温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

バルケシル県 エクシデレ・ダー・ウルジャス温泉

2015年02月28日 | トルコ
温泉の街バルケシル県ギョネンで一泊した翌日は、街から南西へ約15km離れた山の中にある一軒宿の温泉「エクシデレ・ダー・ウルジャス(Ekşidere Dağ Ilıcası)」へレンタカーで向かい、日帰り入浴してまいりました。もしこの記事をご覧になって現地へ行ってみたくなった酔狂な方のため、実際に私が辿ったルートを、Google Mapを用いながら説明させていただきます。なおここでは便宜的に、ギョネンのオトガル(バスターミナル)を起点とさせていただきました。



 
まずはギョネンの街を抜けてバルヤ(Balya)方面へ南下。途中で道が二又に分かれるので、ここで右へ逸れます。分岐点にはちゃんと"Ekşidere Dağ Ilıcası"と記された標識が立っているので、それさえ見逃さなえれば大丈夫【地点1】。
この先も"Dağ Ilıcası"と記された青い看板が随所に立っていますから、それに従って進めば問題ありません。たとえばBalcıdedeという集落では丁字路にぶつかりますが、ここでもちゃんと看板が立っており、そこに示された矢印に従い右へ鋭角に曲がります【地点2】。


 
牧歌的な景色の中を安全運転でドライブ。草原の真ん中で車を駐め、ヒバリがさえずる中で深呼吸。


 
途中でいくつか集落を抜けます。集落内は道幅が狭く、舗装が荒れてデコボコしていますから、スピードを落として安全運転に心がけました。
温泉宿の名前にもなっているエクシデレ(Ekşidere)集落では、ジャーミー(モスク)の手前の十字路を右折して、細い坂道をグイッと上がってゆきます。ルート上ではここが最も迷いやすい箇所かと思いますが、それでも曲がり角にはちゃんと案内看板がありますから、それを見逃さなければ大丈夫【地点3】。


  
エクシデレ集落を抜けると人家が途絶え、畑や森林がモザイク状に散らばる丘陵地帯となります。対向車ならぬ対向驢馬というべきか、ロバに乗って移動しているおじさんと行き違ったり、羊飼いに導かれて移動する羊の群れが目の前を横切ったりと、実に長閑な地域です。



向こう側の丘に緑色の建物が見えてきましたよ。


 
「エクシデレ・ダー・ウルジャス」に到着です。名前を直訳するとエクシデレ山温泉となるのでしょうか。周囲の環境に溶け込むことを意図しているのか、ホテルの建物は緑色に塗られており、高さも周りの木々を越えない範疇に抑えられています。ホテル棟の他、アパートやコテージと思しき棟も建ち並んでいました。


 
敷地内にはジャーミー(モスク)があり、「こんな人里離れた一軒宿でも信仰は欠かせないんだなぁ」なんて呟きながらボンヤリ眺めていたところ、中からおじさんが現れて、コップで飲むジェスチャーをしながら、奥の方へ行ってごらん、と指をさします。おじさんが指し示した方向には、チョロチョロと清水が滴る水汲みがあり、その様子をカメラに収めていると、後ろの方からボトルを抱えた老夫婦が2組やってきて、この清水をボトルに汲みはじめました。この水はそんなに美味いのか。実際に手で汲んで口にしたところ、たしかに口当たりがまろやかで飲みやすい。この辺りでは名水として知られているのでしょう。


 
この温泉宿は小高い丘の上に位置しており、彼方へ幾重にも連なるなだらかな丘と、そこに広がる広大な畑や森林、そして点在する集落を眺望することができました。この日は天候にも恵まれ、雄大な景色を眺めているだけでも爽快です。子供用遊具も設置されていますから、ファミリーで訪れてのんびり過ごすのも良いですね。


 
さて入浴へ。ホテルは幾棟かの建物に分かれているのですが、入浴利用の際には、1階に売店がある棟の窓口でチケット購入します。料金は8リラ。



窓口の斜め前が浴場です。


 
こちらが浴場の入口です。チケットを購入すれば誰でもすぐに入浴できるわけではなく、浴場がひとつしかないため、時間によって男女が分けられており、その時間割に合った人しか入場できません。入口前には時間割が掲示されていましたので、その内容を以下に書き写しておきます。
 男湯:6:00~8:00、10:30~12:00、14:30~16:00、18:30~20:00、
 女湯:8:30~10:00、12:30~14:00、16:30~18:00、20:30~22:00、
早朝の時間帯を除けば、男女はそれぞれ1時間半ずつで交代し、男女の切替時に30分のインターバルを挟むというスケジュールとなっているわけですね。たとえ夫婦で訪れても、どちらかが待ちぼうけを喰らわなきゃいえないのが、この温泉の哀しいところ…。
入口ゲートには機械式の回転バーが設置されており、入口に常駐している係員のおじさんにチケットを提示すると、チケットにスタンプを捺された上で、おじさんのポケットに突っ込まれていたICカードがゲートの機械にかざされ、これによって回転バーのロックが外れて入館できるというシステムになっています。なんでこんな面倒な方法にしているのでしょう。



入口の内側には貴重品箱がありますから、財布などはこちらに預けます。


 

更衣室は左右シンメトリな造りで、一定間隔毎に仕切り板が突き出ており、その間にベンチや服掛けフックが設置されていますので、任意の箇所に荷物など置くことになります。奥の方には試着室のような小さな着替え室もありますが、私は面倒なので、バスタオルを腰に巻いて、ベンチのところで着替えてしまいました(他のお客さんも同様でした)。


 
更衣室の奥にはシャワールームや洗い場も完備。洗い場はタイル貼りですが、典型的なトルコのハマム様式で、6基ある水栓からはぬるめの温泉が吐出されます。実際に水栓を開けてみたところ、お湯に含まれる無数の気泡により、湯受けのお湯は白く濁りました。


 
洗い場で体をしっかり洗った後は、露天風呂に入りましょう。こちらの浴槽は上画像の露天風呂ひとつのみです。露天とはいえ四方を高い塀で囲われており、水平方向の視野では開放感が無いのですが、(あくまで私の勝手な解釈ですが)このお風呂は女性も使いますので、周囲からの視線を徹底的に遮るべく、このような高い塀で囲まれているのかもしれません。イスラム圏らしい設計といえそうです。



塀は高いのですが、見上げると青空が仰げ、時折心地良いそよ風が入ってきます。山の空気は澄んでいますし、小鳥のさえずりも聞こえ、湯浴みにぴったりの、実に爽快な環境です。


 
浴槽は目測で一辺が8mの正方形。深さが1.65mもあり、ちょうど同じ高さの身長である私が底面で爪先立ちをしても、あとちょっとのところで高さが足りずに沈んでしまいました。底面には白い砂利が敷き詰められているのですが、一部分はちょっぴり茶色を帯びており、そこからブクブクと気泡を上げながらお湯が供給されていました。足元湧出なんでしょうか、はたまた単に配湯管の吐出口を砂利の下に敷いているだけなのでしょうか。足元湧出だったら嬉しいな…。湯温は41.0℃。日本人でも満足できる絶妙な湯加減です。


 
プールサイドにはちょっと低くなったスペースがあり、露天風呂から流れ出るお湯を集めて打たせ湯にしていました。画像に写っているお爺さんは「お前もやってみろ」と声をかけてきましたので、実際にお湯に打たれてみたのですが、画像をご覧になってもおわかりのように、水流が太くて勢いが強く、体にかかる衝撃も結構パワフルです。お爺さんのように中腰で肩に当てる方もいれば、その場でうつ伏せになって腰に当てる方もおり、皆さん思い思いに打たせ湯を楽しんでいらっしゃいました。



深い浴槽ですので、私は立泳ぎをしながら記念撮影を試みました。日本から遠く離れたトルコの温泉で、にわか仕込みの小堀流踏水術を実践する私。中近東で日本の古式泳法を実践するとは思っても見ませんでした。深いとはいえ、槽内の一部にはステップもありますから、そこに腰掛ければのんびり湯浴みできます。41℃という私のストライクゾーンど真ん中の湯加減だったので、肩まで浸かって存分にお湯を堪能し、体が火照り始めたらプールサイドでトドになって、上空から下りてくるそよ風でクールダウンさせると、なお一層の充足感を味わえました。

湯量が豊富で、上述の打たせ湯の他、プールサイドの穴からどんどん排湯されているのですが、泉質由来なのか、あるいは湯鈍りが発生しているのか、お湯はごく僅かに黄色を帯びながら弱く濁っているように見えます。ほぼ無味無臭で、湯中では若干引っかかる浴感が得られました。湯上がりはホカホカと温浴効果が長続きするのですが、それでいて粗熱の抜けも良いためにサッパリ感も共存し、嫌味な熱の篭りや発汗はありませんでした。

私は男女の時間割を知らずに訪れてしまったため、現地で30分近く待たされたのですが、時間割をご存知の地元の方々は男湯のスタート時間の数分前に次々と車でやってきて、平日の昼間だと言うのに、露天風呂は10人以上の湯浴み客で賑わいました。皆さん温泉が好きなんですね。



GPS座標:40.029864, 27.562070


浴室がひとつしかないため、男女は以下の時間割によって交互に使用
 男湯:6:00~8:00、10:30~12:00、14:30~16:00、18:30~20:00、
 女湯:8:30~10:00、12:30~14:00、16:30~18:00、20:30~22:00、
8リラ
貴重品用ロッカーあり、他備品類なし(売店にて入浴グッズの販売あり)

私の好み:★★+0.5
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温泉の街ギョネンを散策

2015年02月26日 | トルコ
前々回前回と連続してバルケシル県ギョネン(Gönen)の街に湧く温泉について取り上げましたが、この街では入浴のみならず一泊滞在しましたので、今回の記事では食事へ出かける際にふらっと歩いた街並みや、実際に止まったホテルのことなどを備忘録的に書き綴ります。


