温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯ヶ島温泉 世古の大湯

2014年02月27日 | 静岡県
 
灯台下暗しというべきか、神奈川県に住む私にとって、伊豆半島は身近で気軽に行ける温泉地のはずなのですが、近いからこそ「いつでも行ける」と後回しにする傾向があって、下手すりゃ余程遠い青森や北海道の方が訪問頻度が高いかもしれません。そんな私もたまには伊豆へ足を運びたくなる時もあり、先日気づけば東名を走って沼津インターから一般道を南下していました。東北や九州へ遠征する場合と違い、伊豆を訪れる際には、東名を走行している時に頭の中のデータベースを引っ掻き回しながら見当をつけるのですが、この時は山間の共同浴場に入りたい気分でしたので、久しぶりに湯ヶ島温泉の名湯「世古の大湯」でひとっ風呂浴びることにしました。この浴場は観光地としての色彩が強い伊豆にあって、全く逆ベクトルを示す地元密着型の鄙びた秘湯的共同浴場であり、それゆえ関東の温泉ファンにはよく知られた存在でして、インターネットにも多くの情報が紹介されております。

まずは車一台しか走れないような狭隘な県道59号線を西進して「湯ヶ島温泉」バス停へ向かいます。バス停の前には3台分ほどのスペースが確保されている駐車場があるので、そこに車を止めてからちょっと戻る感じで歩き、階段で世古峡の谷底へ下りてゆきます(なお駐車場に隣接して路線バスの転回場所もありますが、いくら広いからと言ってもそちらには駐車しないように)。


 
基本的に地元向けの浴場ですから、伊豆市観光協会のHPでは紹介されていませんし、現地に行っても案内標識などは一切掲示されていませんが、浴場へのアプローチとなる階段のトバ口には、利用に際する注意書きの看板が立てられているので、これがアプローチを見つける際の目印となるでしょう。なお階段の途中には堅牢なゲートが建てられており、時間外はこのゲートがキッチリと施錠されるようです。


 
階段をどんどん下りてゆきますが、その途中にも料金を支払うよう注意喚起する看板が立てられていました。


 
階段を下りきったところにある、猫の額の如き狭い一角に建つ青いトタン屋根が、今回の目的地であります。浴場手前の空き地に見える、屋根掛けされた小さな設備は浴場に引かれている源泉井かな。


 
峡谷の底にひっそりと佇むささやかな湯小屋ですが、歴史ある温泉地らしく、正面には「名湯 瀬古の大湯」と揮毫された立派な扁額が掛けられていました。自分で名湯と言い切っちゃっているところが潔いですね。ところで拙ブログのタイトルでは「世古の大湯」と「世」の字で表記しましたが、この扁額では「瀬」の字になっています。同音異義語だらけの日本語においては、地名ですら一箇所に対して数通りの漢字を宛ててしまう例がよく見られますから(例えば伊豆の修善寺と修禅寺、大阪の阿倍野と阿部野など)、扁額の表記もその典型例といえるでしょうけど、ここで試しに「瀬古の大湯」でググッてみますと検索結果は約1100件、同様に「世古の大湯」では約1700件となり、少なくともグーグルさんの世界においては「世」の字に軍配が上がっております(2014年2月上旬現在)。また浴場名の由来となっている峡谷の名前は「世古峡」であり、「世」の字の方が固有名詞として確立していると言えそうです。従いまして、この記事では「世古の大湯」表記で統一してゆきます。


 
男女別に入口が分かれており、手前側は男湯です。二つの入口の間には料金を入れる赤いポストが括りつけられており、当然ながら入室前にそちらへ100円を納めるわけですが、ドアのガラスにも料金支払い喚起の注意書きが貼りだされていました。どうやら無銭入浴が後を絶たないらしく、そこに記されている「支払いは最低限のマナーです」という残念な言葉が、地元の方の無念さを伝えていました。


 
それどころか、入り口の周囲には、ニャンコの瞳や子供の眼差しを大きく印刷したポスターまで貼りだされており、眼光炯々と不埒な輩を牽制していました(画像一部加工済み)。それにしても僅か100円を惜しむだなんて、余程の吝嗇家ですね。こうした有象無象が発生してしまうのは、膨大な人口を擁する関東圏の宿痾なのかもしれません。



いかにも共同浴場らしく脱衣室は至って質素で、棚や腰掛けがあるばかり。ありがたいことに団扇が用意されているので、湯上りの火照った体を冷ましたいときには大いに役立ちます。きっと日常的にこのお風呂を使う方々が寄付してくださったのでしょうね。


