温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新屋温泉

2009年09月27日 | 青森県


青森県平川市にある、とても良質なお湯が楽しめることで温泉ファンには非常に有名な温泉です。津軽地方によくある古い温泉銭湯と同じように、看板が提げられていなければ民家と見間違う地味な外観の建物で、薄暗い受付や手書きの分析表が提げられた脱衣所からは、まるで昭和から時計が止まったままのようなノスタルジックな印象を受けます。浴室の中央には、角が取れた長方形の浴槽が据えられ、その中央にはお湯を供給するパイプが突き出ており、そこからドバドバと源泉が掛け流されています。また浴槽をそれを取り囲むように周囲に洗い場のカランが並んでいて、カランから出るお湯も源泉です。

なぜここのお湯が絶賛されるのでしょうか。まず見た目に関して、お湯自体は薄い黄色で透明なのですが、タイルが水色であるために、お湯が美しいエレラルドグリーンに映えて見えます。次に匂いですが、脱衣所のドアを開けて浴室に入るとその瞬間ツンと鼻を突く硫黄の匂いが感じられ、更にお湯を掬うと焦げたような匂いに石油のような匂いも混じっていることがわかります。油臭が好きな人には堪らない匂いです。口に含むとタマゴ味に苦味が混じったような味が感じられ、特に苦味は口腔の奥に残るような刺激があります。お湯に体を沈めると、体中に気泡が沢山付着します。肌をさすると、非常にツルツルスベスベして気持ちよく、湯温も40~41℃位なのでいつまでも長湯していたくなります。地元の常連さんもみなさんいつも長湯してじっくりと浸かっています。

つまり掛け流しで、見た目が美しく、個性が豊かで、浴感が非常に気持ちよい、それゆえ温泉ファンからの評価が高いのでしょう。かく言う私もこちらには何度もお世話になっています。あの匂いを嗅ぎたくて、あの質感を堪能したくて、ついつい立ち寄ってしまうのです。あまりに地味な外見なので入りづらいかもしれませんが、津軽地方で湯巡りするなら絶対に外せない、素晴らしいお湯です。




含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉

青森県平川市新屋平野84-14 地図
0172-44-8767

5:30~21:30
350円

私の好み:★★★
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川原湯温泉 笹湯

2009年09月25日 | 群馬県


新任の国土交通大臣の発言により建設工事中止か否かで議論が紛糾している八ツ場ダム問題ですが、そのダムによって沈む予定である温泉街としていま注目を浴びているのが川原湯温泉です。源頼朝による開湯伝説が残る当地は800年近い歴史を有し、肌に優しい泉質であるため、強酸性である近所の草津温泉の上がり湯と言われてきました。ダム計画が持ち上がった当初は当然の如く国に対して反発してきましたが、長年にわたり補償問題等について協議してきた結果、国との蟠りもようやく解けるようになり、最近は逆境を逆手にとって「ダムに沈む温泉」と自ら銘打ってアピールするようになりました。ダム完成後はダム湖畔に新たな温泉街が整備される予定で、その工事が着々と進んでいます。

