温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

甲府市 大滝温泉

2013年11月30日 | 山梨県
※現在は「ヘルシースパ サンロード」としてリニューアルされました。

 
初めて出会った人との第一印象と、実際にその人の品性に触れた後とでは、えてして前後の印象に大きな乖離が生まれることがありますよね。その場合において、たとえば、怪しげだったり或いは貧相な第一印象にもかかわらず、いざ話してみたら器が大きく朗らかで且つクレバーだったりすると、印象の高低差によって、その相手をかなりの善人のように思ってしまう傾向があるはずです。
いまや温泉巡りをする際にはネット上の情報が欠かせませんが、今回取り上げる甲府市の「大滝温泉」に関するネット上の口コミを見ても、はじめは期待していなかったけど、入ってみたらお湯が気に入った、といったような内容が多く見られました。見た目で損をしているとは残念ですが、とはいえ皆さんお湯の良さには満足なさっているようです。かく言う私は5年前に一度利用しており、その時は確かに、施設としては小さなスーパー銭湯という程度の認識しかありませんでしたが、お湯の良さはしっかりと記憶に残っており、ネットの口コミを読んだ時には思わず頷いてしまいました。
そんなイメージを抱きながら、久しぶりに先日再訪したところ、外観が和風な装いに変わっており、屋根は黒く外壁はカラシ色に塗装され、落ち着いたカラーリングにまとめられていました。勝手な想像ですが、外観で損をしないよう、一念発起したのかもしてませんね。



参考までに、日没後に撮影した画像で恐縮ですが、上画像は2008年に訪問した際に撮影した外観です。建物の躯体は現在と同じですが、外観は確かに面白みに欠けるものでした。なお、リニューアル前は「大滝温泉おふろの国」という名称でしたが、現在は単に「大滝温泉」となっています。温泉といえば「和」をイメージする方が多いでしょうから、外観も名称も、従来のスーパー銭湯的な色彩を払拭して、和風路線へと方向転換したのかもしれません。



玄関にて靴を下足箱に収めます。なお下足箱のカギは受付で預けずに退館時まで自分で管理しますから、紛失しないように注意しましょう。館内もすっかり綺麗に生まれ変わっており、どこもかしこも白くピカピカに輝いていました。受付の左手には休憩室が用意されており、2階へ上がると食堂となっているようです。


 
脱衣室に設置されているロッカーは100円玉を使うリターン式ですから、利用の際には予め100円玉を手元に用意しておきましょう。スピーカーからジャズが流れる室内はそこそこ綺麗で、洗面台が4台並んでおり、それぞれにドライヤーが用意されています。壁には「天然自噴温泉 ~源泉 使いきりの湯~」と書かれた貼り紙が誇らしげに掲示されていました。


 
浴室のレイアウトは以前と変わりありませんが、タイルなどは貼り替えられており、まるで新設のお風呂を利用しているかのようです。浴室内には洗い場の他、窓下にある大きな主浴槽、そしてサウナと水風呂が設けられています。
主浴槽には43℃の温泉が張られており、後述する露天風呂を含めても、この浴槽のお湯が最も熱い設定となっていました。「かけ流し」の言葉には偽りがないようでして、槽内には怪しげな吸引口など無く、隅っこの湯口から投入された源泉は、湯船を満たした後に窓下の溝へと溢れ出ており、れっきとした放流式の湯使いとなっていました。



洗い場には12個のカランが並んでおり、オートストップ式のカランとシャワーの組み合わせなのですが、いずれも単水栓ですからお湯しか出ません。


 
露天エリアではいろんな浴槽に入れます。主浴槽(内湯)が面しておるガラス窓の向こう側には、打たせ湯2本と4~5人サイズの屋根付き露天風呂が並んでおります。いずれも温泉が使用されていますが、打たせ湯はともかく、右側の屋根付き露天風呂に関してはお湯の投入量が絞られており(この日だけ?)、かなりぬるめの湯加減でした。この露天のお湯は打たせ湯の方へと流れ、更に打たせ湯側面の穴より排湯されています。