 
昭和の風情を強く漂わせる浴室は、壁はモルタルの白いペンキ塗り、床は補修した跡が目立つ細かなタイル貼り、浴槽はスカイブルーのタイル貼りです。世古峡の渓流に面している窓から燦々と陽光が降り注いでおり、壁の白さや浴槽の水色が外光のお蔭でより際立ち、峡谷の底に位置していることを忘れてしまうほど、明るさに満ち溢れていました。とはいえ、いくら明るいとは言ってもご覧のように造りは古く、洗い場にはお湯(源泉)が出る押しバネ式の水栓しかありません(水の蛇口もあるのですが、この時はコックを開けても水が出てきませんでした)。


 
浴槽は二分割されており、窓に向かって右側は2人サイズで適温(42~3℃)、左側は3人サイズで結構熱め。源泉はまず左側の槽に注がれ、そこから右側へと流れて、右側槽の切り欠けから床へ溢れ出ています。源泉を投入する配管は湯面下へ潜っていますが、その配管がお湯と接するライン上には、トゲトゲ&ブツブツの硫酸塩の白い析出がこびりついていました。また下向きの配管からお湯が吐出される先の底タイルは、熱さのためか、焼けてオレンジ色に変色していました。

お湯は中伊豆エリアの温泉らしい無色澄明の硫酸塩泉でして、入りしなにはピリっとした微かな刺激が脛をくすぐり、湯船に浸かりながら腕でお湯を掻くとトロミが纏わり、その腕を撫でるとキシキシとした引っかかる感触が伝わってきます。湯面からはふんわりとした石膏臭が漂い、弱石膏味に仄かな芒硝味、そしてほんのりとした甘みが感じられました。また、完全掛け流しの湯使いであり、源泉から近いだけあって、キリっとした鮮度感が全身で楽しめました。特に湯口のお湯を直接受ける左側の熱い浴槽では鮮度感がはっきりしており、全身茹で上がっちゃうのを覚悟の上で、この時の私はひたすら熱い浴槽に浸かり続けていました。そして案の定、逆上せあがってヘロヘロになり、脱衣室の団扇を扇いで体の冷却につとめたのでありました。良質なお湯だから保温効果も高く、なかなかクールダウンできないんだな…。ま、私のマヌケな体験談はともかく、こんな素晴らしいお湯を僅か100円で堪能できるのですから有難いじゃありませんか。是非外来客の方には無銭入浴などせずに湯あみを楽しんでいただきたいものですね。


瀬古の共同湯 湯ヶ島5号
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 46.9℃ pH7.9 17.1L/min(自然湧出) 溶存物質1.307g/kg 成分総計1.314g/kg
Na+:185.0mg(43.89mval%), Ca++:200.9mg(54.63mval%),
Cl-:41.3mg(6.39mval%), SO4--:800.9mg(91.85mval%), HCO3-:19.6mg(1.76mval%),
H2SiO3:50.4mg, CO2:7.1mg,
(※分析表におけるセコの表記は「瀬古」となっています)

静岡県伊豆市湯ヶ島某所 (地図による場所の特定は控えさせていただきます)

11:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

半出来温泉 登喜和荘 2013年11月再訪

2014年02月25日 | 群馬県
 

万座温泉で入浴して硫黄まみれになった帰り道、ちょうど「半出来温泉」の目の前を通ったので、久しぶりに再訪して立ち寄り入浴してまいりました。なおこちらの温泉は拙ブログの開設初期に取り上げております(前回の記事はこちら)。


 
玄関にて入浴をお願いしますと今回も快く受け入れてくださいました。帳場のカウンターには役場発行の入浴券を置いておく箱が用意されていたので、地元の方にとっては公衆浴場的な存在でもあるようです。帳場から奥へ伸びる廊下を歩いて脱衣室へ。


 
黄昏時に訪問したため、画像が全体的にボヤケて薄暗くなってしまいました。見難くてゴメンナサイ。浴室は相変わらず鄙び感たっぷりで、プレハブ小屋のような壁にはシミが目立っており、床はコンクリ打ちっぱなしという、まるで共同浴場のような装飾性のない地味な佇まいですが、こちらはお湯の質がとっても良いので、むしろ余計な飾りは無駄なのですね。化粧姿ではなくすっぴん勝負なのであります。室内には浴槽がひとつ据えられている他、洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基取り付けられています。


 