川原湯には王湯、聖天露天風呂、そして今回紹介する笹湯という3つの共同浴場が存在しています。実は私を湯巡りの世界にいざなってくれたのがこの笹湯です。ここで共同浴場の魅力を知り、以来各地の鄙びた共同浴場を積極的に廻るきっかけとなりました。以来何度も足を運んでここのお湯と湯屋の雰囲気を味わっています。王湯は川原湯を代表する外湯として温泉街の非常にわかりやすい所に位置しており、また混浴の聖天露天風呂も案内板が立てられているので迷うことはないのですが、笹湯は温泉街のメインストリートから細い階段を下りた路地裏のわかりずらい所に建てられており目立った案内も無いため、一般の観光客はまず入ることがないでしょう。上述と重複する点もありますが、なぜ温泉初心者だったかつての私が心を惹かれたのかという点を列挙すると、
・路地裏にひっそり佇んでいること
・木造で昭和のノスタルジーが感じられる建物であること
・無人であること
・脱衣スペースと浴室が一体化していて隔たりが無いこと
・硫黄の香り漂うお湯が源泉掛け流しであること
・造作がシンプルであるということ
・地元の方々の生活感、そして愛着が感じられること
まだ温泉のイロハもわからなかった私は、これが昔ながらの日本の湯屋なんだ、と感動して笹湯の持つ雰囲気の虜になりました。その後各地の温泉を巡っていくうちに同様の鄙びた温泉共同浴場が多く点在していることを知るのですが、東京から日帰り圏内にもかかわらずこうした条件が揃っているというのは、とても貴重なのではないでしょうか。今でも私は温泉巡りで方向性に迷いが生じたときは、初心に帰るためにこの笹湯を訪れることにしています。

建物自体は古いものの、浴室内の各部やタイル貼りの浴槽はどこも綺麗に手入れされており、地元の方の愛情が伝わってきます。天井が高いために湯気が篭りにくい構造になっているのも、入浴者にとってはありがたい点です。
建物こそ昔ながらのものですが、源泉はダム対策として移転する温泉街用に新たに掘られたお湯が用いられており、旧来のお湯に比べて源泉温度が熱くなっているので、加水に関しては「必要に応じて入浴される方におまかせしています」という体制をとっています。ですので入浴前はまず湯加減を確認し、熱いようであれば自分で水道の蛇口をひねってホースで加水する必要があります。無色透明のお湯からは焦げたタマゴの香りと味が感じられ、お湯の中で綿屑のような灰色や白色の湯の華が浮遊しています。

予定通りに工事が進むことによりこの貴重な浴場がダムの底に沈んで消えてしまうのは残念なことですが、一方でダム建設を中断した場合の地域や国としての弊害も考えなければならず、その判断は何とも難しいところであり、一温泉ファンとして動向が非常に気になるところです。笹湯が今後どうなってゆくのかは政治決断に委ねられていると言っても過言ではありません。


綺麗に手入れされたタイル張りの浴槽


脱衣スペースと浴室に隔たりは無く、一体となっています


源泉温度が高く、どのくらい加水するかは利用者に任されています


含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
(新湯)78.9℃ pH7.3 掘削自噴(量不明) 成分総計1.89g/kg

群馬県吾妻郡長野原町川原湯 地図
川原湯温泉ホームページ

10:00~17:00(平成21年7月に時間を改定) 無休
300円

私の好み:★★★
コメント (1)
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林温泉 かたくりの湯

2009年09月19日 | 群馬県
※この記事の内容は旧施設当時のものです。2015年に新しい浴場が開設されました。



政権交代により俄然注目を浴びるようになった現在工事中の群馬県・八ツ場(やんば)ダムですが、この計画によりダム湖の底に沈む予定の集落に対して、国土交通省ではさまざまな補償を行っています。温泉を掘削して数箇所の共同浴場を設けたのもその一環で、当ブログでは以前にそのひとつである「岩陰の湯」を紹介していますが、今回はそれよりも長野原草津口駅寄りに位置している林温泉「かたくりの湯」を取り上げます。

八ツ場ダム関連の温泉施設はみなどこも無人で、仮設浴場を思わせる簡素な造りとなっており、この「かたくり湯」も「岩陰の湯」同様、男女別の浴室に5~6人仕様のポリバスが据え付けられています。シンプルな構造になっているのは、いずれダムの底に沈む運命にあることを前提にしているからでしょう。お湯を供給する塩ビのパイプは浴槽の上で壁から突き出て90度に曲がり、壁際を這いながらポリバスの縁まで伸びており、そのパイプを通ってきたお湯の半分は浴槽に注がれますが、残りは勿体無いことに排水口へ直行しています。それだけ湧出量が豊富なのでしょう。
林温泉の特徴はお湯から石油臭がすることで、浴室に入るとツンと油の匂いが鼻を突いてきます。その匂いはかなり強く、もしかしたら好き嫌いが分かれるかもしれません。ちなみに私はこの油臭が大好きで、付近に来るとこの匂いを嗅ぎたくてわざわざ「かたくりの湯」へ立ち寄るほどです。お湯の見た目は無色透明で、口に含むと塩味と弱い苦味が感じられます。そしてとても熱い。蛇口の水で相当な量を加水しないと熱くては入れませんので、それなりの覚悟が必要です。

