湯は無色透明のように見えますが、浴槽では淡い鼈甲色を帯びている気がします。口に含むと塩味が強く、またほのかに苦みもあり、いかにも化石海水らしい特徴を有していますが、千葉県東葛や埼玉県東部などのような著しい塩辛さは無く、金気もほとんど感じられません。湯口のお湯は塩味もアブラ臭もしっかりしているのですが、浴槽では味も匂いも弱まっているので、湯口で源泉を投入した後、循環の過程で加水されるのかもしれませんね。とはいえ溶存物質8543mgという濃さを誇る食塩泉だけあり、湯船に浸かるとツルスベの滑らかな感じと引っ掛かる浴感が拮抗し、力強く火照って、湯上り後も長い時間にわたって温浴効果が続きます。加水加温循環ろ過消毒という掛け流しとは程遠い湯使いですが、丘陵地の中で湧く温泉とは思えないほどとても面白い個性を持つ曲者の温泉ですので、閉館によってもう入れなくなるのかと思うと、残念でなりません。




こちらは駐車場に隣接している源泉施設です。閉館後はどうなってしまうのでしょうか。

閉館まで1週間ほどありますので、お近くの方は惜別入浴してはいかがでしょうか。

横浜温泉
ナトリウム-塩化物温泉 44.0℃ pH7.6 57L/min(動力揚湯) 溶存物質8543mg/kg 成分総計8857mg/kg
Na+:3110mg(91.59mval%), Ca++:140mg(4.65mval%),
Cl-:4780mg(95.51mval%), Br-:18mg, HCO3-:373mg(4.33mval%),
H2SiO3:102mg, HBO2:196mg,
(2019年10月25日)
加水あり(入浴に適した温度に保つため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環ろ過あり(衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため。次亜塩素酸ナトリウム溶液自動注入)

神奈川県横浜市旭区上川井町2287
045-922-5590
ホームページ

9:00~20:00
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
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東北温泉 家族風呂

2021年12月20日 | 青森県
(2020年11月)

東北地方で黒湯といえば、青森県東北町の「東北温泉」が有名ですね。東北地方にあるからではなく、上北郡東北町に位置しているからこの名前を名乗っているんだと思いますが、それはともかく、この「東北温泉」にも家族風呂があるので、利用することにしました。


家族風呂の料金は、近隣の入浴施設と同様に受付カウンターで直接支払っても良いのですが、大衆浴場の料金と同じ券売機で支払い、その券をカウンターに差し出しても構いません。訪問時に家族風呂が空いていると、受付のおばちゃんがその空室に行って準備をしてくれます。そして入室が可能になるち、ドライヤーを貸してくれます。


今回案内されたのは「松の間」という受付カウンターに最も近い位置にある個室です。


中のお部屋にはソファーが置かれ、トイレや洗面台、テレビやエアコンが設置されていますし、部屋自体もそこそこの広さが確保されているので、ここで泊まれそうな感じです。


洗面台の前を通り過ぎると・・・


あらあら、綺麗でゆとりのあるお風呂じゃないですか。


洗い場にはシャワーが一つ取り付けられています。なおシャワーから出てくるお湯は非温泉で、水道か井戸水の沸かし湯かと思われます。


「松の間」に据え付けられているバスタブは信楽焼で作られた立派なもので、結構お金がかかっているのではないでしょうか。一人か二人は入れそうな大きさがあり、内側の形状が体の曲線にフィットし、しかも肌触りが良好なので、心地よく湯あみできました。

窓の外には小さな庭があり、ややもすれば露天風呂っぽく見えますが、でも外に出られるわけではありません。でも窓を開けるとちょっとした露天風呂気分を味わえ、訪問日は窓から外を見上げると紅葉が綺麗に色づいていました。


温泉は湯口から絶え間なく滔々と投入されており、私が入る前から既にオーバーフローしています。この湯船へお肉たっぷりの私の肉体が入るとどうなっちゃうんだろう・・・。ワクワクドキドキしながらゆっくり足から湯船へ我が身を沈めていくと、私の体積に応じた分のお湯がザバーッという大きな音を浴室内に轟かせながら勢いよく豪快に溢れ出ていきました。

なお、私が湯船へ入る前の湯面には白い気泡がたくさん浮かんでいたのですが、肥えた私の体によって溢れ出た大量のお湯とともに、その気泡も一気に流れ出てしまい、入浴中の肌に泡が付くことはありませんでした。というか、そもそもこのお湯の気泡は体に付くようなものではないのかもしれません。