浴槽は5~6人サイズの総木造で、相当使い込まれている感があり、余多の人の入浴によって磨かれた槽内は肌触りが程よく滑らかです。浴槽の縁からは静々とお湯が零れ落ちており、私が湯船に浸かると音を立てながら勢い良く溢れ出ていきました。かつては窓の右下にある湯口からお湯が注がれていましたが、そこは現在塞がれており、代わりに露天風呂出入口のそばに据え置かれた岩から投入されています。湯使いは完全放流式。加温も加水もありません。湯口の岩にはコップが置かれていますので、試しにテイスティングしてみますと、甘塩味と出汁味に微金気と弱炭酸味、そして重曹系のほろ苦みが感じられ、やや遅れて喉に渋味が残りました。また畑の土に金気を混ぜたような表現しにくい匂いとともに弱いアブラ臭が鼻へと抜けていきました。


 
露天風呂は吾妻川を臨む岸の上にあり、浴室の扉を開けて屋外の通路を歩いて行くことになります。なお露天は混浴ですから男女の両通路は途中で合流するわけですが、その合流地点で構える庭門には赤提灯がぶら下がっており、日が暮れるとその提灯に明かりが灯って、紅色の艶かしい光が辺りをボンヤリと照らしていました。



私の記憶が確かならば、昔の露天風呂は樽風呂だったはずですが、その樽風呂は現在お役御免となって赤提灯の庭門下に置かれていました。ちなみにこの樽は元々味噌樽だったんだそうです。


 
吾妻川を臨む実に清々しいロケーション。すぐ目の前に掛けられている吊り橋は、吾妻線袋倉駅へショートカットする歩行者専用のルートです。ちょうど私が入った頃に夜の帳が下り、しばらく露天に浸かっておもむろに夜空を見上げると、夜空には満天の星が輝いていました。


 
浴槽は二分割されており、画像左(上)は湯口のお湯が直接落とされる1~2人サイズの小浴槽、画像右(下)は小浴槽からお湯を受けている4~5人サイズの大浴槽です。湧出時点の源泉温度は42~3℃であり、加温などの手を加えていませんので、川風の影響を受ける露天ではどうしてもぬるくなりやすく、訪問時において、湯口のお湯を直接受けている小浴槽は41℃程度で長湯にもってこいの温度でしたが、大きな浴槽は35℃あるかないかで、晩秋の夜に入るにはかなりぬるく、一旦湯船に浸かると出られなくなっちゃう湯加減でした。
この時は日没後の寒気を嫌ってか、どなたも露天へやってこなかったので、これ幸いと私はひたすら小浴槽に浸かって長湯し、せせらぎを耳にしながら星空を仰ぎ見つづけました。長湯仕様のややぬるい湯加減ながら、お湯が持つパワーによって湯上がりの温浴効果も抜群です。この温泉を取り上げる方はどなたも仰ることですが、名前こそ半出来ですが、お湯の質も環境も、本当に上出来ですね。余談ですが、ここを訪れる前に万座で湯浴みしていた私は、この半出来の湯に浸かることによって、体に付着して残っていた万座の硫黄と半出来の鉄分が反応し、特に爪の間が真っ黒に変色してしまいました。温泉をハシゴしていると、自分の体が化学実験の場と化すことが度々ありますね(いや、私だけ?)。


恵の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 42.5℃ pH7.0 湧出量測定せず(動力揚湯) 溶存物質4.94g/kg 成分総計4.96g/kg
Na+:1054mg(56.96mval%), Mg++:129mg(13.14mval%), Ca++:440mg(27.22mval%),
Cl-:2385mg(82.41mval%), SO4--:575mg(14.83mval%), HCO3-:136mg(2.76mval%),
H2SiO3:146mg, HBO2:21.6mg, CO2:19.8mg,

JR吾妻線・袋倉駅より徒歩7~8分(吊り橋経由)
群馬県吾妻郡嬬恋村今井97-1
0279-97-3373
ホームページ

日帰り入浴8:00~20:00
400円(90分間)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥草津温泉 チャツボミゴケ公園

2014年02月23日 | 群馬県
万座温泉や草津温泉の周辺では、昭和40年代まで白根・石津・吾妻・小串といった鉱山で硫黄が盛んに掘削されていましたが、草津温泉と尻焼温泉のちょうど中間あたりには鉄鉱石を露天掘りしていた群馬鉄山もあり、いまでは草津への観光客を運ぶJR吾妻線も、かつてはそこで採掘された鉄鉱石を運搬しておりました。



