温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

寺尾野温泉 薬師湯

2009年12月25日 | 熊本県


国道387号線の東を並行しながら黒川温泉方面と岳の湯温泉方面を短絡する農道「ファームロードwaita」のほぼ中間地点に小さな集落があります。カーナビやネットの地図を見るとその集落には温泉マークがあるのですが、温泉宿があるわけではなく、かといって何か看板が出ているでもなく、そこに浴場があると知らなければ間違いなく通り過ぎてしまう、極めてわかりづらい温泉です。地元民向けの浴場として部外者の目を避けるかのようにひっそりと湯屋が佇んでいるのです。



集落から伸びる一本道より見えるこの風景が目印。ここから伸びるあぜ道を進みます。浴場に関しては何ら案内看板の類もありません。私は秘湯巡りを繰り返しているうちに身についた勘を頼りに、一発で探し当てましたが、事前に何も情報を持たずに出かけると迷うこと必至です(にもかかわらず九州の温泉を紹介するガイド本にもこの温泉は掲載されており、本では詳細な位置説明が一切なされていないので、その本を見ただけでは間違いなく迷うでしょう。どうしてこんな温泉を載せちゃうんだろう…)。


古風でシンプルな造りの無人湯屋ですが、ちゃんと男女別に別れています。玄関入ったところに、浴場の建設にあたって寄進した方々の名前がズラっと並べられており、このお風呂がいかに多くの人によって支えられているかがわかります。脱衣所と浴室の仕切りが無い一体型で、脱衣棚近くにステンレスの料金箱がありますから、そこに100円を入れましょう。男女を仕切るパーテーションはやや低めで、ちょっと背伸びをすれば向こう側が見えてしまいます。浴槽はぱっと見ると1つに見えますが、実際には手前と奥の2つ分かれており、手前の槽は湯船から上はパーテーションで男女が仕切られているものの、湯船自体は男女共用で繋がっています。一方で奥の槽は男女がきっちり別れています。湯口は奥の槽の側にあり、お湯は奥の槽から手前の槽、そしてパーテーション直下にある排水溝へと流れてゆきます。湧いているお湯を手を加えることなくただそのまま浴槽に流しているだけなので、当然源泉掛け流し、湯口での温度が40~1℃くらいなので奥側の槽では程よい湯加減ですが、手前側の槽だとかなりぬるく感じると思います。

お湯は無色透明で弱いタマゴの味に微かな苦味、そして弱い硫黄臭が感じられます。奴留湯温泉に似た質感で、それをぬるくしたようなお湯とでも言いましょうか。ツルスベでもなく、かといってキシキシでもない優しい浴感。ふんわりと香る硫黄の湯の香が心地よく、上述のようにぬるめで、かつ癖の無いマイルドな質感なので、いつまでも長湯していたくなります。実際、私はお湯からなかなか出られず、1時間くらいはお湯に浸かっていたかと思います。後を引いてなかなか出られないのです。湯上りはさっぱり爽快、実に気持ちのよいお湯です。
余計なものは一切ない、ただお湯に浸かるためだけにある湯屋。無人ながらきちんと手入れされており、地元の人に愛されていることがわかります。そのお蔭で気持ちよく入浴できるのですから、管理されている方には心から感謝します。こうした浴場が末永く存在し続けてくれることを願います。

 
左:入口
右:料金箱まわり

 
左:綺麗な浴室
右:湯口は真ん中にひとつ、そこから男湯女湯それぞれに分かれて注がれる


硫化水素泉
34.4L/min(この他のデータ掲示なし)

熊本県阿蘇郡の某所(場所の特定は控えさせていただきます)

100円

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小浜温泉 海上露天風呂 波の湯「茜」

2009年12月24日 | 長崎県


前回紹介した「浜の湯」が地元民向きの浴場ならば、今回取り上げる「茜」は完全に観光客向けの施設です。温泉街の中心に近い海岸縁、国道57号と251号が分岐する「雲仙西登山口」交差点を海の方向へ曲がり、すぐに突き当たる防波堤のところに設けられています。

