温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台南市 井仔脚瓦盤塩田

2016年03月31日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。

現代社会から失われつつある風景を眺めてノスタルジックな気分に浸ることは、国内外問わず旅行の大きな動機であり、そこに異国情緒が加わると、より一層旅情が掻き立てられます。私が台湾観光をする上でも、この要素が非常に重要であり、温泉以外の各地を訪れる際には、大抵この概念が原動力になっています。


 
(上2枚の画像は台南市・七股塩田)
台湾南部の台湾海峡側には、かつて塩田が多く存在していたんだそうですが、さすがに今では殆ど廃れ、その一部が観光施設として残されているにすぎません。台南市の七股塩田は塩田跡地を観光地として転用した典型例であり、巨大な塩の山が特徴的ですが、塩田というよりも広大なレジャー施設と言うべきであり、構内には観光体験用のミニ塩田がちょこんとあるものの、本当にここで製塩が行われていたのか、疑わしくなるほどかつての姿は残っていません。


 
(上2枚の画像は北門地区の中心部。製塩工場跡と水晶教会)
同じく台南市の北門地区もかつて塩田で栄えた街のひとつであり、昔日の面影を残す古い製塩施設を中心に、今では多くのツーリストが集まる観光地として賑わっていますが、やはりここもカラフルな店舗や水晶の教会、そして現代アートなどが並び、大型観光バスに乗ってくる大陸からの観光客も大挙してくるため、あまりに観光色が強すぎて、製塩が行われていた時代を偲ぶことは現実的に難しくなっています。

そんな観光地化された北門地区の中心部から南西へ2~3km進んだ海岸沿いにある井仔脚には、昔ながらの製塩を偲ばせてくれる風景があると聞き、車で実際に行ってみることにしました。なんでも、台湾でも屈指の歴史を誇る塩田なんだとか。


 
北門地区のビジターセンターから路傍の標識に導かれること数分で井仔脚集落に到着しました。集落の中央部には広い駐車場が整備されており、それに面して塩田のエントランスも設けられています。入口に立つモニュメントは白い三角形に象られているのですが、これが何を意味しているのかは、この場に来れば一目瞭然。田んぼのように仕切られた各塩田の中央に、塩の山が築かれていたのでした。


 
編み笠をかぶって頬っ被りをしているおばちゃんが、塩田に入って内部をレーキで均していました。はたから見ていると、同じところを何度も繰り返し均しているように見えたのですが、ちゃんと意味があってそのような作業を繰り返しているのか、はたまた観光客に喜んでもらえる風景を作り出すべく、製塩作業を再現している小芝居に過ぎないのか…。
ま、そんな詮索はともかく、この井仔脚は北門地区に初めてできた塩田であるらしく、その歴史は清朝の嘉慶年間(1796~1820年)にまで遡るんだとか。しかも現存する最古の瓦盤塩田でもあるんだそうです。この度の訪問で私も初めて知ったのですが、瓦盤塩田とは文字通り、畦で仕切った塩田の上に割れた瓦の破片を敷き詰め、そこに海水を入れて塩の池を作り、天日乾燥により瓦の上で塩を結晶化させるという、説明を聞いただけでも明らかに古典的でアナログとわかるような製塩方法なんだそうです。


 
塩田の隅っこには鉄鋼製の無骨な展望台が建てられていましたので、その上に昇って塩田を俯瞰してみました。今では観光用に製塩しているにすぎないので、白い山を築き上げている塩田は、画角の幅が狭い私の安物デジカメでも全容が収まっちゃうくらいに小規模なのですが、観光施設としての余計な構造物が少なく、塩田を守る堤防の向こう側は台湾海峡の海原なので、かつての製塩風景を偲ぶには十分なほど、長閑で懐古的な風景が広がっていました。台湾ではこれまでいくつかの塩田跡に行きましたが、この井仔脚が最も「THE 塩田!」って感じがして、大変気に入りました。

ネット上の情報によれば、ここは夕陽が大変美しいのだそうです。畦に囲まれた塩田の塩水は、波打つことなく鏡面のように赤い夕陽を映すのでしょうね。それこそ南米ボリビアのウユニ塩湖を彷彿とさせてくれるのかもしれませんが、あいくにこの日は冷たい風を伴う雨に見舞われ、防寒と防滴ばかりに気をとられて、夕陽どころではありませんでした。


 
海水が薄く張られている塩田内には、かつては本当に瓦の破片が敷き詰められていたのでしょうけど、さすがに瓦のままでは滑って怪我しやすいでしょうから、いまでは石のような角の丸いものが敷き詰められていました。そうした塩田の一つ一つを囲む畦は赤いレンガが積まれており、一部区間はその上を歩くことができます。雨脚が強くなって訪れていた観光客がみんな帰っていってしまう中、私は一人で傘をさしながらこのレンガの畔道を進んでいき、奥の方から塩田の光景をぼんやり眺めていました。鉛色の重たい雲が立ち込める中、冷たい雨に打たれて小さな波紋を無数に広げる塩田は哀愁たっぷりです。

このレンガの畦道の途中には、塩田へ海水を入れる羽根のような水車がいくつも並んでいました。水車の横にある踏み板を足で踏んで、羽根を回転させて海水を汲み入れるわけですね。もっともこれは観光客向けの体験用水車であり、普段は人力なんかに頼っていられないため、並行してポンプによる給排水が行われていました。


 
観光用の塩田ですから、ただ見学するだけではなく、体験することも重要であります。とはいえ私は一切体験しておりませんが、一部の区画では観光客が実際に塩田の中に入って、レーキで均したり、あるいは掻き集めたりと、諸々の作業を体験することができるんですね。実際に上画像の区画では、体験作業で使われたとおぼしきレーキやもっこ、天秤棒が置かれており、塩の山が崩されていました。私が訪れる数時間までは天候が持ち堪えていましたから、それまでは、おそらくこうした作業具によって観光客たちが楽しんでいたに違いありません。あぁ、羨ましいなぁ。雨男の自分が恨めしい…。


 
 
構内の一角には飲食店や売店などが並んでおり、その前には粗い結晶の塩が山になってコンモリと積み上げられていました。案内板によれば、(駐車場に面している)興安宮という廟で入手できる専用袋に、一人一袋分だけここから塩を詰め込んで持ち帰れるんだそうです。でもこの塩は食用不可とのこと。野晒しにしている塩だから、そりゃたしかに御尤もなのですけど、でも食用に使えないのならば、一袋分のお塩って他にどんな用途があるのかな。まさか工業用に使うわけにもいかないので、なめくじを退治しましょうか? あるいは玄関に撒いて厄払いでもしましょうか?


 
エントランスの前には台南名物の養殖魚であるサバヒー(虱目魚)の干物が、テントの軒先で吊り下げられていました。塩も魚も海の恵み。いかにも漁村らしい光景がとてもフォトジェニックです。そういえば今年の冬に台湾全土を包み込んだ記録的な寒さは、各地で非常に珍しい雪景色をもたらした反面、台南の養殖サバヒーは海水の冷え込みに耐えられず壊滅的な被害を受けたそうですね。サバヒーは私の好物でもあるので、今後の状況がちょっと心配です。


 
バス停には手作り感たっぷりの待合い小屋が設けられており、ベンチの背もたれの上には、まるでレースのカーテンのように、牡蠣の白い殻がたくさん吊り下げられていました。また、停留所名として「井仔」の後に足跡のマークが描かれているのですが、これは言わずもがな井仔脚の「脚」を意味しているわけですね。
塩田からちょっと離れた集落には、まるで老街のようなレンガの古い民家が立ち並んでおり、雨に濡れてしっとりとした漁村の風景の中に立ち止まると、まるで自分が塩田現役の時代にタイムスリップしたかのような気分に浸れました。


 
 
台湾海峡は大陸側と台湾側で地形がはっきり分かれているのが大きな特徴であり、大陸側は岩石質の地形が複雑に入り組んだ海岸線であるのに対し、台湾側は遠浅の砂浜が延々と続き、潟や砂丘が点々としています。ここもそんな地形の典型例ですから、それゆえ塩田が作りやすかったのでしょうね。かつての塩田跡とおぼしき干潟ではサギの群れが真っ白い羽根を休めていました。ここは塩田としてのみならず、バードウオッチングの地としても有名なんだそうです。


 
塩田を護る堤防の直下には養魚場があり、堤防の向こう側に広がる台湾海峡の海原にも養殖用とおぼしき網が組まれていました。

台湾の東側に広がる太平洋は、いかにも南国の海らしく、眩しい太陽と真っ青な大海原が似合っていますが、一方で西側の台湾海峡は、遠浅の泥海に昔からの人間の生活が色濃く染み込んでいる、とても人間臭い海なんですね。台湾は九州ほどの小さな島ですが、その両岸で面する海は全く様相を異にしているため、双方を比較すると実に面白く、関心が尽きません。九州で例えるなら、東側は日向灘で、西側は有明海といったところでしょうか。この井仔脚塩田は、そんな人間臭さが懐かし景色の中に凝縮された、とっても素敵なスポットでした。


台南市北門区井仔脚 地図


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台南市 亀丹温泉 亀丹休体験農園

2016年03月29日 | 台湾
 
台湾屈指のマンゴーの産地として有名な台南市玉井からちょっと東へ入った田舎に、亀丹温泉という温泉が湧いていると聞き、車に乗って行ってみることにしました。マンゴー畑が広がる田園地帯を走っていると、やがて亀丹集落に入ります。集落の入口では大きなカメのモニュメントがお出迎え。亀丹だからカメという全く捻りのない単純な発想は、田舎らしい素直で長閑な空気感を象徴しているかのようです。もしこれが新進気鋭の現代アートだったら、ちょっと物怖じしちゃうかも。


 
路傍に立つ看板に導かれながら「南186」号線を走って行くと、右手に今回の目的地である「亀丹休体験農園」が姿を見せてくれました。この施設の傍には亀丹渓という川が流れており、台湾の温泉ファンのサイトによれば、上流へ遡って行くと温泉の源泉にたどり着けるのらしいのですが、この日はあいにく雨天でしたので、残念ですが源泉探索は見送ることにしました。


 
この日は雨天だというのに、週末だからか午前11:00の時点で第一駐車場は既に満車。仕方なくちょっと離れた第二駐車場に車を止め、正面ゲートからお客さんの歓声で賑やかな敷地内へと入りました。


 
後述する露天温泉プールを右手に見ながら構内を進み、前方にある売店兼受付で料金を支払います。受付のおばちゃんは、私が言葉の通じない日本人だとわかると、親切に施設内をいろいろと案内してくれました。右or下画像に写っているのはシャワーブース。ここで水着に着替えます。なおこの温泉プールでは、水着のほか、水泳帽かシャワーキャップの着用も求められるのですが、もし頭に被るものを持参していなければ、使い捨てのシャワーキャップを無料でもらえます。実際に私も一枚もらいました。


 
露天ゾーンには、屋根がかかっているところと、屋根のない広いプールがあるのですが、後者の屋根がないプールは全て冷水であり、そのプールサイドに立っている打たせ湯らしき装置も、実は温泉ではなく冷水なのであります。この日は台湾南部にしては珍しく肌寒い日でしたので、これらの冷水プールに入る人はほとんどいなかったのですが、後述する温泉槽の一部がかなり熱く、そこで湯浴みしていたら体が火照ってしまったので、ここでクールダウンしたらとっても爽快でした(塩素消毒臭の強さがちょっと気になりましたが…)。



奥の方にはこのような子供用のプールもあり、小雨降る肌寒い日だというのに、子供たちはこの冷たい水のプールで元気にはしゃいでいました。


 
さて本題の温泉槽へと参りましょう。大きな冷水プールの縁に沿う形で、屋根に庇護されながら6つの小さな岩風呂がカーブを描きながら列をなしています。この岩風呂群が温泉槽です。私が訪れた時には、奥の2つと手前の2つにお湯が張られていましたが、中ほどの2つは空っぽでした。各浴槽とも源泉を投入するバルブ付きの配管が設けられているのですが、常時お湯が湯船に注がれているわけではなく、入浴客の任意によってバルブを開けてお湯を足すシステムとなっています。つまり溜め湯式みたいな感じです。いずれの浴槽においても、入浴客は思い思いにバルブを操作してお湯をドバドバと継ぎ足していました。


 
6つある岩風呂のうち、奥の2つはぬるい湯加減となっており、私の温度計で測ったところ39.6℃でした。暑い日でしたら温泉槽のほか冷水プールにもお客さんが散らばるのでしょうけど、先述のようにこの日は肌寒かったため、このぬるくて入りやすい湯加減の岩風呂にお客さんが集中してしまい、それが原因でお湯がちょっと濁っていたのが残念…。


 
一方、手前2つの湯船には「高温池」と表示されているようにアツアツの湯加減がキープされており、実際に入ってみますとあまりの熱さで脛や腿がジンジンしたのですが、それもそのはず、なんと湯船の温度は46.7℃もあったのです。日本でもこんな熱い風呂に入れる人はなかなかいませんが、しかしながらこのお風呂では涼しい顔をして平然と湯浴みしているお客さんがいらっしゃり、台湾の熱風呂愛好家には恐れ入ります。


 
ちなみに熱い風呂のコックを開けて出てくるお湯は篦棒に熱い82.6℃。直に触ったら火傷しちゃいますね。さすがに熱い風呂にお客さんが集中することはなく、それでいて熱い風呂を好む人はコックを開けてじゃんじゃんお湯を継ぎ足すため、湯船のお湯はこちらの方がはるかに鮮度感が良く綺麗な状態でした。



46~7℃の熱い風呂に入浴中の私。おばちゃんみたいな使い捨てのシャワーキャップを被っております。個人的にはこの熱い風呂の方が、お湯のコンディションが良く、それでいて熱い源泉のお湯を心置きなく注げるので、満足のゆく湯浴みを楽しむことができました。溜め湯式ですが、お湯は循環などされていませんので、実質的に放流式の湯使いと捉えて差し支えないでしょう。

施設内の表示によれば重炭酸イオンの多い炭酸ナトリウムのお湯と記されていたのですが、日本的に表現するならば、重曹泉というより、薄い重炭酸土類泉か塩化土類泉といったような感じで、見た目は薄い黄色に懸濁し、匂いはほとんど嗅ぎとれないものの、味覚に関しては弱い塩味と土類的(石膏的)な味が伝わってきました。また石灰華などの析出は見られないものの、湯中では湯の華らしき白く微細な浮遊物がチラホラと舞っていました。浴感としてはツルスベとキシキシが同程度に拮抗しており、熱い湯はもちろん、ぬる湯に浸かっていても、しっかりとパワフルに温まり、迂闊に長湯していると火照ってフラフラになっちゃいます。
台南市の温泉といえば、アブラ臭を漂わせる泥湯でおなじみの関子嶺温泉が有名ですが、同じ市内でもこちらのお湯は、どちらかといえば隣接する高雄市の宝来温泉や不老温泉に近いような感じで、関子嶺のようなクセのある温泉が苦手な方にはこちらの方がよろしいかと思います。オープンエアの長閑な環境で熱いお湯を楽しめる、なかなか本格的な温泉でした。


  
 ちなみにこの亀丹温泉には、私が入浴した体験農園とは別に公営の「亀丹温泉体験池」と称する施設があるので、ちょっと立ち寄ってみたのですが、私より先に訪れた家族連れのお客さんは、受付で話を聞くや、園内に入ることなくすぐに立ち去っているではありませんか。どうしたものかと園内の様子を窺ったところ…


  
 
 この公園施設では大人数で楽しめるような足湯が綺麗に整備されているのですが、どの足湯槽も吹きさらしであるため、この日のような雨天では腰掛けるところがビショビショで、足湯を楽しめるようなコンディションではなかったのでした。しかも足湯しかないのに、大人50元、子供25元という入場料がかかるため、どのお客さんたちも園内に入らずゲート前で引き返していたのでした。せっかく公金で温泉施設を作るのなら、みんなが楽しめるような全天候型の入浴施設にすればよいのに、どうしてこんな中途半端な設備にしちゃったのか、いまいち理解に苦しみます。

 「台南市亀丹温泉体験池」 営業時間→水曜~日曜の9:30~16:30(月・火は休業)




(以下、「亀丹休体験農園」のデータです)
碳酸氫鹽泉(日本語風に言えば重曹泉といったところでしょうか)
56.8~87.1℃ pH8~8.6 溶存物質1090~1140mg/L HCO3-:696~712mg/L 

台鉄・台南駅から興南客運バスの緑幹線で玉井へ行き(2~4本/1時間)、玉井から興南客運の亀丹油礦(緑21線・1日4往復)行きに乗り換えて「牛坑」下車。
時刻や路線図に関しては「大台南公車」の公式サイトでご確認ください(日本語ページあり)
台南市楠西区亀丹里59-6号  地図
06-5746-989


平日12:00~21:00、休日9:00~21:00
屋外温泉プール300元(個室風呂1000元/90分)
水着・水泳帽(もしくはそれに類するもの)着用
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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桃園市 嘎拉賀(新興)温泉で湯の滝を楽しもう! 後編

2016年03月27日 | 台湾
前回記事の続編です。


渓流の冷たさをぐっと堪えて渡渉すれば、今回の真のゴールである嘎拉賀(新興)温泉の湯の滝に到着です。
どうですか! 山の上から落ちてくるこの大きな滝は、まるごと温泉なんですよ。


 
湯気をホカホカと上げてゴーゴーと音を轟かせながら落ちる湯の瀑布。ものすごい迫力です。滝に温度計を突っ込んでみると、38.8℃と計測されました。



湯の滝は天然の打たせ湯でもあります。滝の下に入ってみますとめちゃくちゃ気持ち良い!
うひゃー、最高だ!


