前回記事に引き続き信州を巡りますが、今回は高山村の山中ではなく、千曲川の善光寺平の北西部へと下りてまいりました。真っ平らな畑の中に民家が点在する、現代信州の典型的な農村風景です。
そんな田園風景が広がる某所の農産品加工工場裏手には・・・
温泉の源泉と大きなタンクが設置されており、絶え間なく温泉が汲み上げられているのです。この温泉は当地で入浴などに供されるのではなく、わざわざ斑尾の某リゾートホテルまで運搬され、そこのお風呂で使われているんだそうです。そして運搬される時以外のお湯はいつもタンクに溜められ、オーバーフロー管から大量の温泉が捨てられているのです。とはいえ、こんなもったいぶった表現をしなくても、温泉マニアにとっては超有名な野良湯ですから、このブログで取り上げるまでもないでしょう。最近はテレビでも紹介されたらしいので、温泉マニアのみならず、珍風景が好きな方には既に名の知れた温泉なのかもしれません。
タンクのお湯を捨てるオーバーフロー管の下にはポリバスが据えられ、さらにその下に小さい桶があり、2段構えでお湯を受けています。ポリバスの周りにはデッキブラシなどが置かれていたので、おそらく洗車や何かを洗うときにこの捨て湯が使われているのかもしれません。槽の中へ注がれているお湯の温度は40℃弱のぬる湯。長湯したら気持ちよさそうな温度です。
さて、そのポリバスは人間が入れるだけの容量があります。人が入れるバスタブに入りやすい温度のお湯が注がれているのならば、そこに入りたくなるのが自然な心情というもの。、実際にこの浴槽で湯あみをしているマニアさんも多くいらっしゃいます。でも本来は湯浴みするための設備ではないため、着替えの場も無ければ目隠しも何もありません。野ざらしのまま清掃されるわけでもありませんから、浴槽の中のお湯には藻が大量発生しており、衛生面も気になります。目の前には工場の寮のような建物が建ち、また西側に広がる畑の向こうには民家が立ち並んでいます。さらに、源泉が面している路地は車(農家の軽トラなど)がたまに通ります。つまりここで入浴しようとすると、湯中で体中が藻だらけになるのみならず、寮や畑の向こうの民家などから入浴姿を見られてしまう可能性があるのです。
入るべきか入らざるべきか。To be or not to be. まるでハムレットのような懊悩にその場で苦しみ、煩悶した挙句・・・
ハムレットならぬハムスター程度の知能レベルである私は、「あ、そうだ、俺は頭のネジが何本か外れている馬鹿野郎だった」と気づき、どうせバカなら常識人を気取る必要はないと気持ちが吹っ切れ、気づけば服を脱いで入浴していました。お湯からはチオ硫酸イオンを含むお湯で多くみられるような茹でタマゴの卵黄みたいな匂いや味が感じられたほか、ほろ苦みやちょっとした甘みが感じられました。また味やフィーリングから察するに、硫酸塩的な要素も含まれているのではないかと思われます。実に面白いお湯です。予想通り、湯船の中の私は全身が藻まみれになってしまいましたが、お湯自体は面白いので、すっかり気に入ってしまいました。決しておすすめするような温泉ではありませんが、もしよろしければどうぞ。
温泉分析表の掲出なし
所在地など各種情報の掲載は控えさせていただきます。
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