最後にこの温泉のお湯に関するインプレッションを述べることと致します。東北温泉のファンの方には無礼を承知で申し上げますと、以前大浴場に入った時、ここの黒湯は大したことないように思えたんです。と申しますのも、東京の城南地区や神奈川県東部など黒湯の宝庫が私の生活圏でもありますので、黒湯は決して珍しいものではなく、正直なところここより濃い黒湯に何度も入っていたので、確かに良いお湯だけれどもそこまで称賛するほどの黒湯かしら、と少々冷めた捉え方をしていました。
しかしながら今回家族風呂に入ってその捉え方を改め、しっかり良いお湯であることであることを確認させていただきました。典型的なモール泉らしいツルツルスベスベの滑らかな浴感がしっかりしているのみならず、湯口ではしっかりとモール臭が香り、またタマゴを思わせるような匂いもふんわりと嗅ぎ取れ、お湯を口に含むと清涼感を伴う苦味とモール風味がしっかり感じられ、湯加減は快適でしかも常時大量かけ流しという贅沢な湯使いを実践しているのですから、やはり良泉であることに疑いの余地はないのです。むしろ時間を忘れていつまでも入り続けたくなる心地よさがあり、1時間という時間制限を恨めしく思ったほどです。あぁ私の生活圏にこんな素敵な温泉があったら毎日でも通ってしまうのになぁ。


上笹橋温泉(再)
単純温泉 47.5℃ pH8.4 400L/min 溶存物質0.5917g/kg 成分総計0.5917g/kg
Na+:118.6mg(93.31mval%),
Cl-:136.1mg(66.67mval%), HCO3-:73.3mg(20.83mval%), CO3--:12.0mg,
H2SiO3:180.9mg, HBO2:46.6mg,
(2007年2月20日)

青森県上北郡東北町字上笹橋21-18 
0175-63-3715
ホームページ

5:30~22:30
330円
100円リターン式ロッカー・ドライヤーあり、
家族風呂1300円/1時間(大人4人まで)。

私の好み:★★★

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すもも沢温泉郷 新館

2021年12月11日 | 青森県
(2020年11月訪問)

三八上北エリア屈指の名湯と言っても過言ではない「すもも沢温泉郷」にまた来ちゃいました。このブログで紹介するのは何度目になるのかな。


これまでの拙ブログの記事では左側の建物と家族風呂を取り上げてきましたが、2019年頃に増設する形で右側の新館をオープンさせ、新館と旧館、そして家族風呂という3つのお風呂が楽しめる充実した温泉施設へと成長していたのでした。私はまだ新しい方に入ったことがなかったため、今回は新館を利用させていただきます。


新館は外壁が黒っぽいので一目瞭然ですね。


受付は旧館同様に無人のことが多いのですが、どうせ無人だろうと思って尋ねると、時たまおばちゃんが番台に座っていたりするので、軽くビックリします。この時は無人でしたので、番台に湯銭の300円を置いて脱衣室へと入りました。番台の左側は女湯で、右側が男湯です。 無人の番台と同様、プレハブ小屋をきれいにした脱衣室も旧館と大して変わらない感じがします。


浴室も基本的には旧館と似たような質素な設えで、このシンプルな感じがたまらなく良いのです。室内に入ると朦々と立ち込める湯気といっしょに優しいモール臭に包まれますので、モール泉が大好きな私としては至福のひと時です。床はコンクリ打ちっぱなしなのですが、壁など浴室内は暗めの色調で統一されているためシックで落ち着いた雰囲気です。


洗い場にはシャワー付きカランが計8か所設けられ・・・


旧館と同様にカランのお湯は100%源泉です。頭からシャワーを浴びてモール臭が漂うツルスベ湯を被ると、とっても幸せな心地に浸れるのですが、そんな心境になるのは決して私だけではないはずです。


浴槽は2分割されていて、手前側はややぬるく、奥が熱め(源泉そのままの温度)となっています。いずれも1.8m×2.4mほどの大きさで、床と同様に浴槽はコンクリ打ちっぱなしなので、そこだけ見るとすっぽんの養殖池を彷彿としてしまうのですが、さすがに人間様が浸かる湯船をすっぽんと同じにしてはいけないからか、縁には木材が用いられており、見た目に優しい温もりをもたらしています。


湯口は両方の浴槽に設けられているのですが、訪問時は手前側のぬるい浴槽への供給が止まっており、奥の熱い湯船のみに温泉が注がれていて、一旦熱い湯船にお湯が全量張られた後、仕切りの上を越えてぬるい浴槽へ流れているようでした。


人がな入らなくても常時惜しげもなく豪快にお湯があふれ出ています。相変わらず湯量豊富ですね。惚れ惚れしちゃいます。


お湯は淡い琥珀色の透明で、ほろ苦みを有しモール臭が感じられます。シャワーを浴びた時も同じですが、湯船に入ってもツルツルスベスべの滑らかな浴感が大変強く、うなぎ湯一歩手前と申し上げても差し支えないかと思います。しかも湯船の中では全身にびっしりと気泡が付着してきます。これは嬉しい! 新鮮なお湯が贅沢にかけ流され、しかも長湯にもってこいの絶妙な湯加減に維持されているので、時間を忘れていつまでも入浴していたくなり、一度入ると帰りたくなくなります。極上の名湯であることを改めて確認しました。