長野原草津口駅(旧長野原駅)から車で応徳温泉や尻焼温泉などへ向かう際、国道145号から292号へ入って間もなく左手に上画像のような赤い鉄橋が目に入ってきますが、これは長野原駅で吾妻線より分岐して旧六合村の太子駅まで伸びていた長野原線(太子線)跡でして、群馬鉄山の鉄鉱石を積載した貨車はこの鉄橋を渡っていました。太子線は1971年に廃止されたものの、このようにして所々に遺構が残されており、現在群馬県では、終着駅であり且つ鉄鉱石の積載基地であった太子駅跡を整備して、現役時代の様子を復元させる計画を立てているそうです。
参考:群馬県「旧国鉄長野原線太子(おおし)駅跡整備の実施について」

太子線同様に群馬鉄山も既に過去帖入りしており、閉山後は鉱山を運営していた日本鋼管(現JFE)によって保養所「奥草津休暇村」として活用されていましたが、2012年に中之条町へ譲渡されて「チャツボミゴケ公園」と改称され、一般の外来客も訪問利用することができるようになりました。チャツボミゴケという不思議な名前は好奇心を大いに駆り立ててくれますが、この「チャツボミゴケ公園」には温泉とコケが作り出す美しい光景が広がっていると聞き、温泉ファンであり且つ鉱山にも関心がある私は、実際にその景色を自分の目で確かめてみることにしました。



現地へ向かう道中には随所に看板が立っているので、どなたでもカーナビなしで容易にたどり着けるかと思います。公道から敷地内のアプローチに入ると、さすが大企業の元保養所だけあって、美しい並木道が奥へと伸びていました。


 
広大な敷地の中心には管理事務所のほか、宿泊用のロッジやキャンプ場などが設けられています。まずは駐車場に車を止めてから、公園事務所(画像右or下)にて入園料を支払います。事務所の職員の方曰く、コケの自生地は更に奥にありますから、ご自身でゲートの鎖を外して、車で奥へ向かってください、とのこと。


 
職員の方の指示通りにゲートの鎖を外して、事務所から更に300メートルほどダート道を走ると、広い駐車場に突き当たりました。そこで車を止め、歩いて目的地へと向かいます。歩道は工事用車両が走行するため幅員は広く、登り坂ですが比較的歩きやすい状況でした。道の左側を流れる川からはモクモクと白い湯気が上がっていますね。


 
登り坂の途中には木板で囲われた設備があり、何かと思って裏側に回りこんでみたら、そこには「源泉施設」が掲示されていました。この設備は奥草津温泉1号井という温泉井戸であり、JFEの関連会社が管理しているようです(画像一部加工済み)。この温泉ってどこで使われているのかな…。


 
源泉井戸から先は坂道の勾配がきつくなり、左側の川も湯の滝を為すようになってきました。


 
駐車場から5分ほど歩いたところで、「穴地獄」と書かれた看板の前にたどり着きました。ここからは歩行者専用の木道に入ります。



木道に入ってまもなくすると俄然視界が開け、あちらこちらから白い湯気を立ち上らせながら、一面にモスグリーンの苔が広がる神秘的な光景が目に入ってきました。ここが関東最大のチャツボミゴケ自生地である「穴地獄」であります。ここに動物が落ちると抜け出せずにそのまま死に至ってしまうことから、その名がついたんだとか。


 
チャツボミゴケは強酸性の水が流れるところにしか発生しない不思議な苔なんだそうでして、これだけ大規模な群生地は全国でも極めて稀有なんだとか。苔の群生は緻密に生えながら辺りの岩を覆うようにして広がっており、ベロア生地のように外光の反射によって色を変える実にミステリアスな美しさです。その綺麗な色合いに見惚れながらも、鉄ちゃんの血が流れる私は、ついつい阪急電車のシートを連想してしまいました。



木道は穴地獄の周囲をぐるっと一周しており、その最奥部から振り返ると、穴地獄から立ち上る湯気越し遠方の稜線が望めました。こんな自然美と眺望に恵まれたところを、数年前までは企業が保養所にして部外者の立ち入りができなかったのですから、零細企業に勤める私にとっては羨ましいやら悔しいやら…。


 
先程から湯気という語句を多用しておりますが、この穴地獄では酸性の温泉が湧出しており、それによってチャツボミゴケが生きていけるわけですね。穴地獄のあちこちから湧出する温泉は河床を真っ白に染めており、辺りにイオウ臭を漂わせていますので、硫黄を含有していることがわかります。木道の上からお湯に温度計を突っ込んでみたところ29.4℃と計測されましたので、温泉法上から行っても立派な温泉に間違いありません。なお環境を守るために穴地獄内は木道以外立入禁止であり、ここで野湯するわけにはいきませんが、上述のようにすぐ下流で立派な湯の滝を為すほど湧出量が非常に多く、この光景を見て野湯にチャレンジしてみたくなる温泉ファンも少なくないでしょう。