打たせ湯の左側には2つの壺湯があり、いずれも同じ大きさで同じような湯加減のお湯が張られていました。壺湯の楽しみといえば、体にフィットするお籠り感と、体を沈めた時にザバーっと豪快にあふれるお湯ですが、もちろんここでもその両方を楽しむことが出来ました。こちらも投入量がやや絞り気味であるためか、屋根付き露天風呂ほどではないにせよ、ややぬるめでした。



壺湯の左側に配置されているジャグジー露天風呂は、露天エリアでは最も大きい6~7人サイズの岩風呂で、その中央ではものすごい勢いで泡がボコボコと上がっていました。湯加減は壺湯とほぼ同様の40~41℃です。 


 
投入口からふんだんに源泉が供給されており、ジャグジーの勢いも借りて、しっかりとした量のお湯が手前側から溢れ出ています。
ぬるいお湯の温泉浴場が多い山梨県らしく、内湯の主浴槽以外は悉くぬるい設定となっているのが面白い点ですね。なおお湯の鮮度は良い方から、内湯(主浴槽)>壺湯>ジャグジー露天風呂>屋根付き露天風呂という順でした。露天のぬるさに関しては、投入量を絞っているためなのか或いは加水しているのか、はたまたその両方なのか、そのあたりの事情はよくわかりません。



お湯は琥珀のような褐色を呈しており、小豆色の湯の華がたくさん浮遊しています。湯口でお湯を桶に汲んでみると、容易に湯の華を捉えることができました。この湯の華は内湯や壺湯で特に多く見られました。また、はっきりとした清涼感のあるほろ苦い重曹味と微金気味、そして鉱物油臭と弱モール臭に微金気臭が感じられました。典型的な甲府盆地の温泉らしいモール系のお湯であり、ツルツルスベスベの肌触りと、湯上がりの爽快感には素晴らしいものがありました。近隣の温泉銭湯と同等の料金でありながら、掛け流しのモールのお湯と多様なお風呂が楽しめる、コストパフォーマンスに優れた施設であると言えましょう。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 48.8℃ pH7.6 363L/min(動力揚湯) 溶存物質1688mg/kg 成分総計1708mg/kg
Na+:364.4mg(78.27mval%), NH4+:2.1mg, Ca++:36.6mg,
Cl-:256.3mg(34.43mval%), Br-:1.1mg, I-:0.4mg, HCO3-:839.4mg(65.52mval%),
H2SiO3:128.9mg, CO2:19.8mg,

身延線・国母駅より徒歩25分(2.0km)、あるいは甲府駅バスターミナルより山梨交通バスの「山梨大学付属病院」行(57番)で「大里南団地」バス停下車、徒歩2分程度(250m)
山梨県甲府市大里町4144-4  地図
055-243-1126
ホームページ
※現在は「ヘルシースパ サンロード」としてリニューアルされました。

10:00~24:00 第2火曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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(甲府)湯村温泉 ホテル吉野

2013年11月29日 | 山梨県
 
モール系の温泉が多い甲府盆地にあって、開湯1200年の歴史を有する甲府の奥座敷湯村温泉は、周辺の温泉とは似て非なる無色透明の石膏泉的な特徴を呈しており、上品な肌ざわりながらパワフルな入り応えがあるので、その魅力に私は惹かれて偶にどうしようもなく入りたい衝動に駆られてしまいます。そんな湯村温泉にあるお宿の中でも、今回は「ホテル吉野」で日帰り入浴してまいりました。


 
玄関前に立っている看板の「湯めぐり」受け入れ状況を確認した上で玄関を訪います。ロビーに置かれた棚には「吉野美術陶器参考館」と書かれた札が掲示されており、帳場まわりには骨董品が所狭しと置かれていました。入館した時には営業しているのか不安になるほど館内が静まり返っていたのですが、やがて奥の方からワンちゃんの鳴き声が聞こえ、その後にお宿の方が出てきてくださいましたので、日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。



