温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

清水温泉 櫻花温泉農場

2013年04月30日 | 台湾
 
新竹県や桃園県から北横公路で山を越えて台湾北東部の宜蘭県大同郷へやってきた私は、翌日も大同郷で温泉めぐりをしたかったため、同エリアで宿泊したいと考えておりました。当地への訪問に際して前夜にホテルでパソコンを開いていろいろ探していたのですが、あまり有名な観光地ではないためか、私のハートをギュっと掴んでくれるような、温泉に入れて安くて綺麗な宿の情報にはなかなか出会えません。そんな中で、比較的ホームページの構成がちゃんとしており、しかも民宿としては一般的な料金設定である「櫻花温泉」がGoogleの検索結果としてリストアップされてきたので、前々回取り上げた「鳩之湯温泉」を出発した後はここを目指して車を走らせました。
この界隈の観光地のひとつである「清水地熱」から比較的近い幹線道路の台7丙線沿いに、桜をイメージしてると思しきピンク色の楕円の看板が立っており、迷わずすんなりと辿り着くことができました。


 
周辺は氾濫原の荒野と畑しかない、本当に何もない寂しい田舎です。
砂利敷きの駐車場の傍らには受付小屋があり、声をかけると裏手の方からサモ・ハン・キンポーにメガネをかけさせたような容貌の色黒のおばさんが登場。当初私を見たおばさんは日帰り入浴の利用かと勘違いしたらしく、私の稚拙な言葉もあってなかなか話が噛み合いませんでしたが、筆談を進めて「住宿」と書いたところでようやくオバサンは私の希望を理解してくれたらしく、まずは部屋を見てから決めてちょうだい、とのことで、実際のお部屋を見せてもらうことにしました。
受付には公的機関が出している温泉標識が掲示されており、私は部屋云々よりもここがちゃんとした温泉を使っていることを確認できて安心しました。



敷地内には幾棟もの小屋が建てられているほか、キャンプ場も併設されています。



客室が3つ連なっている長屋的な宿泊棟もありますが…



オバサンは「観星小屋」と称された、客室ひとつひとつが独立しているコテージへと案内してくれました。


 
コテージは六角形をしており、内部はフローリングで清潔感がありとても綺麗です。建てられてからまだあまり年月が経っていないのでしょう。室内には液晶テレビもドライヤーもエアコンも、そして洗面台も、ひと通りの設備がちゃんと揃っています。既に布団が敷かれており、いつでも寝られる状態でした。1泊1500元という料金はこの手の宿にしては標準的かやや高めですが、清潔感は問題ありませんし設備も整っていたので、オバサンにここでの宿泊を即決し、受付へ戻って料金を支払いました。
なお「観星小屋」という名前の通り、瓦葺きの屋根の一部にはガラス窓が嵌められており、寝転んで天井を見上げると夜空も見えるような造りになっているのですが、この窓が小さい上に土埃を被っているため、実際にはほとんど見えませんでした。ま、星空を眺めるなら外に出た方が遥かに良いですけどね。


 
この小屋で奇特なのがトイレです。玄関を入ってすぐ左には、上にいろんな荷物が置けそうな木の台があるのですが、実はこの台には蝶番が付けられていて蓋のようになっており、開けてみると何とトイレが現れました。客室とトイレを隔てるのはこの木の蓋のみでして、客室とトイレは隔絶されることなく一体となっているわけです。つまりここで用を足せば臭いが室内へ放出されることになります。また、私は一人で利用しましたから他人の目線は気になりませんでしたが、もし二人で部屋を利用するとなれば、用を足している姿を同室の人に遮蔽が無い状態で完全に見られてしまうわけですから、排泄の度にこの上ない羞恥プレイを味わうこととなります。ラブホテルなどでは客室とシャワールームがガラスで隔てられているだけお部屋もよく見かけますが、ここはガラスすら無いんですから、エロを通り越して変態の域に達していますね。
このキッチュなトイレが却って私には面白く映り、今回の宿泊を決める要素のひとつにもなったのですが、とはいえ、排泄後の残り香が(たとえ自分の体内で発せられたものであっても)室内に漂うことが精神的に耐えられなかったので、このトイレを使ったのはチェックアウト直前のみにし、それ以外の時間は屋外にあるキャンプ利用者用の共用トイレを使用しました。