チャツボミゴケを守るため野湯なんて行為は許されませんが、実は公園内に共同浴場があるんですね。その場所は公園事務所の並びです。野湯ができない鬱憤はここで晴らしましょう。とは言いながら、常時開放されているわけではなく、限られたシーズンの週末のみ利用可能となっているそうでして、私が訪れた日には残念ながら利用不可でしたので、ちょこっと見学させていただくことにしました。


 
男女別の浴室は、床や腰部など下半分(水回り)が濃いグレーのタイル、壁など上半分がホワイトの塗装と、モノトーンながら濃淡をはっきりと分けて視覚的な安定感を生み出しています。室内には浴槽一つの他、シャワー付き混合水栓が3基設置されています。



浴槽の槽内には白いタイルが、縁には黒い御影石が用いられています。入浴客は来ないにもかかわらず、壁から突き出たパイプより温泉が絶えず浴槽へ注がれ、勿体無いことに縁から溢れて捨てられていました。こちらで用いられているお湯は、上述の源泉施設、つまり奥草津1号井から引いているものなんですね。見た目は無色透明で、味・匂いともにかなり薄く、芒硝っぽい味や硬水のような口当たりがほんのり感じられるばかりで、かなりアッサリとしたものでした。穴地獄のお湯は硫黄感がはっきりしていましたから、それとは全く異なる泉質のお湯なんですね。なお湯使いは加水加温循環消毒が一切ない完全掛け流しです。
残念ながら今回は入浴できませんでしたが、噂によればこちらには露天風呂もあるらしいので、日を改めて再訪し、内湯・露天の双方についてリベンジを果たすつもりでおります。


ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 60.3℃ pH8.3 蒸発残留物1.11g/kg 成分総計1.09g/kg
Na+:239.0mg, Ca++:118.0mg,
Cl-:290.0mg, SO4--:372.0mg, CO3--:9.01mg,
H2SiO3:53.10mg, H2S:0.0mg,
加水加温循環消毒なし

群馬県吾妻郡中之条町大字入山13-3
0279-95-5111
ホームページ

入園:9:00~15:30まで 冬季休業(2014年度は4月中旬オープン予定)
保全協力金として1人300円
入浴(時間や料金)に関しては施設に要問い合わせ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

万座温泉 湯の花旅館

2014年02月22日 | 群馬県
 
ストレスが鬱積して発狂しかけていた昨年(2013年)秋の某日、無性に白濁の硫黄湯が恋しくなり、ストレスまみれの我が身を硫黄まみれにすべく、車を飛ばして日帰りで万座温泉へ向かいました。万座の旅館はどこも魅力的ですが、今回訪ったのは「湯の花旅館」です。玄関に掲げられている「三笠宮殿下御成りの宿」の札が誇らしげですね。


 
玄関前では木樋の中を湯気を上げながら、浴室に向かって万座のお湯が流れていました。いまからこのお湯に浸かるわけですね。湯気から揺蕩う硫黄の香りに思わず興奮してしまいます。


 
標高1800メートルという高所なので、まだ秋の景色が展開されていた下界よりも一足どころか二足ほど早く、11月初旬の関東地方にありながら当地は既に冬の気配が色濃く漂っており、空には鉛色の雲が低くたれこめ、羽織るものがないと外に出られないほどの寒さだったのですが、館内ではストーブがしっかり焚かれていたので、玄関の戸を開けた途端に私を包んでくれたそのぬくもりにホッとさせられました。こちらのお宿ではサルノコシカケが象徴的な存在のようでして、帳場前には大小様々な半月状の子実体が並べられていました。


 
帳場の角を左に曲がって真っすぐ進み、共用の流し台があるところを更に左へ折れて浴室へ。湯治宿らしい鄙びた雰囲気が、温泉風情を醸し出してくれます。流し台の先には、これまた湯治宿らしく自炊室が設けられていました。


 
こちらのお宿には、「延寿の湯」という縁起の良い名前の男女別内湯と、混浴の「月見岩露天風呂」があるのですが、まずは内湯から入ってみることにしました。


 
脱衣室前に鎮座する小さなお社はその名も「猿茸大明神」。全館徹底的にサルノコシカケ押しなのであります。脱衣室には籠が並べられた棚が括り付けられているだけで至ってシンプルですが、私が訪れた日のように寒いシーズンにはちゃんとストーブが焚かれますので、寒さを心配せずに着替えられました。