玄関上がって右手に帳場があるのですが、すぐ左手には紺の暖簾がかかっており、これが浴室の入口です。


 
奥の方に金魚が泳ぐ水槽が置かれた脱衣室の壁には、やや古めの分析表が掲げられています。室内には懐かしいスタイルのマッサージチェアが置かれ、洗面台やドライヤーなど基本的な設備・備品も用意されています。棚に収められているカゴがちょっと小さく、一般的な服装や荷物よりも、宿泊時の浴衣を入れるのにピッタリな大きさでした。


 
内湯はごく一般的なタイル張りですが、目の覚めるようなコバルトブルーの浴槽が非常に印象的で、この青色と暖色系の壁の対比が鮮やかに映えていました。なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基設置されており、水栓から出てくるお湯は真湯です。


 
湯口からトポトポと源泉が注がれ、黒い石の浴槽縁から絶え間なく溢れ出ています。私が湯船に体を沈めたらザバーッと勢い良くお湯がオーバーフローしていきました。槽内には吸引口など見られないので、完全放流式の湯使いであると判断して間違いないでしょう。このコバルトブルーの湯船はおよそ10人サイズかと思われますが、でも若干浅い造りとなっており、ちょっと寝そべらないと肩まで浸かれないので、その点を考慮すると実質的な容量は7~8人といったところかもしれません。


 
男湯には露天風呂も併設されており、内湯からサッシを開けてコンパクトなテラスのような所に出ると、1~2人サイズの陶器の瓶風呂が据えられていて、白い析出が付着している石樋の湯口から源泉が注がれていました。その投入量は一見するとあまり多いようには思えないのですが、実は湯船のキャパに見合った量に調整されており、私が湯船に入ってみますと、勢い良く音を立てて豪快に溢れ出ていったのですが、まもなく湯船の嵩は元に戻ってゆきました。お湯が湯船から溢れ出てゆく瞬間って、なんとも言えない贅沢な気分が味わえますよね。



こちらで使われているお湯は敷地内で湧出している自家源泉なんだそうでして、見た目は無色透明であり、露天の湯口に置かれたコップでお湯を口にしてみますと、そのお湯からは鉱物油の匂いがはっきり漂い、加えて石膏臭や微かな臭素臭も嗅ぎ取れました。そして弱塩味や石膏味の他に弱い苦味も感じられました。このお湯で感動したのが泡付きでして、内湯でも露天でも、入浴するとすぐに気泡が付着し、気づけば全身泡まみれになっていました。湯中ではツルスベ浴感に少々キシキシ感が混在しているものの、泡付きによるフワッとした軽やかな浴感も加わり、総じてツルツル感とした優しく爽快な浴感が優っているようでした。

内湯・露天ともに40~1℃という微睡みを誘う湯加減となっており、ついつい長湯したくなるのですが、決して濃いお湯ではないにもかかわらず、じっくり全身浴していると強い温浴効果がボディーブローのようにじわじわと効いてきて、気づけばフラフラになって逆上せる寸前になっていました。湯上がりもしばらくは汗が引かずに火照りが持続するのですが、にも関わらず、火照りの峠を越すと一転して爽快感に包まれ、肌も程よくサラサラしました。実に不思議なパワーを持つ、クオリティの高いお湯だと思います。


ホテル吉野源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 40.9℃ pH9.0 26.9L/min(動力揚湯) 溶存物質1360mg/kg 成分総計1360mg/kg
Na+:357.0mg(78.67mval%), Ca++:76.9mg(19.45mval%),
Cl-:393.5mg(56.23mval%), Br-:0.9mg, I-:0.2mg, SO4--:370.5mg(39.06mval%), HCO3-:14.6mg, CO3--:13.5mg,
H2SiO3:103.8mg, CO2:0.0mg,

甲府駅バスターミナルより山梨交通の路線バスで「湯村」あるいは「湯村温泉入口」下車。なお「湯村温泉入口」の方が本数は多い。湯村温泉方面へ向かう路線は多数あるので、詳しくは現地の案内所で問い合わせされたし
山梨県甲府市湯村3-11-14  地図
055-253-2878