客室にはお風呂やシャワーは無いため、貸切風呂を利用することになります。オバサンに「泡湯したい」と声をかけたところ「宿泊中に無料で利用できるのは1回だけ」とシビアな返答が…。ま、何度も入って楽しむようなお風呂じゃないので問題ないのですが、1回だけは厳しすぎないかなぁ…。
お風呂は利用者の人数に合わせていくつかのタイプがあるのですが、今回使わせてもらったのは「雙人SPA池」という浴室で、入浴のみですと500元も要する施設です。随分強気な料金設定ですね(なお一番小さなお風呂は200元です)。


 
さすがに高い料金の浴室だけあって、室内は広くてゆとりがあり、紺と白のタイルが市松模様になって貼られています。浴槽は大小に分かれており、小さな方は水風呂として利用します。大きな浴槽の脇にはお湯や水のコック、そして打たせ湯のスイッチなどがまとめられている操作パネルがあります


 
客室のトイレには驚かされましたが、このお風呂にあるトイレも意味不明。浴槽とシャワー水栓の間に洋式便器が埋め込まれているのですが、何故かこの便器は幼稚園に設置されているような子供向きの小さなものであり、大人にとっては的が小さすぎてとても使えたもんじゃありません。しかも便座の高さまで埋まっているため、子供であっても便座の上に座ることはできず、和式のようにして便器の上にしゃがんで跨る他ありません。何のためにこの便器を埋め込んだのでしょう? 客室といいお風呂といい、この「櫻花温泉」はトイレの奇抜が売りなのでしょうか。
また入口側にはタイル貼りの何もない台が広がっていて、ほとんどデッドスペースと化しているのですが、吉原や堀ノ内の特殊店舗じゃあるまいし、何のためにこの空間が確保されているのか、さっぱり意味がわかりません。敢えてナンセンスな設備を盛り込むことで、ユニークさをアピールしているのかしら。


 
空っぽの浴槽にお湯を溜めるべく、操作パネルのお湯のコックを全開にすると、はじめのうちは槽内にある3つの湯口からお湯が吐き出されるのですが(画像左(上))、ある程度まで嵩が増えると手前側の口径の大きな湯口は吐出が自動的に止まり、残りの2つ(画像に写っている槽内の2つの白い口)によって引き続き投入が行われます(画像右(下))。



その2つの湯口は打たせ湯の吸い込み口を兼ねており、湯口の上までお湯が満たされた状態で打たせ湯のスイッチを押すと、湯口は吸込口に切り替わって、コーナーに立っているパイプから首が飛んでいきそうなほど強烈な勢いでお湯が吐き出されます。
湯口から出てくるお湯はそのままで入れてしまう温度だったので、水で薄めることなく100%温泉の状態で入浴することができました。利用の度にお湯を張り替えますので、溜め湯とはいえ新鮮なお湯が楽しめるわけですね。お湯は薄っすらと黄色に微濁しており、弱い重曹味や微かな塩味が感じられたものの、ほぼ無味無臭といって良いかと思います。さすがに重曹が主成分の温泉だけあってツルスベ感は良好ですが、特別強いわけでもなく、台湾ではごく普通に出会える温泉の浴感です。

コテージには設備がひと通り揃っていますし、室内状態も綺麗で良いのですが、せっかくの広いお風呂は一回しか使えませんし、料金設定もちょっと高めであるのが気になるところです。また施設のホームページには食堂も併設されているような内容が紹介されていましたが、実際には営業していなかったので(季節営業なのか?)、私は車に乗って付近の数キロ先の三星という街へ出かけて夕食を摂るはめになりました。怪我の功名というべきか、この三星で入った食堂が大当たりだったので結果的には良かったのですが、付近にはお店が殆ど無いため、こちらへ泊まると食事の面でも多少苦労します。ただ界隈の温泉群から近い立地でありますから、車で移動するのでしたら、宿泊先の選択肢の一つとしてこちらを含めるのも一考かと思います。不思議なトイレを体験して話のネタにしても良いですしね。


碳酸氫鹽泉(炭酸水素塩泉) pH7.7 43.1~50.2℃ 
碳酸氫根離子(炭酸水素イオン)2332~2503mg/L, 総溶解固体量2289~2311mg/L

宜蘭県大同郷復興村泰雅一路73号  地図
03-9894539
ホームページ

平日9:00~22:00、週末9:00~23:00
雙人池200元(休日250元)/40分
雙人SPA池:500元/60分

私の好み:★+0.5
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羅東森林鉄道・土場駅跡の保存車両

2013年04月29日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず

前回取り上げた「鳩之澤温泉」へ向かう途中の土場地区には広い路側帯があり、そこには小さな鉄道車両や駅舎の跡が保存されていました。鉄ちゃんの血が少なからず流れている私としては、これらを見過ごすわけにはいきません。車をとめてちょっと見学してみることにしました(地図

