温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

石和 旅館日の出温泉(前編・お部屋とお食事)

2023年07月30日 | 山梨県

(2022年7月訪問)
近年の猛暑はもはや殺人的であり、屋外を歩くだけでも眩暈がしますが、こんな時には体温と同程度のぬるいお湯に浸かって副交感神経を優位にさせ、心身をリラックスさせたいものです。関東近圏でぬる湯の宝庫といえば山梨県ですが、その中でも今回は「旅館日の出温泉」で一泊お世話になったときのことを記事にさせていただきます。私は自分の車で現地へ向かいましたが、中央線の石和温泉駅北口から徒歩10分圏内にあるので、電車でのアクセスも良好です。


敷地の入口には「元湯瀧鉱泉」と記された石碑が立ち、その後ろには源泉設備があります。敷地内に源泉があるということは、つまり宿のお風呂で自家源泉の温泉に入れるわけですね。なおこの日の出温泉は石和春日居エリアで最も古い温泉で、開湯は明治42年なんだそうです。


石和温泉といえば昭和的な歓楽要素の強い温泉街ですが、日の出温泉は石和温泉とは離れた場所にある一軒宿で、石和らしい歓楽的要素は一切なく、周囲はたいへん静かな環境です。お宿自体は静かな環境に相応しい、質実剛健な感じの3階建です。なお奥に屹立しているのは旅館とは無関係なマンションです。
玄関で声を掛けますと、若女将が対応してくださいました。


館内にはニャンコがいるため、玄関のドアは開放厳禁です。


今回案内してくださったお部屋は「桜」と名付けられた202号室。
8畳の和室に広縁が設けられたお部屋で、室内にはトイレやユニットバス(非温泉)のほか洗面台もあって便利です。


テレビやエアコン、冷蔵庫なども完備されていますが、wifiは帳場周りのみ飛んでおり、客室では利用不可でした。


こちらのお宿は比較的お安く泊まれるにも関わらず、お食事が美味しくボリュームも満点で、大食漢の御仁でもきっと満足するでしょう。しかも和風旅館にありがちな、食べ方に頭を捻るような懐石ではなく、家庭料理のような取っ付き易い献立が多いので、肩肘張らずにいただけるのも嬉しいところです。
上画像は夕食のようす。夏野菜、肉のグリル、魚のカマ、刺身、ウナギが入った茶碗蒸し等、ガッツリ食べ応えがあるお料理で、いずれも美味。


こちらは天ぷらと馬刺しですね。


ひと通りの料理を食べ終わった頃に出されたのが、白飯かわりのひやむぎと、ご当地名産の桃。
夏の暑い時期に食うひやむぎは美味い。そして山梨県の桃は最高に甘い。特にこの時の桃は、大きくて形も色も良く、甘さも極上で、大変すばらしいものでした。


一方こちらは朝食。いかにも和風旅館らしい献立で、こちらも美味しくいただきました。


食後のデザートは甲州名物、桃とぶどう。
本当に美味い!

さて次回記事ではぬる湯の名湯である日の出温泉のお風呂を取り上げます。

次回に続く。
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さがら子生れ温泉会館

2023年07月25日 | 静岡県

(2022年7月訪問)
私は全国津々浦々の温泉巡りを趣味としているので、北から南までいろんなところを訪ねてきましたが、訪問先はどうしても温泉資源が多いところに偏りがちなので、私とはあまりご縁が無い地域も結構あります。静岡県の旧榛原郡や旧小笠郡の両エリアはその典型であり、通過することはあっても、このエリアを目的とすることはほとんどありません。端的に申し上げれば私好みの温泉浴場がほとんど無いからです。しかしながら、よく調べてみたら「源泉かけ流し」を謳っている施設が営業しているらしいので、静岡県中部へ出かけた際に、ついでに立ち寄ってみることにしました。