 
滝壺は大きな石でしっかりと囲まれて大きな露天風呂になっており、40℃に届くか届かないかという程度の、長湯したくなるような湯加減になっていました。打たせ湯も気持ち良いのですが、この湯船も素晴らしく、岩を枕にして湯浴みすると、時間を忘れていつまでも浸かっていたくなるような極上の気分に満たされました。
露天風呂には常に大量のお湯が流れてくるため、野湯にありがちな汚れや沈殿などは一切なく、実にクリアで綺麗です。


 
 
湯の滝のみならず、付近の岩盤のあちこちからも温泉が自噴しており、いくつもの筋を作りながら川へ向かって落ちています。その中のひとつ(上画像の流れ)は露天風呂に流れ込んでおり、手で触ってみるとかなり熱かったので、温度を計測したら50.8℃でした。最下部でこの温度なのですから、湧出時はもっと高温なのでしょう。この高温のお湯が冷めやすい大きな露天風呂へ合流することにより、露天風呂の湯加減がちょうど良い塩梅になっていたのでした。うまい具合にできています。


 
さらに上流側の岩盤でも46.0℃のお湯が落ちており、その直下にも石で囲まれた湯だまりができていましたので・・・


 
ここでも入浴してみました。ちょっと熱めですが、シャキッとする熱さもまた気持ちよかったので、大きな露天とこの小さな湯だまりを行ったり来たりしてしまいました。

お湯の見た目は無色透明で、湯の滝のミストを頭から浴びているときにはうっすらとタマゴ臭が香り、お湯を口に含んでみますと、弱いタマゴ味や重曹味、そしてアルカリ性泉によくある微収斂が感じられました。pH8.0という弱アルカリ性だけあって、ツルツルスベスベの滑らかな浴感が楽しめます。
掛け流しという言葉がバカバカしく思えてくるほど、大量のツルスベ温泉が滝になってドバドバ落ちてくるんです。こんな贅沢な温泉、他にあるでしょうか。まさに極楽そのものです。駐車場から温泉がある谷底まで高低差があるため、往復は体力勝負になっちゃいますが、悪天候でなければそれほど危ない道のりでもありませんから、ランチを持参しながらこの温泉にのんびり浸かって、ゆっくり過ごすのも良いかもしれません。台湾の大自然の恵みを存分に満喫できる極上の温泉でした。


桃園市復興区嘎拉賀  地図
駐車場のGPS座標:24.63557, 121.40562


野湯につき備品類なし。
いつでも入浴可能だが、雨天時には渓流が増水するので要注意。
無料のはずだが、なぜか駐車場で100元を徴収される。

私の好み:★★★





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桃園市 嘎拉賀(新興)温泉で湯の滝を楽しもう! 前編

2016年03月25日 | 台湾
今回記事から台湾ネタが続きます。
2016年1月に行われた台湾総統選の前日。台湾中の耳目が民進党・蔡英文と国民党・朱立倫の対決に集まっているなか、私は朝からレンタカーを借りて、桃園市の山深い奥地にある、原住民タイヤル族が暮らす小さな集落を目指しました。その集落の付近には、天然の温泉が滝をなしてドバドバと落ちている場所があるらしいのです。


 
台湾の脊梁を東西に横断する台7線「北横公路」を東進し、市街を離れて険しい山へとどんどん入って行きます。途中で襞みたいに細かく縦に刻まれている峻厳な断崖と遭遇し、その荒々しい光景を目にしてすっかり圧倒されちゃいました。
所々で離合不能の狭隘区間を通り過ぎながら更に奥へ進んでゆくと、以前拙ブログでも取り上げたことのある「巴陵大橋」が目の前に現れました(その時の記事はこちら)。


 
「巴陵大橋」を超えて巴陵集落に入ったところで、右手へ分かれる小道を進み、更に小さな谷を越えて山の奥へと入り込んでゆきます。巴陵集落の対岸にあたる爺亨地区は棚田の美しい景観で有名なところであり、かつては爺亨温泉という温泉もありましたが、残念ながら現在温泉は閉鎖されてしまいました。道沿いには梅が植えられており、折しも紅梅が綺麗に咲いていました。


 
桃園市街の中心部を出発してから2時間半で、ようやくドライブの終着である嘎拉賀集落にたどり着きました。この集落は一時期、中華風で抽象的な「新興」という名前だったようですが、固有名詞は原住民の言葉を尊重するべきという判断が下されたのか、現在ではタイヤル族の言葉(の音)に即した嘎拉賀(ガラホ)という集落名となっています。険しい山の斜面にへばり付いている集落の中を、車一台分の細い道が奥へと続いているのですが、その路傍に「往温泉」と記された道標が掲示されていましたので、それに導かれながら先へ先へと進んで行くと・・・


 
上画像のような駐車場に到着しました。ドライブとしてはここが終点ですが、本当の目的地はこの先の谷底にありますから、ここからは歩いて噂の温泉へと向かうことになります。南国台湾といえども、さすがに高所となれば気温も下がり、私の体感でこの山中の集落は10℃あるかないかという冷たい空気に包まれていました。しかも朝からシトシトと雨が降り続いていたので、余計に寒く感じられます。駐車場の谷側にはテントが建てられ、中で集落の男たちが焚き火で暖をとりつつ談笑していました。この先の温泉へ行く際には集落の人に100元支払うのが暗黙のルールとなっているらしく(ネット上にもその情報が紹介されていました)、この時も車をとめた私に向かって男たちの一人が声をかけてお金を請求してきました。私はあらかじめそのことを知っていたので、「そういうものか」と理解して素直に支払いましたが、駐車場にはお金に関する案内や説明が見当たりませんので、何も知らないでここに来ると、お金でちょっと揉めそうな気がします。

さて車を降りた私は、この場で雨に濡れながら軽登山の準備にとりかかります。具体的には、雨具を装着し、トレッキングシューズに履き替えた上で、小さなデイバックに水分やランチ、そして水着を詰め込みました。なお駐車場の片隅にはトイレがあるのですが(右or下画像)、見るからに衛生的ではなかったため、使う気になれませんでした。


 
せっかく車でこんな高いところまで登ってきたのですが、温泉は谷底で湧いているため、ここからは自分の足で一気に谷底まで下りて行きます。温泉が湧く谷の低い位置に雲が垂れ込めており、いまから私はこの雲に向かって下ってゆくわけです。上から雲へ突入するだなんて、まるで着陸する飛行機みたいですね。左下を向いている道標によれば、ここから温泉まで1.55kmとのこと。大した距離ではないのですが、相当の高低差があることは一目瞭然です。


 
 
温泉への道入口には温泉に関する説明プレートが立てかけられていました。集落名と同じく、いまから目指す温泉も、一時期は新興温泉と称されていたようですが、現在では集落名に合わせて嘎拉賀温泉という名前になっています。この説明板によれば、温泉はpH8の弱アルカリ性で湧出温度は44~55℃なんだとか。


 
軽登山の準備ができたらいざ出発です。急斜面を下る道は一応コンクリ舗装されていますが、地元民以外の車の乗り入れはできませんし、万一車で通行したとしても、勾配が非常に急なので普通のFF車では登れないかもしれません。いや、車どころか人間にとっても雨に濡れたコンクリ路面は非常に滑りやすく、私のトレッキングシューズの靴底はグリップが効いてくれず、何度も転倒しそうになりました。でも路傍に植えられた梅の花がちょうど見頃を迎えており、雨に滴る可憐な花が、足運びに苦戦する私の心を癒してくれました。


 
この道は「温泉古道」と称されているらしく、途中100m毎にスタート地点からの距離を記した看板が立てられていました。


 
この道は原住民に対して交付される助成金で整備しているらしく、路肩に立派な手すりがあったり、ベンチや東屋が設けられていたりと、山奥の林道らしくない立派な設備がところどころで見られました。上画像に写っているベンチの上には、電話番号が書かれた看板が木にくくりつけられていますが、もし帰路に急な坂道を登りきれなくなってギブアップしたい場合、そこへ連絡すれば上から車で迎えにくれるみたいですよ(もちろん有料でしょうけど)。


 
道の舗装は突然終わり、その先は階段が続いていました。まだまだ全行程の半分にも至っていません。この階段の途中にも東屋が建てられており、その傍らには先ほどと同じ電話番号が記されていました。


 
樹林の中を、急な階段が延々と続きます。下っても下っても、なかなかゴールが見えません。帰路にこの階段を登らなきゃいけないかと思うとウンザリします。


 
スタートから1.3km地点となり、階段の傾斜がますます急になってきました。幅の狭いステップは雨に濡れて滑りやすいので、転ばないよう慎重に歩みを進めます。


 
途中で突如ステンレスの立派な手すりが現れたかと思えば、その先の藪ではロープが渡されているだけだったりと、道の状況は区間によって全然異なっており、下に行けば行くほど、その険しさが増していました。でも斜面の下の方から川が流れる音が響いてくるので、着実に谷底へ近づいていることを実感できます。


 
歩き始めて25分。森の中に小さく開かれた広場に「温泉古道 終点」の看板といくつかのベンチが設置されていました。看板には終点と記されていますが、しかしながらまだここは終点でなく、温泉があるのは更に先です。



細い杣道を進んで行くと・・・


 
スタートからちょうど30分で谷底の渓流にたどり着きました。山を下ってきた道は、(左or上画像に写っている)清流が瑠璃色に淀む場所に突き当たります。ここから先、川の左岸に沿う形で道は左右に分岐しているのですが、試しに右へ進んでみると、数十メートル小さな滝を見下ろす出っ張りに行き着き、そこで袋小路となりました(右or下画像)。従いまして温泉へ向かうには分岐を左へ進むことになります。


 
足を滑らせたら川へ転落しちゃうような切り立った崖の上を慎重に歩いて、下流に向かって左岸を進んで行くと、左手から巨大な岩がオーバーハングしている箇所を通過しました。この巨岩の下をくぐると、目の前にボロボロのテント小屋が現れたのですが、これって更衣室かな?



テント小屋の前を通り過ぎると、いきなり右手の視野が開けて一本の太い滝が目に入ってきました。よく見ると、滝壺から湯気が上がっています。ということは、あれが目的地の湯の滝なんですね。


 
湯の滝が見えたからといって、そう簡単に楽しませてくれないのが、大自然の厳しい定め。
ボロ小屋の先には上画像のような鉄のハシゴが設置されていますので、これで河原へ下ります。ハシゴの一部は曲がっていますし、上述のようにこの時は雨が降っていましたので、滑って踏み外さないよう、両手でしっかり握りながら慎重に下りていきました。


 
ハシゴで下り切ったら、今度は川を渡ります。橋は架かっていませんので、川の中へジャブジャブ入って渡渉することになります。この先、荷物を置いたり着替えたりするような場所はあまりないので、水着に着替えたり、入浴に必要の無い荷物を置く場合は、川を渡る前に川岸のスペースを利用しましょう。
渓流は大変綺麗に澄んでおり、見ている分には心が洗われますが、南国台湾とはいえ山奥の渓流はとっても冷たく、渡渉する際にモタモタしていると足元からジンジン冷えてきます。自分の目で渡りやすそうな場所を見つけて、サッサと迅速に渡ってしまいましょう。対岸には楽しい温泉が待っています!

後編へ続く。








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大塩温泉共同浴場 2015年秋再訪

2016年03月23日 | 福島県
 
奥会津の只見川流域では、2011年夏の福島新潟豪雨で発生したダム決壊やそれに伴う水害により、地域に点在するいくつかの温泉施設が被害を受けましたが、その後、県や町村等からの助成を受けて再興が行われ、被害を受けた温泉の一つである「大塩温泉共同浴場」も完全改築の上、2015年8月8日にリニューアルオープンと相成りました。私は昨年の秋だけで2回訪問しておりますので、満を持して今回拙ブログで紹介させていただきます。


 
川岸の斜面に沿って建てられた建物は、上下に長い造りになっており、玄関および下足場が最上階となっています。玄関の戸を開けて下足場を抜けると、すぐ下へ伸びる階段につながりますので、まずはこの階段で下のフロアへと向かいます。


 
階段を下り切ると、正面にカウンターが現れ、その上に料金箱が置かれていました。更新前の浴場と同じく新浴場でも無人施設であり、利用者は自分でこの箱へ協力金を納めます。小銭の用意が無い利用者でも、こちらには両替機が用意されていますし、カウンターの上には監視カメラも取り付けられていますので、無銭入浴の言い逃れはできません。


 
カウンターの隣の小上がりに休憩用のお座敷が設けられ、テレビも用意されていました。湯上がりにのんびり寛ぐにはもってこいですね。お座敷は後で利用させていただくとして、まずはフローリングの廊下を歩いて浴室へ。共同浴場ではなく旅館を思わせるような綺麗な姿に生まれ変わった館内にビックリです。


 
綺麗に維持されている脱衣室内には括り付けの棚にカゴが備え付けられているほか、流し台にドライヤーが用意されており、またロッカーも設置され、以前と比べて使いやすさが格段に向上しました。


 
上下に広がっている立地を生かして、浴室は天井が高く誂えられており、おかげで床面積以上に明るく広々と感じられました。窓からは只見川の流れや対岸の緑が一望できるのですが、訪問日は屋外で工事が行われており、目隠しのためブルーシートが張られていました。


 
新浴場には洗い場が新設されました。この洗い場にはボイラーで沸かしたお湯が出てくるカランが2基(うち1基はシャワー付き)が並んでいます。前回記事で取り上げた「湯倉温泉共同浴場」でもリニューアル後は利用者の利便性を考慮して真湯のカランが新たに設けられましたが、こうした設備により多くの人が使いやすくなりますから、コスト増を承知の上で洗い場の新設を決断なさった地元の方には感謝です。
一方、室内の壁には番号が付されたフックが4つ並んでいるのですが、これはおそらくロッカーの鍵を掛けるためのものでしょう。この浴場のロッカーキーは手首に巻くタイプではないので、ここに鍵を掛けて目で監視するわけですね。


 

まだ開業して1年も経っていないのに、温泉成分の付着によって浴室の床は赤く染まっており、浴槽の縁には凸凹の石灰華が付着しはじめていました。そして浴槽のお湯がオーバーフローする流路の床は、元の素材の色がわからないほど濃い赤茶色に染まり上がっていました。休憩室や脱衣室はまだ新建材の匂いが放たれており、新築らしい佇まいが感じられるのですが、浴室内は早くも奥会津の温泉らしい風格を漂わせていますね。赤黒く染まった浴室と、湯船周りでコッテコテにこびりつく石灰華は、この地域の温泉に共通して見られる特徴です。


 
窓の外側には小さな露天風呂も造られていたのですが、昨年秋に2度訪問した時点ではまだ使えない状態でした。もっとも炭酸ガスを放つお湯ですから、アブが発生する時期にお湯を溜めちゃうと大変なことになりそうですね。


 
木組みのポストみたいな湯口よりお湯がボコボコと音を立てながら湯船へ注がれています。たまにお湯の出が数秒間だけ止まることがあるのですが、おそらく配管中にエアが混ざってしまうためかと思われます。なお源泉温度が40℃に満たないため、秋から春にかけての期間は加温されており、それが原因なのか、利用の際に納める協力金は湯倉温泉よりも100円高い300円という設定になっています。

浴槽は4~5人サイズですが、ひざを折り曲げて詰めれば10人は入れそうな容量があり、前回記事の「湯倉温泉共同浴場」より若干大きな寸法です。湯船には緑色を帯びながら橙色に強く濁るお湯が張られているのですが、湯船に入ると槽内に触れた手やお尻に同色の沈殿が付着し、それを拭ったタオルまでその色に染まってしまいます。このため湯上がりの際には洗い場の真湯で体にこびりついた沈殿をしっかり落とした方が良いかもしれません。お湯を口に含むと、しっかりとした塩味・金気味・土類味・出汁味・はっきりとした炭酸味といった様々な味覚が感じられ、湯船の中ではキシキシと引っかかる浴感と同時に、木工で使う砥の粉を全身に塗りたくったかのような感覚に覆われます。加温は程々に抑えられているのですが、炭酸の温浴効果とともに、全身を覆う砥の粉のような石灰の微粒子が毛穴をしっかり埋め尽くすのか、湯加減のわりには温まりが強く、湯上がりにはしっかり火照って汗が止まらなくなりました。さすが温泉ファンから熱く支持される名湯だけあり、力強さは本物です。
上述のように私はリニューアルオープン後、既に複数回利用しているのですが、いずれの訪問時にも常に数人の利用者がおり、人気の高さが窺えました。これからも多くの人々を温める名湯であり続けてほしいものです。


大塩温泉第四源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 38.3℃ pH6.2 123L/min(掘削自噴) 溶存物質8.959g/kg 成分総計9.908g/kg
Na+:2391mg(78.04mval%), Mg++:131.5mg(8.12mval%), Ca++:238.9mg(8.94mval%), Fe++:9.2mg,
Cl-:2950mg(61.88mval%), Br-:6.7mg, I-:0.2mg, SO4--:1078mg(16.69mval%), HCO3-:1750mg(21.33mval%),
H2SiO3:121.7mg, HBO2:37.6mg, CO2:949.0mg,
(平成24年4月25日)
10月~5月は加温

福島県大沼郡金山町大字大塩字休場  地図

4~10月→7:30~21:00, 11月~3月→8:30~20:00,
協力金300円以上
ドライヤー・ロッカーあり

私の好み:★★★
コメント (12)
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