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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荒城温泉 恵比須之湯

2013年11月27日 | 岐阜県

温泉施設名をGoogleなどで検索すると、公式サイトや温泉関係のポータルサイトではなく、温泉ファンのサイトやブログが上位に表示されるような温泉は、大抵の場合はアタリ(つまり良泉)だったりしますが、岐阜県の丹生川ダム手前にある荒城温泉「恵比須之湯」もその典型であり、多くの温泉ファンから熱い支持を集めている公衆浴場であります。先日安房峠(トンネル)を経由して帰京することがあったので、そのついでにこちらへ寄り道してまいりました。到着したのは夜8時頃でしたが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、また浴室から外へ漏れ聞こえるお客さんの声から察しても、館内は相当賑わっているようでした。



駐車場の一角には温泉スタンドがあるのですが、この日は「故障中」の札が下げられていました。
このスタンドの前には丹生川のコミュニティバスのバス停が立っているのですが、一日1~2本程度しかなく、山間部にお住まいの方が里へ出勤通学することを目的としたダイヤとなっているので、このバスを利用して温泉へアクセスすることは非現実的といえるでしょう。


 
東北の温泉地みたいな木造トタン屋根の湯屋ですが、建物内はウッディーで温かみが感じられます。私が館内に入りますと、番台に座っていたおばちゃんが明るく対応してくれ、料金を支払いますと、おばちゃんの手元に置かれた金庫よりお金を出し入れし、売上があるたびに出納帳に数字を記載していました。
脱衣室でも木材のぬくもりを全面に出しており、あまり広くはないもののあまりストレスを感じることはありませんでした。なお脱衣室に入ってすぐのところにロッカーが設置されているのですが、ボックスの数が少ないので早い者勝ちとなってしまうかと思います。



お風呂は内湯と半露天がありますが、まずは内湯から見て行きましょう。男湯の場合は浴室内の左側にシャワー付き混合水栓が6基並んでおり、右側には浴槽がひとつ据えられています。浴槽のお湯は恰も赤いパプリカのパウダーを混ぜたクリームソースのような橙色系に強く濁っており、透明度はほぼゼロ。お湯からは炭酸味と薄い塩味、金気味、そして強い石灰感が伝わってきます。湯使いは加温の上での放流式となっています。


 
ここを訪れる多くの温泉ファンが目を輝かせずにいられないのは、言わずもがなこの浴槽やその周りの床であります。浴槽は約6人サイズで、元の素材が何なのか全くわからないほど全面的に石灰華でコーティングされており、その周りの床にはものすごい状態の千枚田が現れていました。多くの温泉ファンの方と同じように、私もこの光景を目にして当然ながらアドレナリンを大量分泌して興奮し、石灰華のうろこ状の造形を指先で撫でてみたり、あるいは素足で歩いて痛がることに喜びを感じたりと、脳みそがどうかしている人のような奇妙な行動を繰り返してしまいました。

このような石灰華は、温泉の中に含まれるカルシウムイオンが炭酸イオンや炭酸水素イオンと結合することによって発生する炭酸カルシウムの沈殿によって形成されます。この温泉施設では約800メートル離れた深さ1100mの源泉井から引湯し、25℃の源泉を42℃くらいまで加温した上で浴用に供しているわけですが、この加温によって温泉に含まれている炭酸ガスが抜けてしまい、その結果として強い濁りや浴槽周りの石灰華を生み出しているわけですね。


