温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

まえばし駅前天然温泉 ゆ~ゆ

2019年11月29日 | 群馬県
県内各地で温泉が湧いている群馬県は、温泉県という名称を巡って大分県と競い合う東日本屈指の湯どころでもありますが、そんな土地柄だからか、県庁所在地の最寄駅前という至って交通至便な場所にも、良質な温泉浴場を擁しているのであります。



前橋駅から駅前の並木道を進んだ右手にあるのが、温泉ファンからの誉れが高い「まえばし駅前温泉 ゆ~ゆ」です。私は今まで何度か訪れていますが、ブログで紹介したことがなかったため、ネタ集めを兼ねて先日再訪致しました。



玄関廻りはまるでシティホテルかフィットネスジムのようなファサードです。駅前ですので電車でのアクセスが楽チンなのはもちろんですが、建物の裏手には駐車場も完備されていますので、車でのアクセスも良好です。



1階のカウンターで受付で下駄箱の鍵(100円リターン式)と引き換えに、館内精算用の番号札が手渡されます。この札を手にしながら2階へ。
2階には大きな食堂が営業しており、この日も多くのお客さんで賑わっていました。



食堂と同じ2階に浴場の入口があり、紅と紺の暖簾がさがっています。

なお、この先は撮影禁止につき、以下の画像は公式サイトからお借りしております。



天井が高い浴室には大きなガラスを採用されており、外光がふんだんに室内へ降り注ぐことにより明るく開放的な入浴環境が作り出されています。都市部の公衆浴場ですから洗い場スペースは広く確保されており、シャワー付きカランが壁沿いに11個、二つの島に12個、奥の壁沿いに4個、計27個設置されているのですが、私の訪問時は混雑していたため、その多くが埋まっていました。すごい人気なんですね。

大きな窓の下には、まるでプールを彷彿とさせるような大きさの主浴槽が据え付けられています。その主浴槽の手前側の角には、ぬるい源泉のお湯が注がれる掛け湯専用の槽があり、その近くに主浴槽用の湯口が設けられています。掛け湯はぬるめですが、湯口から出るお湯は熱いため、大きな主浴槽でも掛け湯側の湯加減は若干熱めである一方、その反対側の奥は若干ぬるめでした。
内湯のお湯はやや赤みを帯びた淡い黄色を呈しつつ、少々濁っています。温度調整等のために槽内循環されていますが、同時に新鮮源泉も投入されており、お湯の溢れ出しもしっかりと見られ、オーバーフローが流れる室内の床は、元々白い素材だったにもかかわらず、赤茶色に染まっていました。また掛け湯のお湯は主浴槽へと落ちるのですが、その流下する部分には石灰の析出がコテコテにこびりついていました。色や析出などにより、お湯の濃さがビジュアル的に伝わってきますね。

なお浴室の奥にはサウナ室があります。おぼろげな記憶なのですが、10年ほど前に訪れた時、サウナは無かったような気がしますので、おそらく後から増設したんだろうと推測されますが、いかにも後付けらしく何とかスペースを捻出して作ったような感があり、広い浴室に比べると若干物足りなさを覚えるかもしれません。



続いて露天へ。
周囲は市街地ですから周囲は高い塀に囲まれており、景色は望むべくもありません。しかし西洋のガーデン調に設えられたこの露天ゾーンは寛ぐに十分スペースが確保されており、実際にこのゾーン内に置かれた数台のデッキチェアーでは、お風呂で温まった体をクールダウンさせるべく、お客さんたちが寝そべってノンビリ過ごしていらっしゃいました。
露天の浴槽は内湯をひとまわり小さくさせたような感じですが、それでもなかなか大きなもの。内湯のお湯の色合いは赤みを帯びた黄色でしたが、露天ではそれよりも緑色に傾いているように見えます。外気の影響を受けるためか、内湯より若干ぬるめの湯加減でしたが、むしろそれが人を長湯へいざなうのか、たくさんのお客さんが瞑目したり、仲間同士でおしゃべりしたりと、思い思いのスタイルでのんびり湯浴みしていました。

内湯の掛け湯下にある湯口にてお湯を口に含んでみたところ、はっきりとした塩味に鉄錆味が感じられ、アブラ臭も嗅ぎ取れます。上述のように石灰の析出が見られるお湯なので、引っかかりのある浴感なのかと思いきや、食塩泉らしい滑らかなツルスベ浴感が得られ、且つ、食塩泉らしいパワフルな温浴効果が如何なく発揮されるため、お風呂上がりは大変気持ち良く、いつまでも湯冷めせずに体がホコホコし続けました。

ちなみにこちらの施設で使われている源泉は、施設の直下にあるんだとか。駅前の市街地なのに、こんな本格的且つ実力派の温泉に入れるのですから、前橋という街にはただただ驚くほかありません。温泉ファンのみならず地元の方々からも支持される良質な温泉です。


くりまの湯
ナトリウム-塩化物温泉 55.5℃ pH7.3 133L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質4.70g/kg 成分総計4.74g/kg
Na+:1544mg(90.31mval%), Mg++:20.3mg, Ca++:98.0mg,
Cl-:2221mg(85.43mval%), HCO3-:641mg(14.33mval%), Br-:10.3mg,
H2SiO3:59.6mg, HBO2:80.4mg, CO2:36.2mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
循環あり(温度調整のため)
加温なし

JR両毛線・前橋駅より徒歩3分程度
群馬県前橋市表町2-10-31
027-224-0111
ホームページ

10:00~23:00(受付22:30終了) 年中無休
平日650円、土日祝等750円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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四万温泉(山口) 三木屋旅館

2019年11月24日 | 群馬県

前回記事の四万温泉・新湯地区から、四万川をちょっと下った山口地区へと移ってまいりました。
今回、山口地区の日帰り入浴で伺ったのは、大正元年創業の老舗「三木屋旅館」です。歴史あるお宿ですが、現代的な建物からは気品が伝わってきます。



玄関前のつくばいには、ぬるい温泉が落とされていました。建物へ入る前から温泉のお湯に出逢えると、何となく嬉しくなっちゃうのは私だけでしょうか。



午後3時半頃に訪って日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。



帳場で湯銭を支払いますと、お宿の方がフェイスタオルを私に下さると同時に、お風呂まで案内してくださいました。階段で2階へ上がり、絨毯敷きの廊下を歩いてゆくと、すぐ右手に浴場棟へつながる渡り廊下が分岐します。お風呂は内湯と露天があり、お宿の方は露天をすすめてくれたのですが・・・



まずは内湯「不老の湯」に入らせていただくことにしました。階段を上がった先に暖簾が掛かっており、左が女湯、右が男湯です。



綺麗ながらも必要最小限の設備に留めている脱衣室を抜けて内湯へ。
木材と石材の組み合わせにより落ち着いた雰囲気の内湯には、総木造の浴槽が設けられており、大きさは私の目測で1.2m×3.6mほど。この浴槽からは木のぬくもりや優しさとともに、老舗宿らしい重厚感が伝わってきます。
洗い場にはシャワー付きカランが計4基取り付けられ、カランからはボイラーの沸かし湯が出てきます。



お湯は木枠の湯口から静かに注がれており、湯船を満たしたお湯は窓側の縁からしっかり溢れ出ていました。お湯の投入量が絶妙な塩梅に調整されているため、とても快適な湯加減が維持されていました。静かで落ち着ける上品なお風呂です。



内湯に満足した私は、一旦着替えて再び廊下へ戻り、今度は露天風呂へ向かいました。専用の勝手口から宿の裏手に出て外履きに履き替えます。そして目の前の階段を上がると、まず目に入ってくるのがこのあたりの集落のお墓。意外なものの登場に少々面食らいましたが、気持ちを取り直してお墓の前を右に折れて階段を更に上がると、その先に露天の湯小屋がありました。扉を開けて中に入ります。手前が女湯、奥(左)が男湯です。



露天の上屋は木造で、開放的かつゆとりのある造り。
斜面の高台に位置し、山口集落を見下ろすようなロケーションです。露天風呂があるスペースは板敷きになっていて、あたかも能の舞台のようです。屋根にすっかり覆われているものの、圧迫感は無く、むしろ谷に向かって開放的なので、屋根の存在はあまり気になりません。
浴槽の大きさは1.2m×2.4mといったところでしょうか。縁には木材、内部には石板が採用されており、市緑豊かな周囲の環境と、静かで落ち着いたお風呂の雰囲気に大変よく合っています。訪問時はお湯の投入量が絞り気味だったのですが、おそらく源泉温度が熱いため投入量で湯加減を調整していたのかもしれません。とはいえ、私が湯船に入るとしっかり溢れ出ていきました(その代わり湯嵩の回復には時間を要しました)。
なおこの露天風呂にも洗い場にあり、シャワー付きが2つ並んでいます。余談ですが、シャワーのお湯を出すと、裏手からボイラーの動作音が聞こえてきました。



上述のように周囲を見下ろす場所に位置しているため見晴らしがよく、目下を横切るバス通り(旧メインストリート)や集落、四万川、そして対岸の山の緑を一望できます。空が広くて緑がとっても綺麗です。山の木々の上を鳥たちが囀りながら飛び交っており、小鳥の声を音楽にしながら大変のんびりと湯浴みすることができました。なお対岸には国道のバイパスが走っており、その橋からこちらが見えてしまうのですが、基本的にこの辺りは車で通過しちゃいますから、道路からこちらに気づく人は少ないでしょう。

内湯・露天とも温泉は完全掛け流し。夏季には加水されるそうですが、少なくとも私の訪問時は湯量調整により湯加減をコントロールしていており、加水は無かったように思われるので、源泉の持ち味を大切にするべく、余程熱くならない限りは加水をできるだけ避けているのかもしれません。源泉名は内湯の浴室名にもなっている不老の湯源泉。無色澄明で綺麗に澄んでおり、湯面からは木材のような香ばしい香りと石膏の匂い、そして味が感じられます。いずれもそれほど強くありませんが、意識して感じ取ればしっかり確認できるかと思います。入浴して間もなくはスルスベの滑らかな浴感ですが、肩まで入って全身がお湯に包まれると、硫酸塩泉らしい引っかかるような浴感も得られます。トロミがあり肌にしっとりと馴染んでくれるとても良いお湯です。私は露天で時間を忘れて、ぼんやりといつまでも入り続けてしまいました。群馬県民にはお馴染みの上毛かるたの読み札で「よ」は「世のちり洗う 四万温泉」と詠われていますが、このお風呂に浸かっていると、まさに私の心の中に溜まっていた塵や滓がオーバーフローとともに流さ去ってゆくようでした。
今回は日帰りでしたが、次回は宿泊してゆっくり湯浴みしたいものです。


不老の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 51.9℃ pH7.4 蒸発残留物1.45g/kg 成分総計1.43g/kg
Na+:276mg, Ca++:167mg,
Cl-:455mg, SO4--:280mg, HCO3-:79.4mg,
H2SiO3:104mg, HBO2:31.2mg,
(平成13年3月26日)
夏季のみ加水あり(他季節は加水なし)、加温・循環・消毒なし

群馬県吾妻郡中之条町四万甲3894
0279-64-2324
ホームページ

日帰り入浴15:00~
1000円
ドライヤー・ロッカーの備え付けなし

私の好み:★★★
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四万温泉 河原の湯共同浴場

2019年11月19日 | 群馬県

前回に続いて上州・四万温泉を訪ねます。前回の日向見地区から来た道を戻って、四万温泉で最も温泉街らしい街並みが形成されている新湯地区へとやってまいりました。今回取り上げるのは共同浴場「河原の湯」です。前回記事でも触れましたが、拙ブログではなぜか四万温泉を取り上げる機会がほとんど無かったのですが、私自身は何度も訪れており、この河原の湯にも複数回入っております。
河原の湯をご存知ない方にご説明しますと、上画像の中央に写っている大きな温泉ホテルの真下で二つの川が合流していますが、この合流地点に何やら小さな倉庫小屋みたいな構造物があるのをお分かりいただけますでしょうか。



もう少し近づいてみましょう。道路から下った川の際に曲線を描く小さな建物がありますね。これが共同浴場「河原の湯」です。なお浴場の上は小さな公園になっています。



実際に階段を下りて湯屋の入口前に立ち、川に向かって写真を撮ったのが上の画像です。まさに河原に設けられた浴場なんですね。ちょっとでも川が増水すると浸水するのではないかと心配したくなるようなロケーションですが、でも四万温泉バス停(終点)の至近にあり、また四万温泉のシンボル的存在でもある積善館から近いので、当地に複数ある共同浴場の中では、最も訪問観光客の目に触れやすい場所と言えるかもしれません。

では早速中へ入りましょう。
外観から想像できるように建物はとてもコンパクト。男女別に分かれたドアを開けると、その中の脱衣室はかなり狭く2~3人が限界でしょうか。男湯の場合、中に入るとすぐ右に寸志箱が取り付けてあり、左側に棚などが設けられています。寸志制の無人浴場ですから、利用する場合は予め小銭(百円玉を数枚)を用意しておきましょう。



更衣室の奥にあるドアを開け、ステップをちょっと下って浴室へ。
浴室も決して広くないのですが、天井はちょっぴり高く、その高さが温泉地の共同浴場としても矜持を誇示しているようでした。



周囲の石積みに紛れてわかりにくいのですが、浴室の奥には「昭和十三年 寿之湯」と書かれた石碑が立っていました。この浴場の旧称なのかな?



男湯の場合、室内の右手(女湯側)が洗い場で、水道の蛇口が2つ設けられています。シャワー等は無いので、お湯は桶で湯船から直接汲むことになります。なお洗い場の床には緑色凝灰岩が採用されているのですが、湯船のお湯の溢れ出しが流れるところは赤茶色に染まっているため、元の素材の色がわからなくなっていました。



浴槽の大きさは(目測で)2m×1.5m。キャパは2~3人でしょうか。浴室と同様にコンパクトな浴槽ですが、むしろこの小ささがお湯の良さを際立たせています。と申しますのも、隅っこの湯口から注がれるお湯は、浴槽の容量に対してはるかに多く、ドバドバ注がれるお湯により惜しげもなく大量にオーバーフローしているのです。

そんな湯船に私が入ると、お湯は室内に音を轟かせながらザバーっと豪快に溢れ、肩まで体を沈めて目線が湯面に近づくと、その刹那にオーバーフローするお湯が縁の高さをはるかに越え、まるで湯面全体が数センチ盛り上がっいているように見えました。そして、浴槽の縁が完全に視界から消えたのでした。お湯が表面張力の限界を超えて一気に床へざばっと溢れ出す瞬間は、ちょっとした贅沢感、豪快感、そして多幸感を楽しめます。湯水の如くとはまさにこのお風呂の事を言うのでしょう。その一方で慎ましやかな庶民的生活を送っている私は、お湯を贅沢に溢れ出させることに対する罪悪感を覚えてしまい、自分の吝嗇さというか、性根に染みついている自分の貧乏根性が、つくづく嫌になってしまいました。



私のことはさておき、湯口に置かれたコップで飲泉してみますと、金気や石膏の味と匂いが感じられました。どちらかと言えば金気の方が主張が強かったかな。お湯は無色透明で濁っていないのですが、むしろ大量投入ゆえに濁る暇なく溢れ出てゆくと表現すべきでしょう。
湯口のお湯そのままですとちょっと熱めの湯加減なので、好みによって加水することも可能ですが、源泉のお湯をストレートな状態で入りたかった私は、いっさい加水をせずにちょっと熱いままで入浴させていただきました。湯船に入り初めはスルスルスベスベの滑らか浴感が体を包むのですが、間もなく引っかかる感じも得られ、やがて肌全体にお湯がしっとりとなじんでいくます。実に良いお湯です。

川岸の狭い空間にへばりつくように建てられている浴場だからか、換気の状態があまり良いわけではなく、私が訪問した時はちょっとしたミストサウナ状態だったのですが、それもあってか、体の芯まで非常によくあたたまり、お風呂から上がった後もしばらく汗が引きませんでした。改めて良いお湯であると再認識した次第です。
なおこのお風呂は15:00ちょうどに締められ、清掃作業が入りますので、ご利用の際はくれぐれもご注意を。


河原の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 63.6℃ pH6.5 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質2.04g/kg 成分総計2.07g/kg
Na+:467mg(68.95mval%), Ca++:150mg(25.48mval%),
Cl-:695mg(67.13mval%), Br-:4.5mg, SO4--:420mg(29.93mval%),
H2SiO3:142mg, HBO2:49.8mg, CO2:30.8mg,
(平成19年9月12日)

群馬県吾妻郡中之条町大字四万
四万温泉協会(中之条町観光協会内)公式サイト

定休日9:00~15:00 無休
寸志(無人)
ロッカー・石鹸類・ドライヤーなし

私の好み:★★★

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四万温泉(日向見) 中生館

2019年11月13日 | 群馬県
拙ブログでは全国の温泉を広くあまねく取り上げているつもりですが、なぜか有名温泉地にもかかわらず手薄になっている場所があります。群馬県の四万温泉はその代表例。特段恨みがあるわけでも敬遠しているわけでもないのですが、なぜか10年前に1軒(御夢想の湯)しか取り上げてきませんでした。そこで今日から連続して四万温泉を取り上げてまいります。2019年の初夏に四万を訪れ、日帰り入浴を楽しんでまいりました。



四万川の渓谷に沿って南北に広がる四万温泉は、日向見、ゆずり葉、新湯、山口、温泉口という5つの地区に分かれており、最も奥に位置する日向見地区は四万温泉発祥の地とされています。まずはこの日向見へ向かい、10年前に拙ブログで取り上げた共同浴場「御夢想の湯」の隣にある温泉旅館「中生館」を訪ねます。



扁額は立派なのですが・・・



正直なところ地味な外観であるため、宿名が書かれた看板に気づかなければ、この建物が旅館であるとわかる方は多くないかもしれません。玄関を開けて日帰り入浴をお願いしますと、対応してくださった女性スタッフの方は、建物の控えめな存在感と同化するかのように慎ましやかな佇まい。一旦中に入って、様子を確認した上で私の入浴を受け入れてくださいました。



その女性の方がお風呂の入口まで案内してくださいました。お風呂へ向かう途中の廊下には、爽やかな色合いのタイルが貼られた共用洗面台が設置されており、昭和のレトロな面影を色濃く残しています。



また、その洗面台の前にはアメニティ類やフェイスタオル、そして飲料水のサービスなどが用意されていましたが、これらは宿泊者用かと思われますので、日帰り入浴の私は持参したタオルを使用しました。


館内にあるお風呂は4つ。いずれも共用洗面台の奥にあるステップをちょっと下った先にあり、手前側が内風呂「槙の湯」、ステップ下の右側に内風呂「薬師の湯」、正面にある脱衣所の向こう側に露天風呂「月見の湯」、そして沢の対岸にある混浴露天風呂「かじかの湯」といったラインナップです。日中は「槙の湯」が女湯、「薬師の湯」が男湯という設定になっていますが、夜7~9時の間は男女暖簾替えとなるので、宿泊すると両方入れます。とはいえ、日帰り入浴利用の私は男湯にしか入れませんので、今回の記事で取り上げるのは「薬師の湯」と「月見の湯」です。



源泉名と同じ名前を冠する浴室「薬師の湯」は、まさに山の湯小屋といった風情。木造の上屋は川に向かって下る片傾斜の屋根で、足元には石が敷かれています。窓の外からは直下を流れる沢の音が聞こえ、山の緑も実に美しい。なお室内にシャワー等の設備はありません。昭和から時が止まっているかのような佇まいですが、それゆえ実に趣き深く、じっくりお湯と対峙するに相応しい静謐の空間です。



浴槽は2つに分かれており、両方とも2人サイズですが、ひとつは浅めで、他方は一般的深さ。その2つの間に湯口があり、双方に対して温泉をトポトポと投入しています。湯口の周りには羊の頭のような白い析出がビッシリと付着しており、温泉成分の多さがビジュアル的に伝わってきます。

綺麗に澄み切った無色透明のお湯は完全掛け流しで、それゆえちょっと熱く感じる湯加減かもしれず、また硫酸塩泉なので、お湯に入った瞬間、脛などにピリっと軽い刺激を覚えるかもしれませんが、でも一旦肩まで浸かって体をお湯に慣らすと、この上なく良い湯加減に感じること間違いありません。とても素晴らしいお湯です。