駐車場に建つ「番台」と書かれた小屋で料金を支払い、専用入口から防波堤を下りて浴場へ向かいます。階段下りて左が女湯、右が男湯です。造りは至って質素で、コンクリート打ちっぱなしの脱衣所、そして露天の浴槽があるのみ。長方形の浴槽もコンクリート製ですが縁は木材で、浴室の壁もウッド調の壁材が貼られ、簡素な造りながらぬくもりのある雰囲気を生み出しています。お風呂はまさに波打ち際にあり、時折テトラポットに当たった波飛沫が湯船に飛び込んでくるほど海面と近く、手を伸ばせば海水に届きそうな感じ。訪問時は潮が満ちていたのか、湯面と海水面がほぼ同じ高さに見え、まるで海の中に入って湯浴みをしているかのような気分が味わえました。海とお風呂との仕切りも、無粋な柵ではなくて、眺望の邪魔にならないようなワイヤーを用いているところも好印象です。

お湯は「浜の湯」同様で、無色透明無臭でニガリの味を含んだやさしい塩味です。観光客向けのお風呂なので、湯温は小浜の地元民向け外湯のような熱いお湯ではなく、万人受けする丁度良い湯加減になっていました。なお排水をそのまま海へ流している関係上、環境保護のため石鹸類は使えません。茜という名前が示すように、このお風呂は西の海を臨んでいるため、晴れた日には夕陽が拝めます。橘湾に沈む夕陽はさぞかし綺麗なことでしょう。



 
あちらこちらから湯煙がのぼる小浜の温泉街


ナトリウム-塩化物泉

長崎県雲仙市小浜町マリーナ20 地図
0957-74-5656
紹介ページ(観光協会サイト内)

7:00~19:00 無休(波浪時などは休業)
300円

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小浜温泉 浜の湯

2009年12月23日 | 長崎県


小浜温泉は島原半島を代表する観光地の一つです。観光協会によればこの温泉から放出される熱量は日本一なんだそうで、橘湾に面して細長く続く街のあちらこちらから湯煙が立ち上る様は、この地独特の景観です。緑の山を背景にして海沿いに旅館群が櫛比する光景は静岡県の熱海を彷彿とさせます。

何軒か外湯のひとつ「浜の湯」は温泉街の北のはずれに位置しており、斜め前は雲仙市役所の支所で、名前の通り国道57号線を挟んで海岸に面しています。駐車場は役場隣に専用スペースがあります。公営の施設らしく飾りっ気は皆無で実用一辺倒の建物、内部はごく普通の共同浴場です。浴室は広く、カランは海側(窓際)に10ヶ所並んでいます。海に面して建てられているものの、窓の位置や国道・防波堤の関係で、海はあまり望めません。

浴槽は文字通りに熱い「あつめの湯」と一般的な湯温の「ぬるめの湯」の二つに分かれています。源泉温度が非常に熱いため、いずれも加水されているものと思われますが、それでも「あつめ」の湯口から注がれるお湯は激熱です。お湯は無色透明ですが「ぬるめ」槽はほんの僅かに白く貝汁のような濁りが見られ、一方「あつめ」は澄明ですが成分の影響か浴槽タイルの目地が若干黒ずんでいます。湯口に飲泉用の竹柄杓が置いてあるので、これでお湯を口にしてみると、ほんのりニガリの味を含んだ優しい塩味で、海岸沿いの温泉ですが海水のようなしょっぱさは感じられません。匂いも特に感じられませんでした。しかしお湯の濃さは相当なもので、長くお湯に浸かっていると体力が奪われるので長湯できません。ぬるめの浴槽も湯温の割には皆さん早めに上がってゆきます。

小浜温泉は多少は海水の影響もあるのでしょうが、本質的には火山性食塩泉で、橘湾の下にあるマグマ溜まりから小浜断層に沿って上がってきたマグマ発散物によって温泉が湧いているものと考えられています。同じマグマ溜まりから分岐している温泉としては硫黄泉の雲仙温泉や重炭酸土類泉の島原温泉が挙げられ、マグマ溜まりに最も近い小浜温泉が最も高温で、そこから離れるに従い温度も低下してゆきます。

ナトリウムの作用により入浴中はツルスベ感がありますが、食塩泉なので湯上りは体が火照って汗が引かず、このお湯が持つパワーを実感します。外来入浴者は150円ですが雲仙市民なら50円で入浴できるので、いつも賑わうこの浴場。近くへ来た際に立ち寄ってみるものいいかもしれません。


ふたつの浴槽


湯煙たなびく小浜の温泉街


ナトリウム-塩化物泉
99℃ 成分総計9265.9mg/kg

長崎県雲仙市小浜町北本町25-19 地図

6:00~21:00 第1・第3水曜定休
150円
ロッカーあり(100円リターン式)

