温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

大阪市港区 テルメ龍宮

2015年08月31日 | 京都府・大阪府・滋賀県
 
所用のため泊まりがけで大阪へ出かけた某日の晩。予定よりも早く所用が済んでしまったので、或ることを思いついて地下鉄中央線に乗り、朝潮橋駅で下車しました。


 

駅を出てからみなと通を天保山方向へ歩きます。この周辺は大阪市港区に属していますが、同じ港区でも東京のそれとは極めて対照的な、覇気がなく庶民的で寂しい街並みが広がっております。かつては港湾労働者達の活気に満ちていたのでしょうけど、住民の皆さんこぞって高齢者になってしまい、運河の向こうにはデートスポットの水族館、川一本隔てた対岸には関西随一のテーマパークがあるというのに、それらの輝きはこの界隈にちっとも届いていないようでした。
駅から約10分ほど歩いたところで角を曲がり、1本左手の路地に入ると、屋上に「天然」という文字と温泉マークのネオンが輝く古びたビルに行き着きます。今回の目的地である銭湯「テルメ龍宮」に到着です。ネオンが示しているように、この銭湯では温泉の浴槽があるので、温泉でこの日の疲れを癒そうと画策したわけです。

施設としては昭和の銭湯そのもの。木板の松竹錠の下足箱に靴を収め、番台の婆さんに湯銭を支払い、暖簾を潜って男湯へお邪魔します。脱衣室も典型的な銭湯ですが、棚の扉が全てコイン不要で施錠できるのはありがたい。浴場は2階層になっているらしく、脱衣室の目の前に広がる1階浴場の他、階段を下って地下の浴室へも行けるのですが、自由に利用できるのか別料金が必要なのか事情が掴めず、ヘタに踏み込んで関係者に大阪弁でまくしたてられたら、やわなハートの関東人たる私は落ち込んで立ち直れなくなるので、今回はノータッチです。

浴場(内湯)も一見するとごく普通の銭湯なのですが、よくよく見るとちょっと個性的。なお内湯に関しては画像はございませんのであしからず。
銭湯に無くてはならない洗い場のカランは計25ヶ所で、うち左右の壁沿いに並ぶ17箇所は壁直付の固定シャワー付き。それぞれ、適温湯・水・熱い湯という3つの水栓がセットになっています。一部のカラン上には「温泉」という2文字が躍っていたのですが、これってカランのお湯は温泉であることを示しているのかな。温度別にわざわざ2つの湯を用意しているのですから、どちらか片方は温泉なのかもしれませんが、実際に両方のお湯を使ってみても違いがよくわからず、狐につままれたような気分で、そのお湯を頭から浴びて体を洗いました。

左右前後の洗い場に挟まれるような形で複数の浴槽が設けられています。中央手前側の浴槽は温泉を循環使用しており、泡風呂装置が稼働していました。その隣の浴槽は若干小さいものの、深さなどは一般的な造りで泡風呂などの付帯機能は無く、こちらでも温泉が循環使用されていました。この2つの槽におけるお湯は弱い褐色を呈しており、槽内のタイルは温泉成分の影響で薄っすらと山吹色に染まっていましたが、しっかり循環されているためか温泉らしい特徴はあまり感じられず、塩素臭が漂っていたので、今回は様子を窺う程度にちょこんと浸かっただけ。
この他、真湯の槽や水風呂、そして別料金を要するサウナなどもあるのですが、浴室内で得も言われぬ不思議な存在感を放っていたのが(男湯の場合)左側に並ぶ小部屋群です。まず脱衣室に近い位置の「スチームサンソ風呂」は、名前からして既に十分怪しげであり、説明によれば大気の2倍の酸素が放たれているという謳いなのですが、実際に入ってみますと単なるミストサウナのような感じで、本当に酸素が濃いのかどうか…。ここに隣接する小部屋では竜宮城みたいな壁絵が施されており、その下に据えられているミニ浴槽では、循環の温泉と思しきお湯が勢い良くドバドバと吐出されていたのですが、その勢いを生み出すポンプの電気代が勿体無く思えるほど、私の訪問時は誰も利用しておらず、ただひたすら室内に音を響かせて温泉風情を無理やり醸し出しているようでした。またその奥には「バスクリン」と書かれている小槽もあるのですが、そこに張られているお湯はドリフのコントで使われるようなお風呂の色ではなく、何の変哲も無い透明なタイプだったようでした。兎にも角にも、昭和のB級感たっぷりの各室は、30年前から時が止まっているような周囲の庶民的な街並みと見事にシンクロしているようであり、実用本位になりがちな銭湯に一風変わった個性をもたらしていることは間違いないのですが、でもこの不思議な内湯に入るだけなら、私はここまで足を運びません。夜の街に繰り出して飲んだくれていたほうが余程楽しい。


 
今回のお目当ては内湯から通路を抜けた先にあるこの露天風呂です。銭湯なのに露天風呂にも入れるのはありがたいところです。とはいえ、ここは市街地のただ中であり、鉄筋ビル中庭の四方には高い壁が立ちはだかり、はるか上空に都会の淀んだ空を仰ぐばかりで、申し訳程度に日本庭園のような装飾が施されているものの、風情も景色もへったくれもありません。もっとも銭湯料金でここまで施設面を充実させているのですから、その企業努力には頭が下がりますが、私は露天の開放感を楽しみたかったわけではなく、この露天風呂で掛け流されている温泉に入りたいがために、わざわざこちらへ訪れたのでした。

壁に沿ってL字型の浴槽が据えられており、槽内には鉄平石が敷かれています。槽の幅は約2メートルで、奥行きは3~4メートル程でしょうか。頭上には数条のワイヤーが張られていますが、これは雨天時にテントを広げるためのものでしょう(この時は折りたたまれていました)。


 
L字型の浴槽は、手前側と奥側で若干趣きが異なります。手前側はやや浅く、一部は3人分の寝湯ゾーンとなっており、また湯尻となる吸込口もこちら側に設けられていました。お湯はほとんどオーバーフローせず、この吸込口から排湯されています。


 
一方、奥側の槽は一般的な深さで、坪庭の縁の石積みには湯口があり、湯加減は41~2℃という実に良い塩梅。私はほとんどの時間をここで過ごしていました。


 
パイプからは43℃前後のお湯が吐出されており、管のまわりには白や褐色の成分付着が見られます。また湯口のみならずお湯が触れる箇所は濃い赤茶色に染まっており、ビジュアル的にもれっきとした温泉であることが伝わってきます。温泉の投入口はこのパイプの他、その右側にもうひとつあり、そちらからもパイプと同じフィーリングのお湯が投入されていました。

内湯の温泉槽はしっかり循環されており、お湯の個性がほとんど失われていましたが、館内表示によれば露天風呂のお湯は「掛け流し」とのこと。私の経験上、都市部の温泉施設における「掛け流し」という表現は、話半分で捉えておくべきものですが、この露天風呂に関してはお湯の個性がはっきり現れており、鮮度感も良いので、その言葉に偽りはないものと思われます。

夜間でしたので見た目や色については明言できませんが、この時はモール泉のような薄紅茶色の透明に見えました。化石海水系の温泉にありがちな芳ばしい香り、土類泉のような味および匂い、そして薄っすらと清涼感のあるほろ苦味が感じられます。港湾エリアなのに塩味がほとんど無かったのは意外です。特筆すべきは気泡の多さで、湯口付近の湯面で白い泡が固まって浮かんでおり、入浴すると全身にビッシリと泡がついてくれました。総じて言えば弱い土類泉感を伴う重曹泉といったフィーリングで、ツルツルスベスベの滑らかな浴感や、湯中における沢山の泡付き、そして湯上がり後の程よい爽快感は、まさに重曹泉の特徴そのものです。

さてここで触れておかなければならないのが、現在のお湯の質感と、館内掲示されてる分析書との間に、かなり大きな隔たりがある点です。上述のように現在は重曹泉のようなお湯ですが、2009年分析のデータでは食塩泉と記されており、ネットで調べたところによれば、かつてのお湯は黄色く濁ってしょっぱい強塩泉だったそうです。源泉を掘り直していないならば、ここ数年の間に何らかの理由で薄まってしまったのでしょう。個人的な感覚で申し上げれば、単に薄まったのではなく、別物に生まれ変わったような感すらあり、阪神間に点在する温泉銭湯の泉質に近づいているのではないかと思います。濁りが消え塩辛さも失われた現在のお湯はインパクトに欠けるかもしれませんが、私としては現在の重曹泉っぽい泡付きのある滑らかなフィーリングの方が、体に優しくて入りやすく好みに合致するので、もし以前の濃い温泉と現在のお湯の両方を並べられたら、私は現在のお湯を選ぶでしょう。大阪の街なかに湧く温泉の実力を体感できる銭湯でした。


※以下のデータは2015年4月時点に館内で掲示されていた分析書の抄出ですが、現在湧出しているお湯は、これらの数値と大幅に異なるものと思われます。
龍宮温泉1号
ナトリウム-塩化物温泉 54.5℃ pH6.7 293L/min(動力揚湯) 溶存物質14.695g/kg 成分総計14.838g/kg
Na+:5280mg(92.65mval%), NH4+:18.6mg, Mg++:72.7mg, Ca++:179mg(3.60mval%),
Cl-:7790mg(92.69mval%), Br-:17.6mg, I-:2.1mg, HCO3-:1040mg(7.19mval%),
H2SiO3:120mg, HBO2:84.3mg, CO2:143mg,
(2009年12月7日)
屋内浴槽:加水なし・加温あり・循環あり・塩素系薬剤使用
露天風呂:加水なし・加温なし・循環なし・営業中の消毒薬剤使用なし

大阪市営地下鉄中央線・朝潮橋駅より徒歩10分
大阪府大阪市港区港晴2-3-35  地図
06-6574-1126
ホームページ

平日・祝日15:00~24:00、日曜7:00~24:00、木曜定休
440円
ロッカーあり、ドライヤー有料

私の好み:★★
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湯宿温泉 大滝屋旅館

2015年08月29日 | 群馬県
   
雪の上州湯めぐりのラストは、湯宿温泉「大滝屋旅館」へ立ち寄ることにしました。或る目論見があって敢えてこちらを選んだのですが、その理由は後ほど。
石畳の温泉街を歩き、窪湯近くから逸れてゆく細い路地を上がってお宿へと向かいます。この晩は宿泊しているお客さんがいなかったのか(あるいは既にチェックインが済んでいたのか)、玄関まわりは照明が落とされて真っ暗だったのですが、私の来訪に女将さんが気づいてくれたらしく、中から声が掛かるとともに明かりが灯り、私が入浴利用をお願いしますと快く対応して下さいました。名称こそ旅館ですが、アットホームな佇まいは民宿のようです。


 
帳場の近くにコインロッカーが設置されていますので、日帰り入浴でも安心ですね。女将さんに案内されて奥の浴室へと向かいます。お風呂は内湯のみで、女湯と混浴が一室ずつ。男である私は混浴浴室を使わせていただきました。


 
脱衣室は小奇麗にされており、ヒーターもあるので寒さに身を縮こませることなく着替えることができました。室内のボードにはいろんな案内が掲示されているのですが、それらによれば、こちらで使われているお湯は、共同浴場にも引かれている高温の窪湯源泉に、自家源泉でぬるい大滝源泉を混合させており、このブレンドによって温度を調整しているとのこと。また湯宿温泉の源泉は硫酸塩ですが、自家源泉は炭酸水素塩泉であり、硫酸塩泉と炭酸水素塩泉のブレンドは湯宿温泉で唯一なんだとか。なお平成16年の資料によりますと、窪湯は62℃で、大滝源泉は39.1℃とのこと。なお大滝源泉は、建物裏手に落ちている滝の脇より湧出しており、この源泉は大滝屋でしか引湯していないそうです。


 
浴室は総タイル貼りで質実剛健の実用的な趣きですが、側壁の一部が幅の狭い棚状になっており、そこだけ伊豆青石が用いられていて、温泉情緒を密かに匂わせていました。浴槽の右奥にある湯口からトポトポとお湯が注がれており、その音だけが室内に響いていました。


 
浴室右側に洗い場があり、シャワー付きカランが1台取り付けられている他、水・湯・水という順で3つの水栓が等間隔に並んでいました。水道の水栓のひとつは浴槽への加水用なのかな? カランから出てくるお湯はおそらく源泉のお湯かと思われます。