 
屋根に「土場車站」と掲げられている木造の駅舎(復元)前には、アスファルト舗装されたヤード跡が広がっていました。ここにはかつて幾条もの線路が伸びていたのでしょう。
鳩之澤温泉を擁する自然の宝庫太平山はかつて林業が非常に盛んであり、このエリアから切り出される木材を沿岸部へ運搬するため、日本統治時代にナローゲージの森林鉄道が敷設されました。敗戦により日本が台湾から撤退した後は台湾政府の林務局がこれらの鉄道を所轄し、引き続き運営を続けてきました。太平山エリアにはいくつもの路線があったようですが、特にここ土場から台鉄の羅東駅を結ぶ区間は「羅東森林鉄道」と呼ばれており、1921年に既設の発電所建設用軌道を買収の上で他区間の着工を開始、1924年に全線が開通し、1926年からは旅客営業も行うようになったんだそうです。


 
ラッチの脇には「林鉄土場車站歴史展示館」という表札が掛かっていますが、残念ながら扉は施錠されていたため中に入ることはできませんでした。ガラス越しに中を覗いてみると、館内には出札窓口と思しき構造物があり、その上には当時の写真が掲示されていましたが、歴史館と称するする割にはガランとしていて展示物が少なすぎる気がします。また本格的な開業には及んでいないのかな。
この森林鉄道は地域の重要な物流手段として長年に及び活躍してきたのですが、1977年に発生した台風の影響により一部区間が不通となり、その後は旅客数も減少していったため、1979年に廃止されてしまいました。


 
道路を挟んだ反対側には「羅東森林鉄道」を疾走した車両たちが静態保存されていました。
小さな蒸気機関車の後ろには可愛らしい客車と木材を積んだ貨車が連結されているのですが、SLの蒸気溜めには、何と日本車両製造株式会社(以下日車)のロゴが燦然と輝いているではありませんか! 最近では台鉄の最新型「普悠瑪列車」が日車の豊川工場で製造されていますが、以前から日車の車両が台湾で活躍していたんですね。



SL前に設置された説明プレートによると、この15トンのSLは15両連結の貨車で70立米の木材を牽引することができたんだそうです。


 
SLの後ろに並んでいるのは青い車体のディーゼルカーでして、1971年にレジャー需要を見込んだ旅客輸送を目的として、日本から輸入されたものなんだそうです。SLより軽快に走るこのディーゼルカーは「中華号特快車」と命名され、列車専任のアテンダントも乗務していたんだとか。
しかし上述のように1979年に路線が廃止されてしまうと、この車両は同じく林務局が運営している台湾きっての観光名所「阿里山森林鉄道」へ活躍の場を移し、1990年頃に現役を引退した後、2006年にこの場へ戻ってきたんだそうです。
ディーゼルカーは背中合わせで2両ペアの編成となっており、SL側はDPC2という型式です。側面窓下には「羅東往開(羅東行)」のサボが掲げられていました。


 
こちらは反対側の車両で型式はDPC1。DPC2の正面屋根周りが角張っていて切妻的な構造をしているのに対し、こちらは丸みを帯びていていかにも鉄道車両の正面らしい形状になっています。この顔、どこかで見たことあるなぁ…と記憶を辿っていったら、北陸鉄道の「しらさぎ」新潟交通モハ10形などとに似ていることに気づきました。いずれも「中華号」ディーゼルカーとともに日車で製造されているんですね。似ていて当然なはずです。
またこの車両は正面下半分を占める大きなラジエーターが特徴的ですね。2面並んだの網目のうち片方(上画像の車両ですと右側)には円筒形の物が接続されているので、これはおそらく冷却ファンなのでしょう。



DPC2と同じく「羅東往開」のサボが掲示されており、その下には車体からはみ出さんばかりに大きな躯体のエンジンがぶら下がっていました。


 
SLと同じくこのディーゼルカーも日車で製造されたものなんですね。台車枠には日車のロゴがはっきりと浮かび上がっていました。この台車がロッド式である点もなかなか興味深いところです。ディーゼルカーでロッド駆動はあまりお目にかかれませんし、日本でも(SL以外の)現役車両ですと津軽鉄道でストーブ列車を引っ張っているDD35型機関車くらいしか思い当たりませんが、ナローゲージという特殊事情や当時の変速機の技術などの理由により、1台車で2軸駆動を行おうとするとロッド式を採用する他なかったのでしょうね。


