温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

象潟 さんねむ温泉(入浴利用)

2025年02月17日 | 秋田県

(2023年9月訪問)
1ヶ月前に拙ブログで取り上げた「湯田川温泉 理太夫旅館」の記事中で、鳥海山の山頂まで往復登山した後に湯田川温泉で一泊して疲れを癒したと書き綴ったのですが、その登山前夜は象潟駅付近のビジネスホテル「サンネムホテルイン象潟」で素泊まりし、暗いうちにチェックアウトして登山口まで向かったのでした。このビジネスホテルは、同じにかほ市内にある温泉旅館「さんねむ温泉」(旧称「サン・ねむの木」)が運営しており、宿泊客は(自分で移動することを前提に)「さんねむ温泉」の大浴場を無料で利用できるため、せっかくなのでその特典を使うことにしました。


国道7号の沿道にある「道の駅 象潟ねむの丘」付近で象潟の漁港方面へ向かう道に入り、ちょっと進むと間もなく「さんねむ温泉」に到着です。海を臨むロケーションに建つ、比較的新しい建物の旅館です。


フロントで「系列のサンネムイン象潟に今夜宿泊するので入浴したい」と申し出ると、スタッフの方は笑顔で快く受け入れてくださいました。この日案内されたお風呂はフロント左手すぐのところにある1階内湯です。

どうやらこのお宿には2種類のお風呂があるらしく、一方は私が入った1階の浴場で、他方は3階にある展望風呂です。いずれも男女別の浴室が用意されており、3階展望風呂からは日本海が一望でき、とりわけ晴れた日の夕方には日本海に沈む夕陽を眺めながら湯あみできるのでしょうね。でもこの時の私は3階のお風呂にも入れることを知らず(てっきり展望風呂は旅館宿泊客専用だと思い込んでいました)、1階のお風呂のみ利用したのでした。このため今回の記事では1階浴場のレポートのみとなりますのでご了承ください。また浴場内は混雑していたため、お風呂の画像はございません。この点につきましてもご了承ください。

お風呂の位置としてはちょうど駐車場の真上に当たるのでしょうか、訪問時は既に日没後で真っ暗でしたが、大きな窓の直下には車が停まり、視線と水平方向には松の木が聳えているのがわかります。この松木立の向こうには日本海が広がっているはずですが、ガラス窓の下半分にはのぞき見防止のフィルムが貼ってあるため、浴室内で立っていれば外が見えるものの、湯船に浸かっちゃうと景色を楽しむことはできません。

洗い場には6もしくは7か所のシャワー付き混合水栓が設置され、全てのブースに仕切り板が取り付けられています。床には緑色凝灰岩(グリーンタフ)の石材タイルが敷かれており、歩くたびに足の裏から伝わる感触が良好です。浴槽は窓側に1つL字型の大きなものが設置され、15人前後入れそうな容量を有しています。湯船のお湯には加温循環消毒が行われているためか、味や匂いなどの特徴を見出すことはできず、見た目に関しては僅かに靄が掛かっているような微懸濁を呈していますが、浴槽縁の湯口から注がれているのは非加温で無色透明の冷鉱泉。この冷鉱泉を手にとってテイスティングしてみますと、はっきりとしたタマゴ臭とタマゴ味が感じられました。先日このブログで紹介した「金浦温泉 学校の栖」も硫黄感が強い冷鉱泉でしたが、その近所に位置する象潟エリアでも同様な冷鉱泉が湧出するようです。残念ながらその鉱泉が加温循環消毒される過程で硫黄感は喪失してしまうのでしょうね。でもこのような冷鉱泉を浴用に供している旅館で、非加温の源泉を入浴時に触れることができるだけでもありがたく、秋田県沿岸南部に点在する鉱泉の面白さを改めて認識した次第です。

なお3階展望風呂はその名の通り見晴らしは良いものの、1階浴場より狭いらしいので、この宿において眺望と浴場の広さはトレードオフの関係になっているのかもしれませんね。それはともかく、海を眺めながら綺麗なお風呂に入れるという一般観光客に受けそうなお風呂であることは間違いないので、もしこの界隈を旅行する機会があれば、宿泊先の候補として検討してみるのも良いかもしれません。


象潟温泉2号井
単純硫黄冷鉱泉 14.6℃ pH7.9 溶存物質0.4246g/kg
Na+:65.7mg(49.83mval%), Mg++:18.2mg(26.13mval%), Ca++:22.0mg(19.16mval%),
Cl-:93.1mg(47.05mval%), HS-:2.6mg, S2O3--:1.1mg, HCO3-:138.2mg(40.43mval%),
H2SiO3:43.0mg, H2S:0.4mg,
(平成27年2月20日)
加水なし
加温・循環・消毒あり

秋田県にかほ市象潟町字才ノ神31-1
0184-43-4960
ホームページ

日帰り入浴6:00~9:00、11:00~21:00(受付終了20:00)
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★



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金浦温泉 学校の栖

2025年01月29日 | 秋田県

(2023年9月訪問)
過疎化や少子化に伴って廃校になった学校跡地を観光向け施設へ再活用した例は、近年全国各地で見られるようになりました。関東近県ですと、西伊豆の松崎にある祢宜畑温泉「やまびこ荘」がその好例になるかと思いますが、鳥海山の麓に位置する秋田県にかほ市にも同様の施設があり、そこでは特徴的なお湯に入れるそうなので、行ってみることにしました。
私が訪ねた時期、辺りの水田ではちょうど稲刈りの真っ最中。黄金色の田んぼが青空に映え実に美しく、車を停めてうっとり眺めてしまいました。


今回の目的地である金浦温泉「学校の栖(すみか)」に到着しました。こちらはかつて大竹小学校として昭和55年まで地域の子供たちが通っていた学び舎で、なんと開校は明治7年というから驚いちゃいます。そんな長い歴史とたくさんの子供たちの想い出を有する小学校なんですから、地元の方としては簡単に過去帳入りさせるわけにいかなかったのでしょう。建物こそ建て替えられていますが、小学校時代の面影を残すように建てられているそうです。


駐車場の一角に建てられたこの構造物は「青雲の門」と称するそうです。校門をイメージして造られたものなのかしら。校門というより時代劇の関所のセットみたいですけど、でも将来の日本社会を担う子供たちを輩出してきたこの地に相応しい名称かと思います。


その「青雲の門」付近にはこのようなポンプが稼働していました。源泉を汲み上げているのかしら。


昭和の小学校といえば二宮金次郎像。
金次郎少年はみちのくのこの地でも、いまだに薪を背負いながら本を読んでいます。


この「学校の栖」は宿泊施設ですが、日帰り入浴の利用も多く、今回は私も日帰り入浴で利用させていただきました。玄関にある受付で料金を支払い、廊下を歩いて奥へ進みます。


廊下には「旧大竹小学校の歴史」と題して、かつての校長先生や校舎の写真を交えた小学校時代の記録が掲示されています。
長い歴史がある学校だったんですね。


廊下の途中で面白いものを発見。上の画像は食券券売機とメニュー表です。懐かしいチョークで書く月間予定表に、その月の日替わりランチメニューが書かれているのです。学校と言えば黒板ですよね。しかも食事や食堂ではなく給食と表現するあたりもユニークな演出です。この他、今回は利用していませんが、宿泊の客室が「●年●組」という感じでナンバリングされていたりと、 館内の随所に学校を思わせる仕掛けが施されており、見つける度に思わずにんまりしてしまいます。


