温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

蓼科三室源泉 小斉の湯 後編(見晴しの湯)

2018年10月28日 | 長野県
前回記事の続編です。



蓼科の日帰り温泉入浴施設「小斉の湯」では、様々な趣向の露天風呂が設けられているのですが、そのうち男性が入れるのは(貸切風呂を除くと)前回記事で入った「岩間の湯」と「見晴しの湯」です。「岩間の湯」を出た私は、続けて「見晴しの湯」にも入ってみることにしました。表示に従い斜面に沿って奥へ上へと伸びる廊下を進みます。



途中で貸切風呂へつながる通路が分岐していますが、訪問時は他のお客さんが使用中だったため、今回は利用していません。


 
この分岐点を真っ直ぐ進むと女性専用の露天風呂。
私は男なので左に逸れ、男性専用の露天風呂「見晴しの湯」へ。
かつては混浴だったらしく、その当時の名残で簡素な造りの脱衣室は2室(つまり男女別)に分かれているのですが、現在は男性専用ですからどちらを使っても良いようです。


 
露天風呂は蓼科湖を見下ろす標高1275m高台に設けられています。
名前の通り見晴らしが良く、蓼科湖の向こうには諏訪の南方に聳える山々が眺望できます。とはいえ、目の前の木立に視界を邪魔されるため、すっきりするような開放感があるわけではありません。尤も、その木立が周囲に対する目隠しになっていますし、木立そのものは高原らしい趣きと捉えるべきかもしれないので、無碍に木々を不要と唱えるわけにはいきませんね。



浴槽手前のデッキ部分には、熱い源泉が出るコックが2つ設置されており、洗い場代わりとして使えます。水も出ますから、コックのお湯が熱すぎる場合は水で薄めましょう。


 
浴槽は前後2つに分かれており、いずれもモルタルで固めた手作り感溢れる造りで、淡いブルーのタイルが埋め込まれています。手前側は適温(ややぬるい)で4~5人サイズ、一方、奥はちょっと熱くて3~4人サイズです。双方とも筧から48℃くらいの熱い温泉が注がれているのですが、浴槽の縁からの溢れ出しは無く、その代わり浴槽の中にあるオーバーフロー用の穴から排出されています。純然たる完全掛け流しの湯使いです。

お湯は前回記事で取り上げた内湯と同じ源泉ですが、内湯の浴槽では無色透明だったものの、露天風呂では若干黄色く淡く霞んでいるように見えました(岩間の湯・見晴しの湯共通です)。口に含むと酸味が得られるほか、石膏や芒硝のような味も含まれていたような気がします。お湯からは酸っぱい匂いが少々嗅ぎ取れます。なお露天風呂の湯口の下には白い析出が1cmほど部分的に付着していました。分析書には硫化水素が2.8mgも含まれているので、お湯からイオウ感が伝わってきても良いのですが、少なくとも私が入った時、イオウっぽさは全く感じられませんでした。源泉から貯湯槽、そしてこのお風呂へと流れてくる間に、どこかへ飛んでしまったのかしら。
掛け湯すると肌がツルツル滑らかになり、湯船に入るとツルツルとスベスベが混在する浴感が楽しめました。ほぼ適温にセッティングされている手前側浴槽は視覚的視界も開けているので、景色を眺めながらのんびり長湯することができるでしょう。眺望の良さに惹かれるのか、私が訪問した時にいらっしゃった他の男性客は、皆さんこの露天風呂に集中していました。



退館時に発見したこの温泉についての説明文は、山梨県の温泉界では有名な某短大のT教授による解説。
山梨県内の各温泉施設で見られる、「悠久の大地の物語」や「ガイヤの大いなる恵み」と言ったおなじみのフレーズが盛り込まれた「名文」が、まさかこの信州でもお目にかかれるとは想像していませんでした。

全体的に古くて老朽化が進んでおり、かつ手作り感に溢れているので、特に女性は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、完全掛け流しの湯使いですし、いろんなお風呂をハシゴできますから、蓼科観光の際にはこちらへ立ち寄ってレジャーの疲れを癒すのも良いかと思います。


300t貯湯槽(三室平6・7・8・9・10号の混合泉)
酸性-含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉(硫化水素型) 58.8℃ pH記載なし 溶存物質1475mg/kg 成分総計1620mg/kg
H+:1.3mg, Na+:331.7mg(69.21mval%), Ca++:44.7mg(10.70mval%),
Cl-:482.9mg(65.24mval%), SO4--:338.9mg(33.82mval%),
H2SiO3:87.9mg, HBO2:92.6mg, CO2:142.9mg, H2S:2.8mg,
(平成16年6月21日)
加温加水循環消毒なし