 
総木造の浴室は伝統的な日本の温泉旅館に相応しい渋くて静寂な空間となっており、板張りの床には浴槽の縁に平行して溝が彫られているとともに、板自体が浴槽の中心を軸にして放射状に張られていました。この板の目や溝は滑り止めの役割を果たしていることに相違ないのですが、単にグルーブを刻むのではなく、それを幾何学模様に昇華させている点は、温泉文化に長い歴史を有する日本の旅館ならではの美学ですね(青森県の温川山荘も同様です)。
なお室内には後年取り付けられた思しきシャワーが1基設けられているのですが、湯治宿のお風呂ですから、おそらく元々シャワーなんて設備は無く、近年になって増設されたのでしょうね。


 

壁には「たぬき節」というタイトルの歌やら、「草津節」の万座版替え歌(「♪草津よいとーこー、一度はおいで」の草津を万座に替えたもの)やら、「湯の華の宿の炉端は・・・」と詠っている短歌やら、いろんなものが掲示されており、けだし、湯に浸かってご機嫌のお爺さん達はこうした歌を唸って悦に入るのでしょうね。


 
浴室名の「延寿の湯」とは、この宿のシンボルであり且つ不老長寿の霊薬とも言われたサルノコシカケ(霊芝)にあやかっているらしく、屋外の木樋を流れてきた温泉は、湯口の枡にて霊芝やフジの蔓に触れてから(薬効を抽出させてから?)、湯船へと注がれているんですね。私は漢方薬の世界には疎いのですが、ここで使われているような大きな霊芝って、相当貴重なものであろうことは想像に難くありません。しかも申し訳程度じゃなく、大きな枡にギッシリと敷き詰められているのですから恐れ入ります。湯に触れさせる前にこれらを換金していたならば全部でいくらになっていたのだろう、と発想してしまった私は下衆の極みですね。なお、お宿の説明によればこうした本物のサルノコシカケ湯は日本で唯一なんだとか。硫黄含有量日本屈指の万座の湯に、世にも貴重な霊薬を触れさせることにより、得も言われる薬効を期待しているのでしょう。

浴槽は4~5人サイズで、湯加減は体感で43℃くらい。源泉から供給される温泉が高温であるためか、投入量はやや絞られています。お湯は青みを帯びた灰白色に濁っており、お湯を動かすと沈殿が舞い上がって余計に強く濁ります。日本屈指の硫黄含有量を誇るだけあって、お湯から漂うイオウ臭は強く、口に含むとレモン汁のような酸味収斂と苦味、そしてタマゴ味が感じられました。


 
続いて屋外の「月見岩露天風呂」へ。露天は混浴ですが専用の脱衣室が無いので、私はタオルで前を隠しつつ脱衣室から一旦廊下に出て、すぐ目の前にある入口の戸を開けて露天へと出ました。周囲のササが目隠しになっている露天風呂は、大きな岩で囲われた岩風呂で、美しい青白いお湯が張られていました。


 
お風呂の傍では布袋様が微笑みながら入浴客を見守っています。露天からの眺めもまずまずで、この日はガスっていたため遠方視界には恵まれませんでしたが、晴れていれば彼方に連なる稜線を眺めながら湯浴みを楽しむことができるんだそうです。


 
湯口に木の棒が突っ込まれているお湯の流路は湯の花で真っ白に染まっており、外気の影響を受けるために内湯よりもややぬるい41~2℃という絶妙な湯加減となっていて、お湯に浸かると全身が湯の花まみれになり、お湯も白い濁りが一層濃くなって、恰も牛乳に浸かっている気分が楽しめました。内湯よりも投入量が多く、お湯の濃厚さが五感の全てから伝わってくる素晴らしいお湯でした。

当初の思惑通りに硫黄まみれになり、高原の露天風呂でじっくり長湯してストレスを雲散霧消させようとしていた矢先、鉛色の空からチラチラと白いものが舞い降りてくるではありませんか。当記事の露天の画像には白い斑点が写っていますが、これは紛れも無く雪でして、その後降りが急に強くなり、辺りの笹原には忽ち白い化粧が施されてしまいました。この時の我が車はまだ冬タイヤに履き替えていなかったため、急激に白く染まってゆく万座の景色に恐れをなし、長湯したい気持ちを抑えて、慌てて退館することに。実際にその1時間後、国道292号(志賀草津高原ルート)は雪で通行止めになったのであります。早く出発して正解でした。次回はゆっくり浸かりたいなぁ。