続いて、露天風呂へ向かいましょう。
露天の脱衣室には温泉を詠んだ俳句がたくさん貼られていました。句を嗜む方は、湯浴みしていると気持ち良くなって、自ずと句が思い浮かぶのでしょうか。俳句の才が皆無な私には全く思い及ばない世界です。



内湯同様、露天風呂の浴槽も石造りですが、内湯と違って2分されておらず、その代わり中央にテーブルみたいな大きな岩が沈められています。おそらくこの岩に腰を掛けたり凭れ掛かったりするのでしょうけど、その大きさが入浴スペースをつぶしているため、実際に肩まで浸かれる部分は狭く、露天に入れる人数はせいぜい2~3人程度でしょうか。
内湯よりも若干ぬるいので、どちらかといえば長湯向き。沢を吹き抜ける風を体に感じながら入るお風呂は格別の気持ち良さがあるでしょうね。


さて、この露天風呂にはサンダルが並べられています。
これを履いて塀を出て、階段を下り・・・



いまにも落ちそうなボロい橋で沢を渡たると、対岸でお湯を湛えているのがお宿ご自慢の露天風呂「かじかの湯」です。この「かじかの湯」は混浴であり、水着やバスタオルの着用が認められています(バスタオルは借りられます)。通年利用できるわけではなく、5月中旬~10月中旬まで入浴可能とのこと。お宿のホームページによれば7~9月の夏季が特におすすめなんだそうですが、沢沿いという環境ですから、ブヨやアブがちょっと心配です・・・。でも私が訪れた日は雨が降っていた上、梅雨寒だったため、あたりを飛び回る虫は皆無で、とっても快適な湯浴みが楽しめました。なお浴槽の脇には簡素な脱衣用の衝立と籠がありますから、ここで着替えることもできますね。



沢岸の岩盤上に石を積んで重ねて作った浴槽2つ並んでいますが、奥(上流側)はぬるいので、実質的に入れるのは手前側だけでした。大きさは2人サイズ。湯口からトポトポとお湯が落とされており、完全掛け流しの綺麗なお湯で、湯加減も絶妙。お湯に浸かるとお世辞抜きで夢心地でした。



沢の岸にひっそりと佇む秘湯然とした素晴らしいロケーション。
目の前を流れる沢は大変綺麗で、イワナの魚影もはっきりと見えました。山の緑も美しく、心まで洗われます。

さて、こちらのお風呂に引かれている源泉は薬師の湯源泉。無色澄明で、ほんのりとした石膏臭や弱芒硝味、そしてしっかりとした石膏味や硬水らしい味(重くて硬く、砂ではないが鉱石を連想させるような味)が感じられます。湯中ではキシキシと引っかかる浴感が得られますが、しっとり且つとろとろとしており、実に上質なフォーリングを有するお湯です。そして適温にもかかわらず硫酸塩のパワーが如何なく発揮されることにより非常によく温まります。完全放流式の極上湯です。

設備がとても古く渋い佇まいであるため、好き嫌いが分かれるかもしれませんが、少なくとも私は大変気に入りました。今度は泊って時間を気にせずゆっくり湯浴みしたいものです。


薬師の湯
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 48.2℃ pH8.9 9.6L/min(自然湧出) 溶存物質1.13g/kg 成分総計1.13g/kg
Na+:113mg(29.95mval%), Ca++:229mg(69.31mval%),
Cl-:47.1mg(8.64mval%), SO4--:662mg(89.95mval%), CO3--:10.2mg
H2SiO3:67.4mg,
(平成13年3月28日)
加温加水循環消毒なし

群馬県吾妻郡中之条町大字四万乙4374
0279-64-2336
ホームページ

日帰り入浴10:00~14:00
500円
シャンプー類あり・ロッカー及びドライヤー見当たらず

私の好み:★★★
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栗駒 駒の湯温泉 2019年期はまだまだ営業中

2019年11月07日 | 宮城県
※2019年度の営業は11月17日で終了致しました(冬季休業に入ります)。
来年春の営業再開までしばらくお待ちください。


みちのくの名峰・栗駒山の山腹に湧き出でる名湯・駒の湯温泉。
この歴史ある名湯が2015年に復活して以来、拙ブログでは定期的に取り上げて応援を続けておりますが、先日(2019年11月初旬の連休)も当地へ行ってまいりましたので、簡単にレポートさせていただきます。


宮城県道42号線を山に向かってひたすら上がり、栗駒山中腹の集落である耕英地区へとやってまいりました。
栗駒山といえば東北屈指の紅葉の名所。山全体が秋の色彩に染まり、その美しさに魅せられて全国から多くの方がいらしゃいます。今年(2019年)は秋になっても暑い日が続いたため紅葉の時季が遅れましたが、さすがに11月になると栗駒山頂付近はすっかり葉を落とし、紅葉前線はこの中腹付近まで下りていました。



前日に仕入れた情報によれば、耕英地区から近い栗駒山中腹に広がる湿原「世界谷地」付近の紅葉が見頃を迎えているとのことでしたので、駒の湯温泉へ行く前に、ちょっと寄り道してみることに。道中の路傍に立ち並ぶ木々が実に美しく、途中で何度も止まって、その美しさに見惚れてしまいました。



車道の突き当たりにある駐車場に車を停めて、湿原までの歩道を歩きます。




錦絵の世界に紛れ込んだかのよう。夢心地です。
心も足取りも軽く、とても幸せな気分で湿原を目指します。



「世界谷地」の湿原は既に紅葉の見頃が過ぎ、冬支度へと移行していましたが・・・



広々とした景色がこの上なく爽快。栗駒山の頂上も望めますね。
いつまでも眺めていたくなります。



さて、爽やかな秋の散歩を終えたところで、駒の湯温泉へ向かいましょう。
温泉のまわりも、ちょうど紅葉が盛りを迎えていました。



駒の湯復活応援団の一員である私は、この日も湯守のお手伝いをすべく、営業時間より早めに現地へ到着し、お風呂掃除に勤しみました。お湯を抜いて浴槽や床など丹念に洗い、換気扇や窓などの汚れをしっかり拭き取ります・・・



清掃を終え、お湯を張った状態のお風呂。これでお客様をお迎えすることができますね。
もう既に何度もお風呂掃除を行っていますので、私も慣れた手つきでサクサクと作業を進めることができ、微力ながら湯守のお役に立てたのではないかと自負しております。



お昼は湯守が手打ちした十割蕎麦をいただきました。
とっても美味しい!
ごちそうさまです。

連休初日であったこの日は、紅葉狩りのついでにお立ち寄りくださったと思しき方や、湯治を目的にしている方、単に入浴を楽しみたい方のほか、新たにこの日から応援団に加わった方もいらっしゃり、いろんな方々が集って賑やかな一日となりました。

さて、冬になると深い雪に覆われてしまう駒の湯温泉は、雪が降りはじめる頃にその年の営業を終えます。毎年11月下旬に冬季休業となりますが、今年は例年に比べると温暖な日が続いているため、いつもより遅い時期まで営業できるかもしれません。

具体的な日程が決まりましたら、駒の湯温泉の公式サイトで案内されますので、適宜ご確認ください。

おそらく今週末には紅葉の時季も終わり、山の木々は葉を落として、冬の準備に入るでしょう。
紅葉シーズンが過ぎると、駒の湯温泉はお客さんの数もひと段落するため、週末でもゆっくり入れる機会が増えるかと思います。駒の湯のぬる湯は、ゆっくりじっくり入ってこそ、その良さを実感できますから、駒の湯の素晴らしさを愉しみたければ、むしろ今これからが好機と言えましょう!
冬季休業まで日数は限られていますが、でもまだ時間はありますので、みなさま是非とも足を運んで、名湯と蕎麦をご堪能ください。


営業期間:4月下旬~11月中下旬(冬期休業)
営業時間:10:00~17:00(16:00頃に受付を終了しますが、状況により前後します)
定休日:水曜日および第2・4木曜日定休(ただし祝日の場合は営業し翌日休業。なおGWやお盆は営業します)
入浴料金:大人500円(中学生以上)、小学生以下300円
(注1)備え付けの石鹸やシャンプー等はありません。
(注2)収容人員が限られた小さな湯小屋ですので、週末や連休など繁忙期には、入浴までお待ちいただくことがあります。

宮城県栗原市栗駒沼倉耕英東  
公式サイト




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