長野県茅野市北山4035
0266-67-2121
ホームページ

8:00~20:00
700円
ロッカー・シャンプー類(内湯のみ)・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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蓼科三室源泉 小斉の湯 前編(内湯・岩間の湯)

2018年10月25日 | 長野県
今回記事から数回続けて、今年の夏に湯巡りした長野県および山梨県の温泉を取り上げます。
まずは長野県蓼科の「小斉の湯」から。


 
蓼科の代表的な観光地である蓼科湖を見下ろす傾斜地の途中に位置するこちらの施設は、以前は温泉旅館として宿泊営業を行っていましたが、数年前から宿泊を取りやめ、現在は日帰り入浴のみで営業を続けています。
かつては宿泊棟だったと思しき建物の奥に日帰り入浴の玄関があり、そこから入って受付で座っているおじさんに入浴料を支払います。館内には複数のお風呂があり、それぞれが敷地内に点在しているため、初訪問のお客さんは迷ってしまうこと必至。受付の前には「入浴案内」というタイトルが付された構内案内図と写真が掲示されていますから、まずはこの図をしっかり見て、行くべきお風呂と位置を確認しておきましょう。
なお敷地内のあるお風呂は以下の6つです。

 ●内湯「岩風呂」(男女別)
 ●露天「岩間の湯」(男性専用)
 ・露天「貸切の湯」(貸切)
 ●露天「見晴しの湯」(男性専用)
 ・露天「雲海の湯」(女性専用)
 ・露天「森林浴の湯」(女性専用)

このうち今回は●を付けた3つのお風呂に入りましたので、この3つについて触れてまいります。



上述したように、こちらの施設は傾斜地に沿って設けられており、複数の棟が地形に沿って段々状に点在しています。一番下に位置する受付から、シカやキジなどの剥製を見上げつつ階段を上がってゆくと・・・


 
内湯や座敷がある2階です。階段上がって左手にある休憩用の広いお座敷にも、大きなクジャクの剥製が飾られていました。館内には多くの剥製が飾られていますが、山の中ゆえワイルドなイメージを表現したいのかしら。


●岩風呂(内湯)

2階廊下を座敷と反対側へ進んでいった突き当たりが男女別の内湯「岩風呂」です。後述しますが、敷地内に複数ある各露天風呂では、洗い場が無いか、あっても簡素で数が少ないため、体をしっかり洗いたい場合は、まずこちらの「岩風呂」に入りましょう。


 
脱衣室を抜けてお風呂に入りますと、正面にタイル貼りの浴槽が大小ひとつずつ、そして手前側に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでいて、ボディーソープなどの備え付けも用意されています。


 
奥の雄々しい岩が印象的なタイル張り浴槽は、右側がややぬるく、左側はちょっと熱めですが、その差は微妙。いずれにも無色透明の温泉が張られています。私はこれから利用する露天風呂に臨むべく、この内湯でしっかり体を洗ったのですが、駐車場にはお客さんの車が複数台止まっていたにもかかわらず、内湯には誰もいませんでした。私以外のお客さんはどこにいるのかな?


●岩間の湯
 
6つあるお風呂はそれぞれが離れており、渡り廊下でつながっているため、各浴室間を移動する場合は、一旦着替えなければなりません。ちょっと面倒ですが、私は自分の体についた内湯のお湯をぬぐい、ササっと着衣して、館内案内に導かれながら次のお風呂へと向かいました。


 
クネクネ折れ曲がりながら山の斜面を登る渡り廊下を歩くと、ちょっとした探検気分を味わえます。小さな男の子だったら喜んでしまうかも。お風呂はどこにあるのかな。



通路を進んでまず行き当たるのが男性専用露天風呂「岩間の湯」です。さっそく入ってみましょう。
手作り感溢れる質素な木造の脱衣小屋で着替え、いざお風呂へ。


 
山の緑や大きな岩に囲まれるように露天風呂が設けられたこちらの露天風呂。その造りが名前の由来なのでしょうね。後述する浴槽の他、簡易的な洗い場が設けられており、コックを開けると源泉のお湯が吐出されました。おそらく源泉より供給されてくるお湯をそのままコックまで引いているものと思われ、48℃近い熱いお湯が出てきますので、適宜水で薄めて使いましょう。