●ロータリーから公園にかけて
 
街中にはいくつかのロータリーがあるようですが、上画像はオトガル(バスターミナル)付近にあるロータリーで、滞在中はこのロータリーや後述する公園を中心に散策しました。ロータリーの真ん中には男性の胸像が埋め込まれたモニュメントが立てられていたので、この街に縁のある人物なんだろうと、漠然とした思いでデジカメにその姿を記録したのですが、改めて画像を確認してみると、1974年・キプロス・戦死者といったワードと並んでフェフミ・エルジャンという人物名が記されていることに気付きました。エルジャンといえば北キプロスの空港名の由来になっている人名(故人)ですし、何しろ1974年といえばキプロス紛争が激化して、キプロス南部ギリシャ側と北部トルコ側の分断が決定的になった年ですから、ノンビリとした温泉地であるこのギョネンと、いまだに解決していないキプロス紛争とは、何やら深い関係性があるのかもしれませんね。モニュメントの裏には碑文が記されていたように記憶しているのですが、トルコ語がチンプンカンプンな私はまったく読み取ることができず、その関係性について理解でいないまま、モヤモヤとした感情を抱きながら、今この記事を書き綴っています。


 
ちなみに上画像は夜のロータリーとそこから伸びる通りの様子です。人口4万5千人ほどの小さな地方都市ですが、一応このエリアの中核なのか、夜間でも車や人の往来が比較的多く、大通りを歩いていれば、あまり寂しさや怖さを感じることはありませんでした。個人的に興味深かったのは、夜中に所謂「走り屋」の若者たちが集まって、ブンブン爆音を立てながら街をグルグルと周回していたこと。改造バイクをぶっ飛ばす連中が夜な夜な活動するという現象は、日本の地方部だけじゃなくトルコでも同様なんですね。騒々しい・おっかないといった感情を通り越して、寧ろ微笑ましくなっちゃいました。人種や宗教を問わず、若い男の子という生き物は、無邪気で無謀で厄介な存在なのです。



 
ギョネンの街の観光拠点とでも言うべき、歩行者専用のバンヨラル通り(Banyolar Cd)。上述のロータリーやオトガル(バスターミナル)の100~150メートル北側にあり、街の北西にある公園や温泉に向かってまっすぐ伸びています。通りの始点から約100メートルほどは商店街となっており、飲食店をはじめとして衣料品店や雑貨屋・携帯電話屋など多様な商売が営まれているのですが、さすが温泉の街だけあり、衣料品店の軒先には、垢すり(画像に写っている白い布)が売られていました。


 
この通りではシミット(胡麻がたくさんまぶされているパンの一種)を頭に載っけて売り歩くお兄さんや、安っぽい子供向けのオモチャを売っている露天商など、大して儲からなさそうな商いをする人々の姿も見られました。こうした商売って一日どのくらいの売上があるんだろうか。


 
バンヨラル通りはやがて商店街を抜け、緑豊かな公園へと入ってゆきます。商店街と公園の境界付近は10軒近い中小規模の宿が集まるホテルエリアとなっており、私もその中にあるホテルで宿泊しました(詳しくは後述)。車の往来から隔てられたこの公園はとても静かで、よく整備されており、美しく綺麗な景観が保たれています。



公園の一角はスポーツ向けの広場が設けられており、バスケ・テニスなど皆さん思い思いのスポーツで汗を流していらっしゃいました。まさに市民の憩いの場です。


 
公園のベンチでは、手芸品を売っているのか油を売っているのかよくわからないおばちゃんがいたり、露天の身体測定屋さんがいたりと、なんとも長閑でのんびりした空気感が横溢していました。露天の身体測定屋さんって、日本では見たこと無いのですが、中国やタイなど海外ではしばしば遭遇します。お客さんはどういう目的で測ってもらうんだろうか…。世の中にはいろんな需要があるんですね。


 
朝に公園を散歩すると、よく見かけたのがリス。すばしっこいので上手く撮れませんでしたが、その愛くるしい姿を見つめているだけでも、思わず目尻が下がります。この公園のリスは日本のものより大きく、タイワンリスに近い体型です。


●4つの温泉ホテル

バンヨラル通りを更に歩いて公園を奥へと進んでゆくと、いつの間にやら温泉ホテルの敷地内に入っていました。緑豊かな環境によって公園と一体化しているんですね。


 
ホテルの敷地に入ってすぐの左側(南東側)には、夏季限定のプールがあるのですが、私が訪れたのは枯れ葉の舞う晩秋ですから、プールの水はすっかり抜かれてゲートも閉ざされており、フェンスの隙間から中の様子を窺う他ありませんでした。


 
ギョネンにある4つの温泉ホテルはいずれも同じ経営母体によって運営されており、価格帯によってセグメントされています。緑色の外観が周囲の環境と調和している「イェシル・オテル(Yeşil Otel)」は低価格帯のホテル。イェシルとはトルコ語で緑という意味なんだとか。だから外観が緑色なんですね。わかりやすい。


 
私が個室貸切風呂を利用した「ギュネシ・オテル(Güneş Otel)」は中価格帯。"Güneş"とは太陽を意味し、そのためか外観も暖色系です。



最もドッシリとした構えの「ユルドゥス・オテル(Yıldız Otel)」は高価格帯で、公園の北縁の通り(その名も「温泉通り(Kaplıcalar Cd)」)をまっすぐ進めばこのホテルの正面玄関へ行き当たるようになっています。この他、「ユルドゥス・オテル」より若干安めの「パルク・オテル」がここに隣接しています。


 
「ユルドゥス・オテル」の裏手をうろうろしていると、木陰の向こうでユラユラと立ち上る湯気を発見。近づいてみますと、そこには巨大な円形の貯湯槽があり、太いパイプから大量の温泉がドバドバ落とされていました。この貯湯槽から各ホテルへ温泉を供給しているのでしょう。ということは、どの施設でも共同管理されたこの温泉が配湯されているってことか…。



4つのホテルと並びつつ、その最奥に位置しているのが、前回記事で取り上げた公衆浴場です。ホテルエリアを宮殿に見立てれば、玉座に当たる位置にこの公衆浴場があるのですが、やはりギョネン温泉においては、この古い公衆浴場こそ主役であるという位置づけなのでしょう。


 
公衆浴場の裏手は川が左右に流れており、この川がギョネンの街の最外縁でもあります。この画像を撮った時、川面は朝霧で覆われていました。


●宿泊先
せっかく4つの価格帯に分かれた温泉ホテルがあるのですから、自分の予算に合ったホテルに泊まって、一晩中温泉に浸かるのも良かったのですが、正直なところ毎日の温泉めぐりが祟って、そろそろ温泉に飽き始めており、また低価格帯の「イェシル・オテル」であってもそれなりの金額を要するので、この日は公園周辺に集まっているホテルを選ぶことにしました。前夜泊まったエイナル温泉と同様に、この日も予約はしていませんから、まずは良さそうな宿を自分で見つけて、フロントで直接交渉です。


 
バンヨラル通りの東側には中小規模のホテルやペンションが10軒ほど集まっており、民宿に毛が生えた程度の小さな宿もあれば、立派なビルのホテルもあって、旅人のニーズに応じたホテルを選ぶことができる環境にあるのですが、その中でも私はバンヨラル通りに面している「セメダンホテル(Semedan Hotel)」を選びました。


 
ホテルの建物は3階建てで、中央の吹き抜けを囲むように口の字形をしています。まず英語で「今夜部屋は空いているか」と尋ねてみましたが、フロントのお兄ちゃんは英語がいまいちなようでしたから、前夜のエイナル温泉の時と同じく、"Boş odanız var mı?" "Bugün, Bir gece, Bir oda"(※)とトルコ語で表記したメモを差し出したところ、即座に理解し笑顔で対応してくれました。
(※)グーグル翻訳で「空室ありますか?」「今日、1泊、1部屋」という言葉をトルコ語に訳してみたら、このような文言が表示されました。文法的に誤っているかもしれませんが、この文で問題なく通じましたので、もしトルコのホテルで英語が通じない場合は、この文章を使ってみてください。


 
フロントのお兄ちゃんが提示してくれたお部屋は、一泊50リラと60リラの2種類。高い方のお部屋は、部屋が広くてバンヨラル通りに面しているとのこと。10リラの差がありますが、高い方でも日本円に換算して3000円弱ですから、60リラのお部屋を選ぶことにしました。
案内された2階の客室は1LDKの立派なお部屋で、キッチンは8畳近い空間があり、清掃も行き届いていて快適です。冷蔵庫やレンジも備え付けられていますから、食材を持ち込めば長期滞在も可能ですね。フロントで説明されたように部屋はバンヨラル通りに面しており、ベランダも設けられていました。Wifiもしっかり飛んでおり、テレビではNHKワールド(英語放送)も視聴できました。


 
ベッドルームはシングルベッドが2台。リネンからはコロンヤの香りが薫ってきました。キッチンと寝室の間にバスルームがあり、シャワーのお湯は残念ながら非温泉ですが、シャワー用のパーテーションがあるので、他の安宿みたいにトイレまわりをビショビショにすることはありません。


 
宿泊料金にはバッフェ式の朝食も含まれており、品揃えとしてはごく普通ですが、通りに面した明るいカフェで、しっかり朝ごはんをいただくことができました。これだけ充実したホテルでありながら、一泊朝食付きで3000円弱という素晴らしいコストパフォーマンスですから、私がこの日に敢えて温泉ホテルを選ばなかったのも、おわかりいただけるかと思います。


●食事
 
上述のようにギョネンの街は、大した人口規模じゃないのに昼夜問わず往来が多く、それゆえ飲食店も多いので、食事には事欠きませんでした。ギョネンに到着した晩の夕食は、ロータリー前にある庶民的な佇まいのキョフテジ(トルコ版のハンバーグであるキョフテ専門店)で、キョフテ・チョルバ(スープ)・ピラフを注文。食中のジュースや食後に紅茶などを含め、〆て19リラだったので、日本円に換算して1000円弱でしょうか。当地で1000円はちょっと食べ過ぎ。お腹が苦しい…。


 
乙女とは縁遠い中年のオッサンである私は、たとえ満腹であっても、まるで乙女のように甘いモノは別腹。お腹の苦しさを解消すべく、食後腹ごなしのために街中を散歩していたのに、たまたまバクラバジ(バクラバというスイーツの専門店)を見つけてしまったら、衝動的にお店のカフェコーナーに入り、大好物であるストラッチ(トルコのライスプリン)を頼んでしまいました。節操のない己の貪婪性には呆れるばかりですが、とはいえ世界の食が集まる東京でも、ストラッチはなかなか口にできませんから、こういう機会を逃して、帰国後に後悔するのもバカバカしい。食べられるときに食べておこうとするのは、人間の本能であります。


 
翌日のランチもギョネンで過ごしました。ロータリーそばで店を構える、カフェテリア式のロカンタ(大衆食堂)で、チキンの煮込み系を半人分ずつ注文。いずれも程よい味付けで美味でした。代金は忘れてしまいましたが、結構安かったように覚えています。


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バルケシル県 ギョネン温泉 公衆浴場

2015年02月25日 | トルコ
 
前回記事ではギョネン温泉「ギュネシ・オテル」に付帯している個室風呂を取り上げました。当地には長い歴史を有する大きな公衆浴場があるのに、なぜ殺風景で閉塞的な個室風呂を利用したかと言えば、その日は公衆浴場が女湯として指定されている曜日であったため、男である私は利用できなかったからです(貸切の個室風呂でしたら性別を問わずいつでも利用可能)。でも公衆浴場は男女が日替わりですから、次の日になれば私も利用できるはず。その晩はギョネンで泊まりましたので、翌日改めて訪ってみますと、案の定、浴場の入口には"ERKEKLER"(男性)と掲示されていました。これで私も正々堂々と公衆浴場に入れます。


 
前回記事で取り上げた個室風呂と同じく、利用の際にはチケット売り場で入浴券を購入します。公衆浴場においても、2階層になっている更衣ゾーンの上層階の部屋を使う場合は7リラで、下層階だと6リラ(いずれもタオル2枚と腰巻き付き)、学生なら5リラといったように料金が細かく設定されています。私は上層階の方を選択しました。


 
玄関と番台は2階に位置しており、中央部分は泉のある吹き抜けとなっています。番台にチケットを提示すると裏面にスタンプが捺され、吹き抜けの向かい側にある個室を使ってくれと案内されました。料金に1リラの価格差をもたらす2階と1階の相違点は、着替え用の個室にドアやパーテーションがあるかないか、そして一区画あたりのスペースに若干の差があるといった程度で、湯上がりに寝そべられる長椅子が設けられている点は共通しており、それ以外にこれといった設備面の違いはありません。貴重品は入館時に番台へ預けますから、防犯面で敢えてドア付きの個室を選択する必要性は無く、この1リラの差をどう捉えるかは個人の価値観に依るでしょう。
浴室入口は中2階の位置にあり、浴室手前の三助さんが待機するような小部屋には、バスタオルが山積みにされていました。私は水着で入浴しましたが、水着ではなくトルコの伝統的な腰巻きで入浴する場合、湯上がり時にはここで新しい腰巻きに替えてもらうのでしょう。


 
天井が高くて広々としている浴室は、中央にプールのような浴槽が据えられ、それを挟んでシンメトリに洗い場が配置されています。床は大理石ですが、浴槽や側壁はシンプルなタイル貼りで、壁の上部やドーム型の天井には化成品の防滴壁材が用いられていました。

左右の洗い場にはそれぞれ水栓が6基ずつ並んでおり、垢すりやマッサージで使用する台も左右に設置されています。私が訪問した時には右側の洗い場の台で、屈強な体格のおじさんがお客さんをシャボンの泡だらけにしてマッサージしていました(垢すり15リラ・マッサージ20リラ)。この他、左側の洗い場ゾーンの奥にも更に洗い場用の小部屋があって、シャンプーするお客さんはなぜかこの小部屋に集まる傾向にあるようでした(私の訪問時だけの現象かもしれませんが)。

浴槽は目測で約8メートル四方。上述のように全面タイル貼りで、深さは130cm~140cm。身長165cmの私が槽内で直立すると、ギリギリ顔が出せる程度です。湯船のお湯は四方の縁から溢れ出て樹脂グレーチングへと流下しています。この浴槽に温泉を供給しているのは、金属製の青い獅子でして、その口からピューっ勢い良くお湯が吐出されていました。
湯加減は私の体感で41~2℃と日本人向き。湯中ではやや引っかかる浴感が得られます。湯船のお湯はミントグリーンのような色合いに弱く濁っていたのですが、これは源泉由来のものか、槽内のタイルの影響で変色して見えるのか、はたまたお湯が鈍ってしまっているのか、その辺りの事情はよくわかりません。湯口のお湯を口にすると、鉄錆味が感じられ、その味覚を視覚面で証明するかのように、獅子の下顎付近も赤錆色に染まっていました(いや、単純に錆びているだけかもしれませんが)。でも金気を含むお湯でありながら、槽内やオーバーフローするタイルなどに着色が一切見られないのは不思議です。
前回記事の個室風呂と同様、湯上がり後の温まりはかなり強力で、いつまでも噴き出る汗を拭っているうちに、まっさらなタオルはビショビショになってしまいました。見た目は大人しそうなお湯ですが、うちに秘めたるパワーは本格的であり、さすが古から人々に湯治の温泉として愛されてきただけの実力は侮れません。訪問したのは平日のお昼頃でしたが、常時10人以上の入浴客がいらっしゃり、そんな時間帯でもお客さんで賑わっているのですから、このお風呂は地元の方々からかなり愛されているのでしょう。


 
公衆浴場の前には上画像のようなお湯汲み場が設けられています。浴場内の青い獅子は下顎付近だけ赤錆色に着色されていましたが、こちらは水栓まわりが見事なまでに同色にはっきりと染まっており、実際に飲泉してみたところ、その見た目を裏切らない鉄の味が口の中に広がりました。ギョネン温泉のお湯って、そもそもは鉄気の多い泉質なんでしょうか。あるいは単純に配湯管が錆びちゃっているのでしょうか。
分析表を確認していないので、泉質に関してこれ以上の言及は避けておきます。
バスターミナルから至近という街中の便利な立地で、客の好みに応じたいろんなお風呂を選ぶことができる、旅人にとって使い勝手の良い温泉ではないかと実感しました。


GPS座標:N40.114226, E27.649849,



(↑サムネイルをクリックすると料金表の画像が拡大されます)
【公衆浴場の料金】
更衣室2階利用7リラ、更衣室1階利用6リラ、学生5リラ
更衣ゾーンの1階にドライヤーあり、貴重品は番台預かり、タオルや腰巻きの貸出あり

私の好み:★★
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バルケシル県 ギョネン温泉 「ギュネシ・オテル」の貸切個室風呂

2015年02月24日 | トルコ
バルケシル県の都市であるギョネン(Gönen)は、古くから湯治場として知られていた温泉地であり、街の中心部に温泉浴場があるらしいので、どんなところか行ってみることにしました。

 
街の北西に位置しているオトガル(バスターミナル)の北には、市民の憩いの場である緑豊かな公園が広がっているのですが、その公園の真ん中を貫く歩行者専用のバンヨラル通り(Banyolar Cd)を奥へ奥へと歩いてゆくと、温泉施設を擁する4つのホテルの敷地へ行き当たります。この4ホテルは同じ経営母体によって運営されているのですが、価格帯が異なっており、「イェシル・オテル(Yeşil Otel)」は廉価、「ギュネシ・オテル(Güneş Otel)」は中価格帯、それよりちょっと高めの「パルク・オテル(Park Otel)」、そして高価格帯の「ユルドゥス・オテル(Yıldız Otel)」となっているようです(高価格といっても高が知れていますが…)。
(公式サイト)

「イェシル・オテル」と「ユルドゥス・オテル」の中間には、古くからの公衆浴場があるのですが、大きい建物であるにもかかわらず浴室が男女に分かれていないため、曜日によって男女を入れ替えており、私がギョネンに到着した日は女湯の曜日だったので、この浴場利用は翌日へ後回しにすることとし、「ギュネシ・オテル」に付帯している個室風呂に入ってみることとしました。個室風呂でしたら曜日を問わず誰でも利用できます。


 
公衆浴場であろうとホテルのお風呂であっても、この温泉ホテルグループの施設で入浴する場合は、「イェシル・オテル」と公衆浴場の間にある上画像のチケット売り場で、利用施設に応じた料金を支払い、レシートのようなチケットを入手します。料金形態はかなり細分化されており、詳しくは当ページの下で紹介致しますが、私が今回利用した「ギュネシ・オテル」の一人用個室風呂は13リラでした。


 
こちらは「ギュネシ・ホテル」の正面玄関およびその周りの外観ですが、個室風呂を利用する場合はこの正面玄関ではなく、ぐるっと裏手へ廻って専用入口から入館します。


 
正面玄関のちょうど真裏に、個室風呂専用の入口がありました。温泉施設の玄関ではなく、従業員専用口ではないかと不安になるほど地味で控えめな佇まいですが、私がちょうどここへやってきた時、バスタオルを頭から被っていた湯上がりの夫婦がこの出入口から出てきましたから、こちらで間違いないようです。


 
入ってすぐ左にある窓口のスタッフに先程のチケットを差し出すと、その裏にスタンプを捺した上で、私を個室へ案内してくれました。そのスタンプには"Görülmüştür"と記されていたのですが、さしずめ「チェック済み」といった意味でしょうか。


 

窓口の奥は休憩ができるロビーがあり、その一角には売店が設けられていました。スナック菓子や飲み物の他、女性用の水着も販売されていたのが興味深く、トップスがビキニでボトムスがショートパンツのようなものもあれば、イスラム圏という土地柄、肌を隠す部分が多い服のようなタイプも陳列されていました。私の感覚で見るといずれもダサダサなデザインと色合いで、特にヒョウ柄の服タイプなんて完全におばさん趣味じゃないのかな…。


 
 
館内は極めて無機的で殺風景。まるで古い病院のようですが、これでも温泉施設なんですよ。廊下の両側に個室の扉がズラっと並んでいるのですが、浴室なんだか病室なんだか、ぱっと見ただけでは判然としません。薄暗くて不気味な雰囲気は「バイオハザード」のワンシーンのようでもあり、いまにも扉が突然開いて中から「ウォォォーッ」と叫び声を上げながらゾンビが襲ってきそうな感じです…。
廊下に掲示されている構内図によれば、なんとこのフロアだけで39もの個室があるんだとか。部屋によって大きさや設備が異なるようですが、これだけたくさんの個室風呂を擁する施設って、珍しいんじゃないでしょうか。



私は最も安い部屋のチケットを購入したのですが、空いていて部屋に余裕があったのか、1ランク上のジェットバス付き浴室へ通されました。個室のドアを開けてまず足を踏み入れるのが、4畳ほどの脱衣室です。白いタイル貼りの室内は窓が全く無く、ゴーゴーと換気の音が響くばかりで、閉塞感が半端じゃない。病院の霊安室と見紛うばかりで、閉所恐怖症の方でしたら失禁してしまうかも。でも壁際には二つのベンチがあり、ミラーやドライヤーなどの備品類によって、ここが入浴施設であることを確認させてくれました。


 

脱衣室同様に浴室も窓が無くて閉塞的なのですが、空間自体は比較的ゆとりがあり、家族で利用しても問題無さそうな感じで、洗い場がひとつ、そして3人は入れそうな容量のあるタイル張りのバスタブが1つ据えられています。洗い場はトルコのハマムでよく見られる装飾が施された金属製の水栓が取り付けられており、お湯の水栓を開けると温泉が吐出されました。


 

入室時のバスタブは空っぽですから、まずはお湯を溜めなきゃいけません。ハンドルを全開にしてお湯を出すと、50.3℃という熱めの温泉が出てきたのですが、お湯だけでは熱くて入浴できそうにありませんから、水も同時に投入して湯加減を調整しました。なおジェットバスの噴出口はお湯の吐出口を兼ねており、ある程度まで湯嵩が溜まると、ジェットバスが運転できるようなシステムになっていました。


 
お湯が満たされたところで入浴です。槽内には曲線を描く段があり、寝そべりながら、あるいは腰掛けながら、ジェットバスの水流を体に当てて湯浴みできるようになっていました。一般的にこの手の設備のスイッチは、浴槽の縁や壁などに取り付けられていますので、せっかくですから私も、旅の疲れで凝った体をほぐしてもらおうと、浴槽縁のスイッチらしき物体を押してみたのですが、ちっとも稼働してくれません。どうしたものかと一旦浴室から出て脱衣室の壁に設けられていたサーキットブレーカーのような大きなスイッチをONにしたところ、ようやく轟音を立てながらジェットが噴射されたのでした。
お湯はほぼ無色透明無味無臭ですが、湯口にてわずかに金気を感じました。また槽内では硫酸塩泉のような引っかかりも肌に少々伝わりましたが、総じて言えば癖の少ない優しいフィーリングのお湯であります。でも一見すると癖のないお湯でありながら、湯上がりの温浴効果はとてもパワフルで、お風呂から出た後もしばらくは汗が引かず、外套を羽織らないと寒い晩秋の気候でありながら、私はカットソーだけでの姿で汗を掻きつづけてしまいました。
殺風景で温泉風情はちっともありませんが、個室ですから誰の目を気にすること無く、水着不要で湯浴みできるのはうれしいところです。なお利用後はお湯を抜いておきましょう。


GPS座標:N40.113346, E27.648907,




(↑サムネイルをクリックすると料金表の画像が拡大されます)
【ギュネシ・オテルの個室風呂】
・小(一人向け)浴室:1人利用13.00リラ(←今回の記事で利用した料金)、2人利用16.50リラ、3人利用22.00リラ
・大(二人向け)浴室:2人利用19.00リラ、3人利用24.00リラ、4人利用27.5リラ、
・ジャグジー個室:1人利用19.00リラ、2人利用24.00リラ、3人利用27.5リラ、
"Gönen Termal Resort"ホームページ

ドライヤーあり、売店にて入浴道具の販売あり

私の好み:★★
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バルケシル県 ウルジャ温泉

2015年02月22日 | トルコ
 
今回紹介する温泉は、バルケシルの市街から40kmほど北へ離れた田舎町に湧く「ウルジャ(Ilıca)温泉」です。拙ブログではこれまで既に、キュタフヤ県の「ウルジャ・ハレルク温泉」や「ウルジャス温泉」など、ウルジャと名乗る温泉をいくつか取り上げていますが、この"Ilıca"(これでウルジャと読みます)という言葉は温泉を意味するんだそうですから、日本の温泉地に「○○湯」という地名が多いのと同じようなものですね。バルケシル市街からバンドゥルマ方面へ幹線道路D565号を北上し、途中に現れる標識が示す方へ逸れて北西へ伸びる田舎道をひた走ります。フロントガラスの向こうには、どこまでも平たい丘や耕作地が果てしなく広がっていました。


 
D565号から29kmでウルジャの街に入りました。車が走ると砂塵が舞い上がり、沿道の民家は地味で古臭く、屋根や壁がボロボロな見窄らしい陋屋が多くて、夕焼けの薄暗さが余計に哀愁を漂わせています。


 
前時代的な佇まいの街を抜けると、集落の外縁を流れる川に橋が架かっており…


 
その川沿いには、オレンジ色の塗装が目立つウルジャ温泉のホテル"Aytaç Termal Otel"が建っています。このホテル棟の手前にはドーム屋根が連なっていますが、ここが今回の目的地であるウルジャ温泉のハマムであります。ホテル棟の下の川原には黒いテントが張られており、その下では湯気が上がっていたのですが、源泉かそれに準じたものがあるのでしょうか。


 
橋を渡った先に駐車場があるので、そこへ車を停めて、"AYTAÇ TERMAL"と記されたゲートを潜ります。手前のドーム屋根が男女別の公衆浴場、奥の建物がホテルです。


 
ハマムの向かい側に番台があり、窓口で入浴をお願いしますと、係員のおじさんは日本から一人でやってきた私を笑顔で歓迎してくれました。貴重品を保管するロッカーは番台の室内にありますので、各自で番台の中に入り、自分で施錠します。この番台では石鹸など風呂道具の他、タオルの貸出やソフトドリンク類の販売も行っています。バスタオルは無料で貸してくれました。


 
浴場は男女別に分かれています。まずは入口ホールでスリッパに履き替えるのですが、トイレのドアが開きっぱなしだったため、そこからの臭いが漂っていました。日本の温泉でも鄙びた古い施設ですと、どこからともなく雪隠臭が漂ってくることがありますから、田舎の温泉とトイレの臭いって、妙な親和性があるような気がしてなりません。


 
入口ホールから左へ更衣室が伸びており、簡易ベッド付きの小部屋が数室並んでいました。ベッドは湯上がりに休むためのものですけど、この時はお客さんが私以外に誰もいなかったので、その小部屋を荷物置き場として独占使用させてもらいました。更衣室はションベン臭いし、全体的に古臭くて薄暗い。しかも、街そのものも典型的な鄙びた田舎町で、正直申し上げれば文化的な香りが感じられません。そんな場所の浴場ですから、この時点ではお風呂に対してちっとも期待をしていなかったのですが…



浴室へ入った途端に浴場の迫力に圧倒され、その場に立ち尽くしながら「こりゃスゲー」と思わず口に出してしまいました。奥行きが20メートルはありそうな大変立派な造りの浴場内には、美しいタイルと大理石が多用されており、小・大・小という3連ドーム天井の下に、清らかに澄んだお湯が湛えられている大きな湯船が据えられています。ウルジャの皆様。田舎町だの文化の香りがしないだとの貶してしまい、申し訳ございません。


 
広い浴室の両端に洗い場が設けられています。上画像は更衣室出入口に近い方のものです。総大理石という贅沢な造りで、滑らか且つ上品な肌触りが何とも言えません。水栓と大理石の鉢が計6組、壁沿いに並んでおり、水栓から出てくるお湯はもちろん温泉で、その温度は48.0℃でした。


 
浴槽を挟んだ反対側にも洗い場があり、水栓&鉢のペアが3セット並んでいるのですが、こちらには垢すりなどで用いる大理石の台が設けられていました。この台は温泉熱で温められており、その上で横になってみると、大理石の滑らかな感触からジワジワ伝わってくる温かさが大変気持ちよく、睡魔に襲われそうになってしまいました。


 

浴槽や床などに用いられている大理石はもちろんのこと、壁のタイルが実に美しい。一枚一枚に細かな絵付けが施されたタイルが壁一面に貼られており、美術作品の域に達するほどの秀麗さで入浴客を魅了してくれます。(あくまで個人的な印象として)イスラム圏の文化は青系の色彩美が秀でているのですが、この浴場でも同様の洗練された美意識が見られ、こうした豪華な施工を通じて、ウルジャの方々が温泉入浴という文化をいかに大切にしているかが、伝わってくるようでした。


 

まるでプールのような大きさの浴槽は総大理石造りで、おおよそ12m×5mといったところ。槽内側面に突き出たパイプより源泉が投入され、プールサイドからオーバーフローしています。溢れ出るお湯の量から推測するに、投入量はかなり多いようです。壁のタイルも美しければ、この浴槽が湛えているお湯もまた綺麗であり、実にクリアで濁りは寸毫もなく、底に敷かれた大理石の模様も明瞭に見えます。一般論として、湯船のお湯は浴槽の素材によって変色して見えることがありますが、こちらの場合はお湯の透明度が高いためか、淡い水色を呈しているようでした。この時の湯加減は43.1℃で、まさに日本人向きです。


 
細かな能書きをひと通り垂れたところで、いざ入浴です。無色透明でほぼ無味無臭、癖が無くアッサリとしたタイプのお湯です。澄み切った見た目から抱く印象の通り、お湯のフィーリングは滑らかで柔らかく、お湯の中で肌を擦るとはっきりとしたスベスベ感が得られました。お湯のみならず、大理石の感触も大変上品。こんな瀟洒な大浴場がわずか10リラで利用できるのですから、トルコの温泉文化って実に素晴らしいですね。とても片田舎の公衆浴場だとは思えない、お湯も内装もブリリアントなお風呂でした。おすすめ。


GPS座標:N39.875558, E27.770935,


"Aytaç Termal Otel"ホームページ

バルケシルから路線バスがあるらしく、番台に時刻表が掲示されていたので、以下のその時刻を転記します。
バルケシル発9:00, 10:30, 11:30, 13:00, 14:30, 16:00, 17:00, 18:00, 19:00,
ウルジャ発7:00, 8:00, 9:00, 10:30, 11:30, 12:45, 14:15, 15:30, 17:00,

利用時間不明
10リラ
ドライヤーあり、石鹸など販売あり

私の好み:★★★
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