ラジウム北光泉
酸性・含硫黄-マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 76℃ pH2.5 蒸発残留物1.42g/kg 成分総計1.39735g/kg
H+:3.2mg, Na+:122mg, Mg++:106mg, Ca++:35.1mg, Fe++:1.65mg, Mn++:5.9mg, Al+++:5.5mg,
Cl-:128mg, SO4--:792mg, HSO4-:8.58mg, 
H2SiO3:117mg, H2S:41.8mg,
加水加温循環消毒なし

軽井沢駅・中軽井沢駅・万座・鹿沢口駅より西武高原バスの浅間白根火山線で「万座温泉」下車、徒歩10分(冬季のバスは万座バスターミナルまでの運行)
群馬県吾妻郡嬬恋村大字干俣2401  地図
0279-97-3152
ホームページ

日帰り入浴10:00~15:00
700円
シャンプー・石鹸あり、他備品見当たらず

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北軽・応桑(御所平)温泉 かくれの湯

2014年02月20日 | 群馬県
 
軽井沢に別荘をお持ちの方から「北軽にも秘湯があるよ」と勧められ、昨年(2013年)秋の某日に北軽井沢へ出かけることにしました。そのお話によれば、拙ブログで以前取り上げたことのある「北軽井沢温泉 絹糸の湯」から近いとのことでしたので、北軽だから看板ぐらい出ているだろう、現地に行って適当に走っていれば辿り着くだろう、そう高をくくって事前に調べることなく車を走らせていたのですが、実際に現地へ行ってみますと国道146号線の路傍にはそれらしき看板がちっとも見当たらず、スマホの地図で場所を確認して最短コースと思しき道を入ってみたものの、畑の先が行き止まりになってしまってバックを強いられ、すっかり迷子になってしまいました。しばらく右往左往した後、町立西中学校前の丁字路から東側へ伸びる路地に入って坂を下ってゆくと、やがて道は小さな川を渡るのですが、その橋の手前に「隠れの湯 あと300m」と書かれた小さな看板を発見。その看板を目にして安堵しながら、川沿いの道を南下しました。


 
あと300mというものの、その道は部分的に未舗装で、デコボコには泥水が溜まっています。本当にこの道で大丈夫なんだろうかと再び不安を覚え始めたころ、徐々に視界が開けて畑が広がりはじめ、道の右側に「露天風呂」と染め抜かれた幟を見つけました。路地の奥にはキャンピングトレーラーが数台とめられています。


 
そのキャンピングトレーラーの奥には駐車場があり、木々に囲まれた路地のドン詰まりに直線的な傾斜屋根が印象的な小屋が建てられていました。今回の目的地「かくれの湯」に到着です。その名の通り、黒基調のシックな建物は周囲の自然環境に身を隠しているようであり、また初見では辿りつきにくい立地も「かくれ」の名に相応しいですね。


 
高原のアトリエを思わせる小洒落た外観ながら、日本の入浴施設としての伝統を継承しているのか、下足箱は昔ながらの銭湯でよく見られる松竹錠が採用されていました。なお料金は玄関の券売機で支払います。館内ではお食事もできるようでして、この券売機は食券の販売も兼ねていました。


 
館内で店番をしている女性の方に入浴券を手渡し、お座敷の食堂を通過して浴室へ向かいます。2つある浴室は「希泡の湯」および「美泡の湯」と名付けられており、温泉に含まれる泡を浴場の売りにしていることが、その名前から窺えます。暖簾が容易に差し替えられるようになっており、男女入れ替え制なのか否かは確認し忘れちゃいましたが、この時の男湯は「希泡の湯」でした(男女固定制だったらゴメンナサイ)。


 

貴重品用ロッカーの上にランプが置かれている脱衣室は、中型ロッカー(100円リターン式)や棚・籠の他、洗面台やドライヤーなどひと通りのものが用意されており、コンパクトながら使い勝手はまずまずです。なおこの室内のみならず、館内のいろんなところに懐かしいグッズが飾られており、レトロな雰囲気を基本コンセプトとしているようでした。そういえば、先ほどの松竹錠もその好例ですよね。
先ほど浴室名に関して、泡を売りにしていると述べましたが、室内の壁には「天然炭酸」と大きく書かれた新聞記事の切り抜きが貼り出されており、この記事自体は当温泉とは無関係で、炭酸の美容効果を取り上げたものなのですが、それを例に出して、炭酸が多く含まれる当温泉も同様の効果が期待できますよ、とアピールしているようでした。