 
浴槽は3つに分かれており、手前の大きなものはややぬるく、奥の小さなものはちょっと熱めの湯加減となっていました。そして筧から浴槽へお湯が注がれていました。なお一番小さなものは水風呂です。
この露天風呂は、まずまずの広さがあるのですが、いかんせん建物と崖に挟まれた立地なので、いまいち開放感に欠け、それゆえ人気がありません。見方を変えれば空いているとも言え、実際に受付前の「入浴案内」には「空いています。ゆっくり入りたい方」と書かれていました。なるほど他のお客さんを気にせずゆっくりのんびり足を伸ばして入浴するにはもってこいですが、せっかくですからロケーションを活かした眺望のよいお風呂にも入ってみたいものです。というわけで、再び着衣してもう一つの露天風呂へと向かうことにしました。


次回記事に続く


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上栗山温泉 開運の湯 2018年夏・再訪

2018年10月21日 | 栃木県
津々浦々の温泉を訪ね続けている私はしばしば「温泉巡りをするようになったきっかけは何ですか?」と質問されるのですが、何か一つの特定できる出来事に出逢って温泉巡りに目覚めたわけではなく、小さいながらも強い印象を受けた数多くの想い出がいくつも積み重なり、次第に全国の温泉を訪ねて旅を繰り返すようになっていきました。そんな想い出のひとつに、今回取り上げる上栗山温泉「開運の湯」があります。

山間僻地の小さな集落にある長閑な温泉共同浴場にすぎないのですが、この浴場では、小さな休憩所に置かれた卓袱台で地元のお婆ちゃんが談笑しながら、観光で訪れた湯浴び客に声をかけ、手作りのお漬物を振る舞って、積極的にコミュニケーションを図っていたのです。まるでご近所の茶の間に上がりこんだかのような、なんとも言えないほのぼのとした雰囲気にすっかり心を掴まれてしまい、それ以降、私の湯巡りでは地元の方とふれあいという点が、私の温泉巡りにおける重要な要素の一つになりました。
そこで、先日旧栗山村を訪ねた際に、あのお風呂はどうなっているのか現在の様子を確認したく、久しぶりに再訪することにしました。

 
10年ぶりくらいの再訪問ですが、外観は以前とほとんど変わっておらず、思い出のままの姿を目にしてホッとしました。集落の共同浴場ですが、観光客(外部者)の利用も多く、また付近にあるオートキャンプ場のお客さんもこちらで汗を流すものと思われます。


 
前回訪問時は、玄関入って番台で湯銭を払うと、上述のようjに上り框の先の座敷に地元のお婆ちゃんがいらっしゃって、お風呂上がりにお漬物を振る舞ってくれました。卓袱台を囲んでおばあちゃんや客同士が和気藹々と喋り合うほのぼのとした雰囲気が非常に温かく魅力的でした。
しかし先日訪問した際、番台は無人で、おばあちゃんこそ一人いたもののお漬物振る舞いは無くなっており、湯上がり後には誰もいなかった。お漬物の振る舞いはもうやめてしまったのでしょうか。あるいはたまたま私の訪問時にやっていなかっただけなのでしょうか。保健所がとやかくうるさいこのご時世ですし、集落自体も人口が減っているのでしょうから、私を湯めぐりに駆り立ててくれた思い出がもう過去の物になってしまったのか、ちょっと気になります。
なお番台が無人の時は括り付けの料金箱に湯銭を納めるのですが、510円という中途半端な金額なので、もしお釣りが必要な場合は、番台に記されている電話番号のところへ連絡すれば良いそうです。



お風呂は「権現の湯」と「浅間の湯」の2つに分かれており、どうやら男女入れ替え制らしいのですが、この日は左側の「浅間の湯」に男湯の暖簾がさがっていました。


 
こぢんまりとした脱衣室ですが、洗面台やトイレの他、ドライヤーや扇風機の備え付けがあり、共同浴場にしては使い勝手が良い方かと思われます。なおロッカーは卓袱台があるラウンジに設置されています。


