蔵王温泉の下湯共同浴場の前に位置する「招仙閣」へ、湯めぐりこけしを利用して立ち寄り入浴してきました。なおこちらのお宿では現金300円でも入浴できるため、湯めぐりりこけし(1枚あたり400円)を利用するより現金支払いの方がお得です。玄関に入ると作務衣を着た従業員の方がとっても丁寧に接客してくださいました。入浴だけの利用って客単価が少ないので、利用する立場としてはしばしば「わずかなお金ですいません…」という心情になってしまうのですが、宿側で快く対応してくれると懸念が払拭されてホッと安心し、ついついそのお宿のファンになってしまうものです(現金なものですが…)。
お宿の名前に「こけしの宿」と冠されているように、玄関や廊下にはこけしがズラーーっと陳列されていました。こけし界の三十三間堂ですね。一瞥しただけではみな同じように見えるこけしも、よく見るとひとつひとつ表情が異なっていて、とても興味深いものですね。でも真っ暗い夜中にこれらのこけし達の前に立ったらちょっと怖いかも。
蔵王の中小規模旅館って、方向感覚を微妙に狂わせるような曲がり方をしたクネクネ廊下を持つお宿が多いような気がするのは私だけでしょうか。そんな廊下を案内に従ってひたすら進み、あれれ道に迷ったかな、と不安になりかけたところで、ようやく浴室に到着しました。男女別の内湯が一室ずつです。
脱衣所は壁にへばりついている棚があるだけの至ってシンプルな構造ですが、床は足元が快適なタイルカーペット敷きで、室内隅々までとても清潔に保たれています。清掃が行きとどいているのは旅館としての矜持なのでしょうね。
浴室に入った途端に思わず興奮。なぜなら、あたかも洪水の如くザーザー音を立てながら浴槽からお湯が溢れ出ていたからです。お風呂としてはタイル貼りの浴室に、手前側の縁がRを描いた方形の浴槽がひとつあるだけなのですが、これでもかという程に源泉が大量供給されているあたりは、さすが蔵王の温泉旅館です。
洗い場にはシャワー付き混合栓が4基。硫化防止のため水栓金具には灰色の塗装が施されています。ご覧の通りとてもよく整頓されており、気持ち良く利用できました。
繰り返しますが、洪水のように大量オーバーフローするお湯には感動です。床タイルの目地は硫黄がこびりついて薄ら黄色を帯びた白色に染まっており、タイル表面も場所によっては足跡や手跡が残っちゃうほど白い微細な湯の花によって覆われています。
浴槽内側面に突っ込んであるタオルで栓をしてあるのですね。注意書きを見落とし、つい触ろうとしてしまいました。あぶないあぶない。
浴槽の角で入浴者を見下ろすように立つ大きなこけしの下(湯面下)には小さな穴が開いており、ここからお湯が完全掛け流しで供給されています。使用されているのは大湯2号源泉。白いコロイド状の湯の華が湯中で舞っていますが、あまり濁らずほぼ透明で、若干黄緑掛って見えるのはお湯そのものの色なのか、あるいはタイルの影響なのか。湯の花は空気に触れるからこそ出現するわけで、まだ新鮮な状態である浴槽内においてはあまり沈殿などは見られず、私の訪問時は湯面にちょこっと浮いている程度でした。
蔵王のお湯ですから硫黄臭や強い酸味収斂はもちろんのこと、塩味にクエン酸的な甘酸っぱい味覚、そしてえぐみが感じられました。でも口に含むと口腔内が忽ち不快感に襲われ、歯もキシキシしてしまうので、あんまりじっくりと味わうことはできませんが。
立ち寄り入浴に関して、蔵王温泉の旅館群の中では低い料金設定にもかかわらず、綺麗なお風呂で大量掛け流しのお湯が楽しめる素晴らしいお宿でした。湯めぐりすると、宿泊したくなる旅館の候補が増えて困っちゃいますね。
大湯2号源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム・塩化物温泉 54.0℃ pH1.6 湧出量不明(自然湧出) 溶存物質3727mg/kg 成分総計4356mg/kg
H+:25.2mg(46.35mval%), Al+++:143.1mg(29.48mval%), Fe++:14.5mg(0.96mval%),
Cl-:431.1mg(22.72mval%), HSO4-:1161mg(22.34mval%), SO4--:1373mg(53.39mval%),
H2SiO3:246.0mg, 遊離H2SO4:73.7mg, 遊離CO2:615.1mg, 遊離H2S:13.7mg,
山形駅より蔵王温泉行バスで終点下車、徒歩2~3分
山形県山形市蔵王温泉22 地図
023-694-9015
ホームページ
立ち寄り入浴10:00~16:00
300円(湯めぐりこけし利用可能)
貴重品帳場預かり、シャンプー類あり
私の好み:★★★