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前回記事では肘折の山奥に湧く秘湯「石抱温泉」を取り上げましたが、今回はその「石抱温泉」を管理なさっている温泉街の旅館「ゑびす屋」を取り上げます。昨年肘折を訪れた私は、藪蚊の猛襲に遭いながら山奥の秘湯で湯浴みを体験し、それから温泉街へ戻ってお宿へチェックイン。一晩お世話になったのでした。温泉街のメインストリートに面しているこちらのお宿は、いかにも肘折の温泉宿らしいファサードです。場所としては「上の湯」の斜め前、バス折り返し場の真向かいです。お宿の裏手には駐車場がありますので、車でのアクセスも問題ありません。
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この日は廉価で宿泊できる湯治プランで予約しました。通されたお部屋は1階の続きの間。通りに面した縁側に部屋が並んでおり、襖一枚で隔てられているだけですから、セキュリティーやプライバシー面に厳しさを求める方にはちょっと難しいかもしれませんが、綺麗に維持されている客室の広さは8畳もあり、テレビ・エアコン・ポット・金庫が備え付けられていますので、私としては快適に過ごすことができました。なおWifiは帳場の前で使うことができます(客室までは届いていませんでした)。
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帳場前のロビーには大きなスピーカーが置かれ、ムーディーなジャズが流れていました。館内に飾られているものを見ると、けだしお宿の方はジャズに造詣が深いのでしょう。レトロなお宿にジャズが合い、なかなか良い雰囲気です。
スピーカーのそばにはコーヒーのマシーンが置かれ、朝には自由に飲むことができます。重度なコーヒー党の私も勿論いただきました。
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肘折の温泉宿といえば湯治ですね。私は2食付きのプランで利用しましたが、もちろん自炊も可能。館内にはこのような自炊場も用意されています。
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湯治プランとはいえ、お食事付きでお願いしました。2食ともお部屋出しです。
上画像は夕食です。配膳は18時。御膳の上に揃った料理は、タラのホイル焼き、煮物、パスタのサラダなど、家庭的な献立ながらとても美味しく、しかも無駄に食べ過ぎない適度なボリュームも私にとっては嬉しい点でした。一見すると、大食漢の御仁には物足りないように思えるかもしれませんが、意外と量があり、少なくとも私には十分でした。
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一方、こちらは朝食。植物性のおかずが主体の、質素ながらもバランスの良さそうな献立ですね。しっかりいただき一日の活力を蓄えました。リーズナブルな湯治プランでありながらお部屋出しなのは有難いですね。
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肘折といえば朝市が有名ですね。私も宿泊した翌朝の6時頃に、宿で下駄を借りて出かけてみました。決して大きな規模ではありませんが、平日、しかもこんな交通不便な山奥であるにもかかわらず、途切れることなく朝市が継続されていることは、奇跡としか言いようがありません。細長い道に沿っておばちゃん達が露店を開き、肘折界隈の山の幸が店先にズラリと並びます。たしかに眺めているだけでも楽しいのですが、朝の短い時間にしか店を開かず、しかも客数だって限られている、当然客単価は低く、総売り上げは高が知れている・・・市を開いたところで、ちゃんと商売として成り立っているのか、つい心配したくなっちゃいます。
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当初は市を見学するだけに留めておくつもりでしたが、そんな心配が私の心を動かし、気づけば私はいくつかの露店で、おばちゃん達から粽やナスの漬物などを購入していました。見るだけじゃなく買わなきゃ、伝統の朝市は続いていきませんよね。でも買って結果的に正解。温泉街からの帰路は、それらを口にすることで、おいしく小腹を満たすことができました。
さて、次回記事ではお宿のお風呂の様子を取り上げます。
次回に続く