さて民主党により八ツ場ダム工事の中止が発表されましたが、この「かたくりの湯」をはじめとする八ツ場ダム関連の温泉施設は今後どうなってゆくのでしょうか。
なお「かたくりの湯」は地元住民の方のための共同浴場ですので、訪問の際にはマナーと立場をきっちりとわきまえて下さいますようお願いします。




付近にはカタクリの自生地があり、春になると白い可憐な花を咲かせます


源泉温度・pH・湧出量不明 成分総計3.16g/kg

群馬県吾妻郡長野原町大字林 地図

9:00~17:00 火曜・金曜の午前中は清掃のため入浴不可
300円

私の好み:★★
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からんころん温泉

2009年09月17日 | 青森県


青森県・旧平賀町(現平川市)の田んぼの真ん中に一昨年オープンした新しい温泉施設です。訪問時は休日の夕方とあって、お客さんでごった返していました。付近には他にも温泉施設がたくさんあるのにどこも軒並み混雑しており、津軽人がいかに外湯を愛しているかを実感することができます。

内部は新しいだけあってどこも明るく清潔感があります。カランもたくさんあるので、体を洗うために待つようなことはありません。内湯は小さめの「あつめ」と大きい「ぬるめ」の浴槽に分かれており、それぞれ無色澄明のお湯が掛け流されています。「あつめ」の浴槽は5~6人入れる四角いもので、お湯がふんだんにオーバーフローしています。熱めとはいうもののちょっと熱い程度で怯えるほどのものではなく、寧ろ人によってはちょうどよいと感じるでしょう。一方「ぬるめ」はガラス窓に面した開放感のある大きな浴槽ですが、本当にぬるく設定されており、脱衣所の温泉分析表には「加水しています」と記されてあったので、水の量が相当多いものと思われます。この加水のためか、同表に記載されている「硫化水素臭」は感じられませんでした。しかしお湯自体が肌に馴染む優しい質感をもっているため、じっくり入るならば「ぬるめ」の方がよいかと思います。

屋外に出ると露天風呂と打たせ湯があります。露天風呂の湯口からは加水されていないと思われる熱いお湯が吐き出されており、自然冷却の形で浴槽に注がれています。湯口では熱いお湯も浴槽までの間に相当熱を奪われるようで、露天風呂は内湯の「ぬるめ」槽に負けないくらいにぬるめでした。でもお湯の質感を楽しみたいなら、加水の程度が最も少ない(あるいは無い)露天風呂が一番でしょう。風呂の大きさは5~6人入ればいっぱいになるもので、雪除けなのか単なる装飾なのかお風呂には菰が被せられており、この菰のお蔭で若干窮屈さが感じられました。また打たせ湯には経営者の信仰によるものなのかあるいは単なる装飾なのか、打たせ湯の前には鳥居が立てられ、「無病息災打たせ湯」「発業活命打たせ湯」と書かれた札も提げられていて、打たせ湯なんだか滝行なんだかわからない有様でした。

しかし、そんなことがどうでもよくなるほど心を奪われたのが、目の前に聳える津軽富士こと岩木山。辺りは田んぼで視界を遮るものが何も無く、実に美しい山の姿を眺望することができるのです。露天風呂に入ったときはちょうど西の空に夕日が沈む時間で、岩木山が夕日に映えてくっきりと浮かび上がっていました。