廊下の突き当たりがお風呂です。
浴室入り口付近に何やら温泉に関する説明プレートが掲出されていますが、それについては後程触れます。


訪問時は混雑していたため、浴室内の自前画像はございません。公式サイトより画像を借用させていただきましたのでご了承ください。

更衣室は少々古い造りながら広くて明るく、使い勝手はまずまずです。そこを抜けてお風呂へ入ると、男湯の場合は右手窓側に白いお湯を湛えた浴槽が、左手の奥に勾玉のような形状をした浴槽、そして手前側に小浴槽、計3つの浴槽が目に入ってきます。
窓側の白濁湯は冷鉱泉の源泉を加温循環させたもので、しっかり白濁しており、タマゴ味や軟式テニスボール臭が感じられます。れっきとした硫黄泉です。

一方、その反対側(洗い場)側にある勾玉形の浴槽は「北投石温泉」とのこと。北投石に含まれるラジウムが健康に云々かんぬんとして、いろんな温浴施設にこの手の浴槽が設けられていますが、まぁこのようなものは信じる者に効能が顕れるような話だと私は思っています。個人的な感想を申し上げれば、この勾玉形浴槽のお湯は普通の真湯だったように感じました。

前置きが長くなりましたが、「学校の栖」の浴槽で白眉なのは浴室手前にある小浴槽です。今回の記事はこの小浴槽の素晴らしさを力説するためだけに書き起こしたと言っても過言ではありません。浴槽には無色透明の非加温冷鉱泉が掛け流されており、その縁から絶え間なくオーバーフローしているのですが、溢れ出しの流路となる床が白く染まっているところからして、この鉱泉が只物ではないことは一目瞭然。浴槽の中を見てみると白く細かな湯の華が無数に舞っており、近づくとタマゴ臭どころかクレゾールを彷彿させるような硫化水素的刺激臭が鼻孔をくすぐります。そして口に含んでみると口腔内粘膜がビリっと痺れるような苦味がはっきりと得られるのです。硫黄泉といえば山奥の地熱地帯を思い浮かべますが、当地は海から2km程度しか離れていないような田園地帯にもかかわらず、ここまで濃い硫黄泉が湧出するとは驚き以外の何物でもありません。しかも刹那の冷たさを堪えて肩まで浸かると、容易に表現できないほどの極上な爽快な浴感にこれまたビックリ。濃厚な硫黄感と爽快な浴感の虜になった私は、ひたすらこの小浴槽に入り続けてしまいました。


浴室入口手前に掲示された古そうな説明プレートによれば、当地の鉱泉は「硫黄谷地温泉」と呼ばれ、何百年も昔から自然湧出していたそうで、プレートが作成された当時のデータでは遊離硫化水素10.65mg含まれるとのことですが、館内掲示の平成27年2月5日付分析表によれば、いまではその当時の数値を上回る15.2mgの遊離硫化水素を含んでいるそうですから、硫黄泉としては今の方がパワーアップしていると表現しても良さそうです。

昭和の小学校を思い出させてくれるような懐かしい造りや演出はもちろんのこと、非加温かけ流し冷鉱泉の素晴らしさにはすっかり魅了されてしまいました。一浴の価値が十分にあります。おすすめ。


金浦温泉 
単純硫黄冷鉱泉 13.7℃ pH6.4 溶存物質0.6333g/kg 成分総計0.8705g/kg
Na+:22.4mg(12.93mval%), Mg++:25.3mg(27.62mval%), Ca++:85.1mg(56.35mval%),
Cl-:32.0mg(11.69mval%), HS-:3.4mg, SO4--:270.5mg(72.97mval%), HCO3-:64.1mg,
H2SiO3:122.1mg, CO2:222.0mg, H2S:15.2mg,
(平成27年2月5日)

秋田県にかほ市前川菱潟1
0184-38-3883
ホームページ

日帰り入浴6:00~20:30 第二水曜定休
月曜8:00~10:00は大浴場の利用不可(清掃のため)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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仁賀保 かみの湯温泉

2024年11月01日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
さて私は羽後本荘駅から羽越本線の普通電車に乗って仁賀保駅へやってまいりました。仁賀保駅といえば駅の真裏にTDKの大きな工場がありますね。昭和世代の私は、学生時代にTDKのカセットテープやビデオテープをたくさん買って録音や録画を繰り返しましたので、青春時代の記憶にはTDKの存在が色濃く残っています。高校生の頃、青春18きっぷで東北を旅している際に、車窓から仁賀保駅裏手に広がるTDKの工場を目にした時には、遠い秋田の地と自分の毎日が知らぬ間に結びついていたことに気づいて驚いたものです。


そんな旅の思い出がある仁賀保駅を出て、海の方へ向かって歩いてゆくと、やがて今回の目的地である「かみの湯温泉」に到着です。付近には平沢漁港があるためか、周辺は漁師町のような独特の雰囲気が漂っています。


裏手にはお湯を沸かすための廃木材がたくさん。いかにも銭湯って感じですね。
 

さて中へ入りましょう。銭湯の割りには妙に狭い下足場で靴を脱ぎ、金属製の松竹錠が刺さった下駄箱へ靴を収めてから、番台のお姉さんに湯銭を支払います。なお浴場内はボディーソープやシャンプーなどのアメニティ類が無いので、もし必要なものがあれば事前に番台で買っておきましょう。レンタルタオルもありますので、予算にこだわらなければ手ぶらでの入浴も可能です。

お風呂は露天風呂がある「長寿の湯」と、露天風呂は無いけど電気風呂やジェットバスがある「元気の湯」があり、奇数日は「長寿の湯」が女湯で「元気の湯」が男湯、偶数日はその逆という形で暖簾替えを行っています。私が訪ねた日は奇数日だったため、「元気の湯」に男湯の暖簾が掛かっていました。このため、以下は「元気の湯」について説明致します。また、私が訪ねた16時半頃は地元の爺様で大賑わいだったため、館内の画像はございません。ご了承ください。

脱衣室はまさに昭和の銭湯そのものといった雰囲気。室内には使いこまれた開放的な棚の他、無料のロッカーも用意され、お好きな方を使えます。室内にエアコンはありませんが扇風機は取り付けられていますので、湯上がり後のクールダウンも大丈夫。なお備えのドライヤーは1つです。

お達者クラブと化していた浴室へ入った途端、鼻孔を突くような弱い刺激臭が感じられました。無論爺様たちの加齢臭ではありません。温泉由来のヨード臭です。ということは、こちらの温泉も前々回の記事で取り上げた「安楽温泉」同様、日本海沿岸に点在する鹹水の温泉(鉱泉)かと思われます。この付近ですと象潟の「道の駅」にも(同じではないが)似たような泉質に入れる温泉施設がありますね。

「元気の湯」は、場内の右手及び左手奥に洗い場が配置され、昭和の銭湯にはおなじみの壁固定式シャワー(一部はホース付き)と押しバネ式(宝式)カランの組み合わせが十数セット並んでいます。なお水栓から出てくる水は源泉そのままの茶色い冷鉱泉で、お湯は加温された鉱泉です。なお水栓から出てくる鉱泉は後述する浴槽のお湯より鉱泉の良さや持ち味が出ており、個人的に気に入りました。特に冷鉱泉はコンディションが良く、桶に冷鉱泉を注ぐと芳ばしい香りが放たれ、麦茶色の水が泡立ちます。

メイン浴槽は左手にあり、歪な五角形もしくは六角形のような形状をしたタイル張りで、ジェットバスや電気風呂など仕掛け風呂が浴槽の半分近くを占めています。浴槽に張られたお湯はちょっと熱めに加温されており、濃く出しすぎた麦茶みたいな色を帯呈しています。そのお湯はしょっぱく、同時に清涼感のあるほろ苦みを伴い、ヨード臭や臭素臭のほか、鉱物油感も少々含まれているようでした。湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感をはっきりと感じられます。とはいえ、その心地よい浴感に惹かれて長湯するのは禁物。しょっぱいお湯ですからパワフルに火照り、場合によっては湯当たりするかもしれませんので、あまり長湯せず適当なところで湯船から出ましょう。

余談ですが、私が湯船に浸かって滑らかな肌触りを楽しんでいると、場内にいる爺さんたちが奥へ奥へと続々吸い込まれてゆく光景を目の当たりにしました。一体何が起きているのか、催眠術にかけられているのか、黄泉の国へ召喚されているのか、果たして私も奥へ導かれて良いものか、不安を覚えつつ湯船から出て勇気をもって奥へ行ってみると、そこにはサウナと水風呂があったのでした。地域を問わず皆さんサウナが大好きなんですね。


温泉の目の前は渺茫たる日本海です。お風呂上がりの脱衣室は常連さんで混んでおり、扇風機に当たるスペースもあまり無さそうだったので、サクッと着替えて海岸に出て、潮風に当たってクールダウンしたのでした。


体の火照りが落ち着いた後に歩いて仁賀保駅へ戻り、「特急いなほ」新潟行に乗車しました。羽越本線の秋田~酒田間は本数が年々減少しており、特にこの区間を走る特急は風前の灯火。いずれ全廃されるのではないかしら。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 19.5℃ pH8.0 溶存物質3871.8mg/kg 成分総計3884.8mg/kg
Na+:1229mg, NH4+:17.6mg,
Cl-:1498mg, Br-:8.5mg, I-:5.3mg, HS-:0.4mg, HCO3-:940.0mg,
H2SiO3:63.6mg, HBO2:16.6mg, CO2:13.0mg,
(平成20年11月13日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(温泉資源保護と衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため)

秋田県にかほ市平沢字家の後2番
0184-35-3178
ホームページ

13:00~22:00 毎週月曜・火曜定休(祝日は営業して翌日休業)
400円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5





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旧大内町(由利本荘市) かすみ温泉

2024年10月25日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
現在は由利本荘市に合併されてしまった秋田県旧山内町の山里に、浴感が魅力的な鉱泉があるらしいので、鉄道の旅の途中、レンタカーを借りて行ってみることにしました。由利本荘の市街地から芋川に沿って国道105号を東へ進み、早坂トンネルを潜る手前の十字路を右折。あとはひたすら道なりに長閑な田園地帯を進めば良いのですが、途中から人里を離れて山間部に入り、しかもどんどん坂を上がってゆくのです。「こんなところに本当にあるのか」と不安を覚えながら車を進めてゆくと、突如目の前に一軒の鉱泉宿が現れました。これが今回の目的地である「かすみ温泉」です。昭和30~40年代から時計の針が停まっているかのような外観で、営業しているのか心配になりますが、比較的新しい観光の幟が立っているところを見ると、今でもちゃんと営業している模様。駐車場は玄関の前を通り過ぎた先の奥にあります。


こちらが玄関。今回は日帰り入浴利用です。
ドアを開けて入浴をお願いしますと、女将のおばあちゃんが快く受け入れてくださいました。外観と同様、館内も昭和の懐かしい雰囲気が横溢しています。


お風呂は帳場の右側にあります。昭和な建物だからと侮るなかれ、トイレは洋式も用意されており、綺麗で快適に使えます。


山あいの鉱泉宿らしく、脱衣室はシンプルながらきちんとお手入れされており、ドライヤーも用意されていて、問題なく使えます。なおロッカーは無いので、貴重品は車の中に入れておいた方が良いかも。


お風呂も奇をてらわない、シンプル・イズ・ベストな構造。
向かっておくの窓下に浴槽がひとつ据えられ、その手前の左右両側にシャワーが1個ずつ取り付けられています。なおシャンプー類の備え付けも有ります。


浴槽は3人も入ればいっぱいになってしまう程度の大きさです。冷鉱泉なので当然ながら加温されており、循環も行われています。窓下の側面に設けられた2つの吐出口から循環したお湯が出ており、右側の側面にはお湯の吸引口もあります。


されマニア的に注目したいのが、浴槽の左側にある2つの水栓。右側からは加温された鉱泉が、左側からは非加温の鉱泉(源泉)が出てきます。
加温循環している鉱泉のお湯ですから、湯船のお湯や浴室内に漂う湯気からは、循環湯らしい独特の臭い(語弊を承知で申し上げると埃っぽい臭い)がするのですが、非加温冷鉱泉の水栓を開けると、芳しいタマゴ臭とともに鉱物油のような香りも一緒に放たれ、鉱泉を口に含んでみるとタマゴ味のほか、ゴムみたいな味や焦げたような味も同時に感じらるのです。

この鉱泉で特筆すべきは極上のニュルニュル浴感。とにかくツルスベ感が凄く、水栓から出てくる冷鉱泉を指先で触っただけでもその滑らかさがはっきりと分かります。源泉そのままの冷鉱泉のみならず、加温循環された湯船のお湯でも同様で、ウナギ湯と称しても決して過言ではありません。分析表によると炭酸イオンが55.7mg含まれ、且つpH9.6というはっきりとしたアルカリ性でもありますので、こうした要因がウナギ湯と称したくなるほどの強いニュルニュル感をもたらしているものと思われます。

訪問時は湯船の加温が強かったため、ニュルニュル感を楽しんで長湯しているうちに逆上せそうになってしまいましたが、火照った体をクールダウンすべく、桶に冷鉱泉を汲んで頭から浴びたら最高に気持ち良く、心身がシャキッと蘇りました。
物価高騰の昨今、過疎地に湧く冷鉱泉を沸かし続け、しかも400円という安さで営業しているだなんて、ちょっと信じられません。この冷鉱泉は入る価値があり、わざわざ来た甲斐があった。


ちなみに、お宿の名前の由来は、建物裏手にある秋田県の天然記念物「かすみ桜」。
樹齢400年という老木で、幹周り5メートル、樹高約14メートルという大木でもあり、それゆえ枝ぶりが大変立派。
きっと春にはすばらしく綺麗なのでしょう。
お風呂の窓からも「かすみ桜」が見えますので、その季節になればまさに天国のようなお風呂になりそうです。


いわゆる規定泉(総硫黄の項により温泉法が規定する鉱泉に適合) 11.9℃ pH9.6 溶存物質0.5854g/kg 成分総計0.5854g/kg
Na+:177.2mg(97.72mval%),
OH-:0.7mg, HS-:0.9mg, S2O3--:0.4mg, HCO3-:279.5mg(57.97mval%), CO3--:55.7mg(23.54mval%),
H2SiO3:16.6mg,
(平成30年12月12日)
加水なし
加温・循環・消毒あり

秋田県由利本荘市葛岡字落合43
0184-66-2418
紹介ページ(由利本荘市観光協会公式サイト内)

日帰り入浴時間不明
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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由利本荘市 安楽温泉

2024年10月18日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
由利本荘市の本荘城から望む鳥海山。
その秀麗な姿に心を奪われてしまいました。ずっと眺めていても飽きません。今回の記事とは関係ありませんが、この時の景色が忘れられず、私はこの3ヶ月後に鳥海山に登って、頂上から麓の景色を見下ろしたのでした。


さて今回は本荘の城下町に湧く温泉「安楽温泉」を訪ねます。市街地南部にある温泉一軒宿で、昭和一桁の頃から営業している老舗なんだとか。一時は源泉が枯れてしまったようですが、掘り直したら現在使用している源泉が湧いたそうです。
駐車場は広いので停めやすいかと思います。県道に沿って建っている建物はレストランや宴会場のようで・・・


お風呂がある旅館はその奥です。土足のままフロントの前へ上がって日帰り入浴したい旨を伝え、湯銭を支払います。スタッフの方から入浴のポイントカードを作りませんかと勧められたほど、日帰り入浴に積極的のようです。本館の裏手から建物を一旦出て、その先の階段を上がったところに浴場を擁する宿泊棟があります。この宿泊棟を入ったところで靴を脱ぎます。


中庭を見ながら左側の廊下をまっすぐ進んでゆくと・・・


その突き当たりが浴場です。2つの浴場を男女暖簾替えで使っており、私の訪問時は右側のお風呂に男湯の暖簾が掛かっていました。脱衣室はそこそこ広く、エアコンや扇風機が設置されており、洗面台やドライヤーも複数台用意されているので、使い勝手は良好です。なお脱衣籠のそれぞれの棚には小さな貴重品用ロッカーが付いています。日帰り入浴客のみならず宿泊客も自室の鍵を保管するのに便利ですね。


ここから先、浴場内の画像は公式サイトより借用しています。
着替えて内湯に入った途端、刺激を伴うヨード臭がプンと鼻孔を突いてきました。この個性的な香りが、濃厚なお湯に入れる期待を高めてくれます。私が利用した右側の浴室の場合、入って右手前に水風呂とサウナ、その奥に洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が計8ヶ所設けられています。一方、窓がある左側に内湯の浴槽があり、大きさは失念してしまいましたが、なかなか広く、お湯がしっかりかけ流されていました。


露天風呂は周囲の木々に囲まれた静かなロケーションで、右側には落葉樹、左側には竹林が植わり、これらの木々を見上げながら東屋の下で湯船に入ります。露天浴槽の大きさは目測で2m×3m程でしょうか。こちらもしっかり温泉がかけ流され、浴槽のまわりは成分付着により赤く染まっていました。

こちらの源泉はいわゆる鹹水の温泉で、非常に塩辛く、ヨードや臭素なども多く含んでいます。おそらく源泉湧出時点では天然ガスも相当含まれているのではないかと想像します(浴用へ供する段階でガス抜きされるはずですが)。この手の温泉は能登半島以北の日本海側に多く、氷見・中条・男鹿・積丹・豊富など広い範囲にわたって分布しており、一部では実際に鹹水から天然ガスやヨードを取り出して生産しています。湯船のお湯はモズグリーンを帯びた山吹色(ベージュ?)に濁り、湯中では湯の花が大量に浮遊しています。特に内湯浴槽の底はベージュ色の細かな湯の花が大量沈殿しており、私が湯船に入ったところ、それらが一気にボワっと舞い上がって全身にまとわりついてきました。上述のように露天のオーバーフローにより浴槽まわりが赤く染まっている他、内湯露天ともに湯口周りは濃いベージュ色に染まっていました。なお館内表示によれば塩素消毒を実施しているそうですが、温泉に含まれる刺激を伴う臭素臭やヨード臭が強いため、消毒臭はほとんどわかりませんでした。
湯中では滑らかなツルスベ浴感がしっかりと感じられるのですが、加水していないので成分が非常に濃く、特に塩分濃度が高いため強烈に火照ります。このため長湯は禁物です。適度に出たり入ったりを繰り返しながら、体に無理させない入浴が肝要です。

公式サイトによれば敷地内の源泉から毎分200L湧出しているんだそうです。綺麗なお風呂で濃厚なかけ流しの温泉を楽しめる幸せ。実に素晴らしい。市街地とは思えないとても良いお湯でした。


含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉 49.6℃ pH7.6 溶存物質21.24g/kg 成分総計21.25g/kg
Na+:7594mg(9301mval%), Ca++:274.1mg,
Cl-:12420mg(98.79mval%), Br-:64.9mg, I-:23.7mg, HS-:0.1mg, HCO3-:196.8mg,
H2SiO3:152.1mg, HBO2:145.4mg, CO2:16.5mg,
(令和2年6月21日)
加水加温循環無し
消毒あり(県条例で規定する水質基準を満たすため塩素系薬剤を使用)

秋田県由利本荘市大堤下4
0184-22-0637
ホームページ

日帰り入浴12:00~20:00 月曜・火曜は休み場合あり
700円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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