私はもちろん、このブログをご覧の皆様も、そして世界中も、この地球上に生活するほぼ全ての人々がコロナ禍に振り回されたと言っても過言ではなかった2021年。まったく海外に行くことができず、国内にしても状況を見極めながら慎重にタイミングを図って出かけたため、思うように湯めぐりすることができなかったのですが、これは皆さんも同様のことかと思います。またコロナ禍に加えて私の場合は仕事の繁忙化によって思うように時間を確保することもままならず、今年を振り返ると新規開拓できた温泉施設数は40にとどまりました。とはいえ、数は少なくとも一つ一つはときめく記憶で彩られた個性派揃い。そこで今年最後の記事は、2021年の湯めぐりを振り返って締めくくることにします。
●新規オープンの温泉
コロナ禍にめげず、関東周辺では2021年も温泉施設が新規オープンしています。私はその中のいくつかへ訪問しました。
千葉県流山市の「すみれ」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
露天風呂では東葛地区らしい濃厚な化石海水型温泉がかけ流され、出来たばかりの綺麗な施設でのんびり寛ぐことができました。館内には温泉に関する頓珍漢な説明が書かれていましたが、今でも掲出しっぱなしなのかしら。
川崎市川崎区の「朝日湯源泉ゆいる」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
こちらは元々銭湯でしたが、リニューアルの際に温泉掘削に成功し、温泉施設として生まれ変わりました。かけ流し浴槽こそ無いものの、塩辛くて濃い温泉、そしてかなり深い水風呂に入れますし、サウナではロウリュウも実施されるため、温泉ファンのみならずサウナ愛好家にとっても利用価値のある施設かと思います。
埼玉県吉川市の「アクアイグニス武蔵野温泉」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
三重県湯の山の手前にある「アクアイグニス片岡温泉」が関東へ進出。片岡温泉の良さを実感している私としては、是非とも行ってみたかった施設です。周辺の競合施設よりちょっと高く、また皆さん大好きな(私は正直無くても良い)サウナが別料金なので、人によって評価が分かれるものの、いかにも埼玉県東部らしい濃い化石海水型温泉がかけ流されており、また施設もとっても綺麗で、館内の食事も美味しく、私個人としては高評価したいところです。片岡温泉とは泉質が全く異なるので、名前は同じだけれども別施設として捉えるのが吉です。
大沢温泉「依田之庄」(来年ブログで紹介予定)。
こちらは2021年ではなく、2020年12月下旬にオープンしたのですが、私は開業1年以内に利用しましたので、新規オープンのグループへ加えさせていただきました。以前は「大沢温泉ホテル 依田之庄」として営業していましたが、廃業後は敷地内の「旧依田邸」が静岡県指定有形文化財に指定されて、史跡として一般公開されるようになり、同敷地内の西側で2020年12月に日帰り温泉入浴施設「大沢温泉 依田之庄」が新規開業しました。大きく明るいお風呂ながら、とても静かで湯量も多く、大沢温泉自体の質の良さも相俟って、大変素晴らしい入浴時間を過ごせました。ここはお勧め。
番外編として、新規オープンではないものの、先日何の予備知識も無いまま飛び込みで訪問したら、いつの間にかこの画像のような立派な露天風呂ができていましたので、ここでご紹介致します。くらくら燃える地を這って越えた峠の先で、某温泉ホテルが所有する洞窟風呂があり、そこにこの露天風呂が付帯しています。以前この場所にはもうちょっと簡素なお風呂がありましたが(立ち風呂という名前だったかな)、ご覧のようにきれいなお風呂になり、万人受けするような形になりました。その代わり日帰り料金がアップされています。この露天風呂がどこにあるのか、来年記事にする予定です(来年ブログで紹介予定)。
●貸切風呂の積極利用
コロナ禍という状況で、安心して入浴するには、貸切風呂をするのが良い方法かと思います。昨年に引き続き、今年のゆめぐりでは、積極的に貸切風呂を利用しました。
「伊豆市富戸 藤よし伊豆店」(ブログで紹介済。記事はこちらとこちら)
相模灘を望む大きな露天風呂を貸切利用し、しかもお風呂上りは美味しい伊豆の海の幸をいただきました。時間内なら自由に空いているお風呂を貸切れるのも良いですね。とっても気分爽快な施設でした。