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長崎温泉 やすらぎ伊王島

2009年12月22日 | 長崎県


かつては黒いダイヤと呼ばれた石炭もエネルギー革命以後、少なくとも日本ではすっかり陰の存在となってしまい、国内に数多く存在した炭鉱も釧路コールマインを除けば全て閉山されてしまいました。かつて炭鉱町として栄えたところは悉く閉山後の斜陽にあえぎ苦しみ、近年では夕張市の財政破綻が話題を呼びました。暗中模索の地域振興策の中でもポピュラーな例が観光開発であり、坑内に湧出して迷惑がられていた温泉を活用してレジャー施設を開発した常磐炭田跡の常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズ)はその典型でしょう。

1941(昭和18)年に開鉱された長崎県の伊王島鉱山も日本の高度経済成長を支えた炭鉱の一つでしたが、1972(昭和47)年に閉山されると島の人口は激減し、一気に過疎地になってしまいます。危機感を募らせていた旧伊王島町は1989(平成元)年にリゾート開発という大博打に打って出ました。長崎港から20分という僅かな時間で離島気分と静かな時間を味わえる利点を活かしたわけです。その後温泉掘削にも成功し、今では低価格で楽しめるリゾート施設「やすらぎ伊王島」として集客に努めています。

このリゾート施設は日帰り入浴を積極的に受け入れています。まず長崎港大波止のターミナル内にある専用カウンターで受付を済ませ、料金(往復の乗船券と入浴料がセット)の支払いと引き換えに往路の乗船券と入浴チケットが手渡されます。これを手にしてコバルトクイーン号に乗船、女神大橋を潜り、左右に三菱の造船所をかすめ、約20分で伊王島に到着です。船着場にはリゾート地を意識した洒落た案内所とカフェがあります。港の北側にはオリーブが植えられた緑地帯が広がり、その中を3分程歩くと「やすらぎ伊王島」のエントランスです(船の到着に合わせて運転される無料送迎バスに乗ることもできます)。

 
左:長崎港大波止ターミナル内の専用カウンター
右:往路乗船券と入浴チケット

 
左:伊王島に着岸しようとするコバルトクイーン号
右:伊王島の船着場にあるカフェと案内所


玄関を入るとロビーがありますが、日帰り入浴客はここを素通りして、直接温泉棟へ向かいます。温泉棟の受付で入浴券を渡すと、それと引き換えにレンタルタオルと復路の乗船券が手渡されます。脱衣所はチーク調の落ち着いた内装でまとめられており、手入れが行き届いて清潔感に溢れています。洗面台にアメニティー類が揃っているのもありがたいところです(宿泊者も利用するので当然かもしれませんが)。
男湯の場合、内湯は真ん中に42~3℃の樽湯、窓際に石造り(縁は桧)と桧造りの方形浴槽がひとつずつ、左手にサウナ、そして一番奥に打たせ湯が設けられています。外に出ると、正面に大きな釜に湯を張った釜湯がふたつ、窓際に足湯、そして露天の主浴槽が据えられています。露天の各浴槽からは角力灘の海原、そして対岸に横たわる長崎半島の稜線や稲佐山の姿などが眺められ、非常に気持ちのよいロケーションです。

 
左:内湯の桧浴槽と樽湯
右:カランまわり

 
左:釜湯と露天風呂 海岸縁なので眺めがよく爽快
右:泡が立っている露天風呂の湯口付近


お湯はほぼ無色透明ながわ僅かに貝汁濁りが見られ、海水性の温泉らしくとてもしょっぱく、また口に強い苦味(ニガリの味)が残ります。お湯を掬って嗅いでみると硫化水素の匂いが感じられました。お湯の中では橙色の湯華が浮遊しており、また特に露天の湯口付近では泡つきもみられました。ナトリウム分ですべすべするかと思いきや、その倍の量が含まれているカルシウム分がつるすべ感を相殺して、結構ギシギシとした浴感。塩分が濃いだけあって湯上りは火照り、長湯すると湯疲れするかもしれません。入浴前後の水分補給を欠かさないようにしてください。私は体験しませんでしたが、リゾート施設らしくここでは各種エステのサービスも受けられ、酵素風呂・よもぎ蒸しパックなどもあるようです。

長崎と伊王島の正規往復運賃は1300円ですが、往復の船賃と入浴料そしてレンタルタオルがついて980円なのですから、相当安い価格設定ではないでしょうか。それでいてホスピタリティもなかなか充実しており、お風呂からの眺めはとても気持ちよく、お湯も塩素消毒されているものの源泉掛け流しを実施しているので、私はかなり高い満足度を得られました。長崎へ訪れの際はちょっと時間を割いて伊王島へショートトリップをしてみてはいかがでしょうか。


沖ノ島天主堂(聖ミカエル天主堂)。国登録有形文化財。1931(昭和6)年に建てられた伊王島を代表する建造物です。島の6割がカトリック教徒で、長崎市に吸収される前の旧伊王島町は日本で最もカトリック教徒の多い町でした。



カルシウム・ナトリウム-塩化物泉
44.7℃ pH7.4 720L/min(動力揚湯・深度1180m) 
塩素消毒 露天風呂は冬季のみ熱交換器で加温

長崎県長崎市伊王島町1丁目3277-7
095-898-2202
ホームページ

980円(往復乗船券・入浴料金・レンタルタオルがセット)
ドライヤー・ロッカー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

亜細亜旅情温泉 月ノホタル

2009年12月21日 | 熊本県
※残念ながら閉鎖されてしまったようです。



畑と住宅がモザイク状に混在する熊本県旧泗水町の郊外、泗水西小学校と合志川に挟まれたところに突如として現れるアジアンテイストの入浴施設です。前回紹介した不二の湯から近い場所にあります。
外観・内装とも周囲の田舎然とした風景とはかけ離れた小洒落た雰囲気で、私の訪問時も若いカップルが2組ほど入っていきました。東南アジア、とりわけバリ島あたりのリゾート施設をイメージしたようなデザインで、たしかに若者受けしそうなコンセプトがそこかしこから漂ってきます(もし東京だったら、ちょっとユルいと思われてしまうかもしれませんが)。入口ではガルーダ像が「OPEN」の札を持ってお出迎え。券売機で料金を払って中に入ります。九州の温泉らしく、ここは大浴場のほかに貸切風呂が4室設けられており、先程のカップルは当然のように貸切風呂へと消えてゆきました。一人客の私も規定料金を支払えば貸切風呂を利用できるのでしょうが、ここは遠慮して大浴場へ。

 
左:男女日替わり制の大浴場
右:こちらは4室ある貸切風呂の棟


大浴場は「満月」「下弦」の2つに分かれていて、男女が日替わりになっているそうです。訪問時、男湯は「満月」でしたので、ここからは「満月」についての説明となります。大浴場といってもそんなに大きなものではなく、どちらかといえばこじんまりとしており、特に脱衣所は客が集中したときは窮屈になってしまうかもしれません。2005年にオープンした施設なので、まだ全体的に新しめの感があり、手入れもよく行き届いていて清潔感が漲っています。

浴室は内湯・水風呂・露天風呂がそれぞれひとつずつ、カランから出てくるお湯は源泉です。この施設のコンセプトは先述のようにアジアンテイストですが、ここ「満月」は和風の造りで、旅館のお風呂を思わせます。内湯は7~8人サイズ、露天もほぼ同じくらいのサイズで、それぞれ源泉が掛け流されており、そのお湯はほぼ透明ですが、ごく薄く褐色かつ白く濁っているように見えます。浴槽内は成分の析出で赤く染まっており、その赤色の原因と思われる金気の味と匂いが微かに感じられ、これに弱い塩味と土気の味が加わります。量は少なめですがしっかりと泡つきも確認。弱いつるすべ感もあります。露天風呂は周囲を塀で囲まれているので景色を楽しむことはできませんが、周囲には何も無いため、晴れていれば空の広さを実感できることと思います。ベンチも置かれているので、クールダウンしたいときにももってこい。

ネット上の情報を見る限りでは貸切風呂も各室がそれぞれ異なる趣向を施されているようで、なかなか雰囲気が良さそうです。また日が暮れると各所にキャンドルが灯され、女の子ならメロメロなシチュエーションになってしまうんだとか。
300円という低料金でありながら、清潔で設備も整っており、源泉かけ流し、しかも深夜2時まで営業しているという、かなり使い勝手のよい温泉施設だと思います。こういう温泉が何気なく存在しているところが、さすが熊本県。

 
左:内湯
右:露天風呂


ナトリウム-炭酸水素塩泉
44.5℃ 209L/min

熊本県菊池市泗水町田島字島田253 地図
0968-38-5431 

9:00~翌2:00
300円(貸切風呂1500円/60分)
ドライヤー・ロッカー(10円リターン式)・ボディーソープ類あり

私の好み:★★


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする