温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

日景温泉

2009年08月28日 | 秋田県
※残念ながら2014年8月末を以て閉館しました。




羽州街道(国道7号)の矢立峠(秋田・青森県境)近くに位置する、日本秘湯を守る会会員の一軒宿です。周りを静かな秋田杉の美林に囲まれ、建物はいくつかの棟に分かれた趣のある大きな木造、一見すると外来入浴客に冷たいのかと思いきや、料金は400円で入浴可能時間は朝8時から夜9時までと、とても敷居の低い設定となっています。

日景とはこの宿の創業者の名前に由来しており、温泉は明治22年の磐梯山噴火の際に発生した地震によって湧き出したんだそうです。温泉成分の濃さから「三日一廻りの名湯」、つまり他の温泉ならば一週間以上は逗留しないといけない湯治がここなら三日で治ってしまう効能を有しているとアピールし、創業時から現在に至るまで湯治客を受け入れています。

玄関を潜り帳場で料金を払って左へ進み(右手には自炊部というところがあり、そこにもお風呂があることを後日知りました)、看板の指示通りに廊下を進んだ突き当たりに大浴場があります。引き戸を開けると立派な杉の壁や柱、ヒバ造りの浴槽、石敷きの床、そして優しい硫黄の香りが迎えてくれます。頭の上にわたされている梁の太さからは、秋田杉の産地ならではの、これぞ伝統的日本旅館の湯屋という風格が漂ってきます。そして窓の外から聞こえるカジカ蛙の鳴き声が湯屋に自然のさりげない風流さをもたらします。

雰囲気だけではなくお湯も頗る良好で、きれいな乳白色に濁っており、お湯を手にとってよく見てみると細かな白い粒子状の湯の華が無数に舞っていることがわかります。湯口にはコップが置かれているので飲んでみると、意外にもはっきりとした塩味にたまご味、そして渋みを帯びて口腔内に残る苦味が感じられました。上で湯治に有効な温泉成分が濃いと述べましたが、硫黄分や塩のナトリウム分から考えるに皮膚の疾患や症状に効能がありそうです。また、脱衣所の説明掲示によれば熱交換により加熱しているそうですが、それでも湯温は若干ぬるめで、かえってこの湯加減が浸かっている者に長湯を促し、お湯の質の良さも手伝って、なかなかお湯から離れることができません。

浴槽は男女別の内湯に大小の湯船がそれぞれ一つずつ、屋外に混浴の露天がひとつありますが、露天風呂は一応庭園風になっているものの、どこかとってつけてこさえたような感が否めず、私は風格があって無駄な設備の無い静かな内湯の方が心地よく寛ぐことができました。
脱衣所も浴室内も手入れが行き届いており、清潔感が溢れています。こんな立派なお風呂に400円で入れるとは、なんともありがたいことです。


内湯


内湯の湯口も木製


混浴の露天


玄関右手に立つ、懐かしい赤銅のポスト


旅館脇を流れる川の岸に咲いていました


含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(硫化水素型)
41.3℃ pH6.4 成分総計8.78g/kg 

秋田県大館市長走37 地図
0186-51-2011

8:00~21:00
400円
※残念ながら2014年8月末を以て閉館しました。

私の好み:★★★
コメント (2)
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八九郎温泉

2009年08月26日 | 秋田県


今回は「奥」の文字がつかない八九郎温泉です。奥々八九郎や奥八九郎はまさに山奥に湧く野湯でしたが、こちらは人里の隅っこにちょこっと開けた畑の中で湧いており、簡素ながら屋根に覆われ脱衣所もあるので、前者に比べればどなたでもアプローチしやすい温泉であるといえましょう。
とはいえこの八九郎温泉も数年前までは何らの囲いもなく、ただ田んぼの片隅でお湯が湧いているだけの野湯でした。それが年が経るにつれ囲いができ、ビニールハウスで覆われ、男女別に分かれ、と次第に温浴施設としての姿を成長させてゆき現在に至っています。

道路から見ると畑の奥にポツンとビニールハウスが1棟建っているようにしか見えませんが、よく目を凝らすとその上部から湯気が立ち上っているので、それが湯屋であることがわかります。民家の裏を通るあぜ道を歩いてビニールハウスへ到達すると、単なるビニールハウスにあらず、ちゃんと男女別に分かれており、きちんと閉まる引き戸も設置されています。靴を脱ぐ三和土のようなスペースもあれば、立派な脱衣スペースだってあります。脱衣スペースと浴室を仕切るビニールシートには温泉分析表まで貼られています。地元の農家の方が組み立てたのでしょうが、さすがビニールハウスのプロ、内部は完成度の高い仕上がりとなっており、外観から受ける想像を見事に覆してくれます。