 
周囲を壁で囲まれ、頭上も屋根でカバーされている半露天ゾーンには、露天の浴槽と源泉風呂という2つの槽が設けられています。露天の浴槽は内湯同様に加温されており、強く濁っているのですが、外気の影響を受けているのか或いは加温を抑えているのか、湯加減は39℃くらいでキープされており、この浴槽に入る人は、ぬるい湯を好んでいつまでも長湯するか、もしくはぬる湯を嫌ってすぐに出てゆくかのいずれかのタイプに分かれるのが面白いところです。
内湯ほどコテコテな石灰華は現れていませんが、それでも浴槽のまわりにはしっかりとこびりついており、槽の縁に置かれた飾りの石にもクリーム色の析出がコンモリとコーティングされていました。そして浴槽縁の湯面ライン上には庇のような出っ張りも形成されていました。なおこちらの湯使いも内湯同様に放流式です。


 
こちらのお風呂で特筆すべきは、この源泉風呂でしょう。上2つの浴槽は入浴に適した温度にするため、25℃の源泉を加温していますが、こちらは非加温状態の生源泉がドバドバ投入されている完全かけ流しであり、非加温ゆえに濁りや石灰華の発生も抑えられており、お湯は加温槽とは異なり灰白色の笹濁りを呈しています。そして浴槽や周りの床にも石灰華はあまり発生しておらず、赤黒く染まっている程度です。私などは温泉での石灰華を目にするとつい喜んでしまう癖がついているのですが、この手の泉質ならば、むしろこの非加温の源泉風呂のように、石灰華が出ていない状態のほうが鮮度が良く、且つ炭酸ガスの濃度も高いわけですから、内湯や露天に比べると一見大人しく見えるこの源泉風呂こそ、この温泉の真骨頂であると言えましょう。

湯口のお湯を口にしてみると、炭酸味がとても強くて口腔内がシュワシュワと刺激されます。また石灰感や薄い塩味とともに弱いタマゴ味やタマゴ臭も感じ取れました。温度が温度だけに、いきなり源泉風呂に入ることは厳しいのですが、加温槽でしっかり温まってからこの浴槽に入ると、その温度差が実に心地よく、また長い時間源泉風呂に浸かっていても、炭酸の血管拡張作用によってあまり冷たく感じないのが不思議であります。
源泉風呂と加温槽を何度も往復する長湯の常連さんが多いので、お客さんの回転が悪く、全体的なスペースの問題もあって混雑することもしばしばですが、お湯のクオリティは抜群ですし、炭酸のおかげで湯上がりは体の芯から長時間ポカポカし続けますから、泉質重視の方でしたら、界隈を訪れた際には訪問必須であります。
すぐにスケールが発生しちゃう泉質ですから、配管や浴室のメンテナンスには相当ご苦労なさっているかと思いますが、是非いつまでもこの浴場を守り続けていただきたいものですね。


含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 25.5℃ pH6.4 351L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質3586mg/kg 成分総計4744mg/kg
Na+:420.1mg(41.44mval%), Mg++:74.3mg(13.86mval%), Ca++:366.0mg(41.42mval%), Fe++:19.1mg,
Cl-:180.2mg(11.60mval%), Br-:0.4mg, I-:0.1mg, HCO3-:2354mg(88.10mval%),
H2SiO3:129.7mg, HBO:15.6mg, CO2:1158mg,

岐阜県高山市丹生川町折敷地415  地図
0577-78-2877
ホームページ

13:00~21:00 毎週金曜・年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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湯上野温泉 つるぎふれあい館 アルプスの湯

2013年11月26日 | 富山県
 
前回まで取り上げていた「高天原温泉」からの下山後、山でかいた汗を洗い流すべく訪れたのが、上市町の中心部にある「アルプスの湯」です。こちらは町営の「上市町保健福祉総合センター」(愛称「つるぎふれあい館」)という立派な建物内部に併設されている日帰り温泉施設であり、この手の公営大規模施設に対して普段の私はあまり触手が伸びないのですが、綺麗且つ衛生的なお風呂で下山後の体をしっかり洗って帰り支度を整えたかった上、こちらではちょっと特徴的なお湯が湧いているという情報も得ましたので、今回訪問したわけです。日没の頃に現地へ到着したのですが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、お風呂道具を小脇に抱えた人が次々に入口へと吸い込まれていました。人気の高さが窺えます。



エントランスホールは偉く立派な吹き抜けとなっていて、こんな施設に浴場があるのか疑わしくなったのですが・・・


 
辺りを見回すと、館内には入浴料金を支払う券売機が2台並んでいました。券売機の奥が浴場の入口です。
受付では入浴券および下足場のロッカーキーと引き換えに、脱衣室のロッカーキーを受け取ります。


 
脱衣室はスポーツクラブのように広々としており、明るく綺麗で清潔感があって、余裕のあるつくりなので使用時はストレスを感じません。公営施設らしく室内にはベビーベッドも用意されています。



ゆとりのあるスペースを活かして館内には様々な種類の浴槽が設けられており、内湯サイドには全身浴(主浴槽)・圧注浴・寝湯・香湯・歩行浴・水風呂・サウナが、露天サイドには源泉かけ流し槽と人工炭酸浴泉が用意されています。なお露天は浴室を挟んで前後2つに分かれており、手前側には源泉かけ流し槽が、奥側には人工炭酸浴泉が配置されています。

洗い場には広い浴室の手前右側に位置しており、コの字型の壁に沿う形で18基、その間の島に10基、計28基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。またこの他立って使うシャワーや、上がり湯用のステンレス槽なども設けられています。

上画像は全身浴(主浴槽)や圧注浴・寝湯の様子です。主浴槽は非常に大きく、浴槽ではなくプールかと見紛うほどです。上述のように館内には多様な浴槽があるのですが、温泉が用いられているのは露天の源泉かけ流し槽の他、内湯の全身浴・寝湯・圧注浴の計4種であり、他の浴槽では真湯が使用されています。また手前側の露天風呂では敢えて「源泉かけ流し」と称していることからも推測できるように、温泉を使っているその他の浴槽、つまり内湯の全身浴・寝湯・圧注浴では源泉を除鉄した上、加水加温循環ろ過消毒という徹底した管理が施されたお湯が供給されていまして、実際に私が入浴してみたところ、お湯は温泉の原型をほとんど留めておらず、真湯とあまり区別がつきませんでした。

何しろプールのような大きなお風呂ですので、利用客が多くてもあまり混雑しているようには感じられないのですが、とはいえお客さんの人気が集まる浴槽には偏りがあり、たとえば主浴槽や歩行浴は常時ガラガラである一方、サウナや圧注浴、そして屋外の人工炭酸風呂では、お客さんが集中しているようでした。



たくさん浴槽があるのに、私はこの手前側の露天風呂ばかり入り、他の浴槽はどんなものかを探る程度しか利用しませんでした。お風呂自体は8~10人サイズの石風呂で、頭上は東屋が覆い、周囲は壁で囲まれているため、屋外らしい開放感は全く無く、完全なる坪庭状態なのですが、この浴槽のみ上述のように「源泉かけ流し」を謳っており、事実、他の浴槽とはまったく個性を有するお湯が張られているのであります。


 
石積みの投入口から落とされるお湯は典型的な黒湯でして、浴槽内のステップに踏み込んだだけで自分の足が見えなくなってしまうほどコーヒーのような濃い色を呈しており、投入口付近では湯面が泡立っていました。放流式の湯使いを証明するかのように、湯口とは対称の位置にある排水口へ絶え間なくお湯が流下していました。

お湯を桶で汲んでみたところ、まるでお醤油を汲んだかのような感じとなり、その中央では湯の華も集まっていました。分析表を見る限りではかなり濃厚なお湯であり、特に鉄分や食塩が相当多く含まれているはずなのですが、実際に湯口のお湯を口に含んでみたところ、鉄分は殆ど感じられず、塩気もマイルドで甘塩味程度でしたが、見た目から予想できる通りにモール的な味や重曹味は明瞭に確認でき、そして砂消しゴム的な硫黄感も若干含まれているようでした。またツルスベ浴感がとても心地よく、食塩泉というより重曹泉に近いフィーリングを感じ取りました。
館内表示によれば循環ろ過は行っていない放流式の湯使いだそうですが、加温や加水は実施されているそうですから、あの塩味の薄さから想像するに、相当量の加水がなされているのではないかと思われます。なお状況に応じて塩素系薬剤も投入されるとのことが、今回はそれらしき臭いは感じられませんでした。このように分析表と実際の知覚ではかなりの開きがあるのですが、これは湯使いによるものかもしれませんし、あるいは分析後に泉質が変わっちゃったのかもしれません。
いずれにせよ濃いお湯であることに間違いはありませんから、もう少し源泉が持つ個性を活かした湯使いができれば面白いのですが…。しかしながら湯使いに関する館内表示は実に細かいので、利用者に対してきちんと情報を開示しようとする施設側の誠意はちゃんと伝わってきました。各設備のメンテナンスは良く、使い勝手も良好ですので、お湯のクオリティはともかく、気持ちよく入浴したい方にはもってこいな施設かと思われます。

上市町湯上野温泉(2号井)
ナトリウム-塩化物温泉 49.1℃ 溶存物質15299mg/kg 成分総計15365mg/kg
Na+:4936mg, NH4+:28.5mg, Mg++:59.4mg, Ca++:627.4mg, Mn++:1.6mg, Fe++:12.5mg,
Cl-:9050mg, Br-:32.6mg, I-:1.7mg, HCO3-:224.4mg,
H2SiO3:114.4mg, HBO2:80.5mg, CO2:66.0mg,
※ガスセパレーター通過後、除鉄・除マンガン処理し、次亜塩素酸を注入した後の数値
Na+:4950mg, NH4+:9.3mg, Mg++:58.9mg, Ca++:618.3mg, Mn++:0.1mg未満, Fe++:0.1未満mg,
Cl-:9050mg, Br-:31.8mg, I-:1.2mg, HCO3-:159.4mg,
H2SiO3:112.1mg, HBO2:72.8mg, CO2:98.8mg,
【温泉仕様状況】
露天風呂:供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環濾過使用せず、塩素系薬剤を使用する場合あり
全身浴・寝湯・圧注浴:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用
人工炭酸風呂:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用、炭酸ガスを高濃度溶かしこんでいる
香湯・歩行浴・打たせ湯・水風呂は温泉を使用していない

富山地方鉄道・上市駅より徒歩15分
富山県中新川郡上市町湯上野8  地図
076-473-9333
上市町公式ウェブサイト内の紹介ページ

10:00~21:00(入館20:30まで) 月曜定休(祝日の場合は翌日)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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ひとっ風呂浴びに3日登山 高天原温泉 その7(帰路・薬師沢から折立へ下山)

2013年11月24日 | 富山県
「ひとっ風呂浴びに3日登山 高天原温泉 その6(帰路・大東新道を経て薬師沢へ)」の続編です

今回は内容が嵩んでしまったので、7回に分けて記事をアップしております。

その1(折立から太郎平)
その2(太郎平から薬師沢小屋)
その3(薬師沢小屋から雲ノ平へ)
その4(雲ノ平から高天原山荘へ)
その5(高天原温泉)
その6(帰路・大東新道を経て薬師沢へ)
その7(薬師沢から折立へ下山)【←今回の記事はここ】


 
【10:35/42 薬師沢小屋】
薬師沢小屋前のウッドデッキで7分休憩。
小屋のトタン屋根を右手に見ながら、狭い坂を登ってゆく。


 
【10:50 カベッケヶ原】
清々しい高原を一人で歩いてゆく。


 
なんて美しい景色なんだろう。
帰るのが惜しい。


 
【11:33 左俣】
一部の橋桁が傾いている橋で左俣を渡る。好天に恵まれた連休の前日だったためか、この辺りで薬師沢や雲ノ平を目指す登山者とたくさんすれ違った。


 
【11:43/12:30 清水が美味いベンチで昼食】
往路で見つけた、水場の清水が美味いベンチに到着。


 
まずはこの清冽な水を手で受けて喉を潤す。やっぱり美味い。すぅっと速やかに且つなめらかに体へ吸収されてゆく。ちょうどお昼の時間だったので、コッヘルに水を汲んでお湯を沸かし、そのお湯でリフィルタイプのカップヌードルやアルファ米の山菜おこわをもどして食べた。単なるインスタント食品なのに、どうして美味しく感じられるのだろう。
まわりの絶景を眺めつつ、のんびり食っていたら、このベンチにたどり着いてから50分近くも経過していた。



お腹を満たしたところで、歩行再開。


 
沢へ下りるステップの傍らでは、幾株かのトリカブトが咲いていた。


 
【12:39 薬師沢】
【12:44 中俣】 
立て続けに現れる橋で2本の沢を渡る。ここで沢沿いの軽快なトレイルはおしまい。中俣を渡り終わったら、太郎平への登りとなる。


 
ステップをどんどん登れ。太郎平まで登り切れば、あとはもう下山するだけだ。
そう思うと、登りなのになぜか足取りが軽くなり、まるでフラットな道を歩いている時のようなペースで快調に坂を上がっていけた。坂の途中では薬師沢方面へ向かう登山者と次々にすれ違う。みなさん薬師沢小屋へ泊まると話していたし、大人数のパーティーもいたので、今晩の小屋は私が泊まった時よりはるかに混むのだろう。布団1枚で1人かな。


 
快調に登っているうち、樹林帯を抜けて見晴らしが良くなってきた。右手には薬師岳が、振り返ると薬師沢や雲ノ平、そしてその奥に水晶岳が一望できる。今朝まではこの景色の奥にいたのに、もうこんな遠くまで歩いてきたのか。感慨深い。


 
真っ蒼な空の下を、木道が伸びる。薬師岳の山裾に建つ太郎平小屋が見えてきた。


 
【13:33/14:20 太郎平小屋】
往路と違い、この時の小屋前はたくさんの登山者で賑わっていた。


 
私もみなさんに混じり、ベンチに座って休憩する。といっても、さっき昼飯をとったばかりなので、ここでは先程の美味しい水場で汲んだ清水を沸かしてコーヒーを淹れた。もちろんスイーツも欠かせない。
落としたてのコーヒーを飲んだり、山ガール達に油を売っていたりしたら、いつの間にやら50分も経っていた。下山するだけなので、すっかり気が緩んでいる。


 
太郎平を経ち、気持ちのよい高地の木道を進んで折立を目指す。


 
【14:52 五光岩ベンチ】
剣岳が往路よりもくっきり映えていた。



有峰湖を眺めながら石畳の道を下る。


 
今行程で本当に最後の登りを通過。
途中、左手に背の高いカラフルな柱が一本立っていたが、これって何の目印?


 
【15:41 三角点】
爽快な高原のトレイルはここまで。



さ、あとは樹林帯を下りきるだけだ。


 
【16:12 アラレちゃん】
次にこのアラレちゃんと再開できるのはいつだろうか。



どんどん樹林帯を下る。


 
【16:50 折立 登山道入口】
トラブルなく無事に戻ってこられた。
登山道入口に設置されている自販機でコーラを買い、腰に手を当てながら、渡辺正行あるいは鈴木Q太郎にも匹敵するような一気飲みでグビグビと飲みほす。



駐車場はさすがに出発時よりは台数が増えていた。

天候に恵まれたおかげで、危険な場面もなく順調に日本最奥の温泉へ辿り着き、その白濁湯をじっくりと堪能することができた。今回の登山ルートからちょっと足を延ばせば、薬師岳や黒部五郎・水晶岳など百名山の頂に登ることができたのだが、スケジュールの都合により残念ながらそれらに登頂することなく、2晩連続で山小屋に泊まっておきながら、ピークハントをほとんどしないという、一風変わった登山となってしまった。いずれ私の考え方が変わり、ちゃんと山の頂を攻めようという発想になれば、次回は高天原を経由しながら、それらの山々も攻めてみたい。
コメント (4)
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