東名高速を相良牧之原インターで下りて国道473号線に入り、日本屈指のお茶どころである牧ノ原台地を車で南下してゆくと、やがて今回の目的地である「さがら子生れ温泉会館」に到着します。
「子生まれ」という不思議なワードに興味を引かれますが、この温泉が子宝に恵まれる泉質だという意味ではなく、隣接する大興寺という古刹にある不思議な石を指しているそうで、裏山にある砂岩の崖から丸い小石が出臍のようにピョコっと出ては落下することが、初代住職から現在のご住職に至るまで29代続いているそうです。あたかも子供が生まれ出るかのように抜け落ちるため、子生れ石と名付けられて信仰を集めているんだとか。

競輪場のバンクを半分に切ったような形状をしている小洒落た建物で、その意匠を見れば結構なお金をかけて作ったんだろうなということは容易に想像できますが、それもそのはず、浜岡原発の電源立地交付金で建てられているのでした。


半円形の建物中央に玄関があり、その左手には物販やマッサージ、そしてレストラン、右手には休憩室やこれから利用する温浴ゾーンがあります。


下足箱に靴を預け(その鍵は自分で保管)、券売機で料金を支払って、入浴券を受付へ渡します。その際に半券を返してくれるのですが、この施設は4時間制なので、退館時に入館時刻が印字された半券を提示して、利用時間を確認しています。なお4時間を超えると超過料金が発生します。
施設内には大浴場の他に家族風呂もありますが、今回は大浴場のみの利用です。


丸い建物を右へどんどん進むと、その途中に浴場入口があります。新しい建物なので全体的に綺麗で明るく快適です。白色基調の内装で統一された更衣室には100円リターン式ロッカーがたくさん設置されているほか(予め100円玉を用意しておきましょう)、洗面台にはドライヤーが3~4個も用意されているので、使い勝手が良く便利です。


(浴場内の画像は公式サイトから借用させていただきました)
大浴場には「萩の湯」と「愛鷹の湯」があり、訪問日に男湯の暖簾がかかっていたのは「萩の湯」でした。このため、本記事では「萩の湯」について述べさせていただきます。

丸い建物の外縁部に位置している浴場は、屋根の全面が木材で造られ、壁には石を使っており、外側は全面ガラス張りで大変明るく、窓のサッシも縁が黒いので、屋根などの木材と相まって締まって見えます。天然素材を多用することで自然且つ落ち着いたシックなデザインです。
浴場へ入ったところには真湯の掛け湯が設置されているので、まずはこのお湯を肩から全身へ掛けます。洗い場にはシャワー付き混合水栓計15個並んでおり、シャワーの水圧は良好で、ボディーソープなどもちゃんと備え付けられています。

内湯の浴槽には、入浴剤が入れられた変わり湯と、小さな源泉かけ流し浴槽、源泉風呂、水風呂、そしてサウナが設けられています。サウナはここでも大変人気を博しており、玉のような汗をかいたおじさんお兄さんが出たり入ったりを繰り返していましたが、私の心を惹いたのはサウナでなく、勿論「源泉かけ流し浴槽」です。このかけ流しの浴槽では当然ながら循環はしていませんが、源泉温度の関係で加温されており、また消毒の行った上でお湯をかけ流しています。このためお湯から消毒臭がしっかり漂ってくるのですが、これは致し方ないところでしょう。ただ、加温しているとはいえ、比較的抑制的な加温であり、私の訪問時は37~38℃という長湯仕様だったため、湯船に浸かった私はついつい微睡んでしまいました。大変気持ち良いお風呂で、特に夏は最高でしょう。惜しむらくは浴槽が小さく、3人しか入れないこと。タイミングによっては源泉かけ流し浴槽になかなか入れないことがあるかもしれません。

「源泉かけ流し浴槽」の隣には、内湯の主浴槽である「源泉浴槽」が並んでおり、その大きさは目測で6m×3mほど。加水こそされていませんが循環・加温・消毒が行われており、湯加減も40~41℃という一般的な温度となっています。隣のかけ流し浴槽から溢れたお湯が、この「源泉浴槽」へ流れ込み、「源泉浴槽」を満たした後はオーバーフロー管を流れて排水(循環?)されているようです。
なお「源泉かけ流し浴槽」や「源泉浴槽」など内湯の浴槽は、共通して縁に木材が用いられており、内部は左官仕事と思しき人研ぎ石のようなザラザラした仕上げになっています。


露天風呂の浴槽は2つの正方形の角を重ね合わせたような形状をしており、部分的に屋根が掛かっています。浴槽のキャパは6人前後といったところでしょうか。露天風呂は内湯の「源泉風呂」と同じく加水のない源泉100%ながら加温・循環・消毒はしっかり行われており、浴感も内湯とほぼ同じです。
周囲は塀に囲まれていますが、囲まれた内側の庭がそこそこ広く、湯浴みの途中に利用できるベンチもあるので、周りの緑や静かな環境に囲まれながらの落ち着いてのんびりと湯あみすることができました。なお露天を囲む白い壁には子生まれ石をモチーフにしたと思しき石が数個埋め込まれており、出臍のように丸い石がぴょこっと塀から出ていました。


さてこちらのお湯についてですが、牧之原台地の中央部という立地でありながら、意外にも海水を思わせるような濃厚な食塩泉で、塩分が濃くてしょっぱいのが特徴的です。前回記事で取り上げた川根温泉も同様にしょっぱいお湯でしたが、川根温泉のように色付きなどは無くて湯の花も見られない無色透明である一方、川根温泉と同じくメタホウ酸が多い点は特筆すべき特徴でしょう。かけ流し浴槽を含め、源泉を使用している浴槽は全て加水が無く、どの浴槽からもツルスベの滑らかな浴感がしっかり得られます。冒頭で申し上げたようにこのエリアは温泉不毛地帯なので、消毒されているとはいえ掛け流しの浴槽が存在すること自体、大変貴重であり評価したいと思います。また綺麗で使い勝手も良いため、かけ流しにこだわらなくても利用価値は高いと言えるでしょう。


相良温泉 相良1号
ナトリウム-塩化物温泉 27.4℃ pH8.0 49.6L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質9.301g/kg 成分総計9.301g/kg
Na+:3320mg(97.42mval%),
Cl-:4715mg(90.43mval%), Br-:60mg, I-:7.8mg, HCO3-:849.5mg(9.46mval%),
H2SiO3:25.6mg, HBO2:294.7mg,
(平成27年10月13日)

静岡県牧之原市西萩間672-1
0548-54-1126
ホームページ

10:00〜21:00 第2火曜・大晦日・元日定休
620円/4時間
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★


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川根温泉 ふれあいの泉

2023年07月14日 | 静岡県

(2022年7月訪問)
箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川。
子供の頃に学校で習った言葉ですが、自分で旅するようになって実際の大井川を見たら、荒涼とした礫の河原がだだっ広く広がるだけで、肝心の川の流れは想像よりはるかに細く、これならば馬でも川を越せるのではないかと古の言葉を疑ったものですが、それもそのはず、上流に30以上もある水力発電用のダムで取水してしまうから、川の本流を流れる水が激減してしまうんですね。とはいえ、細くなってしまった大井川を流れる川の水は、今でも大変綺麗であり、上流に向かって右岸から左岸へ川を越す大井川鉄道の車窓から川面を見下ろすと、その清らかさに心が洗われる思いになります。


さてこの大井川鉄道が大井川を越す鉄橋のそばには、川根温泉の露天風呂があり、湯浴みしながら鉄橋を走るSLが眺められるとして、以前からとても有名です。私も20年近く前に一度利用したことがあるのですが、2022年7月、久しぶりに再訪してみることにしました。
大井川鉄道の川根温泉笹間渡駅から近く、また道の駅「川根温泉」と併設されているために利用客が多く、大きな建物を擁する館内は今回も大変賑わっていました。まずは玄関を入って下足箱に靴を預け(鍵は自分で退館時まで保管)、そばにある券売機で料金を支払います。


大きな提灯の下には大きな受付があるのですが、券売機で利用料金を支払った場合は、そこを通過して奥の温泉専用受付へ向かうことになります。なおその大きな受付付近には休憩室や物販コーナーがあります。


玄関から左へ折れ、座敷部屋の左に見ながら通路をまっすぐ進みます。温泉浴場は本棟に隣接する六角堂みたいな建物で、渡り廊下により接続されています。六角堂の入口に温泉専用の受付がありますので、そこで入浴券を提出します。訪問時、受付のおばちゃんはとっても愛想よく対応してくださいました。

この六角堂は、全体の4割ほどが男女の脱衣室で、残りが内湯の浴室という造りになっているようです。
脱衣室はそこそこ広く、無料のロッカーが設置されており、洗面台は3~4ヶ所、ドライヤーは2つほど用意されています。

(今回の記事にお風呂の画像はございません。関心ある方はお手数ですがGoogleなどで検索してみてください)
上述のように、六角堂の残り6割ほどは男女別の浴場(内湯)です。
壁沿いなどに配置された洗い場には13か14個のシャワーが設けられており、この他に入り口付近には掛け湯が用意されています。
内湯の浴槽はひとつだけで、湯口はSLみたいな形状をしており、そこから自家源泉の温泉が注がれています。浴槽のお湯は茶色みを有しがら黄色に弱く濁っており、特に室内では暗い黄土色のような濁り湯に見えます。かけ流しの湯使いです。

続いて有名な露天風呂へ。
大井川を渡る大井川鉄道の鉄橋を目の前にしたロケーションで、上述のように鉄橋を渡るSLを眺めながら湯あみすることができる、全国的にも極めて珍しい温泉露天風呂です。もちろんSLのみならず、列車が走っていない時には大井川や周辺の山々を眺望できますので、開放感も素晴らしいものがあります。

この露天風呂には浴槽が5個あり、男湯の場合、川に向かって左側に檜風呂、その隣に壺湯を二つくっつけたような41℃のお風呂、右手に41℃の細長いお風呂、そして川に面して44℃の浅めの湯船(上流)とその下流に当たる42℃の浴槽といった順に並んでいます。
このうち檜風呂は暑い時期になると水風呂として使われ、私の訪問時にもお兄さんたち次々にこの水風呂へ入り、気持ち良さそうな顔をしながら火照った体をクールダウンしていました。なおサウナは見当たらなかったような気がするのですが、もし誤りであればご指摘ください。

この水風呂以外には全て温泉が張られています。この中でも川に面している44℃の浴槽はお湯の透明度が他浴槽よりも高く、鮮度感が良好です。岩組みの上から温泉が落とされており、その岩にはトゲトゲしたものや、まるで筋肉のような曲線を描く析出が付着しています。おそらく岩の上では源泉に近い温度(つまり48℃近く)で、そこから浴槽へ落とされる過程で44℃まで下がるのでしょう。といっても44℃の湯船はさすがに熱く、長湯できません。
その下流にあたる42℃の浴槽が丁度良い湯船かと思います。
一方、それらとは別個になっている右側手前の細長い41℃浴槽は長湯向けの湯船であり、やはりトゲトゲの析出がこびりついた専用の湯口があるのですが、あくまで私の体感で申し上げると、こちらの浴槽は加水されているのではないかと思います(間違っていたらごめんなさい)。

海岸から結構離れた内陸の山間部で自噴する温泉ですが、そのお湯はかなりしょっぱく、また少々の出汁味も含まれている、純然たる高張性の食塩泉です。濃い塩味もさることながら、メタ硼酸の含有量が多いことも特徴のひとつでしょう。なお分析表には「微硫化水素臭」と記載されているのですが、少なくとも浴場の湯口ではそのような匂いは感じられませんでした。きっと湧出直後や貯湯タンクでは嗅ぎ取れるのでしょうね。また、お湯の濁り方から想像するとお湯に金気が含まれているように思えるのですが、匂いや味には金気らしさは得られませんでした。いや、塩辛さのために他の味や匂いがわからなくなっているのかもしれません。湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感が得られ、ロケーションも含めてとっても気持ち良く湯あみできました。
各浴槽とも大量かけ流しで湯量豊富。鮮度感もしっかり。ロケーションのみならず、お湯もまた素晴らしく、人気を博するのも頷けます。


敷地の島田寄り(下流側)に大きなは源泉施設があり、そこには近隣の木材によって作られた大きな木造の貯湯タンクがあります。


説明によれば、この木製貯湯タンクは、内径6.5メートル、高さ3.8メートル、有効水量100㎥。大井川流域(島田市内)で生育・伐採された樹齢80年以上の杉材を使用し、林業地域振興基金を活用して造られたそうです。


タンクの隣には温泉スタンドもあり、持参したポリタンクに温泉を詰めて持ち帰ることもできます。道の駅や温泉の受付で専用のコインを購入して利用します。60円でコイン1枚を購入でき、そのコイン1枚につき20リットル出るそうです。


茶里夢の里笹間渡温泉 茶里夢の泉笹間渡1号
ナトリウム-塩化物温泉 48.7℃ pH7.8 545L/min(掘削自噴) 溶存物質11.27g/kg 成分総計11.28g/kg
Na+:4031mg(94.98mval%), Ca++:131.6mg(3.56mval%),
Cl-:6462mg(97.40mval%), Br-:3.0mg, I-:2.3mg, HS-:0.1mg, HCO3-:293.6mg(2.57mval%),
H2SiO3:31.8mg, HBO2:238.3mg,
(2021年3月24日)

静岡県島田市川根町笹間渡220
0547-53-4330
ホームページ

9:00~19:00(最終受付18:00) 第1・第3火曜定休
520円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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焼津温泉 元湯なかむら館

2023年07月04日 | 静岡県

(2022年7月訪問)
静岡県の温泉といえば、その多くが伊豆半島に集中しています。静岡市など県の中央部にも温泉は点在しているものの、寸又峡温泉以外は温泉地として確立されていないような気がしますが、意外にも温泉資源が豊富なところとして挙げられる県央部の街が、マグロの水揚げで有名な焼津市です。
焼津駅を中心に市街地には複数の温泉入浴施設があり、どの施設でも同一源泉を引いて浴用などに供しています。例えばJR焼津駅の南口ロータリーには温泉の足湯があり・・・


しょっぱいかけ流しの温泉で足湯を楽しむことができます。


足湯には焼津の温泉について詳しく説明されている他、焼津の温泉に入れる施設もリストアップされています。
そこで今回はこの中から「元湯なかむら館」を訪ねることにします。


駅北口にまわって4~5分歩くと到着です。以前は渋い佇まいでしたが、リニューアルしてモダン和風の綺麗な建物に生まれ変わりました。館内にはカフェレストランもあり、ランチ等で利用することも可能です。
なおこの建物の右側には源泉に関するちょっとしたものがあるのですが、それについては後述します。

入館して受付カウンターにある小さな券売機で料金を支払い、お風呂がある右側の棟へ移動します。
なお右側の建物の1階が浴室で2階は休憩室です。脱衣室にはエアコンが完備されており、少々コンパクトであるものの快適に着替えることができました。


(公式サイトより画像を借用しております)
お風呂も全体的に小ぢんまりしていますが、濃淡のコントラストをはっきりさせたモノトーンの色調はいかにも現代的なインテリアデザインといった感じで、明るさとシックさを同居させることで気持ち良く湯あみができるかと思います。ただ実際のスペースだけは色調で如何ともしがたく、男湯の場合は浴室に入ると右手に洗い場があるのですが、水栓を無理やり5個並べているため、かなり窮屈です。男性が同時に洗い場を使う場合は3人が限界のような気がします。なお洗い場には石鹸やシャンプー類などの備え付けはありませんので、受付で購入するか、予め持参しておきましょう。

浴槽は内湯と露天があり、上画像は内湯の様子。ダークグレーのタイル張りで、その大きさは(目測で)2.5✕4メートルほどでしょうか。左の壁側にある湯口から落とされた温泉は、湯船を満たした後、奥の方へオーバーフローしていました。


露天風呂の浴槽もほぼ同じようなサイズ感ですが、内湯より若干小さいかもしれません(おそらく5人は同時に入れる大きさかと思われます)。内湯浴槽は奥へオーバーフローしていましたが、この露天風呂では湯口が奥に位置している関係で、手前側へオーバーフローしています。
市街地の中にあるため、さすがに周囲の景色を眺めることはできず、周りを黒の高い板塀で囲って目隠ししていますが、塀の上から入りこんでくる風で火照った体をいくらかクールダウンすることができました。

お湯は無色透明で、強いしょっぱさの他、苦汁のような味も含まれており、その強い塩分ゆえに、入浴すると体が力強く火照ります。冬には体の芯までしっかり温まりますが、夏は逆上せやすいので長湯しないよう気を付けた方が良いでしょう。なお匂いなどは特になく、湯中では食塩泉的なツルスベと、カルシウムの存在を思わせるキシキシ感が拮抗して肌に伝わりました。

この「なかむら館」のお風呂で素晴らしい点は、源泉温度50度以上で供給される温泉を、加水することなく、湯船へ投入する湯量を加減することによって温度調整し、完全かけ流しを実現しているところです。焼津地区の各温泉施設は大なり小なり循環させたり加温加水を行っているのですが、純然たるかけ流しはおそらく「なかむら館」だけではないでしょうか。供給量には限りがありますし、その中でかけ流しを実現するためには、いろいろと困難があるかと思いますが、たとえばお風呂の小ささもお湯の良さを活かすためなのだ、と思えばむしろ納得すらします。焼津に来たら是非とも一浴すべきお風呂です。


さて、冒頭でも申し上げましたように、焼津温泉では各施設が同じ源泉を引いているのですが、上画像はその源泉施設であり、ここから各施設へ温泉が供給されています。注目すべきは源泉を所有している企業の名前。その名は東海ガス。

以前から焼津では掘削により温泉を汲み上げていましたが、源泉井戸を掘るたびに湧出量が年々減少する傾向にあるため、当地では抜本的に問題を解決する新しい源泉井戸の掘削が求められていました。そこで開発された源泉井が上画像の「焼津港1号井」。2021年10月に稼働を開始し、日量1000トンの温泉が地下1500メートルから自噴しています。この豊富な湯量によって市内各施設へ安定した温泉供給が実現できたのですが、この温泉と一緒に上がってくるのが純度の高いメタンガスです。静岡県の焼津市や藤枝市など、旧志太郡エリアを中心にして都市ガスを供給している東海ガスは、このメタンガスを都市ガスとして地域へ供給する事業を始めました。まさに温泉とガスの地産地消。
なお温泉や鉱泉を汲み上げると天然ガスが伴ってくることがしばしばあり、そのガスを都市ガスとして利用する例は、当地の他、千葉県、新潟県などでも見られます。


こちらは源泉施設内部の様子。
中央に高い円塔が写っていますが、これは温泉が上がってくるパイプを内包した施設で、高さは約10m。地下からメタンガスと共に噴き上がってくる温泉が天板にぶつかることによって、温泉は下へ落ち、比重の軽いガスは上へと分離されるんだそうです。


施設の外側には数本のホースが付いた水栓があり、その根元は耐熱塩ビ管に接続されているので、もしかしたら蛇口を捻ったら温泉が出てくるのではないかしら、と淡い期待を抱きながら蛇口を開けてみたのですが、この時は何も出てきませんでした。おそらく元栓を開ければ温泉が出てくるのでしょう。


焼津温泉の源泉施設は、今回紹介した「なかむら館」の右手にもあり、私は画像を撮り忘れてしまったのですが
グーグルストリートビューで確認すると、ちゃんと「50号井」と書かれているのがわかります。焼津市街地には意外にも源泉井が点在しているのですね。


焼津港1号井
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 52.4℃ pH8.6 604L/min(掘削自噴) 溶存物質16270mg/kg 成分総計16270mg/kg
Na+:3533mg(53.17mval%), Ca++:2681mg(46.29mval%),
Cl-:9878mg(99.58mval%), Br-:36.1mg, I-:5.5mg, HS-:0.2mg, CO3--:13.1mg,
H2SiO3:28.5mg, HBO2:23.7mg, H2S:0.01mg,
(令和3年1月20日)

静岡県焼津市駅北1-14-7
054-628-4397
ホームページ

10:00~20:00(受付 19:30まで) 水曜定休
450円
ロッカー・ドライヤーあり、シャンプー類なし(購入か持参)

私の好み:★★★
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