この他、温泉とは別棟になっていますが、食事処や農産物直売所、ペット用の温泉もあり、新しさや設備の充実さでご近所さんのハートをがっちり掴んでいるようです。


内湯。手前の小さい浴槽が「あつめ」、大きな浴槽が「ぬるめ」


露天風呂(菰が被せられています)
(逆光で見えにくくて申し訳ありません)


鳥居が立てられた打たせ湯


美しく聳える津軽の霊峰岩木山


アルカリ性単純泉
50.7℃ pH8.72 517L/min(動力) 成分総計540mg/kg

青森県平川市館山板橋19-2 地図
0172-44-4210
ホームページ

5:00~22:00 350円(5:00~8:00は300円) 無休
ドライヤー・ロッカー有り

私の好み:★★
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玉梨温泉 共同浴場

2009年09月14日 | 福島県


前回に引き続き玉梨八町温泉郷を取り上げます。前回は野尻川の右岸にある八町温泉でしたが、今回は左岸にある玉梨温泉です。あまりのお湯の良さに界隈を訪れる度にお世話になっているお風呂で、つい先日も改築された八町温泉「亀の湯」の様子を窺った際、ついでに入ってきました。

国道400号から対岸に掛かる橋を渡って右側(川下)へ下りると、民家の隣にまるで納屋のような小さな共同浴場が建っています。この浴場の周囲をちょっと見回してみると、湯屋のすぐそばからゲージの取り付けられたパイプが立ち上がっているのがわかりますが、これが玉梨温泉の源泉井で、毎分294リットルのお湯がポンプにより揚湯され、分湯枡を経てから玉梨温泉の共同浴場や「せせらぎ荘」等の旅館、そして対岸の旅館「恵比寿屋」や八町温泉の共同浴場へ配湯されており、供給先が少ないお蔭でそれぞれの施設では掛け流しのお湯をたっぷりと堪能することが出来ます。


橋の上から共同浴場を眺めた様子。すぐ右隣に源泉設備があるのがわかります。


源泉井です。最近改修されたようで、蓋や配管がピカピカです。


八町温泉「亀の湯」と同様にこちらの共同浴場の玄関にも寄付を寄せた方々の名前が書かれた札が提げられており、やはり同じように料金箱が設けられていて外部の者も寸志で入れるようになっていますが、「亀の湯」と違って浴室はきちんと男女別に分かれており、それぞれにコンクリート打ちっぱなしの浴槽が据えられています。3~4人程入ればいっぱいになってしまいそうなその浴槽には上述の源泉から湧いたばかりのお湯がドバドバと贅沢に掛け流されており、常に新鮮な状態で楽しめます。いかにこのお湯が新鮮であるかは体に付着する気泡が証明してくれます。

このお湯は無色透明ですが赤褐色で粒子状の非常に細かい湯の華が無数に舞っているためほんのり赤く濁って見えます。このため浴槽や洗い場のコンクリートにはは温泉成分がしみこんで赤く染まっています。口にすると旨味だし味に塩味と炭酸味・甘みが混じった複雑な味が感じれ、金気の香りがやんわり匂います。
湯加減は日のよって(おそらく外気温の影響で)若干異なりますがやや熱めでして、とくに体に熱が篭る泉質ですので、夏に入るとなかなか汗が引きませんが、逆に辺りが豪雪に覆われる冬ですといつまでも湯冷めしないのでお湯の力を実感することができるでしょう。

対岸の「亀の湯」とともに燻し銀の光を放ち続ける共同浴場であり続けてほしいものです。



寄付者の名札が提げられている入口。壁中央に料金箱。


お湯の金気で赤く染まった浴槽と洗い場


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉
45.9℃ pH6.4 294L/min(動力揚湯) 成分総計3972mg/kg

福島県大沼郡金山町大字玉梨字湯ノ上2781 地図

入浴可能時間不明(常識の範囲内で)
寸志(100円以上)

私の好み:★★★
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