 
お風呂は内湯のみでこぢんまりしていますが、大きな窓から外光が降り注ぐので明るく、また湯気抜きの天井が高いので、実際の面積状の広さを感じることができるでしょう。



洗い場にはシャワー付きカランが3つ並んでいます。カランから出るお湯は真湯です。



四角い浴槽は横に並べば5人、向き合えば8〜9人は入れるようなサイズ。オレンジ色に濁った温泉が張られています。



大きな窓は谷に面しており、眺めが良好です。山深い仙境で湯浴みしていることを実感できるでしょう。


 
お隣の浴室と隔てる塀には、析出がコテコテにこびりついている湯口が取り付けられており、そこから滔々とお湯が注がれていました。浴槽に張られたお湯は窓側の溝へオーバーフローしています。浴槽のヘリはうろこ状の析出がこびりつき、赤黒く染まっていました。なおその溝には下からピューピューと細い筋を描きながらお湯が噴き上がっている箇所がありました。浴槽上部からの溢れ出しのほか、オーバーフロー管のようなものも設けられているのかもしれません。


こちらで使われているお湯は、約800m離れた市有(旧村有)源泉より引いており、こちらの他、周辺の宿泊施設にも引かれているようです。お湯は金気によりオレンジ色に強く濁っており、ちょっとした金気味と薄い塩味、そして硫酸塩泉的な風味を含んでいます。無色透明なお湯が多い地域にあって、このタイプのお湯は珍しく、大変貴重です。ちょっと熱めの湯加減なので長湯できにくいのですが、ツルスベの中にしっかりとした引っかかりがあり、金気のお湯らしい肌に染み入ってくるような浴感が得られます。気持ち良いお湯に違いありませんが、温まりパワーが強く、下手すると逆上せるので、長湯するのはやめておいた方がよいかもしれません。

日曜の夕方で先客3名、途中独占、後客2名。私が出ることに軽トラで地元の人が2名ほどやってきました。観光客のほか、地元の方々からも愛され続けている、地域に欠かせない存在なのですね。
おばあちゃん達とのふれあいが現在どうなってしまったのかわかりませんが、しかしながら、パワーのある掛け流しの濁り湯を手軽に楽しめるありがたい浴場であることには違いありません。また訪問したくなる、ほのぼのとした浴場でした。


市有上栗山温泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉 52.8℃ pH7.5 41L/min(動力揚湯) 溶存物質1.949g/kg 成分総計1.983g/kg
Na+:496.2mg(81.84mval%), Ca++:66.2mg(12.51mval%), Fe++:4.9mg,
Cl-:419.2mg(41.89mval%), HS-:0.9mg, SO4--:437.8mg(32.32mval%), HCO3-:423.6mg(24.59mval%),
H2SiO3:43.1mg, HBO2:21.6mg,CO2:33.0mg, H2S:0.3mg,
(平成22年9月10日)

東武・鬼怒川温泉駅などより日光市営バス女夫淵行で「上栗山」バス停より徒歩5分
栃木県日光市上栗山179-31
0288-97-1952

9:00〜17:00
510円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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川俣湖温泉 ふれあいの里 上人一休の湯

2018年10月16日 | 栃木県
前回記事に引き続き栃木県旧栗山村の温泉を巡ります。


川俣温泉や奥鬼怒へ向かう県道23号線を西へ走っていると、川俣湖近くの集落で、いかにも公共施設らしい佇まいの温泉入浴施設の前を通り過ぎます。以前から気になっていたのですが、これまで訪れる機会が無かったので、先日当地を訪れた際に立ち寄ってみることにしました。本来は使い道に困る山間の傾斜地を有効活用すべく、高床式のような足の長い人口基盤を設け、その上に平屋の湯屋を建てているため、さほど大きな規模の施設ではないのに、異様に武骨で大きな印象を受けます。



駐車場から階段を上がって裏手に廻ると、建物の山側に玄関があります。なお車いすなどは反対側の坂道で上がることが可能です。



訪問時は券売機が故障中だったので、窓口で直接湯銭を支払いました。なお下足箱のカギはコイン不要です。
建物自体は結構古く、中に入ると田舎の診療所や役場の待合室みたいな感を受けます。傾斜地の人工基盤上に建てられているので見晴らしは良いのですが、川俣湖温泉と称する割には湖面が眺望できるわけではなく、その手前に広がる集落の民家や、周囲の山々が見渡せる程度です。とはいえ山の緑を眺められますから、湯上がりに息抜きするにはもってこい。実際に私が訪れた時には、みなさんそこで紫煙を燻らせながら、遠くを見つめてぼんやり過ごしていらっしゃいました。

余談ですが、入浴と水分補給は切っても切れない関係にあるので、温泉入浴施設には飲料の自販機が欠かせません。しかしながら、なぜかこちらに設置されていないので、水分補給したい場合は窓口のおじさんに直接申し付けて、欲しい飲料を冷蔵庫から出してもらうことになります。昔ながらの売店方式とでも言いましょうか。そんなところにも山奥の集落らしい長閑な空気が漂っていました。



脱衣室を抜けて浴室へ。お風呂は内湯と露天があるのですが、まずは内湯から。
内湯の浴室は横長で、浴槽が一つ設けられており、脱衣室側の壁に沿って洗い場がL字型に配置されています。なお洗い場のシャワー付き混合水栓は7基で、カランから出てくるお湯は真湯です。



浴槽はタイル貼りの長方形でおおよそ7~8人。隅っこにある岩積みの湯口から、45~6℃というちょっと熱めの温泉が投入されており、浴槽は42℃前後の湯加減に調整されていました。お湯に関するインプレッションは後述します。



続いて露天風呂へ。坪庭のような三角形の土地に岩風呂が設けられており、周囲は大和塀に囲まれていているため開放感はあまり得られません。男湯は駐車場から上がってくる階段のアプローチに面しているので、塀で囲まざるを得ないのですね。それどころか眺望は全く無く、ただ周囲の木々の緑を見上げるだけなのですが、日本庭園風に設えらえているお蔭で落ち着いた雰囲気が醸成されており、静かで清らかな環境も相俟って、良い空気感の中で湯浴みを楽しむことができます。



露天の浴槽は5~6人サイズの岩風呂。奥の湯口から投入されており、手前の湯尻よりしっかり溢れ出ています。こちらの湯加減も若干熱いかもしれませんが、お湯が良いので熱さが寧ろ気持ち良く感じられることでしょう。
こちらに引かれているお湯は市有源泉。この施設の他、近隣の民宿にも引かれています。見た目は無色透明で、弱いながらもしっかりとしたタマゴ臭とタマゴ味が得られます。またアルカリ性ゆえにヌルヌルを伴うツルスベ感が肌を滑り、トロミを有する滑らかで気持ち良い浴感です。なお館内表示によれば、湯使いは加水循環消毒なしの放流式ですが、レジオネラ属菌対策のため加温しており、また他の施設へ一定温度で温泉を供給するための加温もおこなわれているとのこと。湯口のお湯がちょっと熱かったのは加温の影響なのかもしれません。とはいえ純然たる放流式であることにはかわりなく、内湯・露天共に良好なコンディションのお湯を楽しむことができました。

宿の日帰り入浴と違って、公営の入浴施設なので手軽且つ気軽に入浴できるのが嬉しいところ。私が利用した時にはコンスタントにお客さんがいらっしゃいましたので、当地を訪れるレジャー客にとっても有益な温泉施設として認識されているのでしょう。お湯自体も良いので、当地で湯巡りする際には立ち寄って損のない施設と言えます。


市有川俣湖温泉
アルカリ性単純温泉 49.7℃ pH9.6 170L/min(動力揚湯) 溶存物質0.190g/kg 成分総計0.190g/kg
Na+:44.2mg(94.59mval%),
HCO3-:51.9mg(37.78mval%), CO3--:15.0mg(22.22mval%),
H2SiO3:43.7mg,
(平成23年10月20日)
加水・循環・消毒なし
加温あり(レジオネラ属菌等衛生管理上の理由により加温。また各施設へ一定した温度の温泉を供給するため)

栃木県日光市川俣740  地図
0288-96-0008

10:00~19:00(受付1時間前まで) 水曜定休
510円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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平家平温泉 こまゆみの里

2018年10月11日 | 栃木県
先月26日の記事からしばらく話題が飛んでしまいましたが、再び栃木県の温泉を取り上げます。
栃木県の最奥部にある旧栗山村は、交通不便な深山幽谷の地であったことから、源平合戦で敗れた一族が逃れて住み続けているという平家の落人伝説が残っています。栗山の代表的な温泉地である湯西川温泉はその好例であり、落人の生活様式を後世に伝えるべく茅葺き屋根の住家を移築再現した観光施設「平家の里」をはじめ、毎年6月には時代行列「平家大祭」も開催され、僻地ならではの伝説を観光資源として活用しています。


 
湯西川のみならず村内には平家の話が伝承されていらしく、奥鬼怒へ向かう県道の終点付近にある「平家平温泉 こまゆみの里」もその一例に挙げられるのかもしれません。川俣温泉の先、奥鬼怒温泉郷の手前に位置するこの一軒宿は、まず温泉名が平家そのもの。また、宿名のこまゆみとは、付近に群生していたまマユミの木で弓を作り、平家の末裔である若武者が駒にまたがり弓の練習を積んだとされる言い伝えに基づくもの。名前からして平家の要素がてんこ盛りなのであります。そんなお宿で日帰り入浴を楽しむべく、真夏の某日に訪問しました。



玄関を入った正面には、秘湯を守る会の大きな提灯がさがっていました。


 
フローリングのロビーには動物の剥製が数体置かれていました。周辺の山々で生息していたのでしょうか。
さて、帳場で湯銭を支払い、案内に従って通路を進みます。


 
帳場では通路の突き当りにお風呂があると教えられたのですが、その途中にもお風呂の暖簾が掛かっており、扉が開いていたので、ちょっと覗いてみたところ、暖簾の向こう側は男女別の内湯でした。


 
内湯にしては立派な岩風呂と簡素な造りの上屋が対照的なのですが、このお風呂は元々露天風呂だったらしく、何となくワイルドな雰囲気が伝わってくるのは露天時代の名残なのかもしれません。とはいえ、私の訪問時、このお風呂はお湯を張っている最中でしたので入浴することができませんでした。このため、帳場で教えられた通りに露天風呂へと向かいます。


 
通路の突き当たりが露天風呂。出入口に御幣が供えられた脱衣室の内部は極めて質素。秘湯風情たっぷりです。


 
鬼怒川の上流部を見下ろす高台に露天風呂が設けられていました。こちらの露天風呂には混浴と女性用が用意されており、男は混浴を利用することになります。山の緑と空気が清々しい、実に爽快なロケーションです。


 
露天風呂は大きな岩風呂と4つほどの丸太風呂によって構成されています。
岩風呂は12~13人ほど入れそうな大きさを擁し、道祖神が祀られている湯口から温泉が滔々と供給されています。投入量が多いため、浴槽が大きくてもお湯は短時間で入れ替わっていると思われ、湯船に浸かった際にはお湯の鮮度感が良好であり、また浴槽縁から惜しげもなく贅沢にオーバーフローしていました。


 
岩風呂の周りには太い樹木の幹を刳りぬいた丸太風呂が4つ設置されています。いずれも一人サイズです。


 
天然木から作られているため、それぞれの形状が異なっています。ご自身で好みのお風呂を見つけるのもまた一興でしょう。

お湯は無色透明で、少々焦げたようなタマゴ臭とタマゴ味が得られるほか、薄い塩味や石膏感も含まれていました。そして樽風呂では細かくて白い湯の花が沈殿および浮遊していました。なお湯量が多くて浴槽内に流れがある岩風呂において、湯の花は軽く浮遊する程度でした。匂いや味、そして湯の花など、比較的硫黄の存在感がよく現れているのですが、しかしながら脱衣室の出入口に掲示されている分析書によれば、こちらに引かれている混合泉には硫黄が含まれていません。実際には分析書とは異なる源泉が引かれているのでしょうか。

なお、湯使いは完全掛け流し。訪問時の湯加減は少々熱めでしたが、岩風呂ではホースで加水できるようですから、もし熱ければ水で調整すると良いでしょう。印象的なツルスベが感じられるわけではありませんが、でも大量掛け流しのおかげで上述のように鮮度感は抜群。奥鬼怒の清らかな環境に抱かれながらフレッシュな温泉に浸かると、心身がすっかり浄化されてゆくようでした。もし平家の一族郎党がこの温泉に浸かることができていたならば、鋭気を養い捲土重来で源氏に打ち勝つことができたかもしれません。今回は短時間の日帰り入浴でしたが、おかげさまで日頃の憂さを晴らすことができました。おすすめ。


奥鬼怒温泉 こまゆみの湯(奥鬼怒18・25・43・45混合泉)
Na-塩化物温泉 44.1℃ pH6.6 540L/min(自然湧出) 溶存物質1.099g/kg 成分総計1.159g/kg
Na+:320.3mg(90.62mval%), Ca++:20.7mg(6.72mval%),
Cl-:441.9mg(80.35mval%), HCO3-:150.3mg(15.88mval%),
H2SiO3:98.9mg, HBO2:27.1mg, CO2:57.8mg,
(平成23年9月16日)

栃木県日光市川俣646-1
0288-96-0321
ホームページ

日帰り入浴11:30~14:30
500円

私の好み:★★★
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