森林鉄道が全盛期だったころはこの土場駅から先にもトロッコ用の線路が伸びており、太平山で伐採された木材の搬出のために活躍していたのですが、「羅東森林鉄道」廃止後も太平山の山中には一部の鉄軌道が残されており、近年になって太平山~茂興間が観光鉄道として復活して、ディーゼル機関車がトロッコを引いて走っているんだそうです。事前にそのことを知ってれば私も体験乗車していたのですが、残念ながら知ったのは帰国後でしたので、現在のトロッコに関する画像は一枚もご紹介できません。

台湾の鉄道に関して詳しく取り上げている「くろがねのみち」というブログによれば、宜蘭県政府が「羅東森林鉄道」の復活を計画しているんだそうです。
 ・「くろがねのみち」宜蘭県政府が羅東森林鉄道復活を計画
復活といってもかつての線路敷は道路に姿を変えていますし、今更改めて鉄道を敷設するとなれば莫大な費用がかかりますから、実現までにはかなり高いハードルがたちはだかっているかと思いますが、宜蘭県政府がどのようにして計画を実践させてゆこうとしているのか、ちょっと楽しみです。温泉めぐりという観点で言えば、旧森林鉄道沿線の宜蘭県内陸部には魅力的な温泉が点在しているにもかかわらず、公共交通が極めて貧相であるため、路線バスなどでアクセスしにくく、旅行者が当地で温泉めぐりをするならば今回の私のようにレンタカーを手配するか、あるいは宜蘭などからタクシーをチャーターする他ありません。台糖が各地で復活されているトロッコ列車「五分車」はそれぞれで人気を博しているようですから(拙ブログの記事「烏樹林」「新営」「橋頭」などをご参照あれ)、当地でも鉄道が復活したら利便性が高まるのみならず、当地の大きな観光の目玉にもなりうるでしょうね。

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鳩之澤温泉(仁澤温泉)

2013年04月28日 | 台湾
宜蘭県の太平山国家森林遊楽区にあるいで湯「鳩之澤温泉」は台湾の方に大変人気の温泉施設でして、日本で発行されているガイドブックでも紹介されている他、拙ブログでもリンクしておりますTakemaさんもこちらを訪れていらっしゃいますので、どんなところか興味を抱き、この度私も行ってみることにしました。この温泉はかつては仁澤温泉と呼ばれており、現在でも温泉前のバス停は「仁澤」のままですが、温泉施設の方は日本風の名前である「鳩之澤」に改称された(日本時代の名前に戻された)ようです。



温泉は太平山国家森林遊楽区のエリア内にあるのですが、エリアへの立ち入りに際しては所定の料金を納付する必要があります。アクセス路に設けられているこの料金所にて一人200元を支払います。


 
料金と引き換えにスタンプが捺された領収書を受け取りました。料金所のおじさん曰く「このスタンプを温泉の受付に提示すると、入浴料金から50元値引いてくれるよ」とのこと。


 
メインストリートから逸れて温泉へ下る一本道を走っていると、途中で熱湯が大量に流れる土管を発見。その上方では真っ白い湯気がもくもくと上がっていました(一帯は立入禁止)。地熱資源が豊かな場所なんですね。


 
広い駐車場に車をとめ、周囲の環境に調和している木造のレセプション棟に入ります。宿泊営業は行なっていないため、建物自体はこぢんまりしていますが、館内で軽食程度の食事が可能です。
鳩之澤温泉には(1)水着着用の混浴露天(SPA)、(2)裸入浴の男女別露天、(3)家族風呂の3種類の温浴施設があり、受付時にどれを利用するか選択して、各施設の所定料金を支払います。(1)の水着着用SPAはネット上で画像を見たことがあり、どのような施設か見当ついていたので、今回は未知なる(2)の裸入浴露天風呂をチョイスしました。先述の料金所で受け取ったスタンプ付きの領収書を受付に提示すると、おじさんの説明通り50元引きの料金になりました。



料金と引き換えに入浴券とフェイスタオルをそれぞれ1枚ずつ受け取ります。入浴券は後で別の窓口に差し出しますから、まだカバン等にはしまわないでおきます。


 
レセプション棟から一段下がったところには、鳩之澤温泉を紹介するサイトやガイドブックで必ず画像が掲載される富士山型の温泉玉子槽があり、山のオブジェの周囲を取り囲んでいる槽には、フツフツと音を立てながら湯気を朦々と上げる熱湯が注がれていました。このお湯にタマゴを浸せば温泉卵が作れるわけですね。



鳩之澤温泉の施設はどれも周囲の環境を邪魔しない建築でして、こちらは家族風呂なのですが、すっかり山の木立に溶け込んでいますね。今回はこの家族風呂の前を通り過ぎます。


