西伊豆の松崎町には、岩地・石部・雲見という3つの漁村兼温泉地が海岸に沿って並んでいますが、地元ではこの3地区をまとめて三浦(さんぽ)地区と呼んでおり、三浦の各地区で営業する温泉宿や入浴施設などでは、松崎三浦温泉株式会社によって集中管理された、しょっぱくて土類感の強い混合泉の供給を受けています。しかしながら、一部の温泉旅館ではこの集中管理された源泉の供給を受けずに、独自の源泉を使っているところがあります。今回はそんなお宿のひとつである石部の「いでゆ荘」へ行ってみることにしました。

石部で海沿いの国道136号から離れ、山間へ伸びる集落の道へ入って行きます。狭い谷間で甍を競うように民家が櫛比しており、細い沢に沿って車一台がようやく通れる狭隘な道が伸びているので、車を擦らないよう慎重に集落の道を進んでいきます。

途中で右折し、ギリギリ通れる細い道へ入って…

今回の目的地である「いでゆ荘」に到着しました。幅がちょっと広めな私の愛車(マツダのCX-5)でも無事に通れましたので、一般車でしたらおそらく問題なく通行できるでしょう。
こちらのお宿は数年にわたって閉館していたのですが、最近復活を遂げ、素泊まり宿泊と日帰り入浴の営業を再開させました。

駐車場に車をとめ、谷間の細い川を渡って玄関へ。

玄関で声をかけると、団塊ジュニア世代の私とほぼ同じくらいと思しき物腰の柔らかい女性が対応してくださいました。ちなみに今回は訪問する数時間前に予め電話連絡しておいたので、スムーズに入浴利用することができました。
飾りの多い玄関を上がって左手に休み処が、そして右手に帳場があります。

帳場の前ではニャンコがお出迎え。というか、ジッと寡黙にこちらを凝視していました。ニャンコの目に私が怪しい人物として映ったのでしょうか。帳場から伸びる廊下を進んでゆくと、突き当りが浴室出入口。男湯は右側です。

棚とカゴがあるだけの狭い脱衣室を抜けて内湯浴室へ。こぢんまりしながらも明るい内湯には、窓側に浴槽がひとつ据えられ、反対側にはシャワーなどの水栓類が並んでいます。浴室に入った瞬間、ほんのりとしたタマゴ臭が香ってきました。お湯への期待が膨らみます。

内湯の湯船は所謂岩風呂で、2人サイズ。石の並ぶ縁からお湯がしっかりとオーバーフローしており、湯船は41.5℃という絶妙な湯加減に保たれていました。

内湯の湯口における吐出温度は43.5℃。湯口からはふんわりとタマゴ臭が放たれており、石膏由来の甘い香りも漂っていました。お湯を口に含むと、薄い塩味と甘味を伴う石膏味、少々の芒硝味が感じられ、弱いながらも塩化土類泉を思わせるような風味が喉から鼻へと抜けていきます。松崎三浦温泉から供給されるお湯は、しょっぱくて土類感の濃く強烈に火照るタイプですから、系統としてはここのお湯と同じライン上にあるのかもしれませんが、味の濃さ、タマゴ感の有無、土類感の強弱など、明らかに両者は異なる温泉であると断言できるでしょう。

内湯から屋外に出ると、何とも爽快な露天風呂が広がっていました。伊豆といえば海を思い浮かべる方が多いかと思いますが、海から近い場所とはいえ、この露天風呂は深い緑に覆われており、山奥の秘湯みたいな雰囲気です。なおこの露天風呂は出入口こそ仕切りがあるものの混浴です。

露天は集落を流れる沢に沿って設けられており、春の花々を眺めつつ、せせらぎを聞きながらのんびり湯浴みすることができました。実に麗しい環境です。

露天風呂は崖の下に設けられているのですが、崖の壁面は一部が掘られて、神様を祀るような空間になっていました。また奥の方では石膏の人魚像が立っているのですが、この人魚さん、なぜか左手に刃物のようなものを握っています。悪い男に騙されて復讐しに行く途中のかな。

人魚の石膏像と共にこの露天風呂で目立っているのは、露天の中央で噴き上がる温泉の湯口。ボコボコと絶え間なく滔々とお湯が噴き上がっており、その温度は43.0℃でした。

露天風呂では中央の噴き上がりのほか、小さなお地蔵さんの下から落とされてコンクリの擁壁を這うように供給されるお湯もあります。2ヶ所から供給されているお湯は完全掛け流し。湯船のお湯は大変フレッシュで、間断なく縁からザコザコと溢れ出ていました。

露天の温度はいつまでも長湯したくなる39.0℃というぬるめの湯加減。実際に時間を忘れてじっくりのんびり湯浴みさせていただきました(時折内湯に入って体を温めました)。
こんなに広くて静かな環境のもと、新鮮で澄んだ完全掛け流しのお湯を、良心的な料金で堪能できるのですから、実に素晴らしい。文句のつけようがありません。温泉ファンが敬遠しがちな伊豆にも、こんなブリリアントなお風呂があったのですね。今度宿泊でゆっくり過ごしたいなぁ。おすすめです。
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 47.1℃ pH7.8 480L/min(動力揚湯) 溶存物質2926mg/kg 成分総計2927mg/kg
Na+:501.9mg(45.38mval%), Ca++:519.9mg(53.95mval%),
Cl-:1591mg(89.06mval%), SO4--:243.0mg(10.04mval%), Br-:19.32mg,
H2SiO3:24.90mg,
(昭和47年11月22日)
静岡県賀茂郡松崎町石部1059-2 地図
0558-45-0161
日帰り入浴10:00〜20:00(事前連絡をおすすめします)
500円
シャンプー類あり
私の好み:★★★