 
浴槽の大きさはおおよそ2m×3mで、4~5人サイズ。上述の湯口(塩ビ管)よりお湯が落とされ、石の器で一旦受け止められてから浴槽へと注がれています。そして浴槽の手前側の縁から絶えず溢れ出ていました。管から吐出される時点で既に(体感で)45~6℃でしたので、冷ますために石の器を挟んでいるのではなく、単に飾りとして設けられているのでしょう。

お湯は無色透明で、石膏の味や匂いがふんわりと感じられ、弱めのトロミとキシキシ浴感はいかにも北毛の硫酸塩泉なのですが、どことなく塩化土類泉の存在を漂わせる香ばしさや風味が混じっていて、共同浴場のような窪湯単独の湯とは一線を画す、独特のテイストが感じられました。湯宿温泉のお風呂はどこでも熱く攻撃的で、加水しないと入れないところが多いのですが、ブレンドのおかげでこちらのお風呂では加水することなく、完全掛け流しで丁度良い湯加減が保たれていますし、ピリッとくる湯宿他源泉と違ってマイルドな肌触りがあり、全身を布で覆うような優しいトロミを有する浴感が好印象で、その優しさが心地よくて1時間程入り続けてしまいました。またマイルドながらも温まりには力強さがあり、お風呂上がりには体の芯まで強力に温まり、外套要らずでしばらく過ごせました。


 
話は前後しますが、湯宿でお風呂に入る前、腹拵えをするために温泉街からちょっと離れたところにある「五郎兵衛やかた」というお店に立ち寄って夕食をいただいておりました。当記事の冒頭で「或る目論見があって敢えて」大滝屋旅館を訪れたと申し上げましたが、その理由とは、このお店で食事をした際のレシートを大滝屋旅館に提示すると、当日中なら無料で入浴できるからなのでした。昔噺に出てきそうな豪農の古民家を改築したと思しき建物です。


 
注文したのは「舞茸の天ぷら」とお店の看板メニューである「五郎兵衛うどん」。後者はいわゆる田舎の鍋焼きうどんなのですが、あくまで私の印象を申し上げれば上州名物「おっきりこみ」の薄っぺらい麺を一般ウケするように幅広の太いうどんへ変えたような感じで、味噌仕立てのお汁に鴨肉や野菜・キノコ等がたくさん載せられており、グッツグツに煮えたうどんをいただいていると体の芯まで温まり、最後の一滴まで美味しくいただきました。


混合泉(大滝源泉・クボ湯)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 48.0℃ pH7.2 大滝源泉:自然湧出・クボ湯:動力揚湯 溶存物質1.21g/kg 成分総計1.26g/kg
Na+:236mg(60.59mval%), Ca++:131mg(38.54mval%),
Cl-:94.2mg(15.76mval%), SO4--:642mg(79.32mval%), HCO3-:37.9mg(3.68mval%),
H2SiO3:52.6mg,
加水加温循環消毒なし

群馬県利根郡みなかみ町湯宿温泉2383  地図
0278-64-0602
ホームページ

日帰り入浴12:00~20:00
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類あり、ドライヤー帳場貸出

私の好み:★★+0.5
コメント (4)
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猿ヶ京温泉 湯元長生館

2015年08月28日 | 群馬県
 
前回記事の「五十沢温泉ゆもとかん旧館」で極上のお湯に酔いしれた後は、その余韻を残したまま帰宅の途に就くつもりでしたが、まだ外は明るく、多くの旅館は日帰り入浴の営業時間内でしたので、根っからの貪婪で諦めが悪い私は、関越道の水上で一般道へ下り、更に上州で2箇所ほど湯めぐりをすることにしました。
この時に目指したのは旧新治村方面です。水上からは猿ヶ京へショートカットする赤谷越を走行しました。中越地方に警報を発令させるほどの大雪はこちらでもしっかり降ったようで、峠越えの山道に厚く積もっていました。


 
無雪期にこの仏岩トンネルを通過したことなら何度もありますが、積雪期は今回が初めてです。さすがに三国峠の上州側は、越後サイドに比べれば積雪の程度は軽いのですが、それでも積雪量は十分に多く、路面に轍が数本あるものの、交通量は少なくて、途中で行き違った車はゼロでした。用事が無きゃこんな山道なんて通らないんだうなぁ。


 
無事峠を越えてやってきたのは猿ヶ京温泉。今回訪れたのは野天風呂がご自慢の老舗旅館「長生館」です。事前の調査によれば、日帰り入浴の場合は内湯と野天で料金が別々とのこと。スキーシーズンの週末だというのに、薄暗い館内を目にして不安を覚えたのですが、玄関にて声を掛けて野天風呂の入浴を希望したところ、腰の曲がったお婆ちゃんが対応して下さいました。


 
 
玄関前には屋根付きの立派な飲泉所があり、親切にもお湯を持ち帰るためのPETボトルまで用意されていました。飲泉所の上にはタンクが聳え立っていますが、これは貯湯槽なのでしょう。竹筒から熱いお湯が石の器に注がれており、器の外側は白い析出で覆われています。備え付けの竹の柄杓で実際に飲泉してみますと、猿ヶ京のお湯らしい石膏の味と香りが、ほのかながらもしっかりと感じられました。


 
野天風呂へは、建物の左端にある非常用通路のような階段で、谷へ向かってどんどん下ってゆきます。お宿の方曰く80段あるんだそうですが、結構勾配が急ですので、慎重に下りないと滑ってしまいそう。この日はしばらく来客が無かったらしく、階段には足あとが全く見られませんでした。階段を照らすためにぶら下がっている裸電球がB級感を醸し出しています。


 
階段を下りきった左手にある簾で目隠しされた吹きさらしの小屋が、どうやら男湯用の脱衣小屋のようです。内部にはスノコが敷かれ、棚にプラ籠が用意されているばかりで、ビール会社の提灯が妙に寒々しい…。中には雪が吹き込んでいるため、スノコの上も真っ白く覆われていましたし、野天風呂へはここから通路を横切り、雪が積もったステップを下っていかなければならない…。このままでは雪の上を裸足で歩かなきゃいけないので、着替える前に風呂まで行き、桶でお湯を汲んで足元のお湯を溶かしてから、着替えることにしました。


 
お宿自慢の野天風呂へ。こちらのお宿では野天風呂の元祖を標榜しているらしく、真偽の程はよくわかりませんが、そんなことはどうでも良く思えるほど、広々とした開放的な環境であり、斜面に茂る木立の彼方に赤谷湖(ダム)が望め、見晴らしも良好です。川を見下ろすお風呂はいわゆる岩風呂で、最大幅で11m×5m強はあり、余裕で30人は同時に入浴できちゃいそうな立派なものです。なお女湯は男湯より一段高いところに設けられているものの、見晴らしが良いはずの谷側に目隠しが立てられているため、眺望はいまひとつなんだとか。


 
お湯は滝のように岩の上を流れ落ちながら、ドバドバと大量投入されていました。お湯の供給はこの滝のみならず、此処よりちょっと手前や脱衣室よりのホースなど複数箇所から並行して投入されており、これによって湯加減の均衡が図られ、大きな野天風呂でも湯温の偏りを感じずに湯浴みが楽しめるよう配慮されていました。降雪期はお湯がすぐに冷めちゃうでしょうから、湯加減の維持には相当ご苦労なさっていることかとお察しします。言わずもがな完全掛け流しであり、湯船を満たしたお湯は谷側の縁からふんだんに溢れ出ていました。

お湯は無色透明。日没に近い時間帯でしたので、湯中における湯の華の存在等は目視できませんでした。実際に湯に浸かると、湯面からは僅かに石膏臭が香り、少々のトロミと石膏泉らしい引っかかりが得られる他、浸かり続けているとお湯が優しく肌に染み入り、シットリとした感覚も味わうことができました。上述のようにお湯を複数箇所から注ぎ込ませており、その量も適切であるため、雪が強く降って冷えきる夕暮れ時だというのに、湯加減が素晴らしく、鮮度感も良好です。


 
ちょうど日没の時間帯だったので、湯浴みしているうちに日が暮れていったのですが、この日は暗くなるにつれて吹雪が強くなり、寒さも厳しくなる一方。暗くて寒い屋外は決して入浴に適した環境ではありませんが、湯加減は最高ですし、浴感が良くて後を引く気持ち良さでしたので、まるで演歌の世界で歌われるような荒れた天候の中、私は一人でこの野天風呂を終始独占し、なんだかんだで1時間も入り続けてしまったのでした。入浴中は吹雪が気にならないほど全身がホコホコし、湯上がり後の温まりも良く、猿ヶ京温泉のパワーを実感することができました。


共有泉湯島
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 55.5℃ pH7.6 蒸発残留物1.25g/kg 成分総計1.21g/kg
Na+:130mg, Ca++:218mg,
Cl-:100mg, SO4--:652mg, HCO3-:28.7mg,
H2SiO3:54.3mg, HBO2:11.1mg,
加水加温循環消毒なし(野天風呂における状況)

群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京温泉1178  地図
0278-66-1131
ホームページ

日帰り入浴時間不明(20時まで?)
野天風呂500円
野天風呂には備品類なし

私の好み:★★

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五十沢温泉 ゆもとかん旧館 2015年2月再訪

2015年08月26日 | 新潟県
 
先日以来連続して半年前の2月に大雪の中を湯めぐりした新潟県中越地方の温泉をアップしておりますが、今回訪れるのは「五十沢温泉ゆもとかん」の旧館です。こちらは5年前に拙ブログで一度取り上げており(当時の記事はこちらを参照)、それ以来の再訪となります。実を申し上げますと、この日は露天風呂が名物の「ゆもとかん」本館で入浴しようとしたのですが、残念ながらまだお湯を張っていないとのことでしたので、第二候補である旧館のお風呂へと向かったのでした。でもこちらのお風呂は源泉が目の前にあるので、お湯の良さは折り紙つき。お湯の質にこだわるなら断然旧館が良いのであります。
まるで民家のような渋い佇まいは前回訪問時と変わっていませんが、降りしきる雪がファンデーションの代わりとなって、建物のシミやくすみがすっかり隠され、上手い具合に美白されて、古ぼけた感じがごまかされていました。


 
訪問時、帳場にはどなたもいらしゃらなかったので、カウンターの上にあるアクリル箱に湯銭を投入して浴室へと向かいました。カウンターに置かれたダイヤル式ピンクの電話の下には料金表が掲示されていたのですが、そこには「宿泊 2500+ 消費税200 + 入湯税120 = 2,820円」と記されているではありませんか。ここって泊まることもできるんですね。初めて知りました(5年前の記事では「日帰り入浴のみ」と書いてしまいました。誤って記述したことをお詫びいたします)。なお休憩利用も可能らしく、その料金は税込660円と非常にリーズナブル。意外な穴場なのかもしれません。


 
私が入室すると、入れ違いで先客のオジサンが退室したのですが、その刹那に「お兄ちゃんラッキーだね、さっきまで(客が)4~5人いたんだけど、今は誰もいないよ」と教えてくれました。
脱衣室内の様子も5年前と変わらず、洗濯機が置かれているのも以前のまま。棚の左側にはロッカーが設置されていますが、4個しかありませんので、夕方の混雑時などに利用する際は、その点を留意した方が良いかも。


 
昭和40~50年代のような懐かしいタイルが多用されている浴室には、温泉由来のタマゴ臭が仄かに香っていました。約4m弱の浴室幅いっぱいに浴槽が設けられ、縁からふんだんにお湯が溢れ出て、洗い場の床をすすいでいました。


 
洗い場にはお湯と水道の水栓が2組並んでいます。お湯のカランからはかなり熱い源泉のお湯が吐出されました。なお上画像にはクリームホワイトの配管が写っていますが、これは水道用の配管です。塀の向こうからはシャワーの音が聞こえてきたのですが、女湯にはシャワーが設けられているのかな?

浴槽にお湯を満たす湯口のスタイルも以前のまま。屋外側から突き出たバルブ付きの配管が小さな壺に向けられており、そこから勢い良く注がれた源泉のお湯は、壺の中を白く細かな気泡でいっぱいにさせた後、浴槽へドバドバと溢れていました。そばに置かれている一合枡で、あたかも熱燗をいただくかのようにお湯を飲んでみますと、ほんのりとしたタマゴ味が口の中に広がり、僅かながらもはっきりとしたタマゴ臭が鼻へと抜けてゆきました。pH9.5というアルカリ性であるためか、口当たりがとてもまろやかで、飲み込んだ際には喉の奥へスッと滑らかに吸収されてゆくのがわかりました。


 
お湯の見た目は無色澄明でとてもクリア。湯使いは完全掛け流しで、50℃近い源泉のお湯をそのまま注ぎ込んでいるため、湯船はちょっと熱めの湯加減なのですが、フレッシュ感が実に素晴らしく、且つツルンツルン&スルリスルリの滑らかな浴感がとても気持ち良いので、熱さと浴感の相乗効果で心身がシャキッと引き締まり、あまりの気持ちよさにお湯の虜になって、熱さで体が火照ってもなかなか湯船から出ることができませんでした。ナトリウムイオンや炭酸イオンが多くて、且つアルカリ性であるという諸条件が、ツルスベの美人湯と称すべき相応しい特徴をもたらしているのでしょう。男だって美人湯の極上な浴感には体が素直に反応してしまうものですね。
浴感に病みつきになって湯船に浸かり続けているうち、本格的に逆上せそうになったので、クールダウンするべく窓を開けたら、私の背丈以上に積もる雪が視界を遮り、景色と言ってもせいぜい周囲の民家の屋根が見える程度でした。でもこの光景を目にしてこそ、雪国で湯浴みをしている実感が湧いてくるものです。
建物は古くてもそのお湯の良さで地元民のみならず遠方から訪れる温泉ファンをも魅了しづつける旧館のお風呂。何度でも再訪したくなる素晴らしいお湯でした。


五十沢温泉1号井
アルカリ性単純温泉 49.8℃ pH9.4 232L/min(動力揚湯) 溶存物質202.4mg/kg 成分総計202.4mg/kg
Na+:38.1mg(81.37mval%), Ca++:6.5mg(15.69mval%),
Cl-:25.1mg(31.84mval%), HS-:0.6mg, S2O3--:0.3mg, SO4--:27.2mg(25.56mval%), HCO3-:15.3mg(11.21mval%), CO3--:18.0mg(26.90mval%),
H2SiO3:67.9mg,
(平成26年9月30日)

新潟県南魚沼市宮1132  地図
025-774-2859
本館のホームページ

8:00~20:00(冬期は9:00~19:00) 水曜定休
420円
ロッカーあり、他の備品類なし

私の好み:★★★
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六日町温泉 龍氣別館

2015年08月25日 | 新潟県
 
前回記事で取り上げた「ゆあーず」を出た後は、国道117号沿いにあるへぎそばの有名店「由屋」に入って、ちょっと早めのお昼ごはんをいただきます。つなぎに布海苔を使った独特な食感が魅力のへぎそばは私の大好物。こちらのお店はボリュームが凄いことで有名なので、自分の目でその量を確かめ、味わってみたかったのでした。
お店の方曰く、一番小さいのは2人前の「小」(1800円)とのことなのですが、目の前に出されたものは明らかに2人前以上のものがあり、聞きしに勝るそのボリュームに圧倒されちゃいました。Cの字型に盛られた一口サイズのおそばが4×6の計24。こちらのお店では地元の玄そばを石臼挽きし、自前で打っているんだとか。蓬色のおそばはツヤツヤに輝いており、噛むと布海苔の香りが強く、弾力もしっかり。咀嚼する度に粘り気を帯びて泡立ちを感じます。ツルっとした滑らかな喉越しがとても爽快です。一方、おつゆの味付けはいくらか薄めなのですが、醤油の主張を抑えて出汁や味醂の風味を引き立てることにより、布海苔の香りを殺さないようにしているのかもしれません。3分の2を食べ終えたところで満腹感を覚えたのですが、好物を残しちゃ男の沽券に関わるので、頑張って全てを胃袋に押し込みました。うまかった。


 
お昼を過ぎて雪はますます酷くなる一方。この時既に中越地方には大雪警報が発令されていたのですが、我が愛車"CX-5"(FF車)は横殴りの吹雪を受けつつ八箇峠越えに挑みます。荒天のため、日中だというのに対向車なんてちっとも来きません。昨日に逆方向から走ったときには、ほとんどの区間で路面が乾燥していたのですが、この日未明からの雪によってあっという間に積雪し、同じ道とは思えないほど様相を異にしていました。


 
車両とタイヤの両方の性能が良く、また走りやすい雪質だったことも幸いして、一度も怖い思いをすることなく、全くスムーズに八箇峠トンネルまで登りきり、いとも容易にトンネルを通過。


 
八箇峠を越えて六日町市街へ下った後は、六日町トンネル付近にある六日町温泉「龍氣別館」へ立ち寄って温泉入浴することにしました。「龍氣」の本館は立派な旅館ですが、この「別館」はリーズナブルに宿泊したい客向けのビジネス旅館であり、日中は入浴や食堂の営業も行われているため、界隈の庶民にとっては憩いの場としても親しまれているようです。


 
館内はどことなくアンニュイな空気が漂泊していたのですが、それもそのはず、左手に広がる大広間では、お風呂から上がったオジサンオバサン達が、トドのようにグタっと横たわっていたのでした。厨房と一体化している窓口で湯銭を支払ってお風呂へと向かいます。こちらの施設は「薬石風呂」なるもの(右ot下画像)が売りなんだそうでして、湯銭とは別に料金を要するのですが、実際に専用の浴衣を着て利用しているお客さんの姿が見られました。岩盤浴みたいなものなのかな?



男女別の浴室内には、スカイブルーのタイルが敷き詰められた大小の浴槽が1つずつ据えられています。全体的に年季が入っており、くすみや退色は否めませんが、側壁にはレンガ調のタイルが採用され、床にも暖色系のタイルが貼られているため、スカイブルーの浴槽は存在感が際立っていました。
換気がしっかり行われているために、冬だというのに湯気篭りが無く、視界は大変良好でしたが、排気と給気のバランスに問題があって、脱衣室に対して若干負圧になっているためか、出入口のドアの隙間が常にヒューヒュー鳴っていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが5基、L字型に並んで取り付けられています。洗い場の隣にはサウナ室も並んでいるのですが、訪問時は使用停止となっていました。


 
大きな主浴槽には「天然温泉」のプレートが掲示されており、本物の温泉であることをアピールしていました。浴槽の大きさは(目測で)5m×3mほどで、無色透明のお湯が張られています。


 
湯口からは直に触れないほど熱いお湯が注がれていたのですが、温度調整のためか投入量は絞り気味です。館内表示によればお湯を循環していないとのことで、たしかにワインレッドの浴槽縁からは少量のオーバーフローが見られましたが、湯口付近の槽内には適温湯が出ている吐出口があり、また洗い場近くの槽内にははっきりと吸引している穴が確認できましたので(右or下画像)、生源泉の投入を行いつつ、循環装置と放流式を併用しているのかもしれません。そうした湯使いのおかげか、42℃前後の丁度良い湯加減となっていました。


 

副浴槽の寸法は3m×1.8mほど。こちら側では塩ビ管からお湯が注がれているのですが、主浴槽の湯口よりは温度が若干低く、しかも「ここからの湯は飲用ではありません」という文言が付されていました。なお、湯口付近には蓋を被せた浅い溝が主浴槽と副浴槽を貫通しており、これで相互にお湯を行き来させているのかもしれません。

お湯はほぼ無色透明ですが、浴槽の大きさに対して生源泉の投入量が少ないためか、いくらか濁っているように見え、正直なところ鮮度感もいまひとつ。湯浴み中に湯の香を嗅ぎとれるようなことは無かったのですが、湯口においてのみタマゴ風味が微かに感じられました。なお塩素消毒が行われているとのことですが、特にそれらしき知覚は気になりませんでした。癖のないアッサリとしたお湯ですが、滑らかでマイルドな浴感は体に優しく、それでいて湯上がりにはしっかり温まって汗が止まらなくなりました。やっぱり天然の温泉は、たとえ掴みどころが無さそうな見た目であっても、普通の真湯とは明らかに異なる、内に秘めたるパワーを有しているんですね。
 

六日町温泉第14号井
単純温泉 58.6℃ pH8.04 溶存物質675.8mg/kg 成分総計677.1mg/kg
Na+:185.1mg(84.38mval%), Ca++:19.5mg(10.17mval%),
Cl-:216.7mg(64.86mval%), Br-:0.7mg, SO4--:45.2mg(9.98mval%), HCO3-:121.4mg(21.13mval%),
H2SiO3:44.8mg,
塩素系薬剤使用(県公衆浴場条例の基準を満たすため)、加水加温循環ろ過なし

六日町駅より徒歩16分(1.2km)
新潟県南魚沼市余川2708-8  地図
025-773-2990
ホームページ

日帰り入浴10:00~21:00(受付20:00まで)(火曜は16:00で終了)
650円(17:00以降500円)
ロッカー(貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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