館内表示によれば新館のお風呂は塩素が投入されているそうですが、敢えて意識しなければ気づかないと思います。なおシャワーのお湯は塩素入っていません。


アルカリ性単純温泉 41.7℃ pH8.55 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質0.352g/kg 成分総計0.352g/kg
Na+:61.4mg(96.74mval%),
Cl-:37.2mg(38.04mval%), HCO3-:61.7mg(36.60mval%), CO3--:12.0mg(14.49mval%),
H2SiO3:162.2mg,
(平成27年12月16日)

青森県上北郡七戸町大字李沢字道ノ下22-1 

4:00~21:30
300円(家族風呂1000円/1時間)
ドライヤーあり

私の好み:★★★
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板子塚温泉 スパウッド観光ホテル

2021年12月04日 | 青森県

(2020年11月訪問)
前回に引き続き青森県下北半島の温泉を巡ります。前回記事で取り上げた下風呂温泉は、斧のような形をした下北半島の斧刃の上辺に位置していますが、今回訪ねる「スパウッド観光ホテル」は斧刃の下辺に当たる陸奥湾岸の旧川内町にあり、町の中心部から県道46号線「かもしかライン」でちょっぴり山側へ入ってゆくと、上画像の大きな建物にたどり着きます。さすが林業会社が運営しているだけあり、ご当地特産のヒバ材を多用した立派な建物です。


建物の中は吹き抜けになっており、外観同様に館内もヒバ材が多用されています。私が訪ねたのはちょうどお昼時だったのですが、この吹き抜けの館内には美味しそうな匂いが漂っており、どうしたものかとその発生源の方を見てみますと、1階の食堂でお客さん達がランチを召し上がっていらっしゃいました。お風呂に入らず食堂のみの利用も多いようです。なおこちらでは宿泊もできますが、今回私は日帰り入浴利用で伺いました。


湯銭を支払い、通路を進んで浴場へ。
こちらの施設には浴場が2種類あり、片方には露天風呂があって他方には無いそうです。一週間ごとに男女の暖簾を入れ替えているそうで、訪問時には右側のお風呂に男湯の暖簾がかかっていました。さて、この右側のお風呂に露天風呂は付いているのでしょうか。


脱衣室は綺麗にお手入れされており、ロッカーや洗面台、エアコンなども完備されていて、気持ちよく使えました。なおこの室内に掲示されている表示によれば、温泉はかけ流しであるものの、高温のために加水されているとのことです。


残念ながら右側のお風呂に露天風呂は付帯していませんでした。浴室内にはシャワー付きカランが並ぶ洗い場の他、大小1つずつの温泉浴槽、サウナ、そして水風呂などが配置されています。
小さな浴槽は2~3人サイズで、かなり熱めの湯加減となっている一方、大きな浴槽は10人以上は入れそうなキャパを擁し、湯加減は入りやすい適温が維持されていました。両浴槽ともタイル張りながら、縁にはヒバ材が使われ、見た目に優しく温かな印象をもたらしています。大きな浴槽ではジェットバスが稼働しており、常連さんが次から次に気泡を腰や肩に当てて疲れを癒していました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ながら、硫酸塩泉的な薬味感と少々の引っ掛かり浴感が得られます。分析表によれば、湧出時の知覚的特徴として「微白色透明・微塩味微渋味無臭」、試験室においては「微課褐色透明・微渋味無臭」と記載されており、どうやら源泉のお湯は何かしらの色を呈しているらしいのですが、浴場の手前でろ過した上で浴槽へ供給しているんだそうです。温泉マニア的には源泉そのままのお湯に是非入ってみたいものですが、このお風呂を銭湯代わりに使う地元の常連さんにとっては、色付きのお湯より透明なお湯の方が使い勝手が良いでしょうから、一見の客より常連を重視するのはごく自然なことでしょう。上述したようにろ過したお湯に加水した上で2つの浴槽へ供給しているのですが、私個人としては熱い小さな浴槽の方がお湯の状態が良いように感じられました(あくまで個人的感想です)。

常連さんが続々やってきては、汗を流して湯船に入り、気持ちよさそうな表情を浮かべていました。地元の方にとっては銭湯のような感じで愛されている施設なんですね。次回訪問時は露天風呂がある方にも入ってみたいものです。


ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 52.9℃ pH7.20 513L/min(動力掘削) 溶存物質4.130g/kg 成分総計4.177g/kg
Na+1030mg(72.35mval%), Ca++:234.2mg(18.88mval%),
Cl-:563.1mg(26.87mval%), SO4--:1918mg(67.58mval%), HCO3-:195.0mg(5.41mval%),
H2SiO3:59.4mg, HBO2:46.0mg, CO2:46.4mg,
(平成26年4月25日)

青森県むつ市川内町板子塚28
0175-42-3333
ホームページ

日帰り入浴6:00~22:00
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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