石部で海沿いの国道136号から離れ、山間へ伸びる集落の道へ入って行きます。狭い谷間で甍を競うように民家が櫛比しており、細い沢に沿って車一台がようやく通れる狭隘な道が伸びているので、車を擦らないよう慎重に集落の道を進んでいきます。


途中で右折し、ギリギリ通れる細い道へ入って…


今回の目的地である「いでゆ荘」に到着しました。幅がちょっと広めな私の愛車(マツダのCX-5)でも無事に通れましたので、一般車でしたらおそらく問題なく通行できるでしょう。
こちらのお宿は数年にわたって閉館していたのですが、最近復活を遂げ、素泊まり宿泊と日帰り入浴の営業を再開させました。


駐車場に車をとめ、谷間の細い川を渡って玄関へ。


玄関で声をかけると、団塊ジュニア世代の私とほぼ同じくらいと思しき物腰の柔らかい女性が対応してくださいました。ちなみに今回は訪問する数時間前に予め電話連絡しておいたので、スムーズに入浴利用することができました。
飾りの多い玄関を上がって左手に休み処が、そして右手に帳場があります。


帳場の前ではニャンコがお出迎え。というか、ジッと寡黙にこちらを凝視していました。ニャンコの目に私が怪しい人物として映ったのでしょうか。帳場から伸びる廊下を進んでゆくと、突き当りが浴室出入口。男湯は右側です。


棚とカゴがあるだけの狭い脱衣室を抜けて内湯浴室へ。こぢんまりしながらも明るい内湯には、窓側に浴槽がひとつ据えられ、反対側にはシャワーなどの水栓類が並んでいます。浴室に入った瞬間、ほんのりとしたタマゴ臭が香ってきました。お湯への期待が膨らみます。


内湯の湯船は所謂岩風呂で、2人サイズ。石の並ぶ縁からお湯がしっかりとオーバーフローしており、湯船は41.5℃という絶妙な湯加減に保たれていました。


内湯の湯口における吐出温度は43.5℃。湯口からはふんわりとタマゴ臭が放たれており、石膏由来の甘い香りも漂っていました。お湯を口に含むと、薄い塩味と甘味を伴う石膏味、少々の芒硝味が感じられ、弱いながらも塩化土類泉を思わせるような風味が喉から鼻へと抜けていきます。松崎三浦温泉から供給されるお湯は、しょっぱくて土類感の濃く強烈に火照るタイプですから、系統としてはここのお湯と同じライン上にあるのかもしれませんが、味の濃さ、タマゴ感の有無、土類感の強弱など、明らかに両者は異なる温泉であると断言できるでしょう。

内湯から屋外に出ると、何とも爽快な露天風呂が広がっていました。伊豆といえば海を思い浮かべる方が多いかと思いますが、海から近い場所とはいえ、この露天風呂は深い緑に覆われており、山奥の秘湯みたいな雰囲気です。なおこの露天風呂は出入口こそ仕切りがあるものの混浴です。


露天は集落を流れる沢に沿って設けられており、春の花々を眺めつつ、せせらぎを聞きながらのんびり湯浴みすることができました。実に麗しい環境です。


露天風呂は崖の下に設けられているのですが、崖の壁面は一部が掘られて、神様を祀るような空間になっていました。また奥の方では石膏の人魚像が立っているのですが、この人魚さん、なぜか左手に刃物のようなものを握っています。悪い男に騙されて復讐しに行く途中のかな。


人魚の石膏像と共にこの露天風呂で目立っているのは、露天の中央で噴き上がる温泉の湯口。ボコボコと絶え間なく滔々とお湯が噴き上がっており、その温度は43.0℃でした。

露天風呂では中央の噴き上がりのほか、小さなお地蔵さんの下から落とされてコンクリの擁壁を這うように供給されるお湯もあります。2ヶ所から供給されているお湯は完全掛け流し。湯船のお湯は大変フレッシュで、間断なく縁からザコザコと溢れ出ていました。


露天の温度はいつまでも長湯したくなる39.0℃というぬるめの湯加減。実際に時間を忘れてじっくりのんびり湯浴みさせていただきました(時折内湯に入って体を温めました)。
こんなに広くて静かな環境のもと、新鮮で澄んだ完全掛け流しのお湯を、良心的な料金で堪能できるのですから、実に素晴らしい。文句のつけようがありません。温泉ファンが敬遠しがちな伊豆にも、こんなブリリアントなお風呂があったのですね。今度宿泊でゆっくり過ごしたいなぁ。おすすめです。
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 47.1℃ pH7.8 480L/min(動力揚湯) 溶存物質2926mg/kg 成分総計2927mg/kg
Na+:501.9mg(45.38mval%), Ca++:519.9mg(53.95mval%),
Cl-:1591mg(89.06mval%), SO4--:243.0mg(10.04mval%), Br-:19.32mg,
H2SiO3:24.90mg,
(昭和47年11月22日)
静岡県賀茂郡松崎町石部1059-2 地図
0558-45-0161
日帰り入浴10:00〜20:00(事前連絡をおすすめします)
500円
シャンプー類あり
私の好み:★★★