 

内湯は小ぢんまりとしており、この日は若干湯気が篭り気味でしたが、浴槽をはじめ床や壁など全面的に木材が用いられており、また露天風呂に面して窓も大きく確保されているので、伝統的な湯屋らしいぬくもりと高原らしい明るさを兼ね備えた空間となっていました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設けられています。


 
総木造の浴槽は4~5人サイズ。箱から樋が突き出たような形状の湯口より源泉がドボドボと音を立てて投入され、窓側の隅にあるオーバーフロー管より排湯されています。この時の湯加減はちょっと熱い44℃前後でした。加水の有無がわかりませんが(多分非加水かと思われます)、槽内には循環に関わる設備は見当たらず、放流式の湯使いであることに間違いありません。


 

続きまして、窓サッシを開けて露天風呂へ。
ちょっとした谷頭に向かって開けているこの露天風呂は、森の中の池を思わせる大きな岩風呂でして、両側が小高くなっているために眺望はききませんが、視界にはお風呂以外の人工物が一切目に入ってきませんので、高原のそよ風を感じつつ、小鳥の囀りを耳にしながら、爽快な湯浴みを楽しむことができました。なお木々に囲まれている場所柄、そして晩秋という季節柄、湯船には落ち葉がたくさん浮かんでいましたが、ちゃんと網が用意されていたので、それでササッと掬ってから入浴しました。
この湯船には、竹筒の湯口から源泉がドボドボと注がれています。もちろんこちらも放流式の湯使いであり、湯面に突き出ているオーバーフロー管より谷を流れる沢へ向かって排湯されていました。ちょっと熱めの内湯と異なり、外気によって冷やされる露天は長湯したくなる41℃くらいになっていました。


 
面白いことに屋外にも洗い場があり、水栓3基とともに、桶やシャンプー類もちゃんと用意されています。洗い場の壁には「この蛇口は源泉です。2分間位開栓したままお待ち下さい。41℃位の温泉が出ます」と書かれている通り、蛇口を捻ると源泉が出てきました。


 
お湯は淡く青みがかった山吹色に弱く濁っており、湯口付近では気泡によって白い濁りも発生していました。また湯中では薄茶色の浮遊物(湯の華)が見られ、細かな気泡も無数に浮遊しています。口に含むと金気味や土気味に出汁味や渋味、ほろ苦み、そして炭酸味が感じられ、金気臭や土類臭の他、何がか燻されたような匂い、そして湯口でふんわりとしたタマゴ臭が嗅ぎ取れました。さすがに施設側が泡をアピールするだけあって、お湯に浸かったときの泡付きが激しく、とりわけ内湯で顕著であり、肌とお湯が接する際には炭酸の気泡が弾けるシュワシュワ感が得られました。この泡付きのおかげなのか、土類泉のようなギシギシ浴感の中でスルスル感も拮抗しており、肌の滑りが結構滑らかなのです。その滑らかな浴感と高原の澄んだ空気が相俟って、ついつい長湯したくなるのですが、ここのお湯は秘めたる強いパワーを有しており、私好みの湯加減だった露天で長湯しているうちに、ボディーブローを食らったかのような脱力感に苛まれ、堪らず湯船から上がったものの、しばらくは心臓が激しく鼓動して汗がなかなか引きませんでした。相当の実力を持った個性的なお湯のようですね。もちろん炭酸のお湯ならではの温浴効果も存分に発揮されました。

立地も存在も「かくれ」ているこちらのお風呂は、掛け流しのお湯を堪能できる上に炭酸の泡付きも楽しい、隠しておくには勿体無い良泉でした。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 48.6℃ pH6.5 220L/min(動力揚湯) 溶存物質3.22g/kg 成分総計3.72g/kg
Na+:628mg(66.30mval%), Mg++:95.9mg(19.14mval%), Ca++:74.6mg(9.03mval%), Fe++:5.81mg,
Cl-:435mg(30.23mval%), SO4--:332mg(17.01mval%), HCO3-:1305mg(52.70mval%),Br-:1.2mg,
H2SiO3:216mg, HBO2:43.5mg, CO2:503mg,

群馬県吾妻郡長野原町応桑1985-175  地図
0279-82-1526
ホームページ

11:00~19:00 火曜定休
平成26年1月~3月は祝・土・日のみの営業
ロッカー(貴重品用は無料、中型は100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする