温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯の越温泉 湯の越の宿

2016年05月31日 | 秋田県
※2020年4月より休業中。

 
以前に拙ブログで秋田県五城目町の湯の越温泉が良かったというコメントを頂戴したことがありましたので、昨年の某日に「湯の越の宿」へ立ち寄り、日帰り入浴することにしました。集落の奥に佇むこの一軒宿は、山の斜面に沿って建てられており、整地された段々の土地の上に各施設が並んでいます。



宿の本棟へ向かう上り坂のアプローチの入口には、巨大なコンクリタンクと思しき構造物と、「湯の元」とかかれた犬小屋サイズの小屋が設置されていたのですが、これって文字通り源泉(そして貯湯タンク)なのかな。


 
玄関の下足場に置かれている小さな券売機で湯銭を支払い、帳場を回り込むような感じで右手に入って、館内の廊下を進みます。玄関ホールは木工品が多く、ウッディーでぬくもりのある美しい空間です。


 
館内の廊下はフローリング。廊下を進んで行くと、途中に休憩用のスペースが数ヶ所用意されており、私も湯上がりに自販機で冷たいドリンクを買い、切り株のような腰掛けに座って、ひと休みさせていただきました。なお座敷もありますが、別途利用料金を要するようです。


 

廊下の突き当たりに紺と紅の暖簾が掛かっていました。紺の暖簾を潜って脱衣室に入ると、広い室内には左右に棚と籠が備え付けられており、壁に取り付けられた扇風機がブンブン回っていました。室内にはお湯に関する説明が掲示されており、これによれば、こちらのお湯は地下600mから湧き出ている100%天然のイオウ温泉で、源泉温度は45.7℃ですが湯船では42~3℃に保たれており、小浴槽では38~9℃、お湯を沸かしたり追い炊きなどしない「清潔な流れ湯方式」である、とのこと。ほほぅ、お湯には自信をお持ちのようですね。では実際に浴場へ入ってお湯と対峙させていただきましょう。


 
天井が高くて広々としている浴室は、大きな窓から陽光が降り注いでいるため、明るく清々しくて開放感があります。窓の外には池や潅木などがあしらわれ、周囲の緑を借景にしており、全体的に日本庭園のような趣きです。また浴室内の床や側壁の腰部までには十和田石が採用されており、裸足で歩いた時の感触も良好です。入室した瞬間、イオウの湯の香がぷんと漂ってきました。思わずお湯に期待しちゃいます。


 
洗い場にはシャワー付きカランが6基取り付けられており、それらと並んでサウナや水風呂も設けられていました。この水風呂は、サウナに入らずとも、湯船で火照った体のクールダウンにも最適。実際に私もこの水風呂で体を冷やしましたが、めちゃくちゃ爽快でしたよ。


 
脱衣室に掲示されていた説明書きでも述べられていたように、浴槽は2つに分かれています。大きな窓の真下に堂々と構えている大きな浴槽は、(目測で)2m強×5mの四角形で、御影石と思しき石材で拵えられています。お湯は右奥にある湯口からチョロチョロと注がれている他、浴槽中央の底面から泡とともにボコッボコッとお湯が上がっていました。前者の湯口はあくまで装飾的なものであって、お湯投入の主役は後者が担っているものと思われます。
イオウのコロイドによってお湯に濁りがもたらされるため、その日のコンディションによって濁り方が異なるようですが、私が訪れた時、大きな湯船に張られているお湯の色は、メロンカルピスのような緑色掛かった白濁を呈していました。


 
大きな浴槽の左側には、2m強四方の小さな浴槽が据えられており、そのサイズは大体4~5人といったところ。お湯は全量が大きな浴槽から流れ込んでおり、切り欠けからお湯が排出されていました。湯尻であるため、大きな浴槽より温度が低く、しかも空気に触れている時間も長いためか白濁の度合いも強くなっており、グリーンを帯びていた大浴槽とは異なり、こちらのお湯は灰色に傾いた強い白濁となっていました。そして湯中では硫化物と思しき黒い破片がチラホラ浮遊していました。
湯面からは広い浴室内を充満させるほどの硫化水素臭が放たれており、その匂いを細かく分析してみますと、いわゆるタマゴ臭の他、弱いながらもツーンとくる火山ガス臭、そして鉱物油のような匂いがミックスされているように思われます。お湯を口に含むと、弱塩味、タマゴ味、ほろ苦み、そして甘味を伴う石膏味が感じられます。湯船の中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感がはっきりと肌に伝わり、かなり印象的なフィーリングとして記憶に刻まれたのですが、分析書によれば炭酸イオンが48.9mgと結構多く含まれているので、これがツルスベ浴感にひと役買っているのかもしれません。そんな屁理屈はともかく、この界隈で白濁のイオウ湯は珍しいので、それだけでも十分に訪れる価値はあるかと思います。木のぬくもりに抱かれながら、ゆとりある空間でイオウの白濁湯に浸かることができる、とても素敵なお風呂でした。


松橋2号
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 35.1℃ pH7.6 溶存物質2.6735g/kg
Na+:874.2mg(97.24mval%),
Cl-:918.2mg(65.35mval%), Br-:2.8mg, I-:0.8mg, HS-:5.6mg, S2O3--:1.0mg, HCO3-:697.1mg(28.82mval%), CO3--:48.9mg,
H2SiO3:68.9mg, CO2:48.9mg, H2S:1.6mg,
(平成25年8月6日)
加温あり(入浴に適した温度を保つため、気温の低い期間のみ加温)
消毒あり(衛生管理のため、塩素系薬剤を使用)

秋田県南秋田郡五城目町内川浅見内後田125-5  地図
018-854-2683
ホームページ

※2020年4月より休業中。
日帰り入浴時間はホームページ等でご確認ください
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (8)
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おおだて温泉 ロイヤルホテル大館

2016年05月29日 | 秋田県
 
秋田県大館駅の至近に建つ「ロイヤルホテル大館」で一泊しました。1980年に竣工した7階建てのこのホテルは、一見してわかるように、ごく普通のビジネスホテルなのですが…



高架で支持されている増設部分の出っ張りに展望浴室があり、なんと放流式の温泉に入れるんですね。でも日帰り入浴は受け付けていないため、ここのお湯に入るには宿泊しなければなりません。ということで、今回宿泊したのでした。


 
本館の上層階にあるエレベーターホールから北の方角を眺望しますと、目下には廃止後に完全撤去された小坂線大館駅跡の空き地が広がっており、廃線された線路の跡がJR奥羽本線へ合流してゆく筋道もはっきりと見ることができました。そして、その向こう側には、JR大館駅とその構内も左右に伸びており、線路の上ではEH500形機関車に牽引されているコンテナ貨物列車が停車していました。


 
さて、お風呂へと参りましょう。エレベータで5階に行き、客室が並ぶ廊下を進んでいって、突き当たりを左へ折れると、増設された棟続きの浴場棟へ繋がります。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつあり、男女区分は固定されています(時間や日による入れ替えは無いようです)。建物自体はそこそこ古いのですが、内部はしっかり改修されており、脱衣室は現代的な内装にリニューアルされ、とても綺麗で使い勝手の良い状態が保たれていました。


 
このお風呂で特徴的なのは、脱衣室の片隅に置かれた小さなメモです(上画像)。説明によれば、浴場のお湯は温泉を用いているため入湯税の課税対象になっている、よって入湯者数を把握するため、入湯の際は備え付け用紙に記入の上、箱に投入してほしい、とのことでした。なるほど、温泉に入る客は宿泊施設を通じて各市区町村に入湯税を納めるわけですが、ビジネスホテルの宿泊客全てが温泉を利用するわけではないので、あえてこのようなスタイルを採用しているのでしょう。温泉宿泊施設のほとんどは、実際の温泉入浴の有無にかかわらず宿泊客から無条件で入湯税を徴収していますが、ビジネスホテルの利用客は必ずしも温泉入浴を目的としているわけではないため、このような手段をとらざるを得ないのでしょう。一見面倒に思えますが、実はお客さんに対して誠実であり、且つホテル側にとっても節税対策になっているわけですね。この説明文を読んでいると、ホテルオーナーと市税担当者との間で繰り広げられたであろう喧々諤々のやりとりが目に浮かびます(あれ? でもフロントでは入湯税を徴収されなかったぞ。ということは、宿泊料に入湯税が含まれているということか。それならば、入浴しなかった客の分の入湯税相当額は、ホテル側の利益になっちゃうのかな? 考えすぎると寝られなくなっちゃうから、ま、いいや…)。


 
浴室の造りは典型的なビジネスホテルの大浴場そのもの。大きな浴槽がひとつ、そして洗い場が設けられているだけで、至って実用的です。
洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでいました。


 
お風呂のレイアウトこそシンプルですが、高い高架の上に設けられたお風呂だけあり、浴室からの眺望はなかなかです。男湯の場合は北と東の2方向に窓が設けられており、大館市街のほか、大館の盆地を取り囲む周囲の山々も一望することができました。


 
浴槽は4m×1.5mほどの長方形で、全面タイル張りです。浴槽と接する低い位置に窓が嵌められているため、湯浴みしながら眺望を楽しめるのがこのお風呂の良いところ。外からの視線を気にする必要がない高い位置につくられたお風呂だからこそできる芸当ですね。


 
無色透明のお湯が張られた湯船の底では、窓からお湯へと差し込む陽光を受けて、タイルが黒光りしていました。なお底面にはステンレスの穴あき板が埋め込まれていましたが、特に吸引などの動きは確認できず、浴槽のお湯は窓下の溝へと排水されていました。純然たる放流式の湯使いです。また、この浴槽にはジェットバス装置も取り付けられているようですが、稼働していませんでした。私個人としては騒々しいお風呂が苦手なので、この時のように稼働していない方がありがたく思います。


 
東側の窓際に湯口が設けられているのですが、ここからお湯が出ることはなく、それと並んでいるステンレスの水栓から激熱のお湯がチョロチョロと注がれていました。熱いお湯を加水せずに適温まで抑えるため、投入量をかなり絞っているものと推測されます。それでも湯船のお湯はかなり熱く、私の体感で44~5℃はあったかと思います。実際に、あまりの熱さに湯浴みできず退散していったお客さんもいらっしゃいました。しかも加水できるような水栓が無いため、この温度より下げることはできないのです。お湯の質をキープしようとすると、湯加減の調整が難しくなり、湯加減を優先にすると加水の必要性に迫られる…。加水をするべきか、せざるべきか。このホテルのみならず、高温の温泉を使っている施設でしたら、どこでもこの「ハムレット」的な懊悩を抱えていらっしゃるに違いありません。でも泉質重視の私としては、敢えて安易に加水しない道を進んでいるこちらのホテルの方針を支持したいと思います。

お湯は無色透明でクリアに澄んでおり、微かな塩味と甘味を伴う弱い石膏味、そして石膏臭が感じられました。なお館内表示によれば塩素系薬剤を使用しているとのことですが、消毒臭は特に気になりませんでした。投入量が少ないのでお湯が鈍ってしまうのではないかと心配したくなりますが、ホテル宿泊者しか利用しておらず、しかも幸か不幸か、お湯が熱くて湯船に入れる人が少ないためか、意外にもお湯はクリアで綺麗な状態が維持されていました。湯船に浸かると、食塩泉的なツルスベ感と硫酸塩泉的な引っかかりが拮抗しており、熱い湯加減も相まって、体の芯から力強く温まります。そしてその熱さゆえ、入りしなは肌がピリッとしますが、ゆっくり肩まで浸かると、頭のてっぺんから足の先まで、心身がシャキッと冴えてくれます。湯上がりに客室へ戻って、冷蔵庫で冷やしておいた缶ビールを飲んだ時の美味さったら、もう言葉では言い表せません。本物の温泉だからこそ味わえるささやかな喜びです。大館で缶ビールが一番美味しく飲める温泉ホテルかもしれません。


おおだて温泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 56.9℃ pH未記載 溶存物質量未記載
Na+:821.9mg, Ca++:482.0mg,
Cl-:919.0mg, SO4--:1745.0mg, HCO3-:25.3mg,
(平成22年3月12日)
加水・加温・循環ろ過なし
消毒あり(衛生のため。次亜塩素酸ナトリウムを使用)

JR大館駅より徒歩4分
秋田県大館市中道1-2-26  地図
0186-49-4511
ホームページ

日帰り入浴不可(宿泊者のみ)

私の好み:★★
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雪沢温泉 大館市立老人福祉センター 四十八滝温泉

2016年05月28日 | 秋田県
 
秋田県大館市の雪沢温泉では、数軒の旅館や入浴施設が秋田県道2号線「樹海ライン」に沿ってそれぞれ間隔を空けて位置しており、ひとつひとつを見ると一軒宿のようにも思えますが、いずれも同じ源泉を引いているため、どこを利用しても同じお湯へ入ることになるわけです。でもせっかくなら全部の施設を訪れて雪沢温泉を制覇してみたい…。そんな願望に駆られた私は、昨年初夏の某日、大館へ向かう途中に当地へ立ち寄り、まだ訪問したことがなかった「四十八滝」へ行ってみることにしました。場所としては「清風荘」(訪問済ですが拙ブログでは未掲載)と「大雪」の中間に位置しており、県道やそれに並行して敷かれている旧小坂線(廃線)の線路が大きくカーブするところに看板が立っていますので、県道を走行していたら否が応でも存在に気づくはずです。


 
青い外装をした長くて古い平屋の建物は、温泉施設というより、昭和30年代の学校や病院を彷彿とさせる造りですが、それもそのはず、この建物は大館市の老人福祉施設なんですね。とはいえ、このブログで取り上げるくらいですから、老人でなく、市外の一般者でも館内の温泉浴場や休憩室の利用が可能です。
老人に福祉を施すべき建物そのものが相当くたびれており、年代を感じさせる玄関の前に立つと、老老介護という言葉が脳裏をよぎりました。


 
受付兼事務室の窓口前には券売機が設置されており、これで料金を支払い、券を目の前の窓口へ差し出します。



玄関を上がった事務室前には、休憩用のベンチや飲料自販機が設けられていました。


 
玄関や事務室がある一角から伸びる長い廊下は、昔懐かしい学校のようです。昭和の幼き頃にタイムスリップした気分でこの廊下をひたすら歩いてゆくと、突き当たりに浴場の暖簾がかかっていました。


 
脱衣室には棚・洗面台・ドライヤーなどひと通りの備品は用意されていますが、天井が低くスペースも限られており、古さと鄙びが随所から滲み出ていました。なお館内にロッカーは見当たらなかったので、貴重品は持参しない方が宜しいかと思います(防水袋を持参して浴室へ持ち込むのも一つの手です)。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつあるばかり。浴室はタイル張りで、男湯の場合は左側に浴槽がひとつ、そして右側に洗い場が配置されており、洗い場にはシャワー付きカランが7もしくは8基並んでいます。こちらのシャワーにはひとつひとつに小さな棚が取り付けられており、持参したお風呂道具を置いておくのに役立ちました。また浴槽と洗い場の間、ちょうど浴室の中央に当たる部分には排水用のグレーチングが埋め込まれており、この1本の溝によって、洗い場の排水と、浴槽のオーバーフローの両方を受ける合理的な構造になっていました。
ちなみに館内表示によれば、こちらのお風呂は完全掛け流しなんだとか。雪沢温泉の入浴施設はみんな掛け流しなんですね。


 
男湯の浴槽は上画像のようにカクカクした形状ですが、女湯の浴槽は女性の嫋やかさをイメージしているのか、丸い造りをしているんだそうです。浴室の壁や床と同じく、浴槽内部もタイル張りなのですが、浴槽の縁だけは十和田石を用いており、見た目のみならず感触面でもちょっとしたアクセントになっていました。また、浴槽へ入る箇所には段差の低いステップやハンドレールが設けられており、足元がおぼつかない老人でも安全に入浴できるような配慮がなされていました。

お湯は最奧の岩から注がれており、私が入室した時点ではその真上にある水道の蛇口から加水が行われていました。浴槽のキャパは5~6人といったところですが、そのキャパに十分見合うだけのお湯が供給されており、常時浴槽の縁からお湯がオーバーフローしていて、人が湯船に入ると勢いよくザバーッと溢れ出ていきました。
お湯は無色透明ですが、夕方の混雑時に利用したためか、今回ばかりは若干透明度に欠けていたような気がしました。こればかりはタイミングの問題ですから致し方ありません。湯口の岩にコップがあるので、それでお湯を飲んでみますと、いかにも雪沢温泉らしい(というか大館エリアの温泉らしい)石膏の味と匂いがしっかりと感じられます。湯口にて加水されていましたが、それでもかなり熱めの湯加減でしたから、この施設の本来のお客さんであるお年寄りが入浴したら、倒れないかちょっと心配になってしまいます。そんなお湯に肩まで体を沈めてみますと、湯中ではスルスルとした滑らかな浴感の中に硫酸塩泉らしい引っかかりが混在しており、それでいて体を優しく包んでくれるような柔らかい感触もあるため、熱くて逆上せそうになっても、後を引いてしまって、おいそれと湯船から出たくはなくなるような、良い意味で困ってしまうお湯でした。

私が訪れたのは夕方の6時頃。入室時は誰もいなかったのですが、数分後に後客が現れた途端、次々にお客さんがやってきて、遂には洗い場が全て埋まるほどの混雑にまで至りました。掛け流しの温泉に安い料金で入れるので、地元の方々から人気があるのでしょう。古くてシンプルですが、それゆえ温泉の持ち味をしっかりと味わうことができる、質実剛健なお風呂でした。


雪沢温泉源泉
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 50.4℃ pH8.0 溶存物質2507.7mg/kg 成分総計2509mg/kg
Na+:259.9mg(31.42mval%), Ca++:487.8mg(67.61mval%),
Cl-:63.0mg(4.92mval%), SO4--:1639mg(94.39mval%),
H2SiO3:35.1mg,
(平成24年8月1日)

JR大館駅より秋北バスの小坂線に乗り「四十八滝」バス停下車すぐ
秋田県大館市雪沢字大滝66  地図
0186-50-2031
紹介ページ(大館市公式サイト内)

6:00~20:00 第2・4月曜および大晦日と元日定休
230円
ドライヤーあり、他備品類なし

私の好み:★★
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新矢立温泉 大館矢立ハイツ

2016年05月26日 | 秋田県
峠という場所はその性質上、文学作品の舞台になりやすいので、特定の峠を通過するとそこに関連した作品を思い出される方も多いかと思います。北東北で温泉巡りをしていると、秋田青森県境の矢立峠を越える機会が多いのですが、私がこの峠を越すたびに思い出すのは、森鴎外の『渋江抽斎』、そしてイザベラ・バードの『日本奥地紀行』です。


森鴎外『渋江抽斎』は、その名の通り、江戸時代後期に津軽藩の江戸屋敷へ勤めていた渋江抽斎という医官・学者の生涯を追った伝記なのですが、作品全体の半分近くは抽斎の4番目の妻である五百(いお)に関する記述に割かれており、実質的には五百の一代記になっていると言っても過言ではありません。それだけ森鴎外は五百という女性の人物像に心が惹かれたのでしょうけど、たしかに文中で描かれている五百の生き様は大変魅力的であり、私個人としてはNHK朝の連ドラの題材として推奨したいほど、芯が強くてカッコイイのです。作中で最も有名なのは、江戸の渋江邸に怪しい男たちがやってきた際の一節。抽斎を騙して金をふんだくろうと企んでいたその男たちの存在に気づいた五百は、ちょうどその時に沐浴中だったにもかかわらず、腰巻をつけただけで裸のまま匕首を口にくわえ、熱湯を汲んだ桶を手にして緊迫の現場へ急行し、男たちに熱湯をかけ、匕首の鞘を抜いて「どろぼう」と声をあげて、怪しい男たちを追い払ったのでした。
抽斎がコレラで逝去した約10年後。明治の新政府発足に伴い津軽藩の武士たちが江戸藩邸を引き払って弘前へ退かねばならなくなった際、未亡人である五百は渋江家のリーダーとして、女手で一家を率い、江戸を脱出して弘前まで移動するはめになります。700km以上の長距離を歩いて旅するだけでも非常に大変なことなのに、当時の津軽藩関係者にとって、戊辰戦争真っ只中の東北各地は敵だらけですから、移動することすら難儀なのです。といいますのも、戊辰戦争の時、幕府側の会津や庄内を助けるべく、仙台・米沢・盛岡・長岡など東北や越後の各藩は奥羽越列藩同盟を組んで薩長土肥の新政府側と対立しますが、当時近衛家と姻戚関係にあった津軽藩は新政府側を敵に回すわけにはいかず、一旦加盟した奥羽越列藩同盟から抜け出て、新政府側へと寝返ったため、津軽の人間は、東北各地から怪しまれていたのです。五百一行は弘前までの長い道中で何度も尋問されるのですが、たとえば石橋(現在の栃木県下野市)で仙台藩士による誰何に際し、女は通すのに男は通さないという目に遭ったため、以後、自分の息子を女装するなどして、その都度一計を案じながら難局を切り抜けようとします。とにかく生きて弘前まで辿り着かなければならないという、生へのすさまじい執着が五百一行を北へ北へと向かわせ、身の安全のために敢えて険阻艱難な遠回りの道を選びながら、苦心の末、秋田県を北上し、ようやくたどり着いたのが矢立峠。ここを越えて碇ヶ関の関所を通過し、津軽藩領域に入れば、ようやく身の安全が確保されるのです。その時の様子を、森鴎外は次のように著しています。

さて矢立峠を踰え、四十八川を渡って、弘前へは往くのである。矢立峠の分水線が佐竹、津軽両家の領地界である。そこを少し下くだると、碇関という関があって番人が置いてある。番人は鑑札を検してから、始めて慇懃な詞を使うのである。人が雲表に聳ゆる岩木山を指ゆびさして、あれが津軽富士で、あの麓が弘前の城下だと教えた時、五百らは覚えず涙を翻こぼして喜んだそうである。
『渋江抽斎』  「その八十二」より抜粋)

津軽藩と南部藩は犬猿の仲でしたから、当時、津軽藩の人間が陸路で南から自藩領域へ入るには、南部藩領、現在の青森県県南地方(三八上北地方)を通るわけにはいかず、津軽と同じ新政府側だった秋田から入る他ありません。となれば、通るべき道は矢立峠(海岸沿いの大間越ですと遠回り)になります。矢立峠を越えて、行く手に聳える津軽の霊峰岩木山を目にした時、長い道中で辛酸を舐めつづけてきた労苦がようやく報われる、そう確信したんですね。五百一行にとって矢立峠は、艱難辛苦の長旅から解放される最後のハードル、安堵への入口だったわけです。



もうひとつ。明治初期にこの峠を越えたイギリス人女性イザベラ・バードの旅行記『日本奥地紀行』でも、この矢立峠は女史に特別な印象を与えているようです。彼女は明治11年に横浜を経って東北地方を北上し、北海道へ渡ってアイヌの文化についてこまかく研究するのですが、その旅の途中で矢立峠を越えています。峠に関して、このように記述しています。

杉の深い森におおわれた暗くて高い山の峰が私たちの前に立ちふさがってくると、私たちは新しい道路に出た。馬車も通れる広い道路で、りっぱな橋を渡って二つの峡谷を横切ると、すばらしい森の奥へ入って行く。ゆるやかな勾配の長いジグザグ道を登って矢立峠に出る。この頂上にはりっぱな方尖塔(オベリスク)がある。これは砂岩を深く切ったもので、秋田県と青森県の県境を示す。これは日本にしてはすばらしい道路である。傾斜をうまくゆるやかにして築き上げ、旅行者が休息するための丸太の腰掛も便利な間隔で置いてある。この道路を造るために発破をかけたり勾配をゆるやかにしたり、苦労の多い土木工事だったろうが、それも長さ四マイルだけで、両端からはあわれな馬道となっている。私は他の人々を残して、一人で峠の頂上まで歩いて行き、反対側に下りた。そこはあざやかな桃色と緑色の岩石に発破をかけて造った道路で、水が滴り落ち光り輝いて見えた。私は日本で今まで見たどこ峠よりもこの峠を賞め讃えたい。光り輝く青空の下であるならば、もう一度この峠を見たいとさえ思う。この峠は(アルプス山中の)ブルーニッヒ峠(※)の最もすばらしいところとだいぶ似ており、ロッキー山脈の中のいくつかの峠を思わせるところがある。しかしいずれにもまさって樹木がすばらしい。孤独で、堂々としており、うす暗く厳かである。
平凡社ライブラリー『日本奥地紀行』高梨健吉訳 「第二十八信 青森県碇ケ関にて 8月2日」より抜粋)
(※)スイスのブリュニク峠を指しているものと思われます。

参考までに、英語の原文は以下の通りです。
Happily there was not much of this exhausting work, for, just as higher and darker ranges, densely wooded with cryptomeria, began to close us in, we emerged upon a fine new road, broad enough for a carriage, which, after crossing two ravines on fine bridges, plunges into the depths of a magnificent forest, and then by a long series of fine zigzags of easy gradients ascends the pass of Yadate, on the top of which, in a deep sandstone cutting, is a handsome obelisk marking the boundary between Akita and Aomori ken. This is a marvellous road for Japan, it is so well graded and built up, and logs for travellers' rests are placed at convenient distances. Some very heavy work in grading and blasting has been done upon it, but there are only four miles of it, with wretched bridle tracks at each end. I left the others behind, and strolled on alone over the top of the pass and down the other side, where the road is blasted out of rock of a vivid pink and green colour, looking brilliant under the trickle of water. I admire this pass more than anything I have seen in Japan; I even long to see it again, but under a bright blue sky. It reminds me much of the finest part of the Brunig Pass, and something of some of the passes in the Rocky Mountains, but the trees are far finer than in either. It was lonely, stately, dark, solemn(以下省略)
""Unbeaten Tracks in Japan""(1885年版)より抜粋。出典は Project Gutenberg

イザベラ・バードは横浜から東北を縦断する過程で、各地の様々な風土に触れ、明治初期の日本の農村や庶民の姿を事細かにスケッチしています。彼女の筆は遠慮することなく、自身の感情に従ってストレートに表現しており、山形県の米沢界隈を桃源郷と絶賛する一方、いまでは有名な観光地となっているような場所でも舌鋒鋭くケチョンケチョンに貶していたりと、当時の日本の光と影を忌憚なく記録しているのですが、そんな辛口な彼女をして「日本で今まで見たどこ峠よりもこの峠を賞め讃えたい(I admire this pass more than anything I have seen in Japan)」と言わしめたものは、整備された道の状況もさることながら、あたりの山域に広がる樹林の美しさ、つまり秋田杉の美林なのであります。女史がこの峠を越えてから約140年が経っていますが、いまでも国道7号線の両側には秋田杉が美しく広がっていますので、峠を越えるたび、車のフロントガラスに映る美林を眺めながら、きっと彼女もおなじような美しさに心を奪われたのだろうな、と思いを巡らせてしまいます。



前置きがすっかり長くなってしまいました。閑話休題。温泉の話へ戻しましょう。
上記で紹介した2人の女性をはじめとして、数えきれないほど多くの人生を見届けてきたこの矢立峠は、皆様ご存知のように秋田青森両県の県境となっているわけですが、その境界線を目の前にした秋田県側に位置している「道の駅 やたて峠」には、温泉入浴が可能な宿泊施設が付帯しております。そこで今回は日帰り入浴で利用することにしました。


 
秋田青森県境の峠ですが、当地はギリギリのところで秋田県。正面玄関ホールには秋田を代表する味覚のひとつ、きりたんぽが巨大化してお客さんを出迎えていました。このきりたんぽの左手にはレストランなどいわゆる一般的な道の駅ゾーンが広がっており、右手は宿泊および入浴施設ゾーンとなっています。和の飾りで彩られているフロントの右脇には券売機が設置されていますので、それで料金を支払い、エレベーターで4階へと上がります。


 
エレベーターを4階で降りると、目の前の小さなホールはゲームコーナーとなっていました。ファミリーでの宿泊を想定しているのかな。そんなエレベーターホールから伸びる細長い渡り廊下を進んで、浴場へと向かいます。



廊下の先には湯上がり客向けの休憩室があり、その左手に2つの浴場が出入口を構えていました。2つの浴場はそれぞれ「天空の湯」および「かぐやの湯」とネーミングされており、浴室自体はシンメトリーな構造になっているのですが、単に名前が異なるだけでなく露天風呂の造りがかなり異なっているため、日によって男女入れ替えているようです。私が訪れた日は「かぐやの湯」が男湯になっていました。マッチョなお兄さんもハゲた爺さんも、みんなかぐや姫気分になるのかな。


 
さすが宿泊施設の大浴場だけあり、脱衣室は広く綺麗で、使い勝手良好です。エアコンも運転されているため、私が訪れた汗ばむ夏はもちろん、四季を通じて快適な環境が保たれているものと思われます。


 
脱衣室内に掲示されている浴場の構内図です。上述したようにこの日の男湯は「かぐやの湯」でしたが、この図によれば、もう一つの浴場(この日の女湯)である「天空の湯」に付帯している露天風呂は「かぐやの湯」よりも大きいんですね。残念…。宿泊すれば両方入れるんでしょうから、350円で日帰り入浴させていただいている身としては、己の運の悪さを恨むほか致し方ありません。


 
さて「かぐやの湯」の浴室へと参りましょう。浴室は広々としており、天井も高く、大きな窓から陽光も降り注いで、屋内ながらも開放感があります。後述するように温泉が赤く濁っているため、お湯がこびりつく床などを中心に浴室内は赤錆色に染まっており、窓の外に見える杉林の緑が湯船と補色関係になって、浴室内を覆い尽くす赤茶色が妙に映えていました。


 
浴室内にはL字形に洗い場が配置されており、カランが11基並んでいます。また出入口の脇にはサウナや水風呂も設けられていますので、サウナ好きの御仁も満足できるでしょう。



洗い場がL字形ならば内湯の浴槽もL字形。浴槽の両端からお湯がオーバーフローしており、溢れ出たお湯はグレーチングへと流下していました。湯船のお湯は赤みを帯びたオレンジ色に濃く濁っており、透明度はほとんどありません。そして浴槽の周りも同色で染まっていました。


 
隅っこにある石積みの湯口からお湯が注がれているのですが、上から投入口を覗くと、そこには透明なお湯が下からこんこんと上がっていました。源泉から湧出してここまで引かれてくる間は無色透明ですが、湯口で放出されて湯船で空気に触れた途端に、急激に酸化して赤錆色に濁るわけですね。


 
上述したように湯船のお湯は両端からグレーチングへオーバーフローしているのですが、人が湯船に入った時などは縁から洗い場へと溢れ出るので、そのお湯が流れる床は赤く染まるだけでなく、石灰によって千枚田状態になっていました。そういえば、矢立峠界隈の温泉では、「矢立温泉赤湯 アクト・バート矢立」(現在休業中)も同じような析出が表れていましたっけ。


 

「かぐやの湯」の露天風呂はウッドデッキの中央に浴槽が据えられており、周囲には秋田杉の美林が広がっていて、とても清々しい環境です。炭酸ガスを放つ温泉だからか、露天風呂の周囲には数匹のアブが飛び交っていましたが、それ以上にトンボの数が多く、そのトンボという天敵に捕食されてしまうためか、夏だというのにアブの数は意外にも少なかったように思われました。
内湯と同じく浴槽のお湯は濃いオレンジ色に濁っており、槽内の様子は全く目視できません。また、床よりかなり低い位置に湯面があるため、気をつけないと踏み外してしまいそうになります。このためウッドデッキには浴槽の深さに関する注意が掲示されていました。私も慣れないうちは高さの間隔が掴みにくかったため、念のために手摺をしっかり摑まりながら入浴しました。


 
焼けただれたように赤黒く染まる湯口からお湯が吐出されており、湯面には鉄バクテリアによる鉄の酸化皮膜が浮かんでいました。そして、お湯を口に含むと、はっきりとした塩味と強い鉄錆味、苦味、そして炭酸味が感じられ、湯面からは金気の匂いが放たれていました。湯使いは内湯・露天ともに放流式ですが、源泉温度が高いため、冬期以外は加水されているそうです。湯船に入ると、足・手・尻など浴槽内に触れた肌がオレンジ色に染まるのが面白いところ。ということは、湯上がりに体をタオルで拭うと、タオルが同色に染まってしまうので、ここで入浴する際は、できれば使い古しのタオルを持参した方が良いかと思います。湯中では滑らかなツルスベ浴感が得られ、湯上がりには強い温まりに包まれる、正真正銘の本格的な温泉です。温泉浴場が付帯している道の駅は全国各地にもありますが、わずか350円でこれだけ本格的な温泉に浸かれる施設は珍しいでしょうね。渋江五百一行が安堵を得た峠のすぐ傍で湧く温泉に浸かり、イザベラ・バードが感動した杉の美林を眺めながら出で湯で心身を癒される…。なんて素敵なお風呂なんでしょう。
矢立峠周辺は温泉資源に恵まれているにもかかわらず、各施設が次々に休業へ追い込まれていますから、道の駅として比較的安定している運営をこれからも続けていただいて、ぜひこの良いお湯を守っていただきたいものです。


ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 47.6℃ pH6.1 溶存物質7.91g/kg 成分総計8.365g/kg
Na+:1933mg(66.20mval%), Mg++:171.8mg(11.13mval%), Ca++:510.4mg(20.06mval%), Fe++:15.4mg, Fe+++:4.0mg,
Cl-:4550mg(93.79mval%), Br-:9.3mg, I-:0.5mg, HCO3-:505.8mg(6.06mval%),
H2SiO3:78.3mg, HBO2:29.8mg, CO2:457.2mg,
(平成19年10月25日)
夏期は加水あり(浴槽の温度調整のため)
加温・循環・消毒なし(ただし、日々の換水時に浴槽を塩素系薬剤で消毒)

秋田県大館市長走字陣場311  地図
0186-51-2311
ホームページ

日帰り入浴7:00~21:00
350円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (4)
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つがる市(旧木造町) しゃこちゃん温泉

2016年05月24日 | 青森県

つがる市の市役所前にある「しゃこちゃん温泉」は、地域の方々から愛されている公営の日帰り入浴専門施設です。風変わりな名前ですが、寿司のネタや北海道の半島の名前とは関係なく、市内(旧木造町)にある亀ヶ岡遺跡から発掘された遮光器土偶(縄文時代につくられた土偶の一種)に因み、遮光器を渾名っぽくして「しゃこちゃん」と名付けているわけです。



温泉施設名のみならず、平成の市町村合併が行われる以前の旧木造町時代には、竹下内閣時代のふるさと創生事業により、町の玄関口である木造駅の駅舎にも巨大なしゃこちゃんが設えられました。この駅舎はたまにテレビなどでも取り上げられるため、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。今回の記事を書くにあたって、自分で所有しているしゃこちゃん駅舎の画像を探したのですが、なぜか夜間に撮影したものしか見当たらなかったので、止むを得ずあまり写りの良くないこの画像をアップさせていただきました。夜の巨大「しゃこちゃん」はかなり不気味ですね。

さて話を温泉へ戻しますと、20年近い前のことですが、諸般の事情により私は津軽地方で日々を過ごしていたことがあり、その頃には毎月のようにこの「しゃこちゃん温泉」へ通っていました。しかし、当時は温泉に対してあまり興味がなかったため、どんなお湯でいかなる施設だったか、あまり考えずにその日の汗を流していました。
それ以来ここを訪れる機会がなく、どんなお風呂であったかすっかり忘れてしまったので、昨年初夏、久しぶりに再訪してみることにしたのです。

私が駐車場へ車をとめると、いかにも公営施設らしい大きな建物へ、次から次へと地域の老人が湯浴みのために入館しており、ここは本当に温泉施設なのか、もしかしたら老人ホームなのではないかと、自分の目を疑いたくなりました。
広々とした玄関ホールに設置されている券売機で料金を支払い、受付カウンターの上に置かれている箱に券を投入して、浴場へと向かいます。ホールの奥には食堂があり、広々としたロビーはお年寄りの憩いの場となっていました。


 
浴室入口には、浴槽によって温度設定が異なる旨が明示されていました。一応浴槽の用途に応じて湯加減を調整しているようですね。しかしながらどの浴槽でも、実際にはこれより若干熱かったような気がします。



天井が高くて広々としている浴室には、たくさんのカランの他、各種浴槽が据え付けられており、とても320円で利用できる施設だとは思えないほど充実しています。もし同じ広さとバラエティーの多さを有する入浴施設が首都圏にあったら、間違いなく700円以上の料金設定になるでしょう。公営とはいえ、この安さは素晴らしい。さすが温泉天国青森県は、施設の数や泉質のみならず、料金面でも他県より抜きん出ていますね。

洗い場は窓側の壁際を中心にして、数ヶ所に分かれて配置されており、計31基のシャワー付きカランが取り付けられています。


 

湯口から源泉のお湯が注がれておる大きな主浴槽には、部分的に泡風呂装置が設けられており、その勢いもあってか、縁から絶え間なくお湯が溢れ出ているので、入浴客の爺様たちは浴槽周りの広いスペースを活かし、トドを楽しんでいらっしゃいました。洗い場の床でもオーバーフローが流れる部分は、茶色い温泉成分が波紋のような形状を描いてこびりついていました。



主浴槽の手前側には、大空に浮かぶ雲を連想させるような、水色と白のマーブル模様が施されている円形の浴槽が設置されており、通常はジャグジーが稼働しているそうですが、私の訪問日には何も動いておらず、単なるぬるめの温泉槽と化していました。


 
浴室の奥には、熱いお湯の浴槽や打たせ湯、そしてサウナや水風呂など各種浴槽が並んでいます。熱い浴槽は加水を少なくしているのか、お湯の色が他の浴槽より濃く、そして本当に熱いんです。浴室入口の貼り紙には43℃±1℃と記されていましたが、私の体感ではもっと高かったように感じられました。
一方、サウナの前にある水風呂もちょっと変わり種。単なる冷水ではなく、飴色を帯びているのです。おそらく何かしらの成分を多く含んでいる冷鉱泉なのでしょうね。青森県の温泉銭湯では、こうした特徴的な鉱泉を用いている水風呂によく出くわすので、温泉槽のみならず、水風呂も要チェックなのであります。


 
浴室内をコの字形にぐるっと廻った最奥に位置しているのが、この岩風呂です。一見すると露天風呂のようですが、頭上にはガラス張りのとんがり屋根(四角錐)が載っかっており、露天ではなくサンルームのような造りです。隅っこの湯口から滔々とお湯が注がれ、手前側の縁からしっかり溢れ出ていました。この岩風呂を含め、各浴槽とも放流式の湯使いです。

お湯は紅茶のような色を帯びており、浴槽によって若干の差異はありますが、槽の底面が見えないほど濃い色を呈しています。お湯を口に含むとはっきりとした塩味や弱い出汁味が感じられ、湯面からはアブラ臭とヨード臭を足して2で割ったような匂いが放たれています。実際に浴室へ入った瞬間は、薄いながらもこの匂いを嗅ぎ取ることができました。湯船の中でははっきりとしたツルツルスベスベ浴感があり、その滑らかな感覚がとても気持ち良いので、ついつい長湯したくなるのですが、さすがに濃い食塩泉だけあって火照り方が強く、迂闊に長湯すると体力を奪われてバテてしまうかもしれません。私はバテなかったものの、汗がいつまで経っても止まらなかったため、上述した水風呂に入って、体をしっかり冷却した後、お風呂から上がりました。夏場の入浴は体力勝負になりそうですが、厳冬期には体の芯から温まる強力な味方になってくれるでしょう。五所川原周辺で湧出する温泉の特徴がよく現れているお湯でした。


若緑温泉
ナトリウム-塩化物温泉 48.1℃ pH7.6 溶存物質9.348g/kg 成分総計9.348g/kg
Na+:3281mg(95.87mval%), NH4+:11.2mg, Mg++:16.4mg, Ca++:21.4mg,
Cl-:4345mg(84.86mval%), I-:1.7mg, HCO3-:1328mg(15.08mval%),
H2SiO3:170.2mg, HBO2:49.5mg,
(平成27年3月26日)

JR五能線・木造駅より徒歩15分(1.3km)。もしくは五所川原駅より弘南バスの出来島行か南広森行で「しゃこちゃん温泉」下車すぐ。あるいは鯵ヶ沢行きに乗車し「つがる市役所前」で下車してもアクセス可能。
青森県つがる市木造若緑52  地図
0173-42-1277
紹介ページ(つがる市公式サイト内)

4月~9月→9:00~22:00、10月~3月→9:00~21:00 第2・4火曜および大晦日の午後と元日定休
320円
貴重品用ロッカーあり(受付前)・有料ドライヤーあり(10円/3分)、各種入浴グッズ販売あり、

私の好み:★★
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