 
欄干が青く塗られた「鳩澤橋」の前には礫ばかりの荒涼とした川原が広がっており、その向こうの山肌では先ほど来るときに見つけた白い蒸気が山のそよ風にたなびいていました。


 
今回利用した裸入浴の男女別露天風呂「鳩之澤裸湯区」は上述の「鳩澤橋」そばに建てられています。
レセプション棟からここまで200m弱あり、建物の前には駐車場も確保されていますので、歩くのが面倒でしたら車で目の前まで乗り付けちゃっても問題ありません(もちろん料金は支払っておく必要がありますが)。
男女別に分かれた入口の先にあるカウンターには係員がいて、先程手にした入浴券を差し出しますと、係員はカウンター内にあるスイッチを押して、浴室への扉の鍵を開けてくれました。浴室は常に電磁キーで施錠されていて、料金を支払っていない人は入室できないようになっているわけです。


 
扉の向こう側では広々とした露天風呂が白濁したお湯を湛えていました。まるでプールみたいな浴槽です。せっかくの広い露天なのですが、頭上には目の細かな緑色のネットが張られているため、低い天井で頭を押さえつけられているような圧迫感を受けてしまいます。


 
浴槽の最奥に立つ壁の上は源泉の流路になっており、その途中でお湯が壁を伝って浴槽へ落とされるようになっていました。お湯は激熱でして、直に触ると火傷しそうなほどです。またお湯が流れるその壁は硫黄の付着により黄色く染まっていました。
しかしながら、熱い源泉だけでこの広い浴槽を満たそうとすると、とても人間が入れるような温度ではなくなるためか、壁から落とされる源泉の投入量は絞り気味になっていて、不足分を埋め合わせるように、浴槽中央の底部に設けられている複数の穴から適温のお湯がモコモコと供給されていました。このような状況から推測するに、完全な源泉かけ流しではなく、循環させながら加水の上で、新鮮源泉も一緒に投入しているような半掛け流し的湯使いなのだろうと思われます。湯船のお湯は薄い青みを帯びた灰白色に弱く濁り、湯中では硫黄の細かな湯の中が無数に舞っていて、浴槽底部の隅にもたくさん沈殿していました。


 
ここのお風呂は洗い場がユニークでして、5つある各ブースには大きな樽が設置されているのですが、利用者はまず各自で水栓を開けて樽にお湯や水を溜め、適度に溜まったところで手桶で汲んで掛け湯をするのです。なおお湯のコックを開けると激熱の源泉が吐き出され、ふんわりとタマゴっぽい硫黄臭が漂ってきました。お湯を口にすると硫化水素の存在を主張するかのようにタマゴ味が感じられ、薄い塩味も伴っているようでした。水栓金具は見事なまでに硫化して黒く変色していますね。浴槽よりもこの水栓のお湯の方が質感は優れており、私は頻りにこの樽で掛け湯してしまいました。



室内の壁にはオリジナル書式の成分表が掲示されていました。その中から目につく数字を拾ってみますと・・・
 pH7.63, Na:1109.02, Al:156, Cl:28.74, SO4:7.75, HCO3:2484.69, SiO3:169,
とのことです。肝心の単位がいまいちよくわからないのですが 陽イオンはナトリウムイオンが、陰イオンは炭酸水素イオンがそれぞれ大きな数値ですし、また私の体感から考えても、少なくとも重曹泉かそれに近い泉質であることには間違いなさそうです。ただしっかり硫黄感を有している温泉であるにもかかわらず硫化水素などのデータが載っていないのは残念なところ。またレセプションで掲示されていた宜蘭県発行の分析データとも少々異なる数字であるのもよくわかりません。調べた源泉が違うのか、試験時期が異なっているのか・・・。ま、細かいことはさておき、良質なお湯であることには間違いなく、特に湯上がり後の、潤いを伴った肌のスベスベ感は非常に素晴らしいものがありました。


碳酸鹽泉 pH7.0 41.6~74.3℃
碳酸根離子(炭酸イオン)2980~3840mg/L(※) 溶解固体量2460~3160mg/L
(※CO3--がこんなに多いはずないので、数値にはおそらく炭酸水素イオンの量も含んでいるものと推測される)

宜蘭から國光客運の太平山行バスで仁澤下車すぐ(ただし運行は週末や休日のみ)
宜蘭県大同郷太平村焼水巷25号  地図
03-9809603

9:00~17:00
水着着用の混浴露天150元
裸入浴の男女別露天150元
ロッカー(10元リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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排骨渓温泉

2013年04月26日 | 台湾
宜蘭県の内陸部に湧く野湯の排骨渓温泉。なんだか美味しそうな名前の温泉ですね。川からスペアリブ(排骨)がドンブラコッコと流れてくるのでしょうか。



宜蘭から幹線道路の台7号を蘭陽渓に沿ってひたすら西進してゆくと、途中で中央山脈を越す北横公路の分岐点にでくわします。真っ直ぐ進めば台7甲線の南山・太平山・梨山方面、右折すると台7号・北横公路の復興・大渓・桃園方面となるのですが、ここをまず右折して北横公路に入り、300メートルほど坂を登ると、路肩に86.5km地点キロポストが立っており、そこから左へ路地が分かれていますので、この路地へ入って行きます(上画像の地点)。



路地を数百メートル走ると吊り橋が見えてきますので、橋の下に駐車します。普通車だったら3~4台は余裕でとめられるスペースがありますよ。


 
吊り橋の名前は「林森吊橋」というんですね。主塔には原住民のものと思しき打楽器と温泉マークが描かれており、この先に温泉があることを暗示しているようでした。この吊り橋で川の対岸(右岸)へ渡ります。


 
この橋を利用する人はどのくらいいるのかわかりませんが、かなり頑丈な造りでして、橋の真ん中あたりを歩いてもあまり揺れませんでした。吊り橋のすぐ右下にはコンクリの車道もあり、この日のように川の水位が低ければ、川の水は道の下を潜って流れるので、吊り橋を歩いて渡らず車でそのままここを通ってしまってもOKです。増水するとこの道は水没しちゃいますけどね。



吊り橋の歩道とコンクリ舗装の車道はやがて合流し、川に沿って上流方向へと進んでゆきます。やがて左手に、「一逸精舎」と書かれた扁額がかかってる黄色い外壁で赤い屋根の派手な建物が目に入ってきました。この他にも付近には1~2軒の民家が建っており、先程の吊り橋はこうした僅かな民家の住民のために架けられたものと思われます。


 
この倉庫の前あたりで舗装は終わります。鬱蒼とした緑の中を貫く未舗装路を進みます。


 
吊り橋から徒歩6分で、ハックルベリー・フィンがひょこっと顔を出しそうな雰囲気の「護渓瞭望亭」という小屋にたどり着きました。ここで車道はおしまいです。小屋の前から川原へ下りる歩道へ進みます。なお小屋の前はかなりぬかるんでいるため、普通車ですと泥濘にハマってしまうかもしれません。もし車で川を渡って来た場合は、ここより手前の路肩に駐車しておいたほうが良いかと思います。


 
小屋から1分も歩かないうちに河原へ出ました。川原には標識も何も無いので道に迷いそうになりましたが、ここは対岸へ黒いホースが渡っている上流側(画像左(上))ではなく、下流側(画像右(下))に向かって河原を歩くのが正解です。ちょっと高い岩の上に立って下流の方を眺めると、先の方でテントの残骸のようなものが河原に被さっているのが見えるのですが、それが今回の目的地の目印です。


 
川原(右岸)を歩き始めると、すぐにひとつの湯溜まりを発見しました。まぎれもない排骨渓温泉の源泉のひとつであり、温度計は36.8℃を示していましたが、あまりに小さすぎて足湯するのが精いっぱいですので、別の湯溜まりを見つけるべく、更に下流へと向かいます。
この湯溜まりのすぐ下流側には錆びきった鉄の波板が川原に埋もれているのですが、ここから先の右岸側は崖になっていて歩けるような場所がないので、波板付近で一旦左岸へ渡渉しましょう。岩の上をジャンプすれば濡れずに渡渉できます。


 
左岸を川下へ向かって歩いていると、先ほど川原に出たところで見つけたテントの残骸が対岸にあるのですが、この辺りは渡渉にしくいので逸る気持ちを抑えて一旦ここを通り過ぎ、更に下流の渡りやすい岩が転がっている箇所で渡渉して右岸に戻って、テントの方へと戻ります。するとその右岸の川原には複数の湯溜まりが私を待っていてくれました。どうやら排骨渓温泉の本丸にたどり着いたようです。吊り橋からここまでは徒歩15分でした。
川原にはヒューム管が埋められているのですが、これは温泉をどこかへ引くための源泉井なのかもしれませんね。崖には目隠しのテントが張られており、この向こう側が更衣スペースとなっているようです(不気味なので私は使いませんでしたが)。


 
湯溜まりはいくつかあるのですが、その中で最も入浴に適しているのがこの湯溜まりでした。渓流と一体化している素晴らしいロケーションですね。やや浅いのですが、軽く寝そべれば肩までしっかり浸かれました。



42.1℃と湯加減も最高。入って下さいと言わんばかりの温度であります。なにも手を加えないでこの湯加減なのですから、これを天の恵みと言わずして何と申しましょうか!


