肘折温泉のお宿では、複数の建物を旅館部門と湯治宿部門で分け、その用途によって施設名称も区分しているところがありますが、「つたや」さんもそうした宿の一つであり、旅館である「肘折つたやホテル」と湯治宿の「つたや金兵衛」という2つの顔を使い分けているのですが、今回は後者の「つたや金兵衛」で立ち寄り入浴させていただくことにしました。湯治宿らしく外観は思いっきり古風な佇まいですね。
上がり框の脇に貼られてる大きな滝と新緑の写真が印象的な玄関。建物は古いものの廊下等よく磨かれておりピカピカに光沢を放っています。さて入浴をお願いすべくその玄関で声をかけたのですが、何度叫んでも一向に誰かが現れる気配がありません。そこで帳場のインターホンを押してみたところ、スピーカー越しに応答があり、それからしばらくしてスタッフの方が息を切らせながらやってきました。どうやら裏手のホテルの方からわざわざ来てくださったみたいです。お仕事とはいえ、わずか数百円の立ち寄り入浴のためご足労くださって申し訳ありません。そんな心境で丁重にスタッフの方に挨拶した後、磨き上げられた廊下を進んで浴室へと向かいました。
廊下の突き当たりが脱衣室の入口。お風呂ですら当然男女別に分かれているわけですが、ドア上の札に「男子脱衣室」「女子脱衣室」というように、浴室ではなく脱衣室という言葉が用いられていることが、こちらのお風呂の特徴を良く示しているんですね。ちなみに脱衣室内は括り付けの棚があるばかりで、至って簡素です。
男女で分かれていた脱衣室の先はひとつの浴室に収斂されます。つまり混浴だったんですね。実は私もこのお風呂に入るまでそのことを知らず、入室してお風呂の構造を把握してから「えっ、マジか!?」と驚いた次第です。私は男のくせに混浴が苦手なのでして(ノビノビできませんからね)、お風呂の構造を理解してからは俄然落ち着きを失ったのですが、幸いこの時は私の他に利用客がいなかったため、結果的には一人でゆっくり独占することができました。
金気と土気の匂いがふんわり漂う浴室内には2つの浴槽が据えられていますが、古い造りゆえか水道の蛇口以外のシャワー等はありません(その代わりミラー等は取り付けられていました)。
2つある浴槽のうち、女性脱衣室側にある大きな浴槽は7~8人ほど同時に入れそうな容量があり、浴槽手前に鎮座してる巨大な岩の上にお湯が落とされ、そこから浴槽へと注がれています。岩の上に落とされた直後のお湯は熱いのですが、湯船では43~4℃前後の湯加減となっていましたので、岩に落としてワンクッション入れることにより、お湯を冷ましているのかもしれません(同時に加水も行われているようです)。湯船に満たされているお湯は赤みを帯びた黄土色に濁っており、肘折らしい金気や土気がしっかりと感じられました。館内表示によれば、組合2号泉と組合3・4号源泉、そして松屋1号源泉を混合しているとのこと。
一方、男性脱衣室側にある小さな四角形の浴槽は、容量としては5~6人で、大理石を彫って創られた龍の湯口が壁からせりでていますが、この龍は現在お休み中のようでして、その傍らから突き出ている2本の筒よりお湯が注がれていました。2本の筒でも、左側からは熱いお湯が、右側からはぬるいお湯が、それぞれ吐出されており、左側の熱いお湯からは昆布茶味とともに土類味や金気味そして炭酸系の味が、右側のぬるいお湯からは強い土気と明瞭な炭酸味が感じられました。おそらく熱いお湯は組合源泉の混合、ぬるいお湯は自家源泉である松屋1号だろうと思われます。この2本を混合する塩梅が宜しく、湯船では丁度良い湯加減が保たれていました。また湯中ではキシキシ感とスベスベ感が混在しており、湯上がりには粗熱がサッと抜けて程良い温まりが持続しました。
肘折のお宿ではどうしても組合源泉を使うお宿が多くなるわけですが、そんな中にあってこちらのお風呂では、組合源泉と自家源泉の2つを一つの浴室で味わえるのですから、まさに一挙両得ですね。また館内では湯使いに関する細かな情報開示が行われており、お湯に対するお宿の誠実さも伝わってきました。
組合2・3・4号源泉、松屋1号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 pH7.2 貯湯槽65.3℃(組合2号:85.1℃・組合3号:75.6℃・組合4号:65.5℃・松屋1号:29.5℃) 蒸発残留物2587mg/kg 溶存物質2998g/kg
Na+:752.0mg, Mg++:23.8mg, Ca++:75.1mg, Fe++:1.2mg,
Cl-:896.8mg, Br-:1.9mg, I-:0.3mg, SO4--:208.4mg, HCO3-:782.7mg,
H2SiO3:137.3mg, HBO2:50.3mg, CO2:185.1mg,
混浴浴槽「宝泉」(小):松屋1号を使用(季節により組合2号および組合3・4号を混合)、熱交換による加温あり、加水なし(但し組合2号使用時は10~30%の山水が含まれる)。
混浴浴槽「宝泉」(大):組合2号および組合3・4号・松屋1号を貯湯槽で混合、加温なし、組合2号泉に対して山水10~30%を加水(温度調整のため)、
(所在地・電話などは「つたや肘折ホテル」のものです)
山形県最上郡大蔵村肘折温泉504
0233-76-2321
ホームページ
日帰り入浴可能時間要問い合わせ
300円
シャンプー類あり、他備品見当たらず
私の好み:★★