伊豆高原 城ヶ島温泉「花吹雪 貸切風呂(ヒュレヒュレイセポ)」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
日中は予約なしで日帰り利用できるのですが、施設内にあるお風呂の全てが貸切。空いていれば好きな浴室を使えます。しかも一人利用も可能。さすが人気のあるお宿だけあり、コンセプトがしっかりしており、お湯も良く、綺麗で快適な湯あみを楽しめました。おすすめ。
石和温泉「深雪温泉」貸切風呂(来年ブログで紹介予定)。
何度か宿泊している「深雪温泉」に今年も1泊お世話になったのですが、その際に貸切風呂も利用しました。そもそも大浴場だったと思しき浴室はかなり広く、しかも露天風呂もあって、贅沢な湯あみのひと時を過ごせました。やっぱり石和ではこの「深雪温泉」が良いですね。
●2週連続で草津通い
なにをとち狂ったか、今夏は2週連続で草津温泉へ出かけてしまいました。恋の病以外は何でも癒してくれる草津の湯に惹かれてしまうほど、その時の私は心身が病んでいたのかもしれませんが、良い湯にたっぷり浸かれ、しかも避暑することもでき、病んでいたらしい私の心身はしっかり健康になったのでした。今回お世話になったお宿はいずれも再訪でしたが、改めて良い湯であることを実感しました。
「草津館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
湯畑の目の前という好立地はもちろん、館内湧出の若乃湯と白旗源泉の2源泉が楽しめるお宿として温泉愛好家には夙に有名なお宿。お湯もお宿の方も、本当に素晴らしい。
「極楽館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
3室あるお風呂は全て貸切利用のため、コロナ禍でも安心して宿泊できました。特にお宿ご自慢の大日の湯源泉が実に良く、草津にしては穏やかな浴感なので、ついつい微睡んでしまいます。朝食も美味しいですよ。おすすめ。
●熱海市伊豆山の土石流災害に驚く
今年7月に発生した熱海市伊豆山の土石流災害には多くの方が驚き、特に当地に思い入れがある温泉ファンは大変嘆かれたかと思います。ニュース映像で何度も放映されたあの現場の急坂を、私は3か月前に自分の足で歩いて登り下りしていたので、まさかあの場所がこんなことになるとは、と絶句してしまいました。
自分で坂を登って入りに行った某施設の温泉露天風呂。大変眺めが良いのですが、確かに急な地形ですし、無理して開発しているなぁ、という感は否めません。今回の土石流の原因となった場所はここから東側の稜線を越えたところですが、そこで発生した土石流は一気に山を下ってこの施設へアクセスする道やその周辺民家を呑み込み、逢初橋を泥濘で覆いつくして、海に達したのでした。
上画像の施設を訪ねた翌日も私は熱海におり、相模灘を一望する某ホテルの大浴場で日帰り入浴を楽しんでいました(来年ブログで紹介予定)。
ここも熱海らしく海に落ち込む急峻な地形の上に立地しているため、その建物の最上階にある大浴場からの眺めは大変素晴らしいのですが、私が露天風呂に入っていたら、なんと目の前の相模灘をに綺麗な虹が掛かったのです。風呂に入りながら虹を眺める経験って滅多に得られず、非常に珍しいかと思います。今回被災された伊豆山の方々の生活にも美しい虹がかかることを祈念するとともに、犠牲になった方々にはご冥福をお祈り申し上げます。
●東北へあまり行けなかった・・・
私の湯めぐりではホームグラウンドと称しても差し支えない東北6県ですが、今年はあまり行けず、福島県と山形県にちょこちょこと足を運んだだけでした。あぁ悲しい・・・。
「蔵王国際ホテル」(来年ブログで紹介予定)。
なかなか足を運べなかった東北ですが、私が大好きな蔵王で、お盆休みに辛うじて1泊することができました。近江屋旅館グループらしいコンセプトが随所に感じられるホテルで、お湯もスタッフの対応も良く、同行者曰く大変素晴らしく再訪したいとのことでした。
蔵王温泉「かわらや」
蔵王に来たらここは外せません。何度入ってもこのスノコのお風呂は最高。
郡山市「ホテルバーデン」宿泊者用大浴場(来年ブログで紹介予定)。