 
湯溜まりの底からはブクブクと上がってくる気泡とともに綺麗に澄み切ったお湯が絶え間なく足元湧出しており、実際に入浴するとお尻でその勢いが感じられるほどでした。
お湯は無色澄明で金気の味と匂いが弱く感じられます。



足元のみならず川原に点在する小さな源泉群からもお湯が流れ込んできます。こうして複数の源泉から供給されているため、結果としてここへ注ぎ込まれる温泉の量はかなり多く、湯溜まりとはいえお湯はどんどん川へ排出されており、その流動性の高さゆえに鮮度は抜群です。また野湯ですから足を踏み入れるとその刹那は泥などが舞い上がってお湯がどうしても濁ってしまいますが、常にお湯が流れているため、そんな濁りもあっという間に消えてしまい、澄み切った状態で湯浴みが楽しめました。沈殿物やゴミなども無く、野湯にありがちなヌルヌルやドロドロとも無縁です。


 
ロケーションは最高ですし、湯加減も鮮度も透明感も素晴らしい。まさに極上の天然露天風呂です。
あまりに天晴な温泉だったので、興奮して2枚も自己撮りしてしまいました。



さて温泉までの道のりを概念図にまとめました。本文中にもあるように、駐車箇所である吊り橋から私が入浴した温泉まで徒歩15分で到達できます。大抵の野湯は険しい道程を歩かないと辿りつけませんが、ここでしたら子供でも容易に行けるでしょう。しかもそこで湧くお湯は最高のコンディションなのですから、文句のつけようがありません。おすすめです。


※路線バス利用の場合は、宜蘭や羅東から國光客運の南山村行(1745番)・太平山行(1750番・週末のみ運行)・梨山行(1751番)、あるいは羅東から同じく國光客運の梨山行(1764番)に乗って百韜橋バス停下車。バス停は台7号と北横公路との丁字路付近にあるので、そこから当記事の内容に従って歩けば約2kmで到達できるかと思います。

宜蘭県大同郷排骨渓  地図(航空写真に切り替えたほうがわかりやすいです)

野湯につき24時間入浴可能
無料

私の好み:★★★
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台湾・北横公路横断ドライブ その2

2013年04月25日 | 台湾
前回記事「台湾・北横公路横断ドライブ その1」の続編です)


今回はこの地図の中ほどにある玉峰を過ぎたところから、ワインディングドライブの続きを書き綴っていきます。


●玉峰から巴陵へ

玉峰からの道は、川から離れて山を登ってゆくにつれ路肩崩壊の区間は無くなっていきましたが、その代わり延々こんな感じで鬱蒼と生い茂る山の緑以外に何もない光景が続きます。でも道自体は川沿いの高い場所を等高線に沿ってトラバースするように敷設されていますので、ひだ状に切り込まれている谷を通り過ぎる箇所などで急カーブが続きますが、今までよりは勾配はゆるやかになりました。また幅員も1.5車線分はあるため、対向車がやってきても苦労なく離合できました。


 
トンネルを潜ったり、断崖絶壁の上を走ったり…。
玉峰からここまで人家らしきものは殆ど見当たらず。


 
【12:25 新竹県・桃園県の県境】
左(上)画像の小さなキロポストが立っている箇所が新竹県と桃園県との県境です。桃園県に入ると道路の幅は狭まり、舗装状態も悪くなってバンピーな箇所が断続的に出没しました。また徐々に小さな集落が道沿いに現れはじめるのですが、こうした山奥に暮らす原住民のみなさんはノーヘル&2ケツ3ケツでバイクに乗り、他の交通なんて気にせずに路地からいきなり飛び出してくることが多く、この道でも私はそのような飛び出しによって2度ほど急ブレーキを踏んで肝を冷やしました。自然災害のみならず、こうした事故にも注意しないといけないのです。
でも景色が良いところも多いので、途中で車を止めて山に深く刻まれた渓谷を眺めながら深呼吸し、気持ちを落ち着かせました。


●「北横公路」
 
【12:38 台7号「北横公路」と合流】
錦屏や玉峰から続いてきた県管轄の悪路もようやくここでオシマイ。
交差点で鋭角にグイっと右折し、ここからは省管轄の台7号「北横公路」区間に入ります。


 
【12:42 巴陵(標高608m)】
巴陵大橋を渡って巴陵集落へ。「北横公路」の真ん中に位置しており、道沿いには民宿や食堂も建ち並んでいる界隈の観光拠点です。ま、拠点というほど立派なところではないのですけどね。集落からちょっと離れた山中には、比較的規模が大きなリゾート施設が点在しているようです。当初はここでランチにしようかと思っていたのですが、あまり気が向くような店が見当たらなく、気づけば集落を通りすぎていたので、どこにも立ち寄りませんでした。


 
「北横公路」の山岳区間に突入です。舗装状態は良いのですが、幅員が狭くて離合困難箇所も多いので、前方の対向車には注意を要します。前方の見通しが悪く、鬱蒼とした木立によって昼でも薄暗いので前照灯の点灯も必須です。更にはこの道をツーリングする自転車の集団も多く、特に下りではかなりのスピードで飛ばしてきますから、彼らの存在にも要注意です。



【13:00 四稜(標高1170m)】
四稜地区に入りました。といっても人口はほとんどいないような寂しい場所です。
巴陵からここまでの約20分の間で500m以上も登ってきたんですね。


 
四稜の大漢守衛站から東へちょっと行った58.4キロポストが立つところは、温泉マニア、特に野湯ファンが注目すべきポイントです。キロポストの傍らには「湿って滑りやすい山道なので進入禁止」と記された赤い警告看板が立っており、看板の脇から一筋の獣道が急斜面を下っているのですが、この道の先には温泉が滝となって落ちている「四稜温泉」があるのです。ガードブロックをよく見ると、白いペンキで温泉マークが描かれていますね。



この獣道をひたすら下ってゆき、川を越えると四稜温泉があるんだとか。しかし谷へ下り切るまでの道は急で険しく、しかも深い川を渡渉しなければならないらしいので、今回はパスしました。どなたか興味がある強者がいらっしゃったら、是非チャレンジしてみてください。



【13:10 西村(桃園県と宜蘭県の県境)(標高1170m)】
桃園県と宜蘭県の県境にあたる西村を通過。この辺りから徐々に霧が発生しはじめました。


 
【13:20 「明池山荘」】
しばらく休みもせずに運転を続けていたら、疲れがたまって軽い眠気に襲われたので、県境から10分ほど進んだところにある「明池山荘」の駐車場で10分ほど休憩することに。


 
敷地内では日本から移植された大島桜が見頃を迎えており、淡い色をした花弁は山の霧でしっとり潤っていました。山の肌寒さと桜の可憐さのおかげで眠気はおさまったので、再び車に乗り込んで先へ急ぎます。
ちなみにこの「明池山荘」からちょっと東へ進んだ地点が「北横公路」の最高地点(標高1216m)なのですが、マヌケな私はそのことに全く気づかずスルーしてしまいました。


 
宜蘭県に入ると急に霧が立ち込め視界が悪くなってしまいました。崖の岩はコケが生えて緑色に染まっています。山を境にして、東側は雨が多いのでしょうね。台湾には「竹風蘭雨」という言葉があって、新竹はいつも風が吹いている地域であり、宜蘭は雨が多い地域であることを表しているんだそうですが、岩を覆うコケはまさにその言葉を象徴しているかのようでした。


 
 
【14:05 百韜橋(標高320m)】
シフトレバーを2速に入れっぱなしで900m近い標高差を一気に下ってゆくと、少しずつ霧が晴れ、そして急に視界が開けて目の前に蘭陽渓の広い河原と丁字路が現れました。山越えの終点である百韜橋に到着です。ここを右折すれば太平山や梨山方面、左折すれば宜蘭の市街となります。
災害にも事故にも遭わず、オーバーヒートすることなく、ブレーキが焼けることもなく、約85kmを2時間50分で無事に走破することができました。まだ日没までは時間がたっぷりあったので、山越えドライブの疲れなんてどこへやら、私は早速温泉めぐりを続けるのでした。

さて、2回連続でこの山道ドライブについて書き綴って参りましたが、別にここで無事走破したことを自慢しようと企んで記事にしたわけではありません。正直なところ、この程度の道ならどなたでも運転できるはずです。だって私ですら運転できたのですから。むしろ記事を通じて、このルートでしたらどなたでも運転できるんだということをお伝えしたかったのです。ただ、慣れない異国の地ならではの事情もありますから、その点も一緒にご紹介しつつ、是非皆様にも台湾でレンタカーを利用して奥地の温泉へお出かけいただきたいと企図した次第です。

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