(2021年11月訪問)
日頃の仕事に追われ、週末もろくに休息時間が確保できない日々が続いているのですが、日帰りならば何とか時間がとれそうなタイミングを見つけたので、11月の土曜日、小田急ロマンスカーに乗って箱根へ向かい、箱根湯本からてくてく散歩しながら塔ノ沢温泉「環翠楼別館」を訪ねました。今回は事前に公式サイトで日帰りランチプランを予約した上での訪問です。
見るからに立派なこの建物は大正時代に建てられた木造3階建の鉄板葺で、登録有形文化財に指定されています。文化財の指定を受けるような立派な造りの建物にお邪魔するときには気分が高揚しますね。
入浴の前にランチをいただきます。案内された席は1階ラウンジの窓側。この窓ガラスは建築当時のままなんだとか。100年近く使われ続けたガラスの窓から外を眺めると、何度も通っているはずの国道1号線の往来ですら、風情ある絵葉書のように見えてくるのが実に不思議です。
ラウンジの一角には自由に利用できるドリンクコーナーが設けられています。この「環翠楼別館」は歴史ある建物の風格を大切に残しつつ、随所を綺麗にリニューアルしており、居住性や利便性に関しては古さを感じさせないどころか、寧ろ新しさを覚えるほどです。
まずはワインで乾杯。
歴史の風格漂うこの建物でいただくお食事は、意外にもイタリアンです。
目の前に提供された前菜3種は、海鮮サラダ、パンチェッタとほうれん草のキッシュ、そして野菜とコンソメゼリーのテリーヌ。
お食事のコースは、パスタセット、魚料理セット、肉料理セットから選択でき、今回は予約時に肉料理セットを申し込みました。前菜を食した後に出されたメインの肉料理はアンガス牛ステーキ。実に美味。美味しさのあまり、あっという間に平らげてしまいました。もう少し落ち着いて食べればよいものを、ついつい焦って頬張ってしまい、あまりに品が無くて情けないのですが、出自は誤魔化せないので仕方ありません。
さてお腹を満たした後は、塔ノ沢の温泉に入りましょう。
受付でレンタルのタオルを受け取り、屋外にあるお風呂へと向かいます。
お風呂へ出る勝手口のようなところには、かわいらしいウサギが飼われていました。
屋外履きに履き替え、一旦屋外に出てお風呂へ。
おそらく日帰り入浴のみは受け付けていないかと思いますが、ランチプランを利用することにより、お風呂の利用が可能になるようです。この別館のお風呂は男女別に分かれており、男女の浴場は固定されています。男湯は国道側の「藤の湯」、女湯は南側の山斜面に面した「楡の湯」です。ここからは「藤の湯」についてご紹介します。
別館のお風呂は「藤の湯」「楡の湯」ともに露天風呂で、更衣ゾーンから既に露天状態です。
別館で宿泊する場合は本館のお風呂で体を洗い、内湯でしっかり温まり、そうした上で別館のこれらの露天風呂へ入ることになるのでしょう。そのようなコンセプトのためか、この別館の露天風呂には洗い場がありません。桶でお湯を汲んで掛け湯するなど、工夫して体を綺麗にしてから湯船へと向かうことになります。なお今回我々は別館のお風呂のみの利用ですので、本館のお風呂については利用しておりません。
長方形の露天風呂は、周囲を塀で囲まれているため、景色を眺めることはできませんが、何しろ目と鼻の先は往来が激しい国道1号線ですから、下手に視界を開かせるわけにはいきません。秋に訪ねたので推測するほかないのですが、浴槽手前の頭上にかかっているパーゴラが藤棚のようなイメージなのでしょうか。なお訪問時は特に藤らしき植物は見られませんでした。とはいえ、立派な木立に囲まれ、山の風も入り込み、設えのセンスの良さも相俟って、意外にも静かで落ち着いた雰囲気です。
最も奥にあるこの石塔のようなものは、てっきり湯口かと思いきや、実際にはただの飾りのようで・・・
湯船のお湯は、浴槽内にある複数の吐出孔から供給されていました。お湯は無色透明無味無臭で、癖のないあっさりとした優しいお湯です。この浴舎を含め別館には温泉分析表や湯使いに関する掲示が無かったので、スタッフの方に伺ったところ、湯使いはかけ流しとのことです。分析表に関しては公式サイトに掲載されていたので、スマホでそちらを確認することにしました。
この時は他にお客さんがいらっしゃらなかったので、思いっきり手足を伸ばし、思う存分ゆったりと湯あみさせていただきました。
同行してくれたパートナーに声を掛け、他に誰もいないことを確認した上で、もう一つの露天風呂「楡の湯」をちょっと拝見させてもらいました。「藤の湯」とは趣きや設えが全く異なる開放的な岩風呂で、箱根の山の緑に抱かれつつ、正面に落ちる滝を眺めらながら湯あみすることができ、「藤の湯」も大変居心地よいお風呂なのですが、正直なところ個人的にこちらの方がはるかに環境が優れているのではないかと思った次第です。こんな素敵なお風呂に入れる女性が羨ましいなぁ。
何はともあれ、歴史ある建物で美味しいお食事に舌鼓を打ち、落ち着いた露天風呂で心身を癒して、日帰りながらすっかり寛ぐことができました。
帰路は箱根湯本からロマンスカーGSEで新宿へ。
塔之沢温泉(湯本第37・50・110号混合)
アルカリ性単純温泉 48.2℃ pH8.9 蒸発残留物0.505g/kg 成分総計0.527g/kg
Na+:144mg, Ca++:22.8mg,
Cl-:126mg, SO4--:131mg, OH-:0.14ng, HCO3-:30.5mg, CO3--:1.85mg,
H2SiO3:51.5mg,
(平成16年12月13日)
神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤88
0460-85-5677
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