晩秋の某日、会津磐梯山を登山したのですが、その前日に泊まったのが郡山市「ホテルバーデン」でした。郡山南インター付近は知る人ぞ知る温泉郷であり、特にこの「ホテルバーデン」や「バーデン温泉」は湯量豊富で良いですね。ちなみに翌日の下山後はこの近所の「月光温泉大浴場」にも入っています。なお私が郡山の温泉で一番好きなのは「月光温泉大浴場」なのですが、果たしていままで何回入っているのかしら・・・。
●あの震災を扱う2つの常設展示
あの震災から10年は経ち、記憶が徐々に風化してゆく中で、私は春の某日にいわき湯本温泉で泊まりながら、福島県浜通りで新設された震災や原子力災害に関する二つの常設展示施設を訪ねました。
いわき湯本温泉の旅館「古滝屋」の一室を改造して3月12日にオープンした「原子力災害考証館」。
宿泊客が減って使わなくなった部屋を転用したんだそうです。
お部屋の中央には、子供の靴や服、道具、そして劣化した写真などを、復元した瓦礫とともに展示しているのですが、これは福島第一原発傍の民家で被災した家族が、数年後に自分たちで捜索して見つけ出した娘さんの遺品とのこと。どうやら遺骨もその時に発見されたらしく、ご家族の気持ちを思うと言葉を失います。
また一角には東電へ賠償金請求する書類が積まれているのですが、その分厚さ、複雑さ、難しさ、難解さを目にして、思わずため息が出てしまいました。
この他、室内にはたくさんの関連書籍が置かれており、手に取って目にすることができます。余計な説明を敢えてしない代わりに、自分で見て手に取ってもらうことで訪問者に考えてもらおうという意図だと思われます。改めて自分の不勉強を痛感し猛省したのでした。
私は以前、熊本県水俣市の民間施設「相思館」を訪ねたことがあり、この部屋の展示を見学した時には「相思館」と非常に似た感覚を覚えたのですが、それもそのはず、この展示を設けたお宿のオーナーさんは「相思館」に影響を受けて今回オープンさせたのだそうで、お部屋も、展示物の一つ一つも、たしかに小さいかもしれませんが、被害者や生活者の側に立脚しており、見る人の心に訴えかける力がとても強く、被災者の声や心が如実に伝わってくるのです。そして女の子の遺品が、女の子の寂しさ、悲しさ、そして親の無念さ、怒り、やるせなさ、国や東電に対する怒り、理不尽さ、無理解を端的に示しているようでした。更には多くの被災者の心情(亡くなった方の気持ちを含め)を代弁する象徴的な存在でもあるのでしょう。
続いて、常磐線で湯本から北上し、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」へ。
さすがに公的な施設だけあって、大きく見やすく、分かりやすく、館内で説明してくださるスタッフの方も親切にかつ心を込めてお話ししてくださいました。開館当初は東電や国に対する批判はご法度だとか箝口令が敷かれているとか展示は撮影禁止だとか、いろいろな締め付けがあったらしく、方々から批判されていましたが、私が訪ねた時にはそのような締め付けは緩くなっており、撮影も可能でしたし、批判が許されないような雰囲気でも無かったような気がします。しかし・・・
原発立地を象徴するこの看板を、何の説明も無いまま建物の裏手にひっそりと置いているところに、当施設の姿勢が端的に表れています。確かに縛りは弱くなったのかもしれませんが、でもやっぱり全方位外交的であり、感情的なものは排除され、どのような立場で来館者に訴えたいのかわからず、玉虫色な決着を目指そうとしているような雰囲気を感じずにはいられません。公的機関なので致し方無いのかもしれませんが、「原子力災害考証館」を見学した私には、何だかモヤモヤした感情が残ったのでした。
以前私は水俣病のことを深く知るため、水俣を訪ねたことがあります。上述した民間施設「相思館」は水俣病の患者の立場で細かく展示しており、一方で水俣市立の「水俣病資料」は綺麗で分かりやすいが心情的なものが伝わってこない、という両者の違いを実感したのですが、今回福島浜通りでオープンした二つの展示施設に関しても全く同じ感想を抱きました。とはいえ、どちらかについて良し悪しを評価するつもりはなく、寧ろ両方を訪問し、そこで見て感じて、自分なりの考えを持つことが大切なのでしょう。
「東日本大震災・原子力災害伝承館」見学後は、周辺を散歩。他の被災地では既に撤去されているようなものも、ここではまだ残っているんですね。まるで時計の針が止まっているかのよう。
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以上、今年一年を振り返りました。
新年は果たして再び自由な旅をすることができるようになるのか。あるいは進展が無いままなのか。
どうなることやら見当がつきませんが、ともかく、本年も拙ブログをご覧くださり誠にありがとうございました。
新年も宜しくお願い申し上げます。
●新規オープンの温泉
コロナ禍にめげず、関東周辺では2021年も温泉施設が新規オープンしています。私はその中のいくつかへ訪問しました。
千葉県流山市の「すみれ」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
露天風呂では東葛地区らしい濃厚な化石海水型温泉がかけ流され、出来たばかりの綺麗な施設でのんびり寛ぐことができました。館内には温泉に関する頓珍漢な説明が書かれていましたが、今でも掲出しっぱなしなのかしら。
川崎市川崎区の「朝日湯源泉ゆいる」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
こちらは元々銭湯でしたが、リニューアルの際に温泉掘削に成功し、温泉施設として生まれ変わりました。かけ流し浴槽こそ無いものの、塩辛くて濃い温泉、そしてかなり深い水風呂に入れますし、サウナではロウリュウも実施されるため、温泉ファンのみならずサウナ愛好家にとっても利用価値のある施設かと思います。
埼玉県吉川市の「アクアイグニス武蔵野温泉」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
三重県湯の山の手前にある「アクアイグニス片岡温泉」が関東へ進出。片岡温泉の良さを実感している私としては、是非とも行ってみたかった施設です。周辺の競合施設よりちょっと高く、また皆さん大好きな(私は正直無くても良い)サウナが別料金なので、人によって評価が分かれるものの、いかにも埼玉県東部らしい濃い化石海水型温泉がかけ流されており、また施設もとっても綺麗で、館内の食事も美味しく、私個人としては高評価したいところです。片岡温泉とは泉質が全く異なるので、名前は同じだけれども別施設として捉えるのが吉です。
大沢温泉「依田之庄」(来年ブログで紹介予定)。
こちらは2021年ではなく、2020年12月下旬にオープンしたのですが、私は開業1年以内に利用しましたので、新規オープンのグループへ加えさせていただきました。以前は「大沢温泉ホテル 依田之庄」として営業していましたが、廃業後は敷地内の「旧依田邸」が静岡県指定有形文化財に指定されて、史跡として一般公開されるようになり、同敷地内の西側で2020年12月に日帰り温泉入浴施設「大沢温泉 依田之庄」が新規開業しました。大きく明るいお風呂ながら、とても静かで湯量も多く、大沢温泉自体の質の良さも相俟って、大変素晴らしい入浴時間を過ごせました。ここはお勧め。
番外編として、新規オープンではないものの、先日何の予備知識も無いまま飛び込みで訪問したら、いつの間にかこの画像のような立派な露天風呂ができていましたので、ここでご紹介致します。くらくら燃える地を這って越えた峠の先で、某温泉ホテルが所有する洞窟風呂があり、そこにこの露天風呂が付帯しています。以前この場所にはもうちょっと簡素なお風呂がありましたが(立ち風呂という名前だったかな)、ご覧のようにきれいなお風呂になり、万人受けするような形になりました。その代わり日帰り料金がアップされています。この露天風呂がどこにあるのか、来年記事にする予定です(来年ブログで紹介予定)。
●貸切風呂の積極利用
コロナ禍という状況で、安心して入浴するには、貸切風呂をするのが良い方法かと思います。昨年に引き続き、今年のゆめぐりでは、積極的に貸切風呂を利用しました。
「伊豆市富戸 藤よし伊豆店」(ブログで紹介済。記事はこちらとこちら)
相模灘を望む大きな露天風呂を貸切利用し、しかもお風呂上りは美味しい伊豆の海の幸をいただきました。時間内なら自由に空いているお風呂を貸切れるのも良いですね。とっても気分爽快な施設でした。
伊豆高原 城ヶ島温泉「花吹雪 貸切風呂(ヒュレヒュレイセポ)」(ブログで紹介済。記事はこちら)。
日中は予約なしで日帰り利用できるのですが、施設内にあるお風呂の全てが貸切。空いていれば好きな浴室を使えます。しかも一人利用も可能。さすが人気のあるお宿だけあり、コンセプトがしっかりしており、お湯も良く、綺麗で快適な湯あみを楽しめました。おすすめ。
石和温泉「深雪温泉」貸切風呂(来年ブログで紹介予定)。
何度か宿泊している「深雪温泉」に今年も1泊お世話になったのですが、その際に貸切風呂も利用しました。そもそも大浴場だったと思しき浴室はかなり広く、しかも露天風呂もあって、贅沢な湯あみのひと時を過ごせました。やっぱり石和ではこの「深雪温泉」が良いですね。
●2週連続で草津通い
なにをとち狂ったか、今夏は2週連続で草津温泉へ出かけてしまいました。恋の病以外は何でも癒してくれる草津の湯に惹かれてしまうほど、その時の私は心身が病んでいたのかもしれませんが、良い湯にたっぷり浸かれ、しかも避暑することもでき、病んでいたらしい私の心身はしっかり健康になったのでした。今回お世話になったお宿はいずれも再訪でしたが、改めて良い湯であることを実感しました。
「草津館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
湯畑の目の前という好立地はもちろん、館内湧出の若乃湯と白旗源泉の2源泉が楽しめるお宿として温泉愛好家には夙に有名なお宿。お湯もお宿の方も、本当に素晴らしい。
「極楽館」(2021年の記録は来年ブログで紹介予定)
3室あるお風呂は全て貸切利用のため、コロナ禍でも安心して宿泊できました。特にお宿ご自慢の大日の湯源泉が実に良く、草津にしては穏やかな浴感なので、ついつい微睡んでしまいます。朝食も美味しいですよ。おすすめ。
●熱海市伊豆山の土石流災害に驚く
今年7月に発生した熱海市伊豆山の土石流災害には多くの方が驚き、特に当地に思い入れがある温泉ファンは大変嘆かれたかと思います。ニュース映像で何度も放映されたあの現場の急坂を、私は3か月前に自分の足で歩いて登り下りしていたので、まさかあの場所がこんなことになるとは、と絶句してしまいました。
自分で坂を登って入りに行った某施設の温泉露天風呂。大変眺めが良いのですが、確かに急な地形ですし、無理して開発しているなぁ、という感は否めません。今回の土石流の原因となった場所はここから東側の稜線を越えたところですが、そこで発生した土石流は一気に山を下ってこの施設へアクセスする道やその周辺民家を呑み込み、逢初橋を泥濘で覆いつくして、海に達したのでした。
上画像の施設を訪ねた翌日も私は熱海におり、相模灘を一望する某ホテルの大浴場で日帰り入浴を楽しんでいました(来年ブログで紹介予定)。
ここも熱海らしく海に落ち込む急峻な地形の上に立地しているため、その建物の最上階にある大浴場からの眺めは大変素晴らしいのですが、私が露天風呂に入っていたら、なんと目の前の相模灘をに綺麗な虹が掛かったのです。風呂に入りながら虹を眺める経験って滅多に得られず、非常に珍しいかと思います。今回被災された伊豆山の方々の生活にも美しい虹がかかることを祈念するとともに、犠牲になった方々にはご冥福をお祈り申し上げます。
●東北へあまり行けなかった・・・
私の湯めぐりではホームグラウンドと称しても差し支えない東北6県ですが、今年はあまり行けず、福島県と山形県にちょこちょこと足を運んだだけでした。あぁ悲しい・・・。
「蔵王国際ホテル」(来年ブログで紹介予定)。
なかなか足を運べなかった東北ですが、私が大好きな蔵王で、お盆休みに辛うじて1泊することができました。近江屋旅館グループらしいコンセプトが随所に感じられるホテルで、お湯もスタッフの対応も良く、同行者曰く大変素晴らしく再訪したいとのことでした。
蔵王温泉「かわらや」
蔵王に来たらここは外せません。何度入ってもこのスノコのお風呂は最高。
郡山市「ホテルバーデン」宿泊者用大浴場(来年ブログで紹介予定)。
晩秋の某日、会津磐梯山を登山したのですが、その前日に泊まったのが郡山市「ホテルバーデン」でした。郡山南インター付近は知る人ぞ知る温泉郷であり、特にこの「ホテルバーデン」や「バーデン温泉」は湯量豊富で良いですね。ちなみに翌日の下山後はこの近所の「月光温泉大浴場」にも入っています。なお私が郡山の温泉で一番好きなのは「月光温泉大浴場」なのですが、果たしていままで何回入っているのかしら・・・。
●あの震災を扱う2つの常設展示
あの震災から10年は経ち、記憶が徐々に風化してゆく中で、私は春の某日にいわき湯本温泉で泊まりながら、福島県浜通りで新設された震災や原子力災害に関する二つの常設展示施設を訪ねました。
いわき湯本温泉の旅館「古滝屋」の一室を改造して3月12日にオープンした「原子力災害考証館」。
宿泊客が減って使わなくなった部屋を転用したんだそうです。
お部屋の中央には、子供の靴や服、道具、そして劣化した写真などを、復元した瓦礫とともに展示しているのですが、これは福島第一原発傍の民家で被災した家族が、数年後に自分たちで捜索して見つけ出した娘さんの遺品とのこと。どうやら遺骨もその時に発見されたらしく、ご家族の気持ちを思うと言葉を失います。
また一角には東電へ賠償金請求する書類が積まれているのですが、その分厚さ、複雑さ、難しさ、難解さを目にして、思わずため息が出てしまいました。
この他、室内にはたくさんの関連書籍が置かれており、手に取って目にすることができます。余計な説明を敢えてしない代わりに、自分で見て手に取ってもらうことで訪問者に考えてもらおうという意図だと思われます。改めて自分の不勉強を痛感し猛省したのでした。
私は以前、熊本県水俣市の民間施設「相思館」を訪ねたことがあり、この部屋の展示を見学した時には「相思館」と非常に似た感覚を覚えたのですが、それもそのはず、この展示を設けたお宿のオーナーさんは「相思館」に影響を受けて今回オープンさせたのだそうで、お部屋も、展示物の一つ一つも、たしかに小さいかもしれませんが、被害者や生活者の側に立脚しており、見る人の心に訴えかける力がとても強く、被災者の声や心が如実に伝わってくるのです。そして女の子の遺品が、女の子の寂しさ、悲しさ、そして親の無念さ、怒り、やるせなさ、国や東電に対する怒り、理不尽さ、無理解を端的に示しているようでした。更には多くの被災者の心情(亡くなった方の気持ちを含め)を代弁する象徴的な存在でもあるのでしょう。
続いて、常磐線で湯本から北上し、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」へ。
さすがに公的な施設だけあって、大きく見やすく、分かりやすく、館内で説明してくださるスタッフの方も親切にかつ心を込めてお話ししてくださいました。開館当初は東電や国に対する批判はご法度だとか箝口令が敷かれているとか展示は撮影禁止だとか、いろいろな締め付けがあったらしく、方々から批判されていましたが、私が訪ねた時にはそのような締め付けは緩くなっており、撮影も可能でしたし、批判が許されないような雰囲気でも無かったような気がします。しかし・・・
原発立地を象徴するこの看板を、何の説明も無いまま建物の裏手にひっそりと置いているところに、当施設の姿勢が端的に表れています。確かに縛りは弱くなったのかもしれませんが、でもやっぱり全方位外交的であり、感情的なものは排除され、どのような立場で来館者に訴えたいのかわからず、玉虫色な決着を目指そうとしているような雰囲気を感じずにはいられません。公的機関なので致し方無いのかもしれませんが、「原子力災害考証館」を見学した私には、何だかモヤモヤした感情が残ったのでした。
以前私は水俣病のことを深く知るため、水俣を訪ねたことがあります。上述した民間施設「相思館」は水俣病の患者の立場で細かく展示しており、一方で水俣市立の「水俣病資料」は綺麗で分かりやすいが心情的なものが伝わってこない、という両者の違いを実感したのですが、今回福島浜通りでオープンした二つの展示施設に関しても全く同じ感想を抱きました。とはいえ、どちらかについて良し悪しを評価するつもりはなく、寧ろ両方を訪問し、そこで見て感じて、自分なりの考えを持つことが大切なのでしょう。
「東日本大震災・原子力災害伝承館」見学後は、周辺を散歩。他の被災地では既に撤去されているようなものも、ここではまだ残っているんですね。まるで時計の針が止まっているかのよう。
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以上、今年一年を振り返りました。
新年は果たして再び自由な旅をすることができるようになるのか。あるいは進展が無いままなのか。
どうなることやら見当がつきませんが、ともかく、本年も拙ブログをご覧くださり誠にありがとうございました。
新年も宜しくお願い申し上げます。