(2022年9月訪問)
鄙び系の温泉が好きなファンから評価が高い静岡県掛川市の倉真赤石温泉。最近は利用に際して事前の予約が必要になり、また営業日も土日祝のみになったため(2023年6月から水曜日も追加)、以前よりも利用のハードルが高くなったのですが、そもそも現地へ向かうまでのアクセスがちょっと大変です。集落から山の方へ伸びる道を進み、途中から上画像に写っている林道のようなアプローチ路を入ってゆくのですが・・・
この道が細くて怖いのです。車1台しか通れないコンクリ舗装の狭隘路で、路側の片方は崖になっており、ガードレールなどは無いため、谷側へ脱輪したら転落してしまいそう。行き違うスペースも無いため対向車が来てもお手上げでしょう。
この悪路は距離こそ短いもののスリリングな道程なので、冷や冷やしながらハンドルを握り、現地へ到着したときにはホッと胸をなでおろしてしまいました。しかも駐車場は1台がやっと停められるスペースしかないため、中途半端に大きなSUVに乗っている私は、自分の車を何度か切り返してようやく駐車できたのでした。狭隘路や駐車スペースといったハードルがあるため運転初心者の方には精神的にちょっと厳しいかもしれません。でも苦あれば楽あり。苦難を乗り越えた先に極楽が待っているのです。
私が車を停めると中からスタッフの方が出てきてくださったので、予約した際の名前を申し上げて湯銭を支払いしました。なお手作り感あふれるこの建物の屋上にも確かお風呂(源泉風呂)があるはずですが、この日は利用できませんでした。
冒頭で申し上げましたように、こちらのお風呂は事前予約制且つ貸切制です。しかも開けている浴室は一室のみ。つまり利用客は私だけ。
この温泉は急斜面に建てられており、それゆえ窓からの眺めが良く、青くて広い空と周辺の山の緑が果てしなく広がっていました。でもこの浴場がある場所を地図を見ると、なんと新東名の掛川PAのすぐそばなんですね。流通の大動脈が目と鼻の先を通っているだなんて信じられません。
お風呂の造りは至ってシンプルで、6畳ほどの空間に2〜3人サイズの浴槽がひとつと、洗い場に混合水栓(シャワー無し)が2つあるだけです。その浴槽もタイルのお風呂の側面をモルタルとペンキで補修しており、自分で修理しましたという感たっぷり。
湯口からは加温された無色透明のお湯が出され、湯舟では糸くずみたいな形状の湯の花が沈殿しています。湯使いは加温かけ流し。湯口から出るお湯を手に取ってテイスティングしてみますと、硫黄感があったりなかったりで、私の訪問時には硫黄感にムラがあるように感じられました。分析表によれば総硫黄は3.5mgというそこそこの量がありますから、湧出したばかりの冷鉱泉ではしっかりとした硫黄感が得られるものと思われます。そんな硫黄感の他、アルカリ性泉にありがちな微収斂やほろ苦みが感じられ、湯中ではヌルっとした感触を伴うツルスベの滑らかな浴感が得られました。24.1mg含まれる炭酸イオンがその浴感をもたらしているのでしょう。湯口から出るお湯は加温が抑えられているので、湯船でも長湯したくなるようなぬるさになっており、つい微睡みそうになってしまいました。余計なものが無いお風呂なので、じっくりとお湯の良さを堪能することができます。なお館内の説明によれば炭酸の気泡が体に付着するとのことですが、今回の利用では(私は鈍感だったのか)気泡付着には気づきませんでした。これも非加温の源泉ではおそらく気泡がしっかり付着するものと思われます。
手作り感溢れる渋い湯小屋で特徴的な鉱泉に入れるこちらの施設。鄙びた雰囲気がお好きな方にはたまらないお風呂かと思います。
倉真赤石1号
単純硫黄冷鉱泉 18.2℃ pH9.4 5.8L/min(動力揚湯) 溶存物質0.448g/kg 成分総計0.448g/kg
Na+:134.8mg(99.66mval%),
HCO3-:134.6mg(37.46mval%), SO4--:122.7mg(43.22mval%), CO3--:24.1mg(13.56mval%), OH-:0.4mg, HS-:2.4mg, S2O3--:1.1mg,
(2019年10月25日)
静岡県掛川市倉真赤石5984-1
0537-28-1126
掛川市観光協会公式サイト内の紹介ページ
事前予約制 10:00~16:00 土・日・祝日のみ営業(令和5年6月より水曜日も営業)
1300円
私の好み:★★+0.5