源泉は浴槽のすぐ目の前にあり、そのまま直接浴槽へドバドバ大量に注がれているので、お湯は新鮮この上ありません。湯口で炭酸ガスが勢いよくシュワシュワ弾け、まるで泡風呂に入っているかのよう。温度もちょうどいい塩梅で、まるで人間に浸かってもらうために地表へ湧き出しているかのようです。
無色透明のお湯からは奥々八九郎温泉に似たような味、即ち旨味出汁味と塩味に金気味と炭酸味が混じったような味が感じられましたが、奥々八九郎温泉よりも塩味が若干濃いようでした。浴槽のオーバーフロー箇所は温泉成分の析出でコンモリと盛り上がっており、一部は千枚田状態になっています。また鉄分の影響で真っ赤に染まっていました。

人の手が全く加わっていない湧きたてのお湯だというのにちょうどいい湯加減になっており、しかも炭酸ガスたっぷりの新鮮な状態で存分に堪能できるとは、これを自然の恵みと言わずにはいられません。その上寸志でOK。地元の方々に深く感謝申し上げます。


ビニールハウスながら立派な造りになっています




分析表もちゃんと掲示されています




カルシウム・ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
41.6℃ pH6.4 成分総計5090.4mg/kg 

秋田県鹿角郡小坂町 地図

入浴可能時間不明(電気は引かれていますが、常識の範囲内で)
寸志

私の好み:★★★
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奥八九郎温泉

2009年08月24日 | 秋田県


前回の奥々八九郎温泉の手前にも地中からお湯がボコボコ湧き出す天然のジャグジーがあり、こちらは奥の字がひとつ減って「奥八九郎温泉」と呼ばれているようです。視界が開けたわかりやすい場所にある奥々八九郎温泉と違って、一応道沿いにあるものの藪の中で湧出しており、その道も滅多に人が通らない枝道なので、奥々八九郎温泉には辿りつけても奥八九郎温泉の存在には気づかない人が結構いらっしゃるかと思います。

奥々八九郎温泉の手前に林道が約90度北に曲がる箇所があるのですが、その途中で南の方へ向かって1本の枝道が分かれています。草が茂っていますが薄っすらと轍が残っているのでよく見れば道が伸びていることに気づくでしょう。この道を進むとやがて欄干の無いコンクリートの橋となり、この橋で沢を跨ぐと、すぐ右手の藪の中で奥八九郎温泉が湧いています。


湧出地の手前に架かる橋
このときは雨で沢が増水して、橋の上まで溢れ出していました


お湯が噴出する勢いは奥々八九郎温泉よりもこちらの方が強いかと思われます。お湯自体もこちらの方が炭酸ガスが多いように感じられました。温度を測ると6月中旬で35.8℃とかなりぬるめ。夏の暑い時期に涼む目的で入ったほうがよさそうな温度です。
さて画像を見てもお分かりの通り、林の下草類に囲まれたこの温泉を見ても、開放的な奥々八九郎温泉と違って入浴しようという気になれる人は少ないのではないでしょうか。私も入浴に躊躇いを覚えました。実際に入ってみると、ボコボコのジャグジーは楽しいものの、底には腐った葉や泥の類が溜まっていて気持ち悪く、また藪の虫の攻撃をかわさねばなりません。私は雨の日に行ったので虫の数は少なかったものの、もし晴天だったら夥しい数のアブやブヨが飛び回っていることでしょう。
ですので、この奥八九郎温泉は余程好奇心の旺盛な方か温泉マニア以外は、見学だけにとどめて入浴しないほうが身のためかと思います。


かなりぬるめ




野湯につき泉質不明

秋田県鹿角郡小坂町 地図
(この地図がリンクしているポイントはおおよその位置ですのであしからず) 

24時間入浴可 無料

私の好み:★
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奥々八九郎温泉

2009年08月22日 | 秋田県


気づけば今まで秋田県の温泉を1軒も紹介してこなかったので、今日からは何回か連続して秋田県の温泉を取り上げてまいります。まずはじめは温泉ファンに名高い野湯である奥々八九郎温泉を紹介しましょう。ここは入浴に適した温度のお湯が、まるでジャグジーのように地中から勢いよくボコボコ湧いているのです。その様を見れば温泉ファンならずとも興奮するに違いありません。人里離れた山奥の秘境という立地も手伝い、奥々八九郎温泉はファンの心を魅了しつづけています。

小坂町の市街地から国道282号線を碇ヶ関方面へ北上して野口集落へ達すると、あすなろ荘(老人ホーム)へは右折せよという旨の看板が現れるので、この看板のところで右折します。あすなろ荘を過ぎてなお直進すると、舗装道路が左へ直角に曲がる箇所に行き当たります。ここを道なりに左へ曲がると後日紹介する八九郎温泉の前を通って国道282号線へ戻るのですが、曲がらず真っ直ぐ舗装されていない林道に入ってどんどん進んでください。林道の入り口や途中には「奥八九郎温泉」と書かれた看板が立てられているので迷うことはないでしょう。林道に入ってから約3キロ弱程進むとやがて視界が開け、右手にお湯がボコボコ噴出している様が見て取れます(お湯の目の前まで車で行けます)。いくつか湯溜まりがあるので、自分の好みの湯加減になっているところを見つけたら、あとは脱衣して入るのみ。


国道脇に立つ「あすなろ荘」への案内看板
これを目印にして右折(小坂方面から行く場合)


林道入口
画像には「この先料金所あり」という看板が写っていますが、
これは山菜採取者を対象とする入山料金徴収でして、温泉利用者には関係ありません


途中このように看板が立てられているので迷うことはないでしょう。


薄く貝汁のように濁ったお湯からは、うまい出汁味に塩味・金気味・炭酸味をミックスしたような複雑な味覚が感じられます。お湯が噴出する湯溜まりの温度は約44℃でやや熱め。このためこれより下流の湯溜まりの方が湯加減はよいでしょう。周囲は温泉成分の析出によって白くこんもりと盛り上がっており、まるで天然の漆喰のようになっています。湯溜まりも腰を沈めると若干浅めですが湯船にはもってこいの深さになっています。

なおこの温泉に入るなら、小雨に降る日がベストです。なぜなら晴れた日にはアブの猛襲に見舞われるからです。アブは温度と二酸化炭素を感知して動物に寄ってくるのですが、高温でしかも炭酸ガスを出すこの温泉はまさにアブ達のパラダイス。裸になったらお湯の周りを飛び回っているアブに忽ち襲われてしまいます。しかしアブは雨に弱く、ひとたびポツポツ降り出すと途端に活動をやめて森へ逃げ帰ってしまうので、入浴するならアブがおらず且つ雨の被害も少なくて済む小雨がちょうどいいのです。私が訪問したときもまさに小雨が降っているときで、傘を差しながらの入浴にはなったものの、アブの被害に遭うことなく存分に天然のジャグジーを堪能することができました。

ちなみに「奥々八九郎温泉」というからには「奥八九郎温泉」や「八九郎温泉」があって然るべきでして、これらにつきましては次回以降紹介したいと存じます。


こんな感じで間断なくボコボコ噴出し続けています


いくつか湯溜まりができているので、自分の好みを見つけて入浴しましょう


奥々八九郎へのルート(略図)


野湯につき泉質不明

秋田県鹿角郡小坂町 地図
(この地図がリンクしているポイントはおおよその位置ですのであしからず) 

24時間入浴可 無料

私の好み:★★★
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芽登温泉

2009年08月19日 | 北海道


帯広から足寄国道(国道241号線)を北上して十勝平野を抜けて足寄町へ入り、大きく曲がって坂を下ると芽登集落にさしかかります。ここで道道88号線に入って置戸方面へ15km程北上すると「芽登温泉」と書かれた看板が目に入るので、それに従ってダートの林道(ヌカナン林道)を3~4キロ進めば、今回紹介する「芽登温泉」に辿りつきます。周囲には原生林以外なにもない、まさに大自然のど真ん中にいることを感じさせてくれる質素な一軒宿です。

お風呂は玄関を入って左側へ進むとあります。浴室にはカランが4ヶ所。明るく清潔感があるタイル貼りの内湯の浴槽からは、まるで川のようにザーザーとお湯が溢れ出ています。浴槽は大小ふたつに分かれており、小さいほうは温度はやや熱めで、大きな方は適温でした。いずれにもとても綺麗に澄んだお湯が注がれています。

この温泉の目玉は開放感溢れる混浴の露天風呂(女性専用の露天風呂もあるようです)。岩を組んだ大きな円形の湯船となっており、3つの湯口からふんだんに源泉が掛け流されています。目の前を流れるヌカナン川からはせせらぎの音が耳に優しく届き、また川面を吹く風がお湯で火照った体を程よく冷ましてくれるので実に爽快です。建物に背を向ければ視界に入るのは広い空、そして針葉樹林と川の流れだけ。雄大な自然を感じながら新鮮なお湯を満喫することが出来るでしょう。視線を川上の方へ遣ると、河原に小さな小屋が建てられており、そこからホースがこちらへ伸びているのが判るので、おそらくその小屋に源泉があるものと思われます。

お湯は無色澄明で、ほんのり苦味を帯びたタマゴ味とタマゴの匂いが感じられました。弱めながらつるつるすべすべとした浴感も得られます。なお匂いに関してですが、露天では上述のようにタマゴの匂いでしたが、内湯ではどちらかというとタマゴというより噴火口で嗅ぐ硫化水素臭に近い匂いが感じられました。

林道の奥にぽつんとある山の中の一軒宿ゆえに、車がないと来られませんが、帯広から余裕で日帰り圏内の距離にありますので、存分に自然の開放感を得たいときにはおすすめの温泉です。






源泉があると思われる小屋


単純硫黄泉
58℃ pH8.4 約230L/min(自然湧出) 成分総計270.961mg/kg 

北海道足寄郡足寄町芽登2979 地図
0156-26-2119
ホームページ

10:00~17:00は無料休憩室